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巡礼 の商品レビュー

3.8

39件のお客様レビュー

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2013/01/09

2013.1.9読了。 自分が何をしようとしているのかが分かっている人間は、一体どれほどいるだろう。

Posted byブクログ

2013/03/19

「橋本治は天才だ」との評をいくつか目にしたことがあります。 ゴミ屋敷を扱った本書は,橋本氏だからこそ傑作に仕上がったのだと感じました。ゴミ屋敷をつくり出した忠市の心理描写や時代背景,家族など刻々と移り変わっていく様の描写が,坦々とした内容であっても僕の中に入ってくる感じを受けまし...

「橋本治は天才だ」との評をいくつか目にしたことがあります。 ゴミ屋敷を扱った本書は,橋本氏だからこそ傑作に仕上がったのだと感じました。ゴミ屋敷をつくり出した忠市の心理描写や時代背景,家族など刻々と移り変わっていく様の描写が,坦々とした内容であっても僕の中に入ってくる感じを受けました。 登場人物すべての心理が理解でき,普通の脇役が主役であり,主役が脇役というような不思議な感覚で,視点や時代の巡る流れが面白かったです。 これを機会に,橋本治ワールドへ足を踏み入れたいと思います。

Posted byブクログ

2012/07/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

とても深い内容の本だった。 ゴミ屋敷、片付けられない症候群、そんな言葉はよく聞くけれど、その裏に込められている個人個人の意識や事情まで今まで考えた事がなかった。 結婚もうまくいかず孤独な忠市は、幼くして死んだ自分の息子の名を母親から久しぶりに聞いて一瞬誰の事か解らなくなる。それだけ読めば、酷い父親だと思ってしまうけれど、次にこう書いてあってハッとした。 ”「それを分かれば涙が出る」ーそう思う心が、記憶の蓋を閉ざした。” 悲しい時間の中で止まっている忠市は、自分が他人から「ゴミ」だと言われるものを集めていることが無意味な事だと頭では分かっている。ここでも「分かっているなら止めたらいいのに」と思ってしまうけれど、彼にとってはそんな簡単な事じゃない。 自分が意味のあることをしていると思いたい彼の心情が、無駄を省いた文章に強く表れていた。 忠市と弟、修次の食事に関する記載がとても良いと思った。 初盤、中学を卒業した忠市の祝いで、尾頭付きの鯛が出た時に、忠市はそれを弟の修次に分けてやった。 終盤、修次の助けによりゴミ屋敷から出た忠市は、修次との旅中に精進揚げをうまいと喜び、そんな兄に修次は自分の分も勧める。でも忠市は修次に食べさせる。 いろいろな事が重なって別な方向の人生を歩んだ2人だけれど、互いへの愛情は変わっていない、この最後のシーンはそんな風に思えました。少し悲しい終わりかただけど、きっとこれで良かったんだと思う。

Posted byブクログ

2012/06/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

よくわからない小説なんだ、これが。いや、本当いうとわかりやすすぎるくらいなんだけど、作者の意図みたいのを考えるとよくわからない。作者の視点というか、何を大事に思っているのかとか。 ゴミ屋敷をとりまく住人たちの不満、なにもしない行政、興味本位のテレビのリポーター。まず思ったのは、フィクションの質感があまり感じられないということ。ここで言うフィクションとは「現実にはありえなかったり、多少大袈裟かもしれないけど、こう書いたほうが本当っぽく見える」もののこと。 ここには在るものをありのまま書いてる、「ウソをついてない」質感があって、派手ではないけど、かえって実にしっかりと細部まで描かれている。読みながらに不毛さを感じるくらい…それは徹底している。 ゴミ屋敷の主、下山忠市がなぜゴミを集めるようになったのか? その「なぜ」には確たる答えが出されない。忠市が家を出て住み込みで働き、嫁をもらったが出て行ってしまい…… 「確たる答え」がないのは、そもそも人生に「確たる答え」など見いだせないからだ。なんとなく各々が各々の理由づけで満足するほかない。 でもってなんで「巡礼」なのか? このラストだけはちょっと気にいらなかった。ただ忠市の弟によってゴミ屋敷の二階の大戸が開かれて、それを見ていた吉田家の母と娘が固唾をのむところは、なんでかびっくりするくらい感動的だった。吉田娘の「普通の人だ――」「ママ、あれ、普通の人だよ」という嘆息はなんなんだろう? ここに何かある気がするんだが。 ゴミを捨てられて「ここはゴミ捨て場じゃねェぞ!」と言いながら、ゴミを家へ持ち帰ってしまう忠市の姿があなおかし。

Posted byブクログ

2012/05/28

異物のような存在で理解できそうにない人でも、その人には歴史があって、同じ人間なんだよね、ということを読んで思った。なぜゴミ屋敷の話が巡礼?と疑問だったが短めの第3章を読んでなるほど、そういう終わらせ方か、と思った。

Posted byブクログ

2012/02/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「ゴミ屋敷」の特集は、TVで何度か見たことがあった。 でも、なぜ人がゴミを集めてしまうのか、納得がいかなかった。 でも、この小説を最後まで読んで、 このような理由からゴミを集める人もいるのかもしれないと 初めて納得がいった。 人は、頭で分かっていることを、 必ずしも実行できるわけではない。 それは意志が強いとか弱いとかそういう問題ではなくて、 こみあげてくる不安とどう向き合うかという 問題なのではないかと思う。 それをこの小説はとてもよく描いていたと思う。 主人公の不安や焦燥感や絶望が分かるから 読んでてやりきれない気分になった。 ラストは、一瞬「え、こうやって終わるの?」と思ったけど ラスト二行を読んで、この終わり方でよかったと思った。 橋本治の文章は、理屈っぽいというか 観念的というかで、ちゃんと読んでないと 分からなくなってしまうことも多々あったけど 中盤から読みやすくなった。 久しぶりに重~い作品を読んだけど 最後まで読んでよかったと思った。 いい作品だった。

Posted byブクログ

2012/01/17

現代のなぜ?を物語の力で解きほぐそうとする、橋本治の意欲作。 「ごみ屋敷」の主と、その近所に住む主婦の話から、物語は「ごみ屋敷」の主の人生にフォーカスする。 現代に潜む世の中の不合理を、一人の主人公に商店をあてることで、解きほぐす悲しいドラマです。 我々は、ニュースを断片的に捉え...

現代のなぜ?を物語の力で解きほぐそうとする、橋本治の意欲作。 「ごみ屋敷」の主と、その近所に住む主婦の話から、物語は「ごみ屋敷」の主の人生にフォーカスする。 現代に潜む世の中の不合理を、一人の主人公に商店をあてることで、解きほぐす悲しいドラマです。 我々は、ニュースを断片的に捉えがちですが、この小説では、一人の人生を丹念に描くことで、現代におけるひとつの答えを提示していると思いました。 絶望的な人間関係の溝を、我々がどう対峙するかを客観的な語り口で描ききる構成は見事。 淡々とした日常の中に、驚きや悲しみをむき出しにさせることで、ひとことでは語れない人生の深さを感じさせてくれる一冊です。 読後感も、ジーンと余韻がのこる、思い出深い作品でした。

Posted byブクログ

2011/10/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

戦後の日本人たちの内側を、まるで『全てを見透かしたように』描いた小説。 戦後、激流のように変化する価値観や社会の中で、するすると(良く言えばとても素直に)時代を流れるように生きた男たち、女たち。何人もの登場人物は、戦後~現代までの『サンプル的日本の家族たち』だと思う。みんなそれぞれに一生懸命生きてきて、だけど激しい時代に呑まれて、男も女も子供もどこかその歪みに足をとられてる。 その登場人物たちの内面が、リアルで的を得すぎていてこわいくらいで「橋本さん…なんで(そんなことまで、わかるんですか)!?」って思う。誰かが橋本さんのことを「雲の上から社会と人を見ている」(←多分かなり間違ってる)みたいな表現で言っていたけど、本当にそう。今までどういう人生でどういう経験してどういう頭で、人を理解し想像し文章を書かれているのか想像の糸さえ掴めないって感じ…。本当、びっくりな人です。

Posted byブクログ

2011/01/14

ただ生きているだけなのに人はすれちがい、溝を深めてしまう。我が家をゴミ屋敷にせざるを得なかった男の姿に、哀れとか可哀想とかは感じないのに、なぜか涙が流れた。後半、物語全体のタイムスパンの割に残り少なくなるページ数を見て、この話ちゃんと着地させられるのかな、と心配になったが、33ペ...

ただ生きているだけなのに人はすれちがい、溝を深めてしまう。我が家をゴミ屋敷にせざるを得なかった男の姿に、哀れとか可哀想とかは感じないのに、なぜか涙が流れた。後半、物語全体のタイムスパンの割に残り少なくなるページ数を見て、この話ちゃんと着地させられるのかな、と心配になったが、33ページしかないのに濃密で腑に落ちる最終章に圧倒された。

Posted byブクログ

2010/12/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

著者の描きたかった世界。それは、意外に単純だったのかもしれない、というのが、読後感。最終章、それは、感動的な場面である。遡って第1章、醜悪な世界、そしてTVクルー。周辺住民が主体。そうして、第2章、家族の歴史が描かれ、時代と乖離した一家、主人公の姿が浮き彫りにされる。いささか、順序をバラバラにして書いたが、私の印象では、この順序になる。惜しむらくは、更に、推敲を重ね、純文学としての特質を備えさせることが出来たならば、この小説は、更に輝いたのでは、と思うのは、私の欲目であろうか。

Posted byブクログ