巡礼 の商品レビュー
おもしろかった〜!ゴミ屋敷に住む男の一生が色々な人の視点から描かれていて没頭できた。最後に弟と旅行して満足して亡くなるシーンが美しかった。
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ゴミ屋敷に住む独居老人。彼がなぜ他人を寄せつけず、ゴミを集めるようになったかが描かれた小説。 ゴミ屋敷のご近所さんの人間模様が描かれる1章、ゴミ屋敷の主人がなぜそうなってしまったのかを過去から辿る2章、そして主人が自分を取り戻しはじめる3章で展開されます。 いち凡庸な青年のい...
ゴミ屋敷に住む独居老人。彼がなぜ他人を寄せつけず、ゴミを集めるようになったかが描かれた小説。 ゴミ屋敷のご近所さんの人間模様が描かれる1章、ゴミ屋敷の主人がなぜそうなってしまったのかを過去から辿る2章、そして主人が自分を取り戻しはじめる3章で展開されます。 いち凡庸な青年のいたって普通な人生が、戦後社会の変貌、価値観のゆらぎ、人間関係のトラブルなどの小さなつまづきから、少しずつしかし確実に歪んでいく様がスリリングでした。胸が痛くなりつつもページをめくらずにいられない面白さです。 固執というものは、一見それと関係がなさそうなところに因果があるかもしれません。ゴミ集めでなくても、自分の中の偏執的な部分を紐解くと、フタをしていた「理由」がきっと見えてきます。それを見つけること、見つめることはとても恐ろしいですが、私個人としても今後の人生の中でトライしていきたいことの一つです。自分自身を知ることや考えることを諦めて、生きることが「作業」になってしまわないように。
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橋本さんはまなざしの温かいひとだけど ウェットではないな~とあらためて思った 生きる意味ってあると思う人にはあるし 無いと思う人にはないんだ 意味が無いと生きられない? 意味が無くても生きるには 意味の有無を考えなければいいの? そういう生き方は幸せ?
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社会から隔絶してしまった老人を中心に据え、その一生を家族関係、さらには社会の激変とともにリアルに描いている。最後に兄弟という親も子供も介在しない家族(と民間信仰、と言うべきか)による「救い」の訪れも描く。商業高校に合格した主人公を家族四人が「尾頭付き」で祝う場面は、ささやかで貧し...
社会から隔絶してしまった老人を中心に据え、その一生を家族関係、さらには社会の激変とともにリアルに描いている。最後に兄弟という親も子供も介在しない家族(と民間信仰、と言うべきか)による「救い」の訪れも描く。商業高校に合格した主人公を家族四人が「尾頭付き」で祝う場面は、ささやかで貧しいが「家族の幸福」というものが確かにあったことを示す。そこで「尾頭付き」をほぐして兄が弟に与える場面が、最後に訪れる救いの伏線のようにも思えた。 勝手な感想になるが、「老い」のありようを描こうとしたとき、橋本治が『恍惚の人』を思い返さなかったはずはないと思う。有吉佐和子は70年代初頭中流サラリーマン家庭での「老い」をめぐる騒乱を、昭子という「長男の嫁」中心の視点から、単焦点的かつリアルに描いた。いっぽう橋本さんは、迷惑な他者である「ゴミ屋敷老人」を複眼的に各時代のなかに位置付け、彼が家族を失う過程や、「家業とその跡取り」が意味を失っていくことなどと老人の内面を結びつけて、彼を理解しようと試みているように感じる。 80年代のコラム?で、橋本さんは「呆け」を描いたドキュメンタリー映画の評を書いていた。自分の記憶のかぎりでは、「老い」への基本的な視点はその評と変わっていないようにも思う。
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空き家問題に付随するゴミ屋敷と目される現代の社会問題がこの物語の中心を成しています。ゴミ屋敷に住む人とその周辺の住人たちを状況を対比させ、その人たちの過去から現在に至った過程を描いています。 ゴミ屋敷の住人である下山忠市は戦前に生まれ、戦後に思春期を迎えた世代。突然の世の中の価値...
空き家問題に付随するゴミ屋敷と目される現代の社会問題がこの物語の中心を成しています。ゴミ屋敷に住む人とその周辺の住人たちを状況を対比させ、その人たちの過去から現在に至った過程を描いています。 ゴミ屋敷の住人である下山忠市は戦前に生まれ、戦後に思春期を迎えた世代。突然の世の中の価値観の転換に戸惑いながらも、高度成長時代を実家である丸亀屋を維持して生きてきました。その彼の一生を追う形で物語は進んでいきますが、昭和という年代とともに生きた彼の一生がノスタルジーを醸し出しています。 何故、ゴミに埋もれて暮らすようになったのか今に至る心境と、その周辺の住人たちの戸惑いや苛立ち、怒りなどの心理の動きが橋本治さん特有の詳細な分析による筆致で書かれています。終章の「巡礼」の部分で物語は解決を見ますが、晩年のこの辺りの心境などあっさりしていてもう少しじっくり書いて欲しかった気がします。 最後に橋本治さん、亡くなるのが少し早かったのでは… もっとこの先活躍して欲しかったと思います。
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ワイドショーのネタにされ野次馬をひきつけ、近隣の人々の嫌悪と憎悪の対象となっている「ゴミ屋敷」。 老人は何故「ゴミ屋敷」の主となったのか。 みるみる変わりゆく戦後の「郊外」の風景を背景に、家族、地域コミュニティ、就業の在り方など、急速な時代の変化を受け身で感じていく主人公。 少...
ワイドショーのネタにされ野次馬をひきつけ、近隣の人々の嫌悪と憎悪の対象となっている「ゴミ屋敷」。 老人は何故「ゴミ屋敷」の主となったのか。 みるみる変わりゆく戦後の「郊外」の風景を背景に、家族、地域コミュニティ、就業の在り方など、急速な時代の変化を受け身で感じていく主人公。 少年から青年、中年と、思うに任せぬ人生を重ねていく中で、気がついたときは独りになっていた。 普通に不器用なだけだったはずの男が、「ゴミ屋敷」の主となっていく。 泣けたわけではない。 説得力を認めたたわけでもない。 ただただその克明に描写された人生に、リアルを感じさせられた。 自分にとって橋本治は、かの大河青春小説「桃尻娘」シリーズの著者として特別な存在なのです。 それまで三毛猫ホームズやトラベルミステリーばかり読んでいた自分にとって、初めて取り組んだ現代純文学、それが「桃尻娘」でした。 「桃尻娘」の登場人物たちが表現する屈折した自意識や孤独感は、当時思春期に差し掛かっていた自分は強烈なインパクトを与え、その質感は20年経った今でも印象として残っています。 そして、本当は「普通の人間」でしかない「異端者」に対する優しい眼差しは、この「巡礼」にもそのまま受け継がれているように感じました。
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圧倒されてしまい、なにも書けない。後日落ち着いて距離が置けたら追記するかも。追記。2010-04-02『橋』はこの小説より後の時代がメインだが、この小説に書かれている時代は、著者が生きていない頃もある。そんな時代を、よくもまあ、これほどリアリティこめて表現できるものだ。ワシに、昭...
圧倒されてしまい、なにも書けない。後日落ち着いて距離が置けたら追記するかも。追記。2010-04-02『橋』はこの小説より後の時代がメインだが、この小説に書かれている時代は、著者が生きていない頃もある。そんな時代を、よくもまあ、これほどリアリティこめて表現できるものだ。ワシに、昭和20年代をリアリティこめて表現できるだろうかと考えると、嘆息する。読み始めてすぐに思い出したのは、『不思議とぼくらは〜』。冒頭の中流家庭の住宅地のところの描写を思い出し、そうか、やはり、橋本治はいくつになっても橋本治なんだとうれしくなった。""
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空き家問題に、ゴミ屋敷問題が、最近話題になっているのですが、、、、 これからの、生活において、自分も断捨離しなくては、、、と、家の中を見渡していた時に、この本と出会った。 最初は、ゴミ屋敷の周りに住む隣人や周りの人達の事が書かれており、周辺にする者たちは、迷惑千万であることが...
空き家問題に、ゴミ屋敷問題が、最近話題になっているのですが、、、、 これからの、生活において、自分も断捨離しなくては、、、と、家の中を見渡していた時に、この本と出会った。 最初は、ゴミ屋敷の周りに住む隣人や周りの人達の事が書かれており、周辺にする者たちは、迷惑千万であることが、、、 しかし、ゴミ屋敷の主の忠市が、どうして、ゴミの山の中で生活してきたのか・・・・ 戦時下に少年時代を過ごし、敗戦後は、周りのものからの勧めでお見合いらしき事で、妻を娶り、子供も生すのだが、、、、その息子にも幼き時に亡くしてしまい、妻も実家に帰ってしまう不幸な出来事があった。 もくもくと、ただひたすらに、仕事をし、真面目に生きてきたのだが、周りの高度成長期に、のまれてしまって、自分自身が、どう変化して行けばいいのか、戸惑いだけで、生活をして来た。 忠市の両親も、戦争下において、生きるために、努力してきたはずなのに、世の中の動きにただ、日々を過ごすことだけを目的に月日を費やしていたのだろう。 弟の修次も、狭い実家から出て生活をして来たのだが、実家からの拒否で、訪れる事もなく、孫の顔も両親に見せる事も出来ず、妻も亡くし、一人住まい。 兄の忠市のゴミ屋敷を見て、実家へと戻り、兄の姿と家の中のゴミに驚くのだが、、、、全部廃棄状態をしてしまう。 兄弟って、今まで、確執があって、会わなかったのに、どちらも、年を重ねたせいか、修次の提案したお遍路巡りへと出かける。 弘法大師の徳を貰ったのか、忠市の顔に笑顔が、現れる。 生きるという事に辛かったのか? 意味もなく歩き回っていたのかも知れない。 でも、皆、生きていたら、、嬉しい事も、辛い事もあり、孤独な事もあるだろう。 この小説で、お遍路さんの満願成就迄、忠市を生かしておいて欲しかったが、、、家の整理も出来て、美味しいものを笑顔で食し、家族の弟とも和解出来、苦しまずに、仏の元へと旅立ったのは、良かったのかもしれない顛末であった。 親の時代、物が豊かでなかった時に、高価な品、、、しかし、今は無用の長物化している物を、廃棄するべきなのに、、、、小説の中の忠市の行きて来た時代を思いながら、断捨離の途中で、考えさせられた本であった。
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第一章、第二章は少々日常過ぎて普通過ぎて退屈。しかし第三章であっけなくもあるがこういう結末かと納得させられる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
・次の朝、修次が目を覚ますと、隣の布団の中で、兄はそのまま死んでいた。その表情はなにも語らず、ただそのままになっていた。 ・死んだことに驚きながら、修次は「兄貴にすれば、生きようとすること自体がつらかったのかもしれない」と思った。兄が死んだことをまず認めてしまった修次は、その冷静さ図々しくも思って、試すように兄の体に手を掛けた。「兄貴!」と揺すって命を呼び戻そうとしたが、忠市は冷たくなって答えなかった。「答える」ということから自由になった体は、固く、ぎこちなく揺れるだけだった。 「自分はもう、ずいぶん昔から、ただ意味もなく歩き回っていたのかもしれない」と思った時、忠市の体は、深い穴に呑まれるようにしてすっと消えた。「生きる」ということの意味を探るため、弟と共に歩き始め、「自分がなにをしている」とも理解しなかった忠市は、自分が巡るあてのない場所を巡り歩いていたと理解した時、仏の胸の中に吸い込まれて行った。拒まれるのではなく、招かれることを素直に受け入れて、「会いたい人に会いたい」と思いながら、どことも知れぬ虚空に吸い込まれて行った。 修次は、暗い闇の中にいた自分の兄が、金色の仏と夜の中で出会ったのだと思った。そのように思いたかったー。
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