ローマ人の物語(37) の商品レビュー
1年間に何人も皇帝が暗殺されたり、乱立したり、北方の蛮族やペルシアから侵入を受けたりと、不幸な時代をなんとか収めた2人の皇帝。しかし、その過程でローマ帝国は変質してしまう。もはやローマ帝国ではないと言い切る研究者もいるようだ。たった1人のリーダーによって、大帝国が変質する。歴史も...
1年間に何人も皇帝が暗殺されたり、乱立したり、北方の蛮族やペルシアから侵入を受けたりと、不幸な時代をなんとか収めた2人の皇帝。しかし、その過程でローマ帝国は変質してしまう。もはやローマ帝国ではないと言い切る研究者もいるようだ。たった1人のリーダーによって、大帝国が変質する。歴史も変わり、中世が始まり、キリスト教が世界に広がっていく。この物語は、国の歴史ではなく「ローマ人」の物語であり、ローマ皇帝の物語であると再認識。
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コンスタンティヌスの先が知りたくて、あっという間に読み切ってしまった。コンスタンティヌスはローマ帝国を変えてしまった。それは教科書の中だけでも、感じることではあったが、あまりにも馴染みのないローマになってしまった。銀本位から金本位へ。ローマからコンスタンティノープルへ。多神教から...
コンスタンティヌスの先が知りたくて、あっという間に読み切ってしまった。コンスタンティヌスはローマ帝国を変えてしまった。それは教科書の中だけでも、感じることではあったが、あまりにも馴染みのないローマになってしまった。銀本位から金本位へ。ローマからコンスタンティノープルへ。多神教から一神教へ。いいとか悪いとかではなく、私の好きなローマではなくなっていくという感覚。学生時代、必死で覚えたミラノ勅令やニケーア公会議の意味がようやく分かり、それは世界史の中で、キリスト教社会の中で大きな出来事だよね、と納得。そして、キリスト教とは無縁ですと思ってきた自分の歴史観がいかにキリスト教からみた歴史だったのかと思う。 この巻のはじめに、どのように死んでいくのかを見守りながら看取る、と書いてあった。私もまさにそちら側だな、と思う。読むのはしんどいし、何やら悲しみもあるけれど、どのようにローマが滅亡していくのかをじっくりとみていこう。
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キリスト教を世界宗教にしたのはコンスタンティヌスだったんだな。 最初の中世人、コンスタンティヌスは優秀な政治家だと思うが、彼がしたことを端緒に能無しが単に生まれから、神からの指名から、貴族、司教になる中世、引いては現代の仕組みまでに続いている。彼がいなかったらまったく違う世界が今...
キリスト教を世界宗教にしたのはコンスタンティヌスだったんだな。 最初の中世人、コンスタンティヌスは優秀な政治家だと思うが、彼がしたことを端緒に能無しが単に生まれから、神からの指名から、貴族、司教になる中世、引いては現代の仕組みまでに続いている。彼がいなかったらまったく違う世界が今、あったのではないか。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ローマを捨てて新都に首都機能を移転してしまえば、それはもうローマ帝国ではないのではないだろうか。 元々ローマ帝国の皇帝は元老院と民衆の双方から認められなければ帝位に就くことはできなかった。 それを、神から与えられた権威であると皇帝の意味を書き換え、蛮族の侵攻から民を守るのも蛮族に蹂躙されてからじゃなければ動き出さず、生活に余裕の亡くなった人々は芸術的センスを失い、法律すら宗教(キリスト教)の前では無力になってしまった。 もはやローマ帝国の片りんなどどこにもないではないか。 ”キリスト教徒に認められたこの信教の完全な自由は、他の神を信仰する人にも同等に認められるのは言うまでもない。(中略)いかなる神でもいかなる宗教でも、その名誉と尊厳を損なうことは許されるべきではないと考えるからである。” 当初の目的は、よい。 だけど、どんどん価値の下がる銀貨で暮らしながら、金貨で税を治めなければならないような生活を強いられた庶民は、税金で優遇される上に生活費の面倒も見てくれるキリスト教に流れてゆく。 兵隊たちも、週に一度の安息日が保障されるキリスト教に流れてゆく。 きっかけは些細でも、その流れは誰にも止められなかった。 ましてや、皇帝の名を冠した新しい都にはキリスト教以外の宗教的建築物がたてられることはなかったのだから。 コンスタンティヌス自身はキリスト教徒であるかどうかはわかっていないらしい。 単に政治的にキリスト教徒を利用しただけなのかもしれない。 ”一神教の宗教とは、教祖の言行が最重要の教理になる。だがその教理は、解釈しその意味を解き明かす人を通すことによって、初めて一般の信者とつながってくる。これが、教理の存在しない多神教では専業の祭司や聖職者の階級は必要ないのに対して、一神教ではこの種の人々の存在が不可欠になってくる要因であった。” 神から皇帝というくらいを与えられたので、戴冠式や帝冠などが必要となる。 そして神と皇帝を結びつける司祭という存在はますます大きなものとなっていく。 寛容を国是としたローマ帝国が、非寛容のキリスト教に取り込まれるのは時間の問題だ。 もうこれでは暗黒の中世と同じだもの。 その他に私がコンスタンティヌスが嫌いな理由は、酷薄な性格。 不要となれば血のつながった息子を執拗な拷問の末に獄死させ、妻を熱湯風呂に閉じ込めて殺すことを辞さない。 身内を殺すというだけでも許せないのに、何もそこまで残酷な殺し方をする必要ないじゃない。 でもたぶん、好きで残酷な仕打ちをしたのではなく、ただ単に不要な家族に興味がなかったんじゃないかと思う。 最低。
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コンスタンティヌスとキリスト教の関係をメインに描いた巻。 もともと、多神教であったローマにおいて、一神教のキリスト教を保護することで、ローマ的なものが壊れていった。そのキリスト教も、心からの信仰の布教が成功した結果ではなく、コンスタンティヌスがキリスト教徒に与えた優遇策を目当てに...
コンスタンティヌスとキリスト教の関係をメインに描いた巻。 もともと、多神教であったローマにおいて、一神教のキリスト教を保護することで、ローマ的なものが壊れていった。そのキリスト教も、心からの信仰の布教が成功した結果ではなく、コンスタンティヌスがキリスト教徒に与えた優遇策を目当てに改宗者が増えた様子。 また、コンスタンティヌスがこれほどまでにキリスト教を保護した理由として、皇帝の世襲制を認めさせるために絶対的な神を必要としたため、という説が語られる。 最後、コンスタンティヌスはペルシャ征討の軍中、病に倒れ、その治世を終える。
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広大な帝国の支配域を長年に渡り維持していくためには、かなりの努力とそれなりのシステムが必要になりますが、紀元306年、帝国の最高の地位に就いたコンスタンティヌスは、この本のタイトルにあるように最後の努力をします。しかし、その国家の改造政策は「もはやローマではない」という表現になる...
広大な帝国の支配域を長年に渡り維持していくためには、かなりの努力とそれなりのシステムが必要になりますが、紀元306年、帝国の最高の地位に就いたコンスタンティヌスは、この本のタイトルにあるように最後の努力をします。しかし、その国家の改造政策は「もはやローマではない」という表現になる改造政策でした。 その中身は、500年も続いた共和政時代の元老院主導の役割を全廃し、皇帝主導にしました。元老院は実権を持たない名誉職となったのです。また、ローマの安全保障システムも変えました。国境線に勤務する兵士を農民のパートタイムの仕事にしてしまい、敵の襲来を絶対に阻止するという安全保障の考えを放棄することに繋がりました。そして、結果的にキリスト教の教会活動を振興する政策を取り、最高権力者の地位を安定させていくのでした。一神教のキリスト教の教え、神が絶対であることに着目し、その教えを人間に伝達する司教を味方につけたからです。 こうしてローマ帝国は変貌を遂げ、この後100年生き延びました。このことは「これほどまでしてローマ帝国は生き延びねばならなかったのであろうか」と後世の研究者に言わしめる事態でした。しかし、その変貌をしてもあの「パクス・ロマーナ」の時代はもどってこなかったというのですから、郷愁が漂います。
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それで今回の内容 「コンスタンティヌスは、ただ単に、多くのまじめなキリスト教徒たちの例に従ったまでなのであった。つまり、現世では、キリスト教の教えでは大罪に値すること確実な悪しき行為でもやらざるをえない以上、キリスト教徒になるための洗礼を、そのような行為はやろうにもやれないときま...
それで今回の内容 「コンスタンティヌスは、ただ単に、多くのまじめなキリスト教徒たちの例に従ったまでなのであった。つまり、現世では、キリスト教の教えでは大罪に値すること確実な悪しき行為でもやらざるをえない以上、キリスト教徒になるための洗礼を、そのような行為はやろうにもやれないときまで先延ばししたのである」(下巻P134より) 経済の良好であることを多くのひとが願ってもかなわないのに同じく 神の教えも創造したわれわれが全知全能でないゆえ その祈りに従うことはあり得ない
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帝国の絶対専制君主となり、キリスト教振興を図るコンスタンティヌス帝の治世を描く。 輝かしいローマ文明は、キリスト教と蛮族来襲のために、暗黒の中世に向かって転落していく。 作者も熱が入らなかったようで、物語は淡々と進む。 それでもなにげなく、 「中年の女の恋は、若い女のように夢...
帝国の絶対専制君主となり、キリスト教振興を図るコンスタンティヌス帝の治世を描く。 輝かしいローマ文明は、キリスト教と蛮族来襲のために、暗黒の中世に向かって転落していく。 作者も熱が入らなかったようで、物語は淡々と進む。 それでもなにげなく、 「中年の女の恋は、若い女のように夢からではなく、絶望から生まれるものなのである」(p55) こんな渋いことを語るので油断ならない。
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四頭政治後のConstantinus 帝の政策、おもにキリスト教に焦点をあてている。 Constantinus は大帝と敬称がつくとおりキリスト教徒側から見てみると歴史上、もっとも重要な人物の一人である。 彼はキリスト教を公認(ただし、国教とまではせず弾圧されていたキリスト教に...
四頭政治後のConstantinus 帝の政策、おもにキリスト教に焦点をあてている。 Constantinus は大帝と敬称がつくとおりキリスト教徒側から見てみると歴史上、もっとも重要な人物の一人である。 彼はキリスト教を公認(ただし、国教とまではせず弾圧されていたキリスト教についにてローマ帝国民に宗教の自由を与えた)し、その後にニケーア公会議にてアタナシウス派とアリウス派のどちらを正当とするかの論争に決着を付けた。この会議により、イエス・キリストの神と同一視できるという三位一体説が現在に至るまで正統とされている。 Constantinus がなぜ当時のキリスト教弾圧の政策を180度転換し、一転して容認するようになったのかは本書でも十分には語られていないし、今もあまりよくわかっていないそうだ。 彼はローマ帝国を再統一し、専制君主制の礎を作ったとされるが、正しくはローマ帝国を作り変えてしまったといっても正しいだろう。 彼以前は、主権はローマ帝国民にあったし皇帝といえど元老院の承認によって立法することができたが、彼の治世になっていよいよ立法は皇帝化の勅命という形になった。 後の王権神授説をも考慮すると、どうやら専制君主制というのはキリスト教と親和性が良いらしい。 これから150年後にローマ帝国は滅びることになる。 そろそもこのローマ人の物語も終わりに近づいてきている。
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