ナポレオン の商品レビュー
ウェリントンいわく、自分が500の兵を失えば議会の問責で蒼白になる。 ボナパルトは年平均50000の犠牲の責任を誰にも問われない。強いはずだ。 イギリス人が書いているので、当然のように辛口。だがそれがいい。 チェック機構(議会あるいは社団)、プロパガンダ、地理学教育という...
ウェリントンいわく、自分が500の兵を失えば議会の問責で蒼白になる。 ボナパルトは年平均50000の犠牲の責任を誰にも問われない。強いはずだ。 イギリス人が書いているので、当然のように辛口。だがそれがいい。 チェック機構(議会あるいは社団)、プロパガンダ、地理学教育という論点も好。 地図が読めるから勝てるのだ。イメージングの問題かな。
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コールリッジはマルタ島総督の事務官をしており、地政学の勉強をしていました。ジェーン・オースティンも愛読していたというパズリーの戦略論です。コールリッジはそのパズリーと親交をむすんでいます。個人の自由、国家の独立、そういった英国が価値をおいて大切にしてきたものをナポレオンは破壊する...
コールリッジはマルタ島総督の事務官をしており、地政学の勉強をしていました。ジェーン・オースティンも愛読していたというパズリーの戦略論です。コールリッジはそのパズリーと親交をむすんでいます。個人の自由、国家の独立、そういった英国が価値をおいて大切にしてきたものをナポレオンは破壊するのだ、とコールリッジは見抜き、モーニング・クロニクル紙で健筆を振るいます。ワーズワースは、スイスへ侵攻したナポレオンに激怒しました。スイスに素朴な農村風景の理想をみていたため、フランスの独裁者が赦せなかったのです。(ちなみにワーズワースは蝶をみると殺したといいます。フランス=バタフライという構図ができあがっていたらしいです…) 一方、キーツやシェリーなどは、ナポレオンをアレクサンドロス大王の再現だとうけとめ、ナイーブな夢をみていました。ナポレオンによる戦時プロパガンダの成功ともいえます。英国において、ナポレオン支持の動機としてありがちだったのは、内政批判のために利用するというものでした。たとえばチャールズ・ラムなどは、のちにジョージ四世となるリージェント公を嫌悪していたため、ナポレオンを立派な人物だととらえていたようです…。 いまのフランス人でも、ナポレオンがあのまま欧州を統一していればよかったと考えるものがいます。そんな考えを一蹴するのがポール・ジョンソンです。ナポレオンを溺愛する人にとっては不快でしょうが、ナポレオンにきびしい意見をもつ人にとって、この本は示唆に富みます。ちなみに解説を誰かが書いていますが、堂々と己の見識を開陳できない、臆病風に吹かれた作文となっています…。
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