1,800円以上の注文で送料無料

まぼろしの王都 の商品レビュー

3.2

8件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    2

  3. 3つ

    3

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2015/02/21

「200年前の回想記、あなたは信じますか? 」 バルセロナの画廊経営者、エミーリ・ロセルの手元に、かつてエブロ川河口のデルタ地帯に予定されていたカルロス三世の新都、サンカルラス建設にまつわる謎の回想記が届く。手記の著者は200年前その建設計画に携わった建築家、アンドレア・ロセッ...

「200年前の回想記、あなたは信じますか? 」 バルセロナの画廊経営者、エミーリ・ロセルの手元に、かつてエブロ川河口のデルタ地帯に予定されていたカルロス三世の新都、サンカルラス建設にまつわる謎の回想記が届く。手記の著者は200年前その建設計画に携わった建築家、アンドレア・ロセッリ。回想記にかかれた王都はなぜ幻に終わったのか?ロセルはこの歴史の彼方から投げかけられた謎を追うことになる。  本書は現代に生き回想記を手にしたロセルの語りと200年前の新都建設に関わったロセッリの手記が交互に書かれて進む。しかもこの二つは時空を超えて、かつてカルロス三世に招聘されマドリードにもその作品を遺し手記の中ではロセッリとも浅からぬ親交のあったことが語られているヴェネチアの画家・ティエポロの幻の名画をめぐって錯綜していく。  ロセルが謎の手記を手にしてから彼と関係のあった二人の女性、幼なじみの友人ジョナスの妻ソフィアとジョナスの妹アドリアナとの関係を語ってゆく件は、もたつきがあって正直なところ読みにくかった。しかし同時並行して語られる手記の作者ロセッリもカルロス三世の腹心で友人の建築家サバティー二の妻、チェチリーアと道ならぬ恋に落ちていたことが語られ、この辺りは過去と現在、二人の主人公の想いがリンクして書かれていたのかもしれない。結果的にソフィアにアドリアナ、さらには美貌の人妻・チェチーリア、3人の女性たちは本書の結末に関して大きな鍵をにぎることになるのだから。  回想記の登場人物は筆者・ロセッリを除けばほとんどが歴史上の人物なのだが、如何せん書いたロセッリ自身が実在したかどうかわからず、この話事実なの?それとも誰かの創作?常に疑いを持ちながら読み進めるためもたつき感のあった前半だが、後半三分の二を過ぎたあたりから、物語は一気に加速する。  やはりこのロセッリが実在したのか否かがポイントで、そこが解明してからの展開はあっ!と驚く結末まで、まるで霧がみるみる晴れて視界がくっきりしていくかのような爽快感がある。過去を手探りしていたところ掴んだものを引き出してみたら、それは別の次元で自分の求めていたものだった、そのたたみ方にもこのカタルーニャの新進気鋭の作家の気概を感じた。

Posted byブクログ

2014/08/19

小・中学生の頃は「おちゃめな双子」の作者シリーズや「秘密の花園」、「赤毛のアン」シリーズ等の外国文学を好んで読んでいた私だけれど、いつの頃からか、外国文学に苦手な作品が多いと感じるようになった。何故かと考えると、文章が思わせぶりだったり、修飾過多だったり、流麗だけれど意味不明だっ...

小・中学生の頃は「おちゃめな双子」の作者シリーズや「秘密の花園」、「赤毛のアン」シリーズ等の外国文学を好んで読んでいた私だけれど、いつの頃からか、外国文学に苦手な作品が多いと感じるようになった。何故かと考えると、文章が思わせぶりだったり、修飾過多だったり、流麗だけれど意味不明だったり…作者の自己顕示欲や自己満足が強すぎると感じることが多いからかもしれない。この作品にも、雰囲気だけで、私にはイマイチ作者が何を言いたいのか理解できない文章が散見された。同じ文化を共有する欧米人には理解ができるのだろうか? さておき。 サンカルロスという町で生まれ育った、父を知らない男。町には、18世紀に建設計画があり、結局未完のまま放置された都市の遺構があった。男は、小さい頃、そこで遊んで育った。大人になり、バルセロナで画廊を経営するようになった男の元に、ある日、その都市建設を任されていた18世紀の建築家の日記が送られてくる。日記を送ったのは誰か、その都市のどこかにあると思われる有名な画家の未発見作品は見つかるのか… 男の恋愛・血のつながり・友人関係や、18世紀の建築家の人生・仕事など、盛り込み過ぎて、主題がボヤけてしまった感じがした。最後も少し唐突というか…「だから何?」と思ってしまった。長く引っ張った末、カタルシスを感じさせないまま終わってしまった感じだった。

Posted byブクログ

2013/08/18

謎めいた雰囲気は好きだし、読み終わったときは「風の影」よりずっと好感をもてましたが、今一つしっくり来なかった感も。

Posted byブクログ

2013/04/10

建設されるはずだった都、名画家の幻の絵画、謎の人物から送られてきた回想記・・・心躍る材料がそろっていながらなかなか頁が進まなかった。華やかな美術ミステリーにも手に汗握るサスペンスにも仕立てられたはずが、焦点がぼけてしまった感じ。複数の女の間で揺れ動き何をしたいのかわからないエミー...

建設されるはずだった都、名画家の幻の絵画、謎の人物から送られてきた回想記・・・心躍る材料がそろっていながらなかなか頁が進まなかった。華やかな美術ミステリーにも手に汗握るサスペンスにも仕立てられたはずが、焦点がぼけてしまった感じ。複数の女の間で揺れ動き何をしたいのかわからないエミーリ・ロセル君、あなたが一番「みえない」人物でした。

Posted byブクログ

2012/02/15

主人公のことなかれ主義のような言動に苛々しながら、女性3人に揺れる気持ちと手記に引き込まれました。 主人公はとにかく流されます。人生に対して草食系なイメージ。 作品は外国文学なのでカタカナが多く発音が難しかったりと読み終わるまで時間がかかりましたが、4章辺りから引き込まれ読み耽り...

主人公のことなかれ主義のような言動に苛々しながら、女性3人に揺れる気持ちと手記に引き込まれました。 主人公はとにかく流されます。人生に対して草食系なイメージ。 作品は外国文学なのでカタカナが多く発音が難しかったりと読み終わるまで時間がかかりましたが、4章辺りから引き込まれ読み耽りました。 主人公に個性がない分、つまらないと感じる人もいるかと思いますが私には読みやすかったです。 個人的には大好きな作品ですね。

Posted byブクログ

2022/09/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

表紙カバーの絵に誘われて手を出したのだが、巻末の著者紹介を読んで、これはどうかな、と思った。というのも、以前読んだ『風の影』という本の編集者だったと書かれていたからだ。『風の影』は一般的には評判も高かったのだが、読んでみるとそれほどでもなかった。というより、がっかりした。あの本の編集者だったら、同じ傾向のものかもしれない。そう用心して読みはじめたのだが…。 結果的には、予想は半ば的中していた。スペインの歴史を背景にしつつ謎解き興味で引っぱっていく傾向がよく似ていた。半ばというのは、『風の影』よりは読みごたえがあったからだ。とはいっても、これだけの素材を使って料理した作品としては味わいに欠ける憾みがある。特に人物に精彩がない。作者が操る影絵の人形のようで、何を食べてどんな酒を飲んでいるのかさっぱり浮かんでこない。 18世紀の建築家の視点で語られるカルロス五世が計画した都市建設にまつわる物語と、現代の画廊経営者が巻き込まれた女性関係のトラブルが、交互に語られるという構成。歴史的事実をもとに、結局は作られることのなかった「まぼろしの王都」建設のために、ナポリからヴェネチア、そしてサンクト・ペテルブルグへと遍歴する建築家の話はかなり造り込まれていて、それなりに読ませる。 問題は、その建築家の手記と思われる『見えないまちの回想記』という原稿を送りつけられた画廊経営者の話の方だ。イタリア語で書かれているらしいが、独りで読み続けているところから見れば主人公はイタリア語に堪能なはず。それなのに、いくら分厚い書類の束だとしても読み終わるのに何日かかるというのだろう。ティエポロの手になる幻の作品の手がかりが隠されているというのに。普通なら徹夜してでも読むところだ。こういう構成のゆるさが『風の影』に共通する弱点である。 海外旅行が趣味で、ヴェネチア、ナポリ、サンクト・ペテルブルグを訪れた経験があり、ルネサンス・ロココあたりの美術や建築に興味のある人なら、それなりに楽しめるかもしれない。

Posted byブクログ

2010/03/07

3月5日読了 まぼろしの王都』 エミーリ・ロサーレス著 木村裕美訳 2009年8月初版 原題『La ciutat invisible』 2005年初版 帯によると「カタルーニャ文学新世代による大傑作」、ということでカタランで書かれた本。 原題はイタロ・カルヴィーノの『(マルコ・...

3月5日読了 まぼろしの王都』 エミーリ・ロサーレス著 木村裕美訳 2009年8月初版 原題『La ciutat invisible』 2005年初版 帯によると「カタルーニャ文学新世代による大傑作」、ということでカタランで書かれた本。 原題はイタロ・カルヴィーノの『(マルコ・ポーロの)見えない都市』とよく似ていて、こちらの原題は『Le città invisibili』。単数形と複数形の違いだけ。 なので、訳者は「見えない」という言葉がかぶらないように邦題をつけるのに苦労したと思われます。 っていうか、本の中では「見えない」連発してるし。 「まぼろしの」という言葉だと現実には存在しない感じで、「見えない」だと実際にはそこにあるものが認識できない感じ。 受ける印象にかなりの落差があるんですが、本の中で意図されているのは「存在を実感するのに目では確認できない」都市なので、やっぱり「見えない」のほうがしっくりくる。 というわけで、読み終えて改めて題名を見ると一瞬「?」となります。 内容は、現代のバルセロナで生きる画廊経営者と、彼が手記を読んでいる18世紀のイタリア人建築家の人生がリンクしていく話。 よくあるパターンのひとつではあるんですが、このパターンで書かれた本はある程度以上の面白さを保障してくれると思います。 詳細がきっちり決まっていないと書けないし、現代とは違う時代設定で人物の生活をリアルに書かなくてはならないので、アズフィーリング☆で書く作家には難しいやり方だから。当たり外れが少ないんじゃないでしょうか。 でもその分、終わり方が難しい。 最初はまったく別々に動いていた二人の人物に、どんどん関連性が見えてくるのが見どころ。けれど人物Bの行動/人生は、人物Aが読んでいる物語が終わると同時に終わってしまい、また同時に人物Aと人物Bの関連も、そこで突然無くなってしまう。本の中盤以降、謎が謎を呼ぶ感じで加速度的に面白くなり、本の締めに向けて期待が高まっていくのに、大抵人物Bの物語は一足先に終わっていて、人物Aが一人で最後を締めることに。 で、この締め部分が、期待に比して盛り上がらないことがほとんど。 もうこれは、構成上仕方ないとあきらめるしかない感じ。 「まぼろしの王都」も、最後のちょっとしたがっかり感(意外とフツー、みたいな)を含めてパターンをきっちり踏襲しています。 でも最後の最後の章までは、十分に楽しめるんじゃないかと。 18世紀のナポリ、ヴェネツィア、マドリッド、サンクトペテルブルグの描写はとてもいきいきして面白いし、重要な登場人物の一人が画家のジャンバッティスタ・ティエポロなので、ティエポロファンだと楽しさ2割増しくらいじゃないでしょうか。18世紀の、啓蒙君主がはやった時代の熱気が伝わってくるのも、とってもいい感じ。 主人公エミーリの頭に残る「見えないまち」はロマンチックですが、現代人の主人公よりも物語の中の主人公のほうが魅力的なのも典型的なパターンかも。 ま、このふたり性格的にはそっくりなんですが。 まあ作者がこういう、行動よりも頭の中が先行する人なんでしょう。 作者のエミーリ・ロサーレスは、物語の舞台になった街サンカルラス・ダ・ラ・ラピタの出身。主人公のエミーリ・ロセルは作者とほぼ同じ名前なので、いわゆる自伝的小説なのかな。 あと、最初本を買ったときは、「エミーリ」って女性の名前かと思ってました。読みはじめてびっくりです

Posted byブクログ

2011/10/11

河出書房新社のもうすぐ出る本で見かけてきになったので、図書館に入ったので借りてきました。現代のバルセロナやマドリード、フィレンツェそして200年前のヴェネチア、サンクトぺテルスブルク。まぼろしの絵画をめぐってそれらが交錯する物語。バルセロナに行きたくなってしまう!

Posted byブクログ