無限を読みとく数学入門 の商品レビュー
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2009年刊。著者は帝京大学准教授(理学部数学科卒の経済学博士)。大・多だけでなく、無限小(これは連続にも繋がる)も包含する「無限」概念。これに関して、古代ギリシャのユークリッド、アキレスと亀の挿話から、デギギント(デギギント切断)、カントール(無限集合論)、不完全性定理等、無限に挑みながら、その征服に成功しても更なる矛盾が見つかり、どんどん迷宮に嵌まり込んでいく。この数学者のもがく様、そして「無限」の持つ不可思議さと深遠さを垣間見させる良書。本書は、フィクションや経済学(特にケインズ)も素材にする。 このような多方面からの解説は、簡明な文体と相まって(厳密でないと断りを挿入するのが心憎いが)、読みやすい一書であった。
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非常に面白かった。 一見無味乾燥に思える数学の概念だが、そこには非常に豊かな世界があるということ気づかさせてくれる。 無限の問題を考えるきっかけとしてゼノンのパラドックスからはじまり(アキレスが亀に追いつくためには無限和が有限値に収束する必要がある:完備な世界)、アキレスは亀...
非常に面白かった。 一見無味乾燥に思える数学の概念だが、そこには非常に豊かな世界があるということ気づかさせてくれる。 無限の問題を考えるきっかけとしてゼノンのパラドックスからはじまり(アキレスが亀に追いつくためには無限和が有限値に収束する必要がある:完備な世界)、アキレスは亀に追いつけない世界があってよいという。 そして無限という題材を考えるにあたり外せないのがカントールが提出した集合の考え方からのアプローチである。ここの概念も非常にわかりやすく解説してくれる。はじめは無限の大きさ(濃度)はどれも同じであろうとカントール自身も考えていたのに研究を進めていくとどうやら無限の濃度にも差異がありそうだとなり、その結果に疑心暗鬼になりながら概念の開拓が進んでいったということも興味深い。 そして、その話の流れのまま、ゲーデルの完全性定理/不完全性定理まで突っ走っていく。 最後の小説も数学の概念にイメージを与えるという意味で納得。それぞれの章の世界はN,Z,Q,この世界,V(自然数、整数、有理数、、)というところがまた 高校生ぐらいの若い頃にこの本に出会っていれば数学への取り組み方も変わっていたかも。
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数学の中でも難解な無限についての本。小中学生の間に当たり前なこととして習ってしまう内容もふと考え始めれば無限ループに陥ってしまう。過去の偉人のエピソードも加えながら解説していく。正直用語等も数学に慣れていないと厳しいものもあり、説明に妥協がないだけに読んでいて疲れた。
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筆者の言葉で語っているため、ゼノンのパラドックスのようなよくあるテーマであっても、それぞれ何らかの発見は得られる。 ただ、第3章のカントール出現以降はさすがに厳しい。 4章の小説は申し訳ないが端にも棒にも引っかからない。
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無限をテーマに進んでいく本書。 前半は数学のわかりやすい解説。後半は無限をキーとした数学の小説。 後半の小説は少しわかりにくいところもあったが、楽しめた。
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「無限」と「連続」は、古来から探求されてきたテーマだ。 バートランド・ラッセルは次のように言ったという。 「ゼノンは3つの問題に関心を持っていた。無限小、無限大、そして連続、この3つである。ゼノンの時代から今日にいたるまで、それぞれ時代の最高の頭脳がかわるがわるこの問題と取り組ん...
「無限」と「連続」は、古来から探求されてきたテーマだ。 バートランド・ラッセルは次のように言ったという。 「ゼノンは3つの問題に関心を持っていた。無限小、無限大、そして連続、この3つである。ゼノンの時代から今日にいたるまで、それぞれ時代の最高の頭脳がかわるがわるこの問題と取り組んだが、おおよそのところ何一つ成果を上げることができなかった。しかし、ワイエルシュトラス、デデキント、およびカントールがこれらの問題を完全に解いたのである」 経済学者としての知識も詰め込みながら、そして自作の小説も織り込みながら、「無限」というテーマについて縦横無尽に書かれているのが本書。 著者の博識にも驚かされる。 読み応えのある一冊。
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無限という概念を軸に数学史から文学・哲学・経済学の関わりまで縦横に論考してめくるめく世界観を提示している 末尾の数学小説も侮れない 素晴らしい頭脳だ 脱帽
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走ることでもっとも遅いものですらもっとも速いものによって決して追いつかれないであろう。なぜなら、追うものは追いつく以前に逃げるものが走り始めた点につかねば鳴らず、したがって、より遅いものは常にいくらずつ先んじていなければならないからである。 労働者と消費者は同一の存在である、彼ら...
走ることでもっとも遅いものですらもっとも速いものによって決して追いつかれないであろう。なぜなら、追うものは追いつく以前に逃げるものが走り始めた点につかねば鳴らず、したがって、より遅いものは常にいくらずつ先んじていなければならないからである。 労働者と消費者は同一の存在である、彼らの二重の役割を担っている。 時間は古くから哲学者を魅了し、しかしいまだに解決を許さない難題だ。私たちは常に時間の流れの中に身をおき、考えるという行為さえ、その流れの中で行われるので、時間についての分析を行うときはどうしても自家撞着に陥ってしまう。
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