1,800円以上の注文で送料無料

銃口(下) の商品レビュー

3.7

8件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    4

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/08/11

治安維持法による数ヶ月の拘束。釈放後の保護監察による監視、赤紙による召集により満州関東軍へ、軍隊内の暴力、敗戦と帰国など、暗い展開のなか、主人公の周りには、人の心を持った善人が多くいる。 ストーリー展開されるので、大戦の年譜が頭に入りやすい。 1941.12真珠湾 1942夏くら...

治安維持法による数ヶ月の拘束。釈放後の保護監察による監視、赤紙による召集により満州関東軍へ、軍隊内の暴力、敗戦と帰国など、暗い展開のなか、主人公の周りには、人の心を持った善人が多くいる。 ストーリー展開されるので、大戦の年譜が頭に入りやすい。 1941.12真珠湾 1942夏くらいから、敗戦続き 1945.8原発2発で、敗戦。 配色濃厚の状態から、よく3年も戦争を継続したと思った。。

Posted byブクログ

2023/02/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

下巻は話が上手く出来過ぎて拍子抜け。 もっと悲惨な状況に陥りながらも、何とか立ち直ってハッピーエンドが良かったのかな。 たとえば↓みたいな展開… 坂部先生が取調べ中に獄死したのを知り、竜太は精神を患う。 拷問にも全く反応せず、かと言って二人も殺すのは流石に特高も躊躇し、仕方なく保釈。 帰宅後は芳子や家族の懸命な献身で何とか立ち直るも、それを見越したかのように徴兵。 軍隊でも上官からの執拗なイジメで、これまた精神的に参ってしまうが、軍に出入りする中国人に助けてもらい、脱走して匿ってもらう。 そして、中国人街でみた日本軍の狼藉振りに憤慨し、義勇軍に参加することに。 義勇軍では、日本軍の内部を知る竜太は活躍し、益々重要な役割を担わされ、その過程で、朝鮮人の隊長と知り合うが、世間話をするうちに彼が金俊明であることが判る。 終戦後、竜太は「日本には帰れない身分だ」と帰国をためらうが、金俊明から「お父さんと美千代さんに元気で暮らしていることを伝えて欲しい」と請われ、ひっそりと帰国を果たす。 旭川では案の定、両親は脱走兵の親として蔑まれ、店をたたみ、ひもじい借家住まいをしていた。 しかし竜太と芳子は、昔の同僚や、教会の人々の助けで両親を救い、自身の名誉も回復し再スタートをすることに…

Posted byブクログ

2020/08/07

大正天皇の御大葬から昭和天皇の御大葬まで、昭和史のような時代を背景に生い立ち、教師として生きていく主人公「北森竜太」を描く。 裕福な家庭に生まれた素直な少年の彼が、小学校時の受け持ちの先生の影響を受けて教師となる。 天皇のご真影を拝する学校教育に何の疑問も感じず、その時代の...

大正天皇の御大葬から昭和天皇の御大葬まで、昭和史のような時代を背景に生い立ち、教師として生きていく主人公「北森竜太」を描く。 裕福な家庭に生まれた素直な少年の彼が、小学校時の受け持ちの先生の影響を受けて教師となる。 天皇のご真影を拝する学校教育に何の疑問も感じず、その時代のごく普通の教師であった。 しかし、情熱を持ってした綴り方指導が言論統制の当局の目にとまってしまった。 治安維持法で勾留され、教師をやめさせられ、教師なら免除になって逃れていた軍隊への召集もかけられ戦争に参加しなければならず、さまざまな苦難を味わうことになるのである。 ストーリーは太平洋戦争のあとさきに限られており、戦後の教師はどうだったかというテーマもあれば昭和をたどったことになろうが、そこまでは筆が及ばなかったようである。 だから教師の昭和史と言うより、国策により権力を持った憲兵が、自分の保身のためどんな風に悪知恵を働かせ罪を作って個人にかぶせ翻弄させられるか、さすが三浦綾子さんの筆運び、迫真に描かれてあり、読後すごく怒りを覚えさせられた。 思えば状況は今も同じようである。 実際検事局が状況証拠を捏造したりするのをまのあたりにしたのだもの、油断ならない、怖ろしい。

Posted byブクログ

2015/04/11

小説「銃口」は、小学館「本の窓」誌1990年1月号から1993年8月号まで37回にわたって連載された。取材を開始した時期から数えると4年の歳月を要したことになる。非常に長い小説を書き終えたという思いと共に、なぜか本当に終わったという気がしない。 当初、編集者の真杉章氏から「昭和を...

小説「銃口」は、小学館「本の窓」誌1990年1月号から1993年8月号まで37回にわたって連載された。取材を開始した時期から数えると4年の歳月を要したことになる。非常に長い小説を書き終えたという思いと共に、なぜか本当に終わったという気がしない。 当初、編集者の真杉章氏から「昭和を背景に神と人間を書いて欲しい」との新連載のテーマを提示されたのであるが、昭和の年代全般に亘ることは到底できなかった。戦時を重点に、最後は昭和天皇大葬の日をもって形を整えるにとどまった。やはりもっと書かねばならなかったという思いが残る。(412P) 三浦綾子は「あとがき」でそう述べている。どんなに手を尽くした看病をして親族が亡くなってもあとには後悔が必ず残るように、我が子同然の作品を書き終えた直後には、書き切らなかったことが見えて仕方ないのだろう。しかし、それはまさに仕方ないことである。 私は当初「綴方教育に情熱を注いでいた教師が、不当に治安維持法で逮捕されて、不屈に頑張る話」だと勝手にこの長編小説の内容を予想していた。ところが、下巻に至ると物語は予想外に満州戦線での話に移る。 上巻でも下巻でも、主人公の他に必ず良心的な人間(ほとんどはキリスト信者ではない)が登場する。主人公はむしろ彼らに学びながら成長する物語の語り手のような存在であった。 戦争という「人類の最大の罪」とも言うような事態の中で、本来「善き者」「であるべき」人間の取る行動は、どのようなものだったのか。政治の動く中枢から遠く離れた旭川と満州が舞台の、普通の人間たちの物語である。 普通の人間たちの様々な「選択」が、ここに描かれている。 「どうしたらよいかまよった時は、自分の損になる方を選ぶとよい」 そのように云う坂部先生は、一つの理想像である。理想像は非業の死を遂げる。 もっとも象徴的なエピソードは、帰還の汽車を待つときに出会った焼け出された子どもと竜太の話だろう。貴重なおにぎりを分け合うべきか竜太は躊躇する。あれをどう取るか、でこの小説の感想は様々に分岐するだろう。 2015年3月27日読了

Posted byブクログ

2012/12/15

国のかたちはその時代の法律で簡単に変わってしまって、思想や生き方が国家に不都合という理由だけで投獄され、拷問を受ける。その失意も醒めないうちに戦争に駆り出され、さらに理不尽な世界を目の当たりにする。 それはほんの70年前、この国で起きていたこと。何を大切に生きるべきか。辛い体験...

国のかたちはその時代の法律で簡単に変わってしまって、思想や生き方が国家に不都合という理由だけで投獄され、拷問を受ける。その失意も醒めないうちに戦争に駆り出され、さらに理不尽な世界を目の当たりにする。 それはほんの70年前、この国で起きていたこと。何を大切に生きるべきか。辛い体験と、尊敬すべき人たちとの交流を通して、小学校教師の若者がたどり着いた結論。それこそが、悲惨な戦争でこの国が学んだ教訓だったのではないか。忘れてはいけないことがある。

Posted byブクログ

2012/07/02

治安維持法違反の容疑で勾留された竜太。釈放されても辛い日々が続く。芳子とやっと結婚できるという時に、戦争に召集される。過酷な軍隊生活。

Posted byブクログ

2011/05/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

戦中、旭川の質屋の長男として生まれた、主人公。 質屋という商売だったが、人情にあふれる恵まれた環境で育つ。 戦中の理不尽な天皇崇拝の教育で、唯一の小学校の時の担任だった恩師は 納得できる思想・生き方、何が大事か?を教えられ、 主人公は憧れて教師を目指す。 とは言え、主人公は戦時教育に反していたわけではなく、 根本には天皇を崇拝する心は、多くの当時の国民と同じように持っていた。 まっすぐな心そのまま、教師になったが、 思想統制の波にかかり、どん底に落ちていく。 当時の思想統制の怖さと、今の自由さを実感させられ、 本当に今に生まれてよかったと思います。 主人公は当時の数ある事件の一人の話に過ぎず、 同じ境遇の、またそれ以上に不幸な目にあった人が たくさんいるとなると、本当に暗い時代です。 そんな中でも主人公とその恩師は 差別のない人としての生き方を通していきます。 確かにこんな先生は今の時代でもいないと思います。 人を差別するには理由があり、止むをえないこともあると思います。 しかし、理由のない差別や、理由にならない差別もたくさんあります。 それが横行していた時代。人間の理性とは本当に怖いものです。 後半は軍隊に配属され、その中でもまた、 当時の思想の中でも、たくさんの種類の人間がいたことがわかります。 日本がした酷いこと、された酷いこと。 どっちも鮮明に書かれている部分があります。 とても辛い話なのに、人間はまだ戦争してると思うと、 とても悲しいことです。 思想は制限できない。というのも理解できる内容。 この話は子供と子持ちの親に読んで欲しいと思った。 生き方の本質というか、子供に教えることが、目先のことばかりに ならないようにしたい、と思えるから。 新年一発目から戦争ものでした。 上下巻で内容もさることながら、ページ数もヘビーです。

Posted byブクログ

2010/09/05

読みやすい文章で、戦前から戦後まで主人公の人生をたどりながら、さまざまな出来事を知ることができます。どんな状況であっても、自分の信念を曲げない生き方は自分を救う結果になるのだ。

Posted byブクログ