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殉死 新装版 の商品レビュー

3.5

53件のお客様レビュー

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覚えがき?

長編1作品収録。 本文より、「以下、筆者はこの書きものを、小説として書くのではなく小説以前の、いわば自分自身の思考をたしかめるといったふうの、そういうつもりで書く。(中略)筆者自身のための覚えがきとして、受けとってもらえればありがたい。」とある。 個人的意見として言わせてもら...

長編1作品収録。 本文より、「以下、筆者はこの書きものを、小説として書くのではなく小説以前の、いわば自分自身の思考をたしかめるといったふうの、そういうつもりで書く。(中略)筆者自身のための覚えがきとして、受けとってもらえればありがたい。」とある。 個人的意見として言わせてもらえれば、「そんなものを出版するな。」と、思ってしまう。 これでは事実なのか作り物なのか分からない。 まあ司馬作品は中期以降、そういった形式の小説が多く有るので、ファンの人は気にならないのかもしれないけれど、個人的には違和感が拭えませんでした。

長束

2021/11/21

自身が思う美と忠誠を生涯にわたって体現した乃木希典。ひとつひとつの挙動からクライマックスの切腹に至るまで、全てが美しく思えてくる。死を前提とした武士道、己の信じた善を(成否を案ずることなく)実行する陽明学に通ずる部分があるという。 彼の陰鬱さや滑稽さ、間の悪さもひっくるめて、明...

自身が思う美と忠誠を生涯にわたって体現した乃木希典。ひとつひとつの挙動からクライマックスの切腹に至るまで、全てが美しく思えてくる。死を前提とした武士道、己の信じた善を(成否を案ずることなく)実行する陽明学に通ずる部分があるという。 彼の陰鬱さや滑稽さ、間の悪さもひっくるめて、明治帝や児玉源太郎がそうだったように我々もいつのまにか魅了され心を揺さぶられる。『どこかひとの庇護意識を刺激する』という表現がまさにぴったり。 中盤、日露戦争における旅順攻略のあたりは坂の上の雲で読んだ内容で中ダレしたけれども、司馬遼太郎の眼鏡を通して見た乃木希典とその周辺はとてもドラマチックで一気に惹きつけられた。 お七、妻静子は最期に何を考えたんだろう。ひとは15分間で覚悟を決められるものなのだろうか。または乃木希典という人物が静子の心も動かしたのか。いやはや自分にはそこまでスピる自信がないな…。

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2024/05/10
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※このレビューにはネタバレを含みます

坂の上の雲の内容を見れば、大体この本の方向性は見当がつくことと思う。 筆者が「自分の思考を確認するために著した」という本。 乃木希典を好んでいたとは思えない司馬氏の目を通した 『史実』であることに変わりはなく これが真実乃木希典であったかと言えばなんとも言えないところ。 最期の時を前にし、静子夫人の胸中はいかばかりであったか。 後味が良いとは言えない話である。

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2021/02/21

司馬さんは、乃木ファンではない。 では、何故この作品を書いたのか? 確かに乃木希典の精神主義は、その後の日本陸軍に負の影響を与えた。 だが日本男児には、生まれ持った武士道精神が宿っていて何故かこの愚将乃木希典に惹かれてしまうのかもしれない。 奥さんには、同情しますが…。

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2020/12/24
  • ネタバレ

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p.195 かれのみはその前時代人の美的精神をかたくなに守り、化石のように存在させつづけた。 坂の上の雲でもそうですが、司馬遼太郎は乃木希典がよっぽど嫌いだったのかな。

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2020/12/18

陽明思想とナルシスティズムに凝り固まった軍人で、自分の友達や仲間にはしたくないと思った。 だけど少し自分に似ているところもあった。 同族嫌悪…?

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2020/05/24

児玉源太郎によれば軍人の頭脳は柔軟でなければならず、新しい現象に対して幼児のように新鮮な目を持たねばならない 将器というのは教育によるものではなく、ついにはうまれついての才能によるものであろうか 軍人というのはいったん腰をすえた作戦観念や地理的場所から容易に抜けだすことができない...

児玉源太郎によれば軍人の頭脳は柔軟でなければならず、新しい現象に対して幼児のように新鮮な目を持たねばならない 将器というのは教育によるものではなく、ついにはうまれついての才能によるものであろうか 軍人というのはいったん腰をすえた作戦観念や地理的場所から容易に抜けだすことができない職業人 ↑ 私は、児玉源太郎将軍が好きです。

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2020/04/29

乃木の理想主義。形式主義。そして無能。その無能さにもなかなか自分で気付いていない。悲劇。 その空っぽさは、空っぽさゆえに人が讃える。美しいものを正義としてしまうのだ、われわれ、民衆は。そこに中身がない分、どこまでも清らかな人に見えてしまうのだ。この日本人の感性は、どうにかならない...

乃木の理想主義。形式主義。そして無能。その無能さにもなかなか自分で気付いていない。悲劇。 その空っぽさは、空っぽさゆえに人が讃える。美しいものを正義としてしまうのだ、われわれ、民衆は。そこに中身がない分、どこまでも清らかな人に見えてしまうのだ。この日本人の感性は、どうにかならないものだろうか? 理性的ではないよなあ。 西郷は理想主義であるが、形式には拘らず、現実を伴ったものであった。だが、清廉なもの、人格に人は寄ってくるという点では同じ。どちらも悲劇だし、いまだにその幻想を抱く日本人も現在進行形の悲劇だ。

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2020/02/24
  • ネタバレ

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作者が乃木希典を題材にここまでの長編を書くからには興味をそそる要素があったからであって、それはやはり明治天皇の後追い自死があったからであり、しかも妻も含めてとなるとその人間性を詳しく探求したくなったのでしょう。 第一部は「坂の上の雲」でも詳細に描かれた旅順攻略を中心とした、司令官として害をなすほどの極まる無能さで、作者も憤りを隠さず描いており、読み手にもその悪手に憤りを感じる。犠牲になった当時の兵員達のことを思うと悲痛です。 第二部は割腹自殺にいたる動機を作者の想像を交えて描かれる。昭和初期の人物、山鹿素行を崇拝し、その図書「中朝事実」を将来の昭和天皇に強要するほどの熱の入れよう、それはやはり異常に偏った考えであり、儒教に傾倒した極めて純粋な、軍人としては最悪の志向の主となった故、という掘り下げに納得感がある。 終盤の切腹シーンは妻、静子の心理も含めとても詳細に語られているが、とても尋常ではなく、心を揺り動かされる。その自殺を世界は驚嘆とともに評価されていることも驚きで、アメリカ軍での模範とされているのもある意味アブナイ話ではある。 自死の朝の写真の不可解さにも一層興味をそそられる。

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2019/12/07

「殉死」司馬遼太郎。2019年1月に読了。 「殉死」を読むのは少なくとも三度目だったはず。 何度読んでも、面白く読めるのだけど、印象が淡い。ルポルタージュな趣のある、司馬遼太郎的なブンガク。 乃木希典についての、考察、エッセイ、そして小説。というとても薄い本。 このときに、なん...

「殉死」司馬遼太郎。2019年1月に読了。 「殉死」を読むのは少なくとも三度目だったはず。 何度読んでも、面白く読めるのだけど、印象が淡い。ルポルタージュな趣のある、司馬遼太郎的なブンガク。 乃木希典についての、考察、エッセイ、そして小説。というとても薄い本。 このときに、なんで読んだのか、そのときの自分の気持ちを覚えていませんが、きっとまたその内に読むでしょう。司馬遼太郎のいちばんワクワクする本では無いかもですが、いちばん不思議で気になる一冊かも知れません。

Posted byブクログ