聞き屋与平 の商品レビュー
薬種屋のご隠居、与平が始めた『聞きや』という商売。身内や友達より、他人の方が話しやすい、というのは何となくわかる。 自分の事を全く知らないから詮索されることもなくて楽だ。 与平に語りかける様々な人達の話と、与平の家族のゴタゴタ。癖の強い客に対してもトラブルに巻き込まれても常に鷹揚...
薬種屋のご隠居、与平が始めた『聞きや』という商売。身内や友達より、他人の方が話しやすい、というのは何となくわかる。 自分の事を全く知らないから詮索されることもなくて楽だ。 与平に語りかける様々な人達の話と、与平の家族のゴタゴタ。癖の強い客に対してもトラブルに巻き込まれても常に鷹揚に対応する与平に人としての器の大きさを感じるがそんな与平には誰にも明かせない秘密があった。本当に心の内を誰かに聞いて欲しかったのは、与平自身だったのではないだろうか。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
話し上手はよく聞きますが、聞き上手はあまり聞きません。そして、人間、ある年齢に達すると「聞く人」と「聞かない人」に分かれると。岸田総理ではありませんがw、聞くということは大事ですね。宇江佐真理「聞き屋与平」、2009.7発行。聞き屋与平、どくだみ、雑踏、開運大勝利丸、とんとんとん、夜半の霜 の連作6話。読み応えがありました。この世には毒にも薬にもならないことが時には必要。はい、最近、無駄話、長電話の効用、なんとなくw。生きていくためには苦労がつきもの。不思議なことに誰でも自分ほど苦労した者はいないと思いたがる。はい、そんな傾向、確かに(^-^)
Posted by
大好きな宇江佐真理さんの作品。 生薬の問屋を営む与平は、息子たちに身上を譲り隠居となった。いつまでも口を出していては一人前にならない。 湯屋で、身の上話を耳にするたび、こうして聞いてくれる人がいる人はいいが、誰もいない人はどうしているのだろう? 「聞き屋」を始めようと店の裏口...
大好きな宇江佐真理さんの作品。 生薬の問屋を営む与平は、息子たちに身上を譲り隠居となった。いつまでも口を出していては一人前にならない。 湯屋で、身の上話を耳にするたび、こうして聞いてくれる人がいる人はいいが、誰もいない人はどうしているのだろう? 「聞き屋」を始めようと店の裏口に机を出して商売が終わった時間から始めることにした。 与平はこの聞き屋で知った貧しい娘を救ってやろうとしたり、また、ただ聞くことで心を休ませる場所にした。 与平の父親は、生薬や問屋の番頭だった。 その店の一人息子はどうしようもない男で、店を潰しそうな浪費家だった。 ある時火事に巻き込まれ死んでしまった。 与平は他の薬屋で手代をしていたが、店の後始末をして看板だけもらった父親の手伝いをして店を大きくした。 その火事のことで地元の岡っ引きにしつこく見殺しにしたのではないか?と言い寄られている。 そんな岡っ引きも死に、、、。 この作家さんの物語は眼に見えるような江戸情緒と、しっとりと貫かれた登場人物の心模様の緻密さリアルさが身上。 まるでそこに自分が立っていたのではないか?と思えるほどの作風。 2度目の読書だが、今回も大満足だった。
Posted by
Lampのマスター、岩さんからオススメされた短編連作集です。最初の「聞き屋 与平」を読み終わったところですが、とても面白く一気に江戸・両国界隈に引きずり込まれました。最後まで読み終わったら、コメントを足すことにします。 (2020/10/04) 読み終わりました。なんて素敵な物...
Lampのマスター、岩さんからオススメされた短編連作集です。最初の「聞き屋 与平」を読み終わったところですが、とても面白く一気に江戸・両国界隈に引きずり込まれました。最後まで読み終わったら、コメントを足すことにします。 (2020/10/04) 読み終わりました。なんて素敵な物語だろう!ネタバレはしませんが、このお話がシリーズものでないのが残念です。与平さんの聞き屋に僕もお話を聞いてもらいたい気がしました。 (2020/10/19)
Posted by
三人の息子はそれぞれ商売も順調で、家族にも孫にも恵まれている与平が主人公。 そんな与平が、本人曰く「毒にも薬にもならない」、人の話をただ聞くだけという聞き屋なるものを始めた。 終盤になって、そうせざるを得ない与平の過去が明らかになるというミステリー性も加味された心温まる時代小説。...
三人の息子はそれぞれ商売も順調で、家族にも孫にも恵まれている与平が主人公。 そんな与平が、本人曰く「毒にも薬にもならない」、人の話をただ聞くだけという聞き屋なるものを始めた。 終盤になって、そうせざるを得ない与平の過去が明らかになるというミステリー性も加味された心温まる時代小説。 江戸情緒たっぷりなこのような小説も、新作はもう望めない。合掌。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
黙って客の話を聞く。 ただ聞くだけで助言は一切しない。 日頃他人には言えず心にためているあれやこれやを、聞いてもらうことで頑なな心をほぐしてくれる。 江戸の繁華街・両国広小路で「聞き屋」をしている与平の連作短編。 時代が違えど人の悩みは相も変わらず尽きることはない。 仕事や旦那、姑、浮気、先行きについての愚痴や不安を、あらゆる世代の男女が与平を前に語る。 この職業は現代にも通用するはず。 自分の話を黙って聞いて、時々合いの手を入れつつ頷いてくれるだけで嫌なことも吹き飛びそう。 これもひとえに、自分の考えを押し付けることなく、適度な距離感を保って客と接する与平の聞き上手な人柄によるもの。 私の周りにも与平みたいな聞き上手いないかな。 読み終えた後、人の優しさ温かさがゆっくり染み込んでくる物語だった。 解説が木内昇さんとは、これまた嬉しさ倍増の一冊。
Posted by
宇江佐真理氏の本は、ホンワカの江戸時代の下町人情物語も多い中、この本は、連作短編のなのに、先代からの火事の事故からの発端が、底辺に流れている。 薬種屋『仁寿堂』の十代目の主 与平が、隠居して、聞き屋という仕事(?)をし始める。 人の話を聞くだけで、占うわけでもなく、口をはさむこ...
宇江佐真理氏の本は、ホンワカの江戸時代の下町人情物語も多い中、この本は、連作短編のなのに、先代からの火事の事故からの発端が、底辺に流れている。 薬種屋『仁寿堂』の十代目の主 与平が、隠居して、聞き屋という仕事(?)をし始める。 人の話を聞くだけで、占うわけでもなく、口をはさむこともないのだが、人は皆、心の奥にわだかまっている愚痴や不満がある。 奇妙な商売で、見料は、話す人の気持ち次第で、お布施のような金額、無しでも構わないと。 しかし、与平の身体が、弱って来て、最後に、話し手が、妻のおせきが、口にしたのは、まさに、与平が今まで、墓場まで、もっていこうとしていた事実であった。 おせきも、今まで、誰にも言わずに、心に留めていたたのであった。 与平の死後、継ぎは、おせきが、聞き屋を始めるのであった。 一つのドラマのような話であり、理不尽なことが、多かった時に、自分だったら、どのように対処できるのだろうか?と、問いかける本であった。
Posted by
夜が更けるとともに、ある商家の通用口に 男がひっそりと座る。 儲けのためでも酔狂でもなく、 ただ話を聞く与平。 与平はなぜ話を聞くのか。 心温まる時代小説。
Posted by
与平のすごさは、「聞く」ところ。 聞き屋なのだから当たり前のことなのだろうけれど、突っ込まずに話を「聞く」のって、案外難しい。 人の話を聞く機会は多いけれど、 「ここでも相槌うった方がいいのかな」 「何かアドバイスとか求められているのかな」 「ちゃんと話聞いてるってこと伝わってる...
与平のすごさは、「聞く」ところ。 聞き屋なのだから当たり前のことなのだろうけれど、突っ込まずに話を「聞く」のって、案外難しい。 人の話を聞く機会は多いけれど、 「ここでも相槌うった方がいいのかな」 「何かアドバイスとか求められているのかな」 「ちゃんと話聞いてるってこと伝わってるかな」 と頷きながら悩むし、時には 「これいつまで聞かないといけないのかな…そろそろ飽きたぞ…」 なんて思ってしまうこともある。 与平自身、その難しさは自覚していて、それでも話を「聞く」。 それって、多分人に色んな影響を与える言葉を発する人より、ずっとすごいことなのだと、私は思っている。
Posted by
隠居後に聞き屋を始めた与平 様々な人の話を聞き、 時には客の人生を左右することもしばしば 息子夫婦の間のゴタゴタや 土地の岡っ引き鯰の長兵衛からは、先々代の死の真相を問い詰められる日々 聞き屋は与平にとって何だったのか…
Posted by