ライト 仮面の生涯 の商品レビュー

ブレンダンギル【著】,塚口眞佐子【訳】

2011/06/05

やっと読み終わりました。原文はアメリカのジャーナリストに良くいる、不必要に文章を複雑にする文体で、それをそのまま訳しているために非常に読みにくいです。これを読んでいる間は自分の話し言葉まで変にまわりくどい表現になってしまうことがありました。

内容としては、特に前半はライトの性格や行いに関する嘘やごまかしをこれでもかというまで強調していて、少しうんざりします。後半は特にユーソニアン住宅の頃からライトのすばらしい業績もかなり手放しで褒めているところもあり、この作者の好みが分かります。

ある意味、意図的に他の書物にはライトの負の部分をクローズアップしているのもあると思いますが、そういうバイアスを抜きにすると、非常に豊富な情報源に基づいてかなりリアルにライトの人物像を描き出しています。また、筆者自身の建築に対する知識も十分で、こちらも作者本人のカラーが強く出ていますが、ライトの作品に対する評論は見るべきものがあります。

ライト賞賛の本をある程度読んだ後に、そのアンチテーゼとしてこの本を読むのも良いのではないでしょうか。