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医学探偵ジョン・スノウ の商品レビュー

3.7

6件のお客様レビュー

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2020/12/30
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期待していたよりずっと堅実というか地味な読み物だった。「医学探偵」とか煽りすぎ。そもそも小説仕立てですらないし。 ヴィクトリア女王のお産辺りが面白かったかな。チラッとクリミアの天使・ナイチンゲールも出てきます。

Posted byブクログ

2016/07/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

中古で出てくるのを待ってたんだけどなかなか出ず、図書館で借りて読んだ本。しかし、新書でもいいから買って本棚に置いておこうかな、と思えた本。 タイトルだけ見ると、ジョン・スノウという探偵が医学分野の謎や犯罪に立ち向かう推理小説のようにも見えてしまいますが、ジョン・スノウはれっきとした実在の人物で、いわゆる「疫学の祖」と呼ばれる人です。 19世紀にインドで発生し、世界各地に伝播しては万単位の死者を出したコレラの災禍と、その原因を特定するために尽力したジョン・スノウの軌跡が丹念に書かれています。 序盤はコレラの歴史、当時の病気の感染経路として一定の地位を占めていた瘴気説のこと、今の常識で考えるとおぞましいとも思えるようなコレラの治療法、医療への不信感から医師が一般大衆に襲われた事件、当時の人が医者になるための修業の積み方など、19世紀のイギリスの医学界の実体が細かく紹介されています。丁寧とも言える一方、時に話が若干、散らかってしまって読みにくいと感じた部分も少しあったのが難点と言えば難点。 スノウが出てくるのは、だいたい本全体の3分の1が過ぎたあたりから。しかも、時系列に話が展開するので仕方ないですが、出てきてからもしばらくはコレラを追っかけてません。むしろ、彼が麻酔に強い関心を持ち、エーテル麻酔で生活を経験を積んでいくことなんかが紹介されてたりします。スノウが麻酔科医だったということを、この本を読んで初めて知りました。 中盤以降は、スノウがコレラが水に起因する病気であるという考えを発表し、それが見事なまでに全力で無視されたこと(権威ある医学誌であるランセットも黙殺したという事実が書かれてますが、当時の常識からしたらスノウの説は完璧に異端だったのだということも、読み進めれば理解できます)、コレラが蔓延していた当時のロンドンの上水道システムが現在の開発途上国以上に劣悪だったこと、疫学調査にうってつけの条件が神の配剤のようにスノウに与えられたこと、その条件下でコレラの伝播について検証し、改めて水が原因であるという確証を得て論文を発表したこと、それが再び無視されたこと、他人がスノウの業績を盗用しようとしスノウの友人たちがそれに反論したこと、最終的にはスノウの死後に彼の論が事実であることが認められたこと、などが一気に紹介されていきます。 中盤以降のスピード感は爽快である一方、しかし旧態依然の常識に固執する当時の医学界がスノウの論を完全に無視する態度にイライラさせられたりもします。 最終章では、スノウの説が正しいことが立証されたのち、19世紀末にコッホがようやくコレラの原因であるコレラ菌を確認したこと、当時葉原因が判明したものの治療法は確立されなかったこと、そして現在でもコレラは予防に力点が置かれており、治療法は脱水対策ぐらいでコレラの地誌的病原性の前では人は無力なままであり続けていること、などが述べられています。考えてみたら確かにコレラは対症療法しかないわけで、疾患の原因が同定されるということと治療法が確立されるというのは全く別の次元なんだな、というのを改めて感じさせられました。 スノウの緻密な調査方法や業績にばかり目が行きがちですが、脇道で紹介されている当時の医療事情や、よく知られている人たちの小話なんかも面白い。当時は医者になるための正式なルートがなく誰かに師事して学び、臨床を重ねていけば免許や認証がなくても医師を名乗れたこと、スノウがコレラ対策をしていたのと同時期に日本で発生したコレラに緒方洪庵が対応していたこと、瘴気説はフローレンス・ナイチンゲールが生涯を通じて熱烈に支持していたこと、スノウの疫学調査の時期と同じくしてウィーンではゼンメルワイスが産褥熱について調査をし医療従事者こそが感染源であると見極めていたことなどは、それだけでちょっとした本が書けてしまいそう。 この本から、さらに関連分野の本に飛んでいくこともできそうです。疫学、麻酔、感染症あたりに関心がある方ならぜひ読んでおいて損はない。

Posted byブクログ

2017/01/10

図書館で借りた本。ロンドンに実在した内科医ジョン・スノウの生涯を描いたノンフィクション。ロンドンに蔓延する感染症の感染源をつきとめていく、今ではふつうだが当時としては画期的な調査をおっていく。地味におもしろい読み物。

Posted byブクログ

2013/04/24

「医学探偵」とはよく言ったもので、ミステリーの面白さだ。前半のコレラの猛威を語るあたりは、まるで無差別連続殺人鬼の悪行をなぞるよう。誰も殺人鬼を止めることができず、イギリス全土が黒い霧に覆われてしまうようだ。そこに登場するジョン・スノウはまさしく名探偵の風情。ドキュメンタリーなの...

「医学探偵」とはよく言ったもので、ミステリーの面白さだ。前半のコレラの猛威を語るあたりは、まるで無差別連続殺人鬼の悪行をなぞるよう。誰も殺人鬼を止めることができず、イギリス全土が黒い霧に覆われてしまうようだ。そこに登場するジョン・スノウはまさしく名探偵の風情。ドキュメンタリーなのにわくわく。 と、期待しただけに後半の混乱が残念だ。登場人物が多すぎ、脇道が多すぎて、ふと、え、ジョン・スノウってどこ行っちゃったんだっけ、と思うことがしばしば。ドキュメンタリーでそうそう演出するわけにもいかず、当時の状況を俯瞰するにはそういう手法が必要だったんだろうと思うけれど。 それにしてもたかだか百数十年前。医学はほとんど無力で、行き当たりばったりだったという事実。当時のロンドンの不衛生ぶりと並んでショック。

Posted byブクログ

2013/01/07

疫学の考え方を武器に、コレラに立ち向かった医師ジョン・スノウの物語。かなりスリリング。当時の病院の状況も伺い知ることができます。

Posted byブクログ

2012/11/15

「疫学の父」と呼ばれるジョン・スノウの生涯とスノウがコレラの感染経路を突き止めるまでを描く。朝日新聞の書評で瀬名秀明氏が絶賛していたので興味をひかれて読んでみた。 「医学探偵」と言っても、別に探偵小説ではない(いや、本当言うと私も読み始める前は、フィクションだと誤解していたのだ...

「疫学の父」と呼ばれるジョン・スノウの生涯とスノウがコレラの感染経路を突き止めるまでを描く。朝日新聞の書評で瀬名秀明氏が絶賛していたので興味をひかれて読んでみた。 「医学探偵」と言っても、別に探偵小説ではない(いや、本当言うと私も読み始める前は、フィクションだと誤解していたのだけれど)。医師、スノウが、いくつかの手がかりを辿って、医学的見地から、探偵さながらにコレラの発生源を追っていくさまを、当時の記録を元に描いたものである。 膨大な資料にあたったのではないかと思われる(巻末の参考文献には130あがっていたが、本当はもっと多いのではないか?)力作、その反面、大変に読みにくい(少なくとも私にとっては読みにくかった)。 スノウを主役に据えつつ、この時代のコレラを巡るエピソードをこれでもかこれでもかと盛り込んでいる。極端な話、描かれるエピソードが数段落ごとにくるくる移り変わる。 あとがきで訳者が「当時の文章の引用も多く、訳者泣かせの文体」と述べているが、そんなところにも読みにくさの一因はあるのかもしれない。 とはいえ、当時のエピソードを数多く盛り込んだところがこの本のおもしろさでもある。 この時代(19世紀前半)、医学も未発達であった。 解剖用の遺体を医師に売って儲けるために殺人まで犯した者もいた。 麻酔技術も十分には発達しておらず、スノウのもうひとつの大きな功績はクロロホルム麻酔の確立であった(麻酔に関しては、日本の華岡青洲がこれに少々先駆けている)。 スノウと同時代人で、クリミアの天使として知られるナイチンゲールは、いわゆる瘴気説の信奉者であり、彼女を初めとして多くの人々が、コレラなどの病気は悪い空気によって伝染すると考えていた。 レーウェンフックが顕微鏡を作り出したのは17世紀後半のことだが、彼が見つけた微生物と病気や腐敗との関係が明らかにされるのは19世紀半ばになってからだった。 そんな中で、物静かで根気のあるスノウは、コレラが発生している地域を聞き込みに回り、偏見や予備知識抜きに、冷静にさまざまな状況を考え合わせて、同じ井戸の水を飲んだ人々の間で感染が広まったと結論づける。 パスツールによってコレラ菌が発見されたのは、1883年、スノウが亡くなった25年後のことだったという。 百数十年前に、微生物が病原体であることが明らかでなく、瘴気説が主流であったというのが一つの驚き。その中で、コレラが経口感染することを突き止めたスノウ。生前の評価は決して高いものではなかったようだが、時代背景を知ってみると、なるほどこれは偉業だなと思う。 *多くのエピソードの中で、個人的に「おお!」と思ったのは2つ。偏頭痛の薬として使われる麦角アルカロイドはこの時代、陣痛促進剤としても使われていた。LSDはこれと似た構造なんだそうだ。もうひとつはマンドレイク。ハリー・ポッターにも魔法植物として出てくるだが、実在の植物だというのを初めて知った。根茎が人の形に似ており、神経毒でもあることから、主に中世ヨーロッパでおどろおどろしい伝説が語られるようになったらしい。かつては麻酔剤として使われ、シェイクスピアにも登場するのだとか。

Posted byブクログ