夏の口紅 の商品レビュー
主人公のセリフでないつぶやきが秀逸。父親の訃報を起点とし、父親の遺品の意味と存在すら知らなかった姉捜しが始まる。奇妙な義理の従妹が義理の妹になり、そして特別な存在になる。彼女の、きっと捜してくれるから、捜してくれるはず、やっぱり捜してくれた。というありがちのパターンは十代の頃の出...
主人公のセリフでないつぶやきが秀逸。父親の訃報を起点とし、父親の遺品の意味と存在すら知らなかった姉捜しが始まる。奇妙な義理の従妹が義理の妹になり、そして特別な存在になる。彼女の、きっと捜してくれるから、捜してくれるはず、やっぱり捜してくれた。というありがちのパターンは十代の頃の出会いたくない恐怖の一つであったな。
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+++ 十五年前に家を出たきり、会うこともなかった親父が死んだ。大学三年のぼくは、形見を受け取りに行った本郷の古い家で、消息不明の姉の存在を知らされ、季里子という美しい従妹と出会う。一人の女の子を好きになるのに遅すぎる人生なんてあるものか…夏休みの十日間を描いた、甘くせつない青春...
+++ 十五年前に家を出たきり、会うこともなかった親父が死んだ。大学三年のぼくは、形見を受け取りに行った本郷の古い家で、消息不明の姉の存在を知らされ、季里子という美しい従妹と出会う。一人の女の子を好きになるのに遅すぎる人生なんてあるものか…夏休みの十日間を描いた、甘くせつない青春小説。 +++ 改めて上記の内容紹介を読んで、たった十日間の出来事だったのか、とその内容の濃さに驚かされる。礼司にとって、この十日は、おそらくこれからの生き方をも変える十日となったことだろう。顔も覚えていない父親の死の知らせ、父の義理の娘・季里子との出会い、存在さえ知らなかった姉を探すこと。降って湧いたような難題が、これでもかというくらい礼司に襲い掛かってくる。律儀に――礼儀正しくと言ってもいいかもしれないが――クリアしようとする礼司も、あちこちに迷惑をかけっぱなしだった父同様、たしかに少々変わっているのかもしれない。だが、そのことによって、父の生きてきた道と、残したものを知ることができ、意外に憎めない思いとともに受け止めることができるようになったのかもしれない。奇を衒ったところは何もないが、みっしりと詰まった一冊である。
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文章の雰囲気が好きです。 でも、ちょっと、何か、違う。 なんだろな? 物語の流れが、自分に、合わないのかもしれない。 でも、嫌いな感じではない。
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二十歳の男の子ってこんな大人びてたかな…? 26の香織も私よりはるかに大人だし… 季里子に一番共感してるあたり、自分は子供っぽいのかな。礼司が何故そこまで惹かれたのかよく分からない部分はあるんだけど、それが初恋ってやつか。
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大学の夏休みに何をしていただろうか。読み終わると遥か昔のことをふと思い出したくなった。夏の刺すような日光と対称的な廃頽的なけだるさが小説を覆っている。記憶にもない出奔した父親の死をきっかけに存在すら知らなかった姉を探すことになる主人公。少しミステリータッチな展開は作者ならではの魅...
大学の夏休みに何をしていただろうか。読み終わると遥か昔のことをふと思い出したくなった。夏の刺すような日光と対称的な廃頽的なけだるさが小説を覆っている。記憶にもない出奔した父親の死をきっかけに存在すら知らなかった姉を探すことになる主人公。少しミステリータッチな展開は作者ならではの魅力であろう。蝶のお腹と口紅に共通するオレンジが単色の絵の中で鮮やかに彩りを放っているかのように訴えてくる。
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作者の作品のなかでも、恋愛小説としてきちんと山場があるのが良い。文章、会話は絶品。解説が米澤穂信なのが、個人的に嬉しい。
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すこしキザだけど好きな文体。 「存在自体が困る」大学生の男の子が主人公で 自分の知らない過去を探りながら、初恋をするというお話。 相手が美少女じゃないほうがリアルでいいのに、と思った。
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15年前に家を出た父親が死んだと知らされた主人公は、父が暮らしていた家にいく。そこには父が、彼と彼の知らない姉との二人に残した蝶の標本と、初めて会う従妹がいた。 女性の存在感がすごかった。 ケーキ研究家をしている主人公の母親は、元夫が死んだという知らせを聞いて「お祝い」だ...
15年前に家を出た父親が死んだと知らされた主人公は、父が暮らしていた家にいく。そこには父が、彼と彼の知らない姉との二人に残した蝶の標本と、初めて会う従妹がいた。 女性の存在感がすごかった。 ケーキ研究家をしている主人公の母親は、元夫が死んだという知らせを聞いて「お祝い」だといい、残したものを引き取りにいくのを、息子に押し付けてしまう。いい意味でも悪い意味でも、純粋培養で育ったお嬢様。邪気も嫌味もなく、ふわふわと生きてる感じが、反対に妙にたくましく見える。 そして、父が再婚した相手の姉<見事に太ったおばさん>。竹を割ったようなと感じの潔さがある。 その、おばさんの娘、口をきかない、でもとっても綺麗な娘、季里子。 父が、母親と結婚する前に付き合っていた女性との間に生まれたという娘=姉を探して、主人公と季里子はお互いの存在を近づけていく。 という、ボーイミーツガールの物語かと思ったら、幻の姉を探すことは、父の足跡を追うことになり…。 子供は、絶対誰かの子供なのだ。そして子供は、親の背中を見ながら成長し、それを追い越していくものなのだろう。 すべては、親の離婚によって離れ離れになってしまった父親からの、最高のプレゼントだったのかもしれない、と思うと自然目頭が熱くなってしまうのであった。 とっても面白かった。
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主人公たちのかみ合わない会話にイライラさせられますが、その内容に思わずクスッと笑わせられます。それが新鮮で、すごくおもしろかった。言葉選びが天才だと思った。男の子目線の恋愛小説は苦手だったんですが、きゅんきゅんせずにはいられなかった。
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