谷中村滅亡史 の商品レビュー
原稿の資料として読んでいた本。 二十歳やそこらでこれを書けるのがすごいなと思う。 ただ本人も回想しているように、悲壮感あふれる表現が過剰すぎ、文体が古いのを抜きにしても非常に読みづらかった。 作者が社会主義者であることもあり、当時の政府と財閥をかなり強く批判しているが(実際、言...
原稿の資料として読んでいた本。 二十歳やそこらでこれを書けるのがすごいなと思う。 ただ本人も回想しているように、悲壮感あふれる表現が過剰すぎ、文体が古いのを抜きにしても非常に読みづらかった。 作者が社会主義者であることもあり、当時の政府と財閥をかなり強く批判しているが(実際、言葉が強すぎて発禁になったらしい)、そのへんを割り引いても、谷中村民へのなしようはいくらなんでもひどいなと思う。 日露戦争から生還した谷中村出身の兵士が、帰ってみたら家族がいなくなっていたという逸話は本当に気の毒だった。 「谷中村の強制破壊に携わる仕事に応募するなとは言わないが、応募するなら支度金を出してやるから我が町から出て行ってくれ」(意訳)と言った古河町長はえらいなと思う。ひどい話が続く中で数少ないいい話だった。 原敬や陸奥宗光は、平民宰相とか不平等条約の改正とか、教科書的には立派な偉人のようなイメージだが、また違った風に見えてくる。 なお出版時にはすでに陸奥宗光は没しているものの、原敬は存命だった。 この本はいつか報いを受けよと言わんばかりの憤怒で幕を閉じるが、およそ一四年後、原敬は東京駅で殺害される。Wikipediaによるとこの暗殺事件にはいろいろな憶測があるようだが、犯人の中岡良一は原が政商や財閥重視の政治を行っていることに憤っていたようだ。 谷中村への仕打ちが直接の動機ではなくても、原はいくらか報いを受けたのかもしれない、などと思ってしまった。 なお足尾銅山を経営していた古河市兵衛、古河潤吉の跡を継いで古河財閥の三代目当主となった古河虎之助の旧宅が、現在の旧古河庭園である。 旧古河庭園はバラの名所として有名だが、ここにはいま「わたらせ」という品種のバラが植栽されている。どういった経緯でこの品種が選ばれたのか、とても興味深い。
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石牟礼道子「苦海浄土」の流れからたどり着いた本書。 足尾と水俣はひとつながりである、という喝破がそこにはあったわけだが、 耳目を疑う棄民政策が両者に共通している。 歴史を俯瞰して理解したいという思いを持っているが、一方で本書の如く ワンテーマで超没入的に書きなぐる作品というもの...
石牟礼道子「苦海浄土」の流れからたどり着いた本書。 足尾と水俣はひとつながりである、という喝破がそこにはあったわけだが、 耳目を疑う棄民政策が両者に共通している。 歴史を俯瞰して理解したいという思いを持っているが、一方で本書の如く ワンテーマで超没入的に書きなぐる作品というものも貴重。
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田中正造から足尾鉱毒事件を世に訴えるために是非書いてほしいと依頼され、若干二十歳でこの書を著した寒村師が社会を見る眼をどこで養ったのか、ただただ驚嘆するばかり。 NHKのドラマ『足尾から来た女』の予習のつもりで読みました。
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谷中村の人びとの棄民に等しい仕打ちを当時の政府から受けていたことを知りました。いまの社会を見わたしても、福島第一原発事故による被災地での仮設住宅や沖縄米軍基地のまわりに暮らす人びとへの政府の対応からはなんら誠意が見えてこないです。アベノミクスや東京五輪招致に浮かれているあいだに、...
谷中村の人びとの棄民に等しい仕打ちを当時の政府から受けていたことを知りました。いまの社会を見わたしても、福島第一原発事故による被災地での仮設住宅や沖縄米軍基地のまわりに暮らす人びとへの政府の対応からはなんら誠意が見えてこないです。アベノミクスや東京五輪招致に浮かれているあいだに、都合の悪いことは忘れ去られていくような気がします。
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冒頭、田中正造翁の「序」に謂う。 「拝啓、先日お出での頃はご覧の通りで、ゆるゆるお伺いもうしあげかね遺憾このことに候。今度のご書面には急ぎお返事申しあぐべきはづの処、連日の大雨にて村民の仮小屋は大破をなし、老幼までも蓑笠のまま夜を明かしそうろうのため、ついに多数の病人を出すに至り...
冒頭、田中正造翁の「序」に謂う。 「拝啓、先日お出での頃はご覧の通りで、ゆるゆるお伺いもうしあげかね遺憾このことに候。今度のご書面には急ぎお返事申しあぐべきはづの処、連日の大雨にて村民の仮小屋は大破をなし、老幼までも蓑笠のまま夜を明かしそうろうのため、ついに多数の病人を出すに至りもうし候。云々」 これにより、明治40年ついに谷中村は滅亡する。青年荒畑寒村は6月10日に谷中村を訪れる。翁曰く「ねがわくは、他日谷中村のために、一書を著して世に訴えよ」と。その直後に谷中村は強制執行のために僅かな抵抗農家は破壊され、土地も大洪水で破壊される。二十歳の荒畑寒村は超スピードで一書を著し、約1ヶ月で出版までにこぎ着ける。文章はやや荒いものの、その30年に及ぶ利根川水域の悲劇をコンパクトに豊富な資料と数字と感情とでもってまとめ上げ、現代の我々をもの心を打つルポルタージュとなれり。翁の序文は以下のように結んでいる。 「それ谷中村の地勢すこぶる水利に富み、かつ天与の肥沃地たるにおいては日本無比、関東の第一位にあり。もし政府の悪干渉を除かば、天はすなわち人民と協力してたちまち天下無比の一大美村を造り出して、社会の公益を増進するや毫も疑ひなし。あゝ鉱毒はよく人の生命を刻みまた多くの町村を滅ぼしたり。今や鉱毒は変態して、土地を収用し土地を奪うに至れり、しかれども天はこれに与せざるなり、谷中村は早晩必ず復活いたすべく候。」 1907(明治40)年の話にとても思えない。100数年後のついこの間、フクシマで起きたことではないのか。いや、沖縄で、100年後の利根川水域の八ツ場ダムで起きたことではないのか。 大企業が始めて、政府がそれを後押しする。古代は武力にて直接略奪したかもしれないが、近代以降は法律という複雑な間接方法によって変化しただけ。 ここに日本のその後の公害問題、土地問題、政治保障問題等々の諸問題があからさまに展開されている。人民の団結には時間がかかること。政府の及び腰と責任回避、世間の注目を集めたあとは団結の分断と買収、そして根本原因の治療ではなく対処療法に奔走すること。さらにいえば、あとになるほど莫大な税金を湯水の如く使うこと。さらにいえば、谷中村は洪水防止の遊水地として滅亡させられたのであるが、早くから洪水防止の役をなさないのは言われているということ。まるで八ツ場ダムのごとし。 解説の鎌田慧は現代と何ら変わることないことを嘆息して、諫早干拓、長良川河口堰建設、砂川米軍基地建設、成田空港建設、青森六ヶ所村或いは水俣病、三井三池炭塵爆発の学者の荒唐無稽な言説を挙げている。ホントはまだまだあるだろう。日本はこの100年、何度も何度も何度も同じことを繰り返しているのである。 2013年8月4日読了
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政府・法律・警察 i.e. 国家権力が支配層(政治家・資本家)の道具たるは今も昔も変わらぬ。国家の行為は、同語反復的な意味で、「合法的」だ。よって支配層は、私欲を「合法的」に満足せんが為に、国家を利用する。国家は支配層の欲望充足にとって格好の手段たる「合法的な暴力」を独占している...
政府・法律・警察 i.e. 国家権力が支配層(政治家・資本家)の道具たるは今も昔も変わらぬ。国家の行為は、同語反復的な意味で、「合法的」だ。よって支配層は、私欲を「合法的」に満足せんが為に、国家を利用する。国家は支配層の欲望充足にとって格好の手段たる「合法的な暴力」を独占しているのだ。だからこそ国家は批判されねばならぬ。国家を超えた価値が求められる所以である。それを実定化するのが憲法だ。
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課題のために。 内容はあんまり楽しいもんじゃないけど、楽しく読めました。 憲法が変わろうと為政者のやることってもしかして変わらない? みたいなことを思った。
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