印象派はこうして世界を征服した の商品レビュー
逗子図書館で読む。図書館で読む本ではありません。購入すべき本です。再読の価値があります。それだけです。
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第二次世界大戦までは、各国によってばらつきのあった印象派に対する評価。それがフランスよりも、アメリカとドイツをはじめとして、続いてフランス、イギリスへと波及していくまでの過程が描かれている。そして、戦後のバブル期の日本で<財テク>として不当に扱われた印象派の様なども、読んでいて悲...
第二次世界大戦までは、各国によってばらつきのあった印象派に対する評価。それがフランスよりも、アメリカとドイツをはじめとして、続いてフランス、イギリスへと波及していくまでの過程が描かれている。そして、戦後のバブル期の日本で<財テク>として不当に扱われた印象派の様なども、読んでいて悲しくなってくる。 あとがきにも書いてあるが、印象派の絵画を画家自身ではなく、画商や消費者、さらには文化的背景という観点から論じている。また、一流の画商である著者の回想記としても書かれていて、興味深い。
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原題を "The Ultimate Trophy: How the Impressionist Painting Conquered the World"。印象派絵画はまさに美術界究極のトロフィー。当初こそ異端と目されながらいつの間にか芸術の域を超えて世界的...
原題を "The Ultimate Trophy: How the Impressionist Painting Conquered the World"。印象派絵画はまさに美術界究極のトロフィー。当初こそ異端と目されながらいつの間にか芸術の域を超えて世界的なセレブのステータスシンボルとなった。不思議なことに、芸術先進国から、その先進国にあこがれる準先進国へ、やがて未開拓の第三世界に手を伸ばしていく…の流れはグローバリズム経済の発展とそっくりである。よい絵を見極めるのは実は容易い。しかし高く売れる絵のお膳立てはとても難しい。これも企業がブランド価値を上げる戦略とほぼ等しいことに驚く。利益、利益、利益。近年の絵画評が、ともすればその絵自体の持つ価値ではなく、真贋問題に終始するのはそのブランド価値に対するステークホルダーへの責任であるのだ。 (続きはブログで)http://syousanokioku.at.webry.info/200908/article_10.html
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印象派を美術史として学んでしまった不幸。印象派がもはや古典となってしまった今、当時の人々が印象派の作品を観た時の驚きを追体験することは難しい。 ある人がセザンヌの絵を観て「飛行機に乗っているような気持ちになる」と言ったその感性。私にはそんな素晴らしい直感はないけれど、もし自分が1...
印象派を美術史として学んでしまった不幸。印象派がもはや古典となってしまった今、当時の人々が印象派の作品を観た時の驚きを追体験することは難しい。 ある人がセザンヌの絵を観て「飛行機に乗っているような気持ちになる」と言ったその感性。私にはそんな素晴らしい直感はないけれど、もし自分が19世紀のパリにいたら、どのように印象派の絵をみたのだろうか。
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(2010.05.25読了)(2010.05.19借入) 印象派の絵画や印象派の画家について知りたいのであれば、この本はそのような用途には役立ちません。画商とコレクターについての本です。現代に近くなるとコレクターの死亡とオークション会社についての本ということになりそうです。 「印...
(2010.05.25読了)(2010.05.19借入) 印象派の絵画や印象派の画家について知りたいのであれば、この本はそのような用途には役立ちません。画商とコレクターについての本です。現代に近くなるとコレクターの死亡とオークション会社についての本ということになりそうです。 「印象派はこうして世界を征服した」という題名ですが、見方によると「印象派はどれだけ世界に拒絶されたか」という内容にも読めます。 まず、印象派絵画はどのようなものかが述べられ、フランス、アメリカ、ドイツ、イギリスでどのような拒絶に遭い、どのように受け入れられていったのかということが述べられています。後半は、オークションの話です。 印象派の絵画が登場した百年ほど前には、その絵の価値を認める人は少なかったのですが、いまでは、印象派の絵画こそが最も価値のあるものとなっています。オークションで、最高の値段を更新しているのは印象派絵画です。 ●印象派の筆のタッチ(16頁) 印象派の画家たちの入り組んだ筆のタッチは、ものの形を決めるためのものではなく、視覚的な感動を画面上に揺らめくように織りなすためのものだった。 ●カイユボットのコレクション(66頁) 1894年、印象派の画家のひとりカイユボットが亡くなり自分で集めた印象派の画家たちの作品をフランス国家に遺贈することを言い残した。これに対して、保守派の人々は「フランス政府が印象派ような堕落した作品を受け入れることは、甚大なモラルの衰退を招くことになる」と反対した。「このような排泄物の山を国立の美術館で展示することは、フランス美術の名誉を公に傷つけるものだ」と書いた雑誌記者もいた。 ●アメリカ人の印象派受容(82頁) アメリカ人が印象派を受容する上で影響力を持っていたのは、アメリカ人画家メアリー・カサットだった。 ●コートールド(184頁) 英国の実業界の有力者で、フランス印象主義の重要な、そして献身的な収集を行った最初のコレクターは、サミュエル・コートールドだった。 ●ギリシアの船主(194頁) 1950年代に印象派絵画の価格が劇的に上昇した。上昇は、その時代のニューマネーによって引き起こされた。目立って成功を収めていたのは、ギリシアの船主たちだった。 ●印象派のどこが魅力?(212頁) ニューリッチのコレクターたちは、ルノワールやセザンヌのどこに魅了されたのだろうか?その答えの一つは、魅力的な色彩と主題を持つ印象派の絵の親しみやすさにある。だが、もう一つの要因もあるだろう。専門知識の蓄積によって信頼に足る鑑定が可能となった印象派の作品は、反論の余地のない真筆作品として認められうるものだからだ。 ●ルノワールがトップ(220頁) 1960年ごろに、フランス印象派の神殿におけるもっとも人気の高い画家を市場調査したとしたら、おそらくルノワールが最もトップに近い位置にいただろう。三人のポスト印象派たち、セザンヌ、ゴーギャン、ファン・ゴッホも、リストの上の方に挙がっていた。しかし、驚くことに、この最高峰のランクから名前が消えていたのはモネだった。 ●モネの再発見(220頁) モネが20世紀になって描いた巨大な睡蓮の絵は、ほとんど抽象の域に達していた。晩年のモネを再発見した立役者は、ジャクソン・ポロックをはじめとした抽象表現主義の画家たちだった。 (2007年4月に国立新美術館で開催された「大回顧展モネ」では、モネの作品の他にモネの作品の影響を受けた抽象絵画作品が展示してありました。) (2010年5月29日・記)
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昔(バブルの頃)、画商でアルバイトをしていた(といっても、画廊があるわけではなく「担ぎ」の画商)ことがあって、絵画の流通システムというか、どうやって値段が付くのか、その裏側を垣間見たことがある。その頃から日本で絵画は投機の対象になっていったと思う。 本書は、印象派絵画がなぜ高額で...
昔(バブルの頃)、画商でアルバイトをしていた(といっても、画廊があるわけではなく「担ぎ」の画商)ことがあって、絵画の流通システムというか、どうやって値段が付くのか、その裏側を垣間見たことがある。その頃から日本で絵画は投機の対象になっていったと思う。 本書は、印象派絵画がなぜ高額で取り引きされるようになったかを、印象派黎明期からの画家と画商、買い手との関係をつぶさに見ていくことによって、解き明かしてくれている。印象派が誕生した経緯などは、美術史で習うとおりで、最初の評判は惨憺たるものだった。しかし、それが巨額の富を象徴する存在になっていく過程は、スリリングですらある。それはまず、フランスではなく、19世紀末の「新興国」で、ニューリッチを生み出したアメリカの、しかも女性(富裕層の)によってその魅力を開眼させられていく。 第二次世界大戦前後のナチスドイツとの悲劇的なかかわりについては、1本の映画が撮れるくらいのエピソードが描かれる。また、フランスとは長年犬猿の仲であった英国が、如何に印象派を受容していったか…。 巻末のほうには、バブル期における日本人の印象派絵画買いあさりの状況が描かれ、まったく同じ日本人として恥ずかしくなる。 著者はサザビーズやクリスティーズで競売人として活躍したのち、サスペンス小説などを著した多彩な人で、その文章は読みやすく、英国人らしい時に毒のあるユーモアでニヤリとさせてくれます。印象派に少しでも興味のある人には、おすすめします。
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