向田邦子全集 新版(2) の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
テレビドラマ『あ・うん』の小説版を収録。門倉修造と君子夫婦、仙吉・妻たみ・長女さと子・仙吉の父初太郎から成る水田一家、修造の愛人・禮子らを中心にドラマが描かれる。 収録作品は以下の通り。 「狛犬」 「蝶々」 「青りんご」 「やじろべえ」 「四角い帽子」 「芋俵」 「四人家族」 一触即発とまではいかないがどこか危ういものがある、友人間・家族間であっても簡単に解消できない蟠りがある――作者が生み出すこうした人間の本性や業に驚き呆れ、またつい薄ら笑いを浮かべる自分がいる。さと子の見合い相手の辻村研一郎の出番をもっと増やしてほしかった。
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定期的にやってくる向田さんブーム。今回の『あ・うん』は処分した文庫本で以前読んでいるものの、再読。 というのはほかでもない、「新春ドラマスペシャル」を何本も録画してあるが、こないだ見たドラマに違和感があったので、その違和感を探るための再読。 評判の悪い映画版だが私は嫌いではない。...
定期的にやってくる向田さんブーム。今回の『あ・うん』は処分した文庫本で以前読んでいるものの、再読。 というのはほかでもない、「新春ドラマスペシャル」を何本も録画してあるが、こないだ見たドラマに違和感があったので、その違和感を探るための再読。 評判の悪い映画版だが私は嫌いではない。富司純子がきれいでかわいいからだ。 ドラマ版は何本かあるが、杉浦直樹とフランキー堺はやはりうまい。原作の機微がよく表現されている。 でももう映像化はしてほしくないなぁ。たぶん薄っぺらになるような気がするからだ。あれ? 本の感想じゃなくなったな。ま、いっか。 ちなみに向田さんの本を読むときは向田さんの声を脳内で再生しながら読むと、非常にテンポがよい。
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【水田一家】 水田仙吉 水田たみ 水田さと子 水田初太郎 水田作造 【門倉一家】 門倉修造 門倉君子 【二号親子】 禮子 守 【ちょい役】 辻村研一郎 石川義彦 まり奴 ふみ 庄吉 --- ・仙吉と門倉は二十年来の親友。 ・門倉は、たみが好き。 ・たみは、門倉が好き。 ...
【水田一家】 水田仙吉 水田たみ 水田さと子 水田初太郎 水田作造 【門倉一家】 門倉修造 門倉君子 【二号親子】 禮子 守 【ちょい役】 辻村研一郎 石川義彦 まり奴 ふみ 庄吉 --- ・仙吉と門倉は二十年来の親友。 ・門倉は、たみが好き。 ・たみは、門倉が好き。 ・仙吉は、それを知っている。 …え? ・門倉には、愛人と隠し子がいる。 ・愛人は「二号さん」と呼ばれ、水田家とも親交がある。 ・門倉の妻、君子もそれを知っている。 …ほう。 ・なんなら「三号さん」もいる。 ・「三号さん」は仙吉が惚れた水商売の女で、仙吉がこれ以上惚れ込むとたみが傷付くから、それは見ていられないという理由で門倉が自分の女にした。 ………。 ・全員、全部知っている。 ・でも誰も、全部知っているとは言わない。 ………こわ。この不気味さは、なんだ。 でも、そういう時代だったんだろうなあ。男の人は結婚しても外で女の人を作って、それで精が出て活き活きして、家庭内でもご機嫌で、そういうのも全部ひっくるめて妻の喜び、みたいな?んー、なんか、SF小説みたい。 門倉とたみは、不倫しているんじゃなくて、心だけというのがまた、しんどいというか罪だなあというか。身体の関係だけですっていうよりきつい気がするんだけどなあ。わからん。 いいなって思った会話を一つ、抜粋。 --- 「あれ、なんていったかなあ、ほら、将棋の駒、ぐしゃぐしゃに積んどいて、そっと引っぱるやつ」 ああ、こういうのねと女二人が、積み将棋の手つきになった。 「一枚、こう引っぱると、ザザザザと崩れるんだなあ」 女二人は、そのままの手つきで次のことばを待った。 「おかしな形はおかしな形なりに均衡があって、それがみんなにとってしあわせな形ということも、あるんじゃないかなあ」 君子がたずねた。 「ひとつ脱けたら」 「みんな潰れるんじゃないですか」 君子は黙って夫婦をみた。それから小さく笑い出した。笑いがだんだん大きくなり、笑いながら大粒の涙をこぼした。 (p.106『やじろべえ』内) --- 夫は22歳年上、両親は離婚して父親の顔は一度も見たことがない、祖母は当時大物政治家だった祖父の「二号さん」。ああそうだ、わたし自身、ちょっと何言ってるかわからない、って感じの家族に生まれ育っていたんだった。いびつだからこその愛おしさ。綺麗なまんまるの家族なんてきっとどこにもない。わかってはいるんだけどね。まだわたしの一部がそう完全に認めてしまうことを拒んでいる。お父さんがいて、お母さんがいて、子どもがいて、一軒家に住んで、車があって、家族仲良しで、夕飯は毎日揃そろって食べて、ときどき家族旅行をして、夫は暴言を吐かず、暴力を振るわず、借金も女遊びもせず、家族ぐるみで付き合える友達が近所にいて、同じ家にいても個々で好きなことする時間があって。これ、わたしが中学の頃からずっと描いてきた理想。書いてみたら全部叶ってる。ああ、さっき感じた不気味さの正体はこれか。理想的な綺麗なまんまるだけを見ていたいんだ、わたしは。
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仙吉と門倉とたみのバランスが絶妙。昔の話なのに読みやすくて、人間関係が絶妙に書かれててとても面白かった。 他の作品も読んでみたい。
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少しでも触れると崩れてしまいそうなバランス。心の内を表に出さないことでこれまで保ってきたんだなぁ。白黒はっきりさせたくなるけど、それをしないことでみんなが心地よく生きられるなら、きっとその方がいいんだ。
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2012.7.1読了。 どうしても、「あ・うん」が読みたかったので。ものすごく絶妙なバランスの上に成り立つ人間関係に読んでる方はモジモジしてしまう。読後にくるのは誰かを真剣に幸せにしたいと思ったことがあるだろうか、という自分へのやるせなさだったり。
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向田さんの作品を初めて読んだ。 本当にまっとうな美しい日本語を使う人で、それから群像劇を描くのがうまい。 なによりも人を自然に物語に引き込んで離さないところはさすがテレビドラマの脚本家。なんてことない日常描写に油断してると突然、涙腺が刺激されたりするから電車では読んではいけない。
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日本人でよかった、と思う瞬間がある。 それは海外からの帰り久しぶりに食べる日本食であったり、 こたつにはいってぬくぬくとみかんの皮を剝いているときであったり、 実に人様々だ。 だが、わたしの場合は向田邦子の作品を読んだときに思うのだ。 日本人でよかった、と。 日本人でなければこ...
日本人でよかった、と思う瞬間がある。 それは海外からの帰り久しぶりに食べる日本食であったり、 こたつにはいってぬくぬくとみかんの皮を剝いているときであったり、 実に人様々だ。 だが、わたしの場合は向田邦子の作品を読んだときに思うのだ。 日本人でよかった、と。 日本人でなければこの良さを、この作品を根底まで理解することは できなかっただろうとつくづく思うから。 言わないという美徳。美徳というのがおこがましければ 決して表に出さない奥ゆかしさ。 何も言わずに向かい合って茶の間で酒を酌み交わし、 縁側で並んで煙草を呑む。 それだけで伝わるものがわれわれの間にはあるのだ。 だからこそ、これ以上語るのは野暮かもしれない。 今はここで筆をおこう。この余韻を楽しむためにも。
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全集2巻目は、小説『あ・うん』でした。 ようやく私は、向田邦子の真髄を見た、と思いました。 遅いのですけど・・・ 映画はかなり前に見たのですが、小説のこの細かい感情の機微は、文字でないと表すのは難しいでしょうね。 こんな関係、現実にはあり得ない夢の世界だと思うのに、こ...
全集2巻目は、小説『あ・うん』でした。 ようやく私は、向田邦子の真髄を見た、と思いました。 遅いのですけど・・・ 映画はかなり前に見たのですが、小説のこの細かい感情の機微は、文字でないと表すのは難しいでしょうね。 こんな関係、現実にはあり得ない夢の世界だと思うのに、こんなにリアルに感じられるのはなぜでしょう。 戦前という一昔前のことなのに、皆がすぐそばにいるように生々しい息づかいがここにある。 筆の力というものを、久しぶりに目の当たりにしました。 「流行ものを使うと廃れた時に滑稽だから、なるべくそういうものは使わない」誰かが言っていたのですが、これを耳にした時は「全くその通りだ」と同意したものです。 でも、この小説を読んで、それは違うなと悟りました。 その時代にそこにあるものは、ただの自然なのだと。 この後、みんながどうなったのか・・・・ 知りたくもあり、知りたくもなし。
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