大穴 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
競馬シリーズ4作目。 障害競馬のチャンピオンにまでなったハレーは、 レース中に手を怪我をしたために騎手生命を絶たれ、 現在は探偵社競馬課に籍を置いている。 ただし遅刻しても誰も何も言ってこないような働き方で、デスクも無いのに、 たまたま見張りに出かけて銃で撃たれてしまう。 静養に来なさいと言ってくれたのは妻の父、 ただし妻とは別居中、 しかも義父はひどい罠を仕掛けていた…。 競馬場乗っ取りの謎解きもだが、 生きる目的も家庭も失い、 動かなくなった手をポケットに隠して生きていたハレーが、 人生を取り戻す過程が面白かった。 やはり事故で、顔に傷ができ片眼が義眼の女性秘書と出会い、 お互いの痛みを分かち合い、 前向きに歩きはじめるまでが素晴らしい。 片手でできる格闘術を習わないとという話になった時に、 先輩探偵が、自分の通っている道場の日本人ならなんとかしてくれるはず、と答えた時には、 その「日本」の登場の仕方が無性にうれしかった。 といっても、 最後の方の重要なキーワードの「カノ・ジゴロ」が嘉納治五郎とは気づかなかったが。 素晴らしい作品だった。
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さぁディック・フランシスだ! 大好きな作家さんでハヤカワ文庫版で全巻持ってたんですよね 本当はブックリストを作りたかったんですが うろ覚えの状態で3冊選ぶのはちょっと難しいので断念しました そこでひとまず間違いなくベストの一冊のシッド・ハレー登場作『大穴』を読み直しました ...
さぁディック・フランシスだ! 大好きな作家さんでハヤカワ文庫版で全巻持ってたんですよね 本当はブックリストを作りたかったんですが うろ覚えの状態で3冊選ぶのはちょっと難しいので断念しました そこでひとまず間違いなくベストの一冊のシッド・ハレー登場作『大穴』を読み直しました やっぱりすごい面白かったです! 自分がディック・フランシスを読み始めたのは高校生の頃なんですがちょうどその頃競馬にどハマリしてまして(ん?)、もちろん小さい頃からミステリーも大好きで こんな大好きな競馬+ミステリーって自分のために書かれたようなもんじゃん!と思い手に取ったんですが…自分のために書かれた物語でしたw とっても面白い傑作ばかりなのでぜひとも色んな人に読んでもらいたいんですが 前提としてイギリスにおける競馬の立ち位置というか置かれている状況みたいなんをちゃんと理解してないと面白さ半減かもです もちろんギャンブルでもあるんですが文化的な側面もあるんですよね なので両方の理由で大きなお金が動くし、多種多様な人物が関わっているんですよね お、そう考えると競馬界ってミステリーにびったりの舞台ですね 競馬界を知り尽くしたチャンピオンジョッキーがミステリーを書く そりゃあ面白いわけだ
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主人公がとても有能で魅力的! 読むのに時間はかかったが、軽快な会話シーンが面白くて退屈しなかった。 終始競馬の話ではあるが、競馬要素はちょっと薄め。 推理小説というよりは探偵小説という感じ。犯人やトリックを当てる小説ではない。
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ディック・フランシス、3冊目。 こちら1965年発行のシリーズ4作目で、3冊目にしてシッド・ハレーが登場する物語。 障害レースのチャンピオンジョッキーであったシッドだがレース中に負った怪我が原因で引退し、誘われた探偵社で名前ばかりの探偵として日々を過ごす境遇。 自分が銃撃された...
ディック・フランシス、3冊目。 こちら1965年発行のシリーズ4作目で、3冊目にしてシッド・ハレーが登場する物語。 障害レースのチャンピオンジョッキーであったシッドだがレース中に負った怪我が原因で引退し、誘われた探偵社で名前ばかりの探偵として日々を過ごす境遇。 自分が銃撃された事件をきっかけに、素晴らしいコースを持つが老朽化した競馬場の株を買い占め売り飛ばそうとする企みを知るところとなり、そこから持ち前の不屈の精神に火が点く。 このシッド、騎手上がりの小柄な体格に何より事故で常にポケットの中に隠さなければならなくなった左手のハンデのある身の上だが、無聊を託っている間に探偵としての素養を身に着けていたようで、いざ事件となると最初からポイントを突いた動きに目を瞠る。 しかし、調査を重ねても傍証は得られるものの確証がない中、競馬場の評判を貶める妨害工作は続き、自宅や職場が爆破されるなど危機一髪。競馬場内での追いかけっこの末、捕らえられては万事休すか!?と、今回もまたなかなかにサスペンスフル。 どんな解決を見るのだろうと思っていたが、最悪の状況でも諦めることがなかった不屈の主人公に今回もまた恐れ入る。 流石に『私はごく幼少の頃から同情を示されるのを避けた。… 同情をうけると人間が甘くなってしまう。… 貧困も嘲笑も、… 肩をすぼめてやりすごし、本心は人には見えない胸の中にしまっておかねばならないのだ』と語るだけのことはある。 寂びれいく競馬場の運営を思いどおりにやれるとしたら、どういうことをするかと問われたシッドが『ビートルズのような連中に来てもらって、トロフィを授与してもらいます』などと延々と語るところや、競馬場を見張っている時にかつての重賞優勝馬を駆って障害を飛ぶ様などに、当時の競馬場の雰囲気がよく表れていて、こういうところもまたこのシリーズの良いところ。 (ビートルズとは驚いたが、確かに書かれたのは彼らの全盛時代だもんな。いい時代だったわ)
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読んだことはなかったが、二文字の競馬ミステリの背文字は本屋さんでもお馴染みだった。本好き仲間が言うことには「へぇぇ、あれを一度も読んでないの? 一冊も?」 作者は2010年に亡くなってしまったけど息子さんが書き継ぐそうで。 もうそんなになるのか訃報は新聞で読んだが。 まぁ元気...
読んだことはなかったが、二文字の競馬ミステリの背文字は本屋さんでもお馴染みだった。本好き仲間が言うことには「へぇぇ、あれを一度も読んでないの? 一冊も?」 作者は2010年に亡くなってしまったけど息子さんが書き継ぐそうで。 もうそんなになるのか訃報は新聞で読んだが。 まぁ元気を出して!!ミステリは競馬だけでないし、最近は自転車も、宇宙船も、あれもこれも何処もかしこも殺人や詐欺や、誘拐で大騒ぎなのに。と言いながらも、元気づけのために読んでみた。 う~~ん、これはやはり初期作品のハードボイルド。でも読んでいって、いつの間にかフランシスさんの手の内に取り込まれた。 歴史と階級の英国、競馬界も礼儀正しい。でも裏には裏があって、賭け屋が群がるギャンブルの世界も見える。 面白かった。主人公シッド・ハレーに初めてお目にかかった。この元騎手は競馬シリーズに珍しく2作品に登場する愛すべき人物らしい。 彼はチャンピオンジョッキーで名の知れた障碍競馬の騎手だったが、落馬して左手が不自由になった。妻とはうまく行かないが義父とはお互いに心を許す仲、どうも義父が裏で糸を引いたらしく、探偵社に入る。やる気もなかったが、漏れ聞くと気に入った競馬場がどうもおかしい。人気が衰えたところに不動産屋が目をつけたようだ。 馬には走りやすい絶好のターフを持つ競馬場だ。彼はやる気が出た。 闇からピストル、裏にはきな臭い陰謀。怒りと競馬愛は彼を生き返らせた。 読後そんな煽り文句が出るくらい、当時の読者は沸いたのだろう。作者フランシスの略歴では華やかな騎手生活を送り、内情に最も詳しい、背景もいい。 競馬も馬も遠くからしか見たことのない世界だったが、騎手や厩舎の調教師、上流社会に住む馬主たちの息遣いが伝わってきた。 時代の波は少しずつこの偉大な、当時で言う「競馬スリラー」にも寄せてきているようにも思える。それでもただ一人主人公として二作目に登場するのシッド・ハラーに敬意を評して、「利腕」も読んでみよう。
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元騎手シッド・ハレーが 探偵として 悪に屈せず立ち向かう姿がカッコイイ 基本的には競馬シリーズは「興奮」とかと 同じで、耐えて闘う感じがいいです。 あと、ドライな空気感と 冒頭一行目の格好良さはシビれたぜ。 (児玉口調)
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15年ぶりに再読。 勇気、知性、忍耐、正義…シッド・ハレーです。素晴らしい。 競馬初心者だった初読時には気づかなかった競馬の奥深さも味わえたので、再読して良かった。 菊池光氏の翻訳もやっぱりいい。ところどころでスペンサーを思い出してしまったりして。
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軽快で読みやすく、捻りが効いている、そしてそこはかとなく漂う哀愁…好きなタイプ小説だ。ロバートBパーカーで慣れ親しんだ、「菊池 光」さんの訳のせいもあるかもしれない。初ディック・フランシス、流石である。
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なにこれ面白い! こんな読みやすい翻訳初めて 海の向こうのユーモアがしっかり面白いってすごい事だと思う。 最近競馬で勝てないので、本の中でだけでも競馬に触れて、スッキリしようという、僕の糞みたいな欲求は充分満たされました。
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勝って当たり前。圧倒して当然。 こういうのは難しいですね。 ディック・フランシス。邦題は漢字二文字。競馬業界がらみの、大人の男性向け極上ミステリー。 更にその中の、引退した騎手が探偵として難事件に挑む、シッド・ハーレー主人公モノ。 更に、その中の「大穴」(1965年)。 定番中の...
勝って当たり前。圧倒して当然。 こういうのは難しいですね。 ディック・フランシス。邦題は漢字二文字。競馬業界がらみの、大人の男性向け極上ミステリー。 更にその中の、引退した騎手が探偵として難事件に挑む、シッド・ハーレー主人公モノ。 更に、その中の「大穴」(1965年)。 定番中の定番の、名作中の名作。 読んだことなかったんです。 こういうのは難しいですね。却って。自分の中でも妙にハードルが上がってしまって。 と、読み始めてしばらくは思ったのですが…。 いやあ、さすが。面白かったです。 無論こと、まあ、犯罪ミステリーという以上のものではないような小説ですけど、でも面白かった。馬鹿にしたもんじゃありません。 犯罪ミステリーとか、ハヤカワミステリーとか、刑事もの、探偵ものっていうのは全部そうですが、 意外に名品となると、なまじブンガクだとか難しい小説よりも、よっぽど深い。コクがあります。 というか、ブンガクだとか言われるものでも、面白いものは、要は犯罪ミステリの要素がたっぷりあったりします。「罪と罰」だって「こころ」だってそうです。 うまいなあ、いいなあ、と思ったのは。 主人公はシッド・ハーレー。元騎手。チャンピオンまで行った人なんですね。 (まずどうやら根本に、イギリスでは「競馬」という文化が日本より強く広く浸透していて、さらには、「紳士/上流階級の社交にもなるスポーツ」だ、ということのようです) さて、ハーレーさん。多分まだ30代。レースで大事故。左手を醜く損傷してしまって、不自由になり引退。 その後は探偵社に勤務。競馬にまつわるトラブル専門の部署がある探偵社なんですね。そこでまあ、お飾りみたいに働いていました。 要は、生きがいを急に失った。奥さんとも離婚。 どうにも人生抜け殻っていう時期なんですね。ハーレーさん。 このハーレーさんが、覚醒していく。 とある競馬場を不当な手段で株式買い占めして暴利を得ようとする悪者に立ち向かう。 きっかけは、あくまで偶然。そして、途中からは探偵社の正式な仕事として。 元騎手ならではの知識や経験をベースにして、立派な名探偵ぶりを発揮します。 そして、そんなこんなの途中で、 「醜い左手を人に見られるのが恥ずかしい」 という気持ちを、どう乗り越えていくか、という気持ちの問題が描かれます。 情報を得るために近づいた、株屋の秘書の女性が顔に傷を負っています。この女性がサブキャラなんですけど、とっても素敵な感じ。 この女性との交流。 そして、ハーレーが「元チャンピオン騎手」という過去から「競馬ビジネス専門の現役探偵」へと、果敢に人生をやり直していく。 それがとっても素敵なハードボイルド。 事件の段取り、解決への苦労もなかなかの説得力。 確かにディック・フランシス。「大穴」。うーん、素晴らしい。 とりあえずは、ハーレー三部作(なのかな?)は、安全牌の娯楽ミステリーとしてストック完了、という気分。 こういうのは、読書の快楽ですねえ。
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