1,800円以上の注文で送料無料

f植物園の巣穴 の商品レビュー

3.5

155件のお客様レビュー

  1. 5つ

    21

  2. 4つ

    44

  3. 3つ

    59

  4. 2つ

    14

  5. 1つ

    3

レビューを投稿

2019/07/12

先日読んだ『椿宿の辺りに』の前段の物語ということで再読。 久しぶりに読んだのだが、前回同様、どうにも入り込めなかった。 『家守奇譚』は大好きな作品なのだが、似たような話のこちらはなんだろう、主人公に魅力がないのか、物語のあまりのとりとめなさによほど懸命に付いていこうとしないとあっ...

先日読んだ『椿宿の辺りに』の前段の物語ということで再読。 久しぶりに読んだのだが、前回同様、どうにも入り込めなかった。 『家守奇譚』は大好きな作品なのだが、似たような話のこちらはなんだろう、主人公に魅力がないのか、物語のあまりのとりとめなさによほど懸命に付いていこうとしないとあっという間に置いてきぼりになってしまう。 〈f植物園〉の園丁として働く佐田豊彦の、植物園にある大きな木のウロに落ちてからの何とも不思議な旅の物語。 現在と過去、現実とファンタジー、現実の空間と異空間、この場所とあの場所、様々な相対する場所が行き来する。 とにかくフワフワしながら必死で物語に食い下がろうと読み進めていくが、終盤近くまで辛かった。 ところが中盤で登場したカエル小僧の正体が分かってからは、そういうことだったのかとようやく理解。 幼いころふといなくなってしまった大好きだったねえやの千代、妊娠4ヶ月に亡くなってしまった妻の千代。二人の真相も同時にわかる。 読み終えてみればホッとするような、一方で切なくなるような。 豊彦の置き土産が『椿宿の辺りに』で子孫が悩むことになるとは。

Posted byブクログ

2019/04/12

久々の梨木ワールド。 どこに連れて行かれるのか想像もつかないけど、最後には、あぁ、よかったと思えるから不思議。

Posted byブクログ

2019/01/15

苦しみに囚われている時、本来苦しみを共有すべき人間を慮る事は難しい。例えその人が自分以上に傷ついていたとしても、何よりも大切にしたい存在だとしても。 終いには、自分の苦しみは相手の苦しみに比べると取るに足らない、小さなものなのではと考えてしまい、正面から苦しみに向き合う事を放棄し...

苦しみに囚われている時、本来苦しみを共有すべき人間を慮る事は難しい。例えその人が自分以上に傷ついていたとしても、何よりも大切にしたい存在だとしても。 終いには、自分の苦しみは相手の苦しみに比べると取るに足らない、小さなものなのではと考えてしまい、正面から苦しみに向き合う事を放棄してしまう。 その結果、本来分かち合うべき相手と時間を過ごす事が苦痛になり、意識の中から相手を締め出してしまう事が多々ある。相手への罪悪感に耐え切れなくなってしまうのだ。 本作の主人公も、意識の内から様々なものを締め出してしまった一人だ。しかし、夢と現実を行ったり来たりしつつ、過去を辿り、失ったものを見つけ、緩やかに自己を再生、修復していく。 本作全体を包む、おおらかで圧倒的な、しかし非常に親密な土着的な空気の下に、ちらちらと見え隠れする人間的感情の描写が印象的だった。

Posted byブクログ

2018/12/25

夢を見ている状態をキープして本を書いているような本です。魚が立ち上がって歩いていたり、歯医者の奥さんが犬だったりします。読んでいると頭がぼわぼわしてきます。 ネタバレしようにも全体像が把握できないので、ふわーっとした読み口をそのまま楽しむ本でありますでしょう。 しかし最後まで読む...

夢を見ている状態をキープして本を書いているような本です。魚が立ち上がって歩いていたり、歯医者の奥さんが犬だったりします。読んでいると頭がぼわぼわしてきます。 ネタバレしようにも全体像が把握できないので、ふわーっとした読み口をそのまま楽しむ本でありますでしょう。 しかし最後まで読むとしっかり終わった感が有りました。最後はちょっとだけぐっときました。ちょっとだけね。 結局幻想的な話が苦手な即物的な自分を再認識しました。

Posted byブクログ

2018/10/08

22:「家守〜」や「村田〜」と同系統かと思っていたら、根底にあるものはそう違わないのだけれど、雰囲気は全然違いました。穴、という暗闇に落ち込むことで世界が二転三転し、ラスト数ページの展開でぶわっと涙が出ます。通勤で読むんじゃなかった……! どの作品にも共通することですが、情景描写...

22:「家守〜」や「村田〜」と同系統かと思っていたら、根底にあるものはそう違わないのだけれど、雰囲気は全然違いました。穴、という暗闇に落ち込むことで世界が二転三転し、ラスト数ページの展開でぶわっと涙が出ます。通勤で読むんじゃなかった……! どの作品にも共通することですが、情景描写がとてもきれいで瑞々しくてうっとり。

Posted byブクログ

2018/05/24

歯痛に悩む植物園の園丁がある日、巣穴に落ちると、そこは異界だった。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神……。人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、私はゆっくり記憶...

歯痛に悩む植物園の園丁がある日、巣穴に落ちると、そこは異界だった。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神……。人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、私はゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。

Posted byブクログ

2018/02/02

椋の木のうろ、虫歯のうろ。 スターレストランの千代さんと会う時に漂う月下香の香り、妻の千代の思い出の月下香の香り。 ねえやの千代、妻の千代、スターレストランの千代さん。三人の千代。 過去と現在が混在する世界で、記憶が結びついてゆく。 他の梨木作品にも通底するさまざまな要素が盛...

椋の木のうろ、虫歯のうろ。 スターレストランの千代さんと会う時に漂う月下香の香り、妻の千代の思い出の月下香の香り。 ねえやの千代、妻の千代、スターレストランの千代さん。三人の千代。 過去と現在が混在する世界で、記憶が結びついてゆく。 他の梨木作品にも通底するさまざまな要素が盛り込まれているので、西の魔女のように「わかりやすいファンタジー」を求める方には不向きかと思います。 ややこしい訳でも難解なわけでもないけれど、最低限の知識と読解力や結びつきに気づく力は求められます。 生と死、過去と現在、水子。 それにしても面白かった!!!

Posted byブクログ

2018/01/08

2014.7/6 不思議な不思議なズブズブと掴み損ねてぬかるんで...な物語。途中眠気に誘われて、諦めようかと閉じかけたもののその都度鞭打って進み、最後の数ページはひと息に。なるほどな物語。梨木作品、『裏庭』以来の苦行。

Posted byブクログ

2017/09/17

やっと読むことが出来ました。  過去や見ようとせずに過ぎ去ってきたもの、直視することを避けてきたものの溜まり場が在って、やはり人は全ての過去と全ての出会いの中の積み重ねに存在していて、段飛ばししては生けないのだろうな。  波風立てないように、上手くかわしながら生きていって...

やっと読むことが出来ました。  過去や見ようとせずに過ぎ去ってきたもの、直視することを避けてきたものの溜まり場が在って、やはり人は全ての過去と全ての出会いの中の積み重ねに存在していて、段飛ばししては生けないのだろうな。  波風立てないように、上手くかわしながら生きていってしまう私の中にも大きな溜まり場が在って、その淀んだ溜まり場に風を通すためには、きちんと直視して受け止めて責任を持って一歩ずつ階段を踏んでいくことが必要なのだなと思ってしまいました。 出来るかなぁ。。

Posted byブクログ

2016/05/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

梨木香歩さんの一風変わったファンタジー小説『f植物園の巣穴』。昭和初期らしい時代を舞台にした日本版アリス・インワンダーランドと言ったところか。主人公が巣穴に落ちるという事故を経て様々な不思議経験をすることとなり、ついには自分の過去の姿おも見かけるようになって行く。その不思議な経験を通じで自分のあるべき姿、自分の守るべきものというものに気付いたときに現実の世界に戻って行く事が出来、そこには新たな幸せの種が待っている事となる。こう書いてしまうと随分さっぱりとした読みやすい小説のようだが文体が美しいのだがちょっと昭和風というのか古風あので少し読みづらく、加えてファンタジー小説であるが故の話の若干の複雑さもあるので結構読み応えがある物語だった。 そんな昭和風味のファンタジー小説を読むBGMに選んだのはMichael Breckerの"Nearness of you". 二曲だけ客演のJames taylorがジャズアルバムなのに不思議だけどいい。

Posted byブクログ