f植物園の巣穴 の商品レビュー
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始めから、どういうこと?どういうこと?と思いながら読み進めた。 手探りで読み進めていくと予想もつかないところへ辿り着く感じは『冬虫夏草』でも感じた。 疑問ばかり沸くのに、時折感じる不思議な吸引力に読むのを止められず、最後には美代が生きていたことに驚かされた。 妻子を失った割に坦々としているなと思ったが、そうではなかった。受け止められていなかっただけだった。 独特な不思議ワールドは、学生の頃読んだ村上春樹を思い出させた。 あちらは洋でこちらは和だが。
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某ボートから出てくる人のシリーズから手に取った人には 区切りがないために読みづらさを覚えるかもしれません。 アチラよりも現実と非現実の境界が 非常にあいまいというかフッツーにいらっしゃるので。 別のf植物園にやってきた男は いつの間にか姿は子供へと変わっていました。 そして一人の少年と出会うことになるのです。 これってこの作品はフィクションだけれども 彼のような人間っていっぱいいるんだ。 時に、それと向き合う必要ってあるのよね。 今回はこの巣穴に迷い込んで 彼は真実と、現実と向き合うことができたわけで。 ホッとしたね、結末は。
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アゲハチョウはミカン科が好きで、その葉に卵を産み、モンシロチョウはアブラナ科が好きで、その葉に卵を産むことは知っています。そして、芋虫が蛹でいったん液体になり、それが成虫としてふ化する不思議さに驚いています。そんな世界を彷彿とさせる梨木香歩さんの作品「f植物園の巣穴」(2009.5発行)。歯の治療の進行に合わせた摩訶不思議な世界の描写、よく創作されるものだと、いたく感心しました。
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後半まで主人公はどこにいるのか?現実世界の日常なのか、不思議な世界の中にいるのか分からない。後半で、彼の心の枷となっていることが反映されている世界なのだと分かる。夢の中で、自己と向き合い癒していく物語なのだと思った。 本に出てくる植物は名前だけだとイメージがつきにくく調べながら読...
後半まで主人公はどこにいるのか?現実世界の日常なのか、不思議な世界の中にいるのか分からない。後半で、彼の心の枷となっていることが反映されている世界なのだと分かる。夢の中で、自己と向き合い癒していく物語なのだと思った。 本に出てくる植物は名前だけだとイメージがつきにくく調べながら読み進めると時間がかかってしまった。
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またまた不思議な世界に入り込んだ。 無意識に蓋をしていた現実に、向き合うことができるまでの彷徨い。 歯の穴の中の乳歯、椋の木のうろの中の乳歯、流れてしまった自分の子ども、歯のために死んだ千代、傲慢な自分。全部受け止めて、もう一度新たに生きていく。 一度読んだだけでは、全体の構造が...
またまた不思議な世界に入り込んだ。 無意識に蓋をしていた現実に、向き合うことができるまでの彷徨い。 歯の穴の中の乳歯、椋の木のうろの中の乳歯、流れてしまった自分の子ども、歯のために死んだ千代、傲慢な自分。全部受け止めて、もう一度新たに生きていく。 一度読んだだけでは、全体の構造がわからない。 でも、登場人物が佐田を導いてくれているということは感じる。 なんだかもやもやしているけど、嫌な気分ではない。
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なんとも不思議な世界観と読後感。 好きな人はすごくハマると思う。 主人公の心情や境遇と、出て来るキャラクターが比喩的に使われて、深く読むことができる。一度だけではそこまで読み込めなかったが、国語の問題を解くように読むとまた面白いのではないか。
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植物園の園丁氏は、赴任したf郷で放置していた虫歯の痛みに耐えかね、f郷歯科を訪れる。そこで歯科医の妻の姿が犬に見え… 先に『椿宿の辺りに』を読んでしまったので、遅ればせですが。 まるで他人の夢の中を手探りで進むような感触でした。読み終えてすぐだからか、頭の中にあるその感触を、...
植物園の園丁氏は、赴任したf郷で放置していた虫歯の痛みに耐えかね、f郷歯科を訪れる。そこで歯科医の妻の姿が犬に見え… 先に『椿宿の辺りに』を読んでしまったので、遅ればせですが。 まるで他人の夢の中を手探りで進むような感触でした。読み終えてすぐだからか、頭の中にあるその感触を、うまく言葉にすることができません。つまり、そういう小説なんでしょう。夏目漱石の『夢十夜』か、あるいは村上春樹の『海辺のカフカ』を読んだ時の感じに似ているような… とにかく、涼しくなったら小石川植物園に行こう‼︎と強く思っています。
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文章は美しく短い。だが、ずっと夢の中のような、不確かな世界で迷子になった気分になり、読んでいると振り落とされそうになる。今市子の『百鬼夜行抄』の異界にいる時みたいで、時間も空間も怪しく、展開が読めない。主人公は、ずっと千代を探している。 しかし最後には一応納得のいく話の流れがあり...
文章は美しく短い。だが、ずっと夢の中のような、不確かな世界で迷子になった気分になり、読んでいると振り落とされそうになる。今市子の『百鬼夜行抄』の異界にいる時みたいで、時間も空間も怪しく、展開が読めない。主人公は、ずっと千代を探している。 しかし最後には一応納得のいく話の流れがあり、物語として理解しやすかった。
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すみません、ちょっと苦手でした。 8割方読んのですが、諦めました。 イメージとしては、クジラアタマの王様、夜は短し歩けよ乙女 のイメージに近いと思いました。ちょっとドタバタですね。
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全体が「家盛奇譚」のような感覚を受けた。それが1冊となるで、途中、意味がわからなくなってきた。 「椿宿の辺りに」が、本作の続編で、この作品の最後の2章の意味をもっと正確に知りたくて読んだのだが、そもそも、主人公・佐田豊彦が勤務しているf植物園の椋の木のムロに落ちた。落ちた記憶はな...
全体が「家盛奇譚」のような感覚を受けた。それが1冊となるで、途中、意味がわからなくなってきた。 「椿宿の辺りに」が、本作の続編で、この作品の最後の2章の意味をもっと正確に知りたくて読んだのだが、そもそも、主人公・佐田豊彦が勤務しているf植物園の椋の木のムロに落ちた。落ちた記憶はなく、物語は歯痛の話から始まり大家の頭が雌鶏であった。そして、向かった歯医者の家内は前世が犬であったということで、時に犬に戻る。洋食屋のスターレストランに勤める年配の女給の名前は御園尾千代といい、オオバコのことをげえろっぱという。この葉で死んだカエルを包むと生き返ると言う。恩師から譲り受けたウェリントン・ブーツがいつのまにか女物の草履となっていたり、草履の代わりに大家から借りた男物の靴が持ち主のところに連れて行ったりと、烏帽子を被った鯉やらナマズの神主がでてくる。 挙げ句の果てには、幽体分離!ただ、この幽体分離の一説に『ほう』と、面白い表現がある。「その呑気に横たわっている自分の体の傍で、誰かが湿した綿を用いて口元を潤そうと看護に当たってくれている。その女人をよく確かめようとするが、何しろ体がないものだから眼球もない。目を凝らす場合いつも習慣化されていた力の入れ処がなく、焦点の当て方も茫漠として、天井の片隅で焦るばかりだ。」たしかに!よく映画や漫画でみる幽体離脱は体がコピーされたかのように描写されているが、実際には、魂の分離なのだから、実態がないのだ。こんな些細なことに反応してしまう。と、関心しながらも、いつか意味が通じるかもしれないと、意味が全くわからない文章をまるで修行をしているかのごとく(例えば、数学で全く理解不能な問題に出会って、どうにかこうにか解こうとしているかのように)、『幼少期の思い出を夢の中で繋げようとしているのか』と、いう程度でしか理解できなかった。 読めば読むほどわからなくなり、途中、中だるみをしてしまう。 「椿宿の辺りに」のキーワードがいったいこの話の中のどこにあるのかと、探るように読んでいたのが、いけなかったのかますますわからなくなり、無にして読み直す。 何も考えずに読むと、それなりに意味があり面白く、巣穴の世界での奇妙な体験は豊彦にとっての大切な人、大切なものとの交わりである。亡くなってしまった人たちと、巣穴で交わることで、記憶からはじき飛ばされた記憶を正確な記憶として豊彦の心に刻み直す。 特にカエル小僧が出てきてから、豊彦が幼かった時の忘れていた経験や誤った記憶を正しい記憶として訂正していく。また、カエル小僧の登場も、歯科院で治療していることも、前世が犬の歯科医の家内、雌鶏の頭も全て豊彦の忘れていた記憶に繋がるものであり、記憶を取り戻すために意味があったのだ。ドッペルゲンガーの「ナスベキハイエノチスイ」。そして、為すべきは家の治水。ここに「椿宿の」のキーワードがあった。 巣穴から戻ってこれたのは、亡き息子・道彦の導きだ。カエル小僧・坊が、豊彦の失っていた記憶を元に戻し、人柄までも変えたのだ。 が、しかし…道彦がこの時、千代に会うために治水の問題は私の任でないと言うところで「椿宿」を考え「ああ、終わった」と思ってしまった…^ ^
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