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瓶詰の地獄 の商品レビュー

4

106件のお客様レビュー

  1. 5つ

    29

  2. 4つ

    33

  3. 3つ

    26

  4. 2つ

    1

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2022/04/07

夢野久作の短編集。『ドグラ・マグラ』よりも好きかも。相変わらず読後感が悪い(そこが良いんだが)エログロナンセンスの世界。『瓶詰めの地獄』『死後の恋』など評価の高い作品も良かったが個人的には『鉄鎚(かなづち)』が好きだった。悪人だったはずの叔父が次第に弱く軟化してくる様子。対して主...

夢野久作の短編集。『ドグラ・マグラ』よりも好きかも。相変わらず読後感が悪い(そこが良いんだが)エログロナンセンスの世界。『瓶詰めの地獄』『死後の恋』など評価の高い作品も良かったが個人的には『鉄鎚(かなづち)』が好きだった。悪人だったはずの叔父が次第に弱く軟化してくる様子。対して主人公と、伊奈子の悪魔性が増長するさまは面白い。人間って環境とか、時間が変われば中身も変わるんだよねーとしみじみ。 『一足お先に』は、サスペンス的な要素が面白かったけどオチが弱かったかな? 『瓶詰めの地獄』は短いながらかなり印象に残った作品で、手紙の順が時間と逆行しているのも小説としてストーリーが秀逸。 それにしても今から半世紀以上前にこんな作品が世に発表されていたなんて、日本の文学界ってかなり昔から自由な風潮があったのね。

Posted byブクログ

2022/02/23

純文学というのは、読む度に新しい感情や自分の気持ちに気づく事ができる自分自身を映す鏡のような物だと常々思っているのだけれど 夢野久作の作品は違う 読めば読むほど深みに嵌り抜け出せなくなる 読者すら作品の一部となっていく、そんな感覚すらある 瓶詰の地獄はそんな夢野久作の作風をたっ...

純文学というのは、読む度に新しい感情や自分の気持ちに気づく事ができる自分自身を映す鏡のような物だと常々思っているのだけれど 夢野久作の作品は違う 読めば読むほど深みに嵌り抜け出せなくなる 読者すら作品の一部となっていく、そんな感覚すらある 瓶詰の地獄はそんな夢野久作の作風をたった15頁に凝縮したような作品

Posted byブクログ

2022/01/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

夢野久作の幻魔的世界へ! 何回読んだか知れない大傑作『瓶詰の地獄』に始まって、ちょっとゾクッとする『人の顔』を挟み、『死後の恋』後半の圧倒的衝撃と描写力に恍惚と震え上がり、『支那米の袋』でのeroguronansensuに目を離せなくなり、そのまま『鉄槌』を読んでチョット感傷的になったかと思えば、『ドグラ・マグラ』の香りが漂う『一足お先に』と『冗談に殺す』の事件ものがあり、締めは中井英夫の解説……と、これだけで分かる圧倒的充実感! それと、私の角川の本は装丁のイラストが米倉斉加年版なので、雰囲気もバッチリなんですよねェ。たまりませんわ。 収録作の中で好きなのはヤッパリ『瓶詰の地獄』、『死後の恋』、『支那米の袋』かなァ。でも、個人的には、どこまでも続く謎を残す『瓶詰の地獄』と『死後の恋』が飛び抜けて好きです。 『瓶詰の地獄』★5 何回読んだか知れない、個人的には大傑作。あっという間に読み終わるのに、残るものが多すぎて考察が捗る作品。丸尾版コミカライズも読んだけれど、やっぱり原作の煌々とした禍々しさがクセになって戻ってきます。 『人の顔』★4 ゾクッとする短編。おぼつかない口調で恐ろしいことを話し出すチエ子が好きすぎて……。幼いながらも持ち合わせる不気味な魅力と育ての良さがチエ子の会話の節々に見られて、読んでいて虜になる作品。 『死後の恋』★5 これは文句なしの傑作だと思います。初読は前半部分の複雑さというか言い回しがしっくりこなくて進みが遅くなりますが、後半の圧倒的衝撃と描写力には恍惚と震え上がり、そこからはもうこの作品の虜です。夢野久作の複雑怪奇な話の展開とグロデスクな描写が見事にこの作品には収斂されていると思いました。最高! 『支那米の袋』★5 これぞ夢野久作文学の真骨頂! 幻想的な雰囲気の作品と言うよりは『いなか、の、じけん』を彷彿とするような粗野で下劣、ナンセンスな事件の被害者の話ですが、その生々しさと、夢野久作が生涯言っていた「人間の闇」的な部分も垣間見ることができて、個人的にはとても満足の一作です。すべての遊びに飽き飽きて「ステキな遊び」を語るワーニャさん、ものすごく蠱惑的です… 『鉄槌』★4 『なんでもない』で有名な姫草ユリコなど、夢野久作の作品に登場する魅力的な女性像をこの作品にもまた感じますね。マゾヒズムの趣があったり、本文中に「悪魔」と多用されていることからも、安直ながら、そのまま『悪魔』と題のついた谷崎潤一郎の作品を彷彿とさせます。愛太郎が伊奈子に向ける複雑な感情はまた、夢野久作作品には珍しい儚さを感じますね。 『一足お先に』★4 イヤハヤこれは夢か現か・・・・・私とは一体何者なのか・・・・・・・。病院、妹、殺人、不気味な赤ん坊の描写、忘れていた記憶・・・・・・・夢野久作の作品の中で牙城の如く聳える『ドグラ・マグラ』の血腥い臭いが漂う、病院の中で起こった奇妙な体験ですね。完璧な世界観でタイトルの『一足お先に』が秀逸なのはともかく、これは怖い! 特に最後の妹と青木の会話に主人公が全く加わらず、「・・・・・・・」と続くともう! 『冗談に殺す』★3 この作品はやはり冒頭、活劇女優が主人公に見せる残虐な遊戯の描写力と、彼女の心理をうかがわせる明晰な描写に光るものがあると思います。『空を飛ぶパラソル』などに代表される夢野久作の残虐な構成力を堪能できる一作です。

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2022/03/10

夢野久作の七篇構成の短編集。 瓶詰の地獄 ☆☆☆★★ 兄妹の禁断の恋と、それに対する苦悩。順序の分 からない3つの手紙。兄と妹の互いの気持ちがリアルに伝わってきて苦しかった。 人の顔 ☆☆☆★★ 母の浮気を子が知って、それを父に知らせると父 は子を睨み───。この続きがハッ...

夢野久作の七篇構成の短編集。 瓶詰の地獄 ☆☆☆★★ 兄妹の禁断の恋と、それに対する苦悩。順序の分 からない3つの手紙。兄と妹の互いの気持ちがリアルに伝わってきて苦しかった。 人の顔 ☆☆☆★★ 母の浮気を子が知って、それを父に知らせると父 は子を睨み───。この続きがハッピーエンドに 繋がると考えるのは難しそうなのでつらい。 死後の恋 ☆☆☆☆★ これは素晴らしい恋愛作品。‥‥アナスタシヤ内親王殿下‥‥。この7つの作品の中では個人的に一番よかった。FGOでアナスタシアが好きな人は是非。 支那米の袋 ☆★★★★ これは微妙。 鉄鎚 ☆☆☆★★ まるで悪魔な叔父と更にその悪魔度を上回る伊奈子、しかし本当の悪魔はその2人のどちらでもなくなんと自分自身だったという伏線回収。結局最後の「伊奈子の真実」が何なのかが分からなかったが、もしも主人公の母親だとするのなら感動作品になっていただろう。 一足お先に ☆☆★★★ 一言で現すと短編版ドグラ・マグラ。 冗談に殺す ☆☆★★★ 「完全犯罪は成立しない」と主張していた主人公がとある女と出会い関係を深めていくのだが、段々とその女の悪魔のような性格に気づき始めついにはその女を殺してしまう。証拠を完璧に消し去り完全犯罪かに思われたが、一つの鏡がきっかけでその男は完全犯罪に失敗する。そう。「完全犯罪」は成立しなかったのである。

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2021/08/18

収録されている死後の恋にある森での戦闘後の場面では、この世の物とは思えないオブジェを文章から想像楽しむ事ができますよ。

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2021/08/12

〇瓶詰めの地獄 浜辺に流れ着いた3つのビール瓶。中に手紙が入っており、第1の瓶の内容、第2の瓶の内容、第3の瓶の内容とを題字に、内容が書かれている。 短編で何度でも見返し安いので、久作ワールドを解き明かしたい人にはもってこいかも。 再再再読したい。 〇人の顔 奇妙な子と言わ...

〇瓶詰めの地獄 浜辺に流れ着いた3つのビール瓶。中に手紙が入っており、第1の瓶の内容、第2の瓶の内容、第3の瓶の内容とを題字に、内容が書かれている。 短編で何度でも見返し安いので、久作ワールドを解き明かしたい人にはもってこいかも。 再再再読したい。 〇人の顔 奇妙な子と言われているチエ子と母と父との話。 チエコが不気味な事を言う。 チエコが不気味な事を媒体にしてとんでもねぇ事を暴露する。 チエコは寂しかったんやと思う。寂しくて伝えたくて奇妙やったんやと思う。可哀想。 〇死後の恋 再読する。 〇支那米の袋 読んでいる途中で大事を見つめて、「袋」と書いてあることにゾッとした。そのままゾッとする展開になった。 人の心を懐柔しカリスマ性があり都合が悪くなると人命も厭わず捨てる様はまさにサイコパス。夢野久作はサイコパスに散々な目に合わされたのではないかと思う1作だった。居たので見てたのか。 誘拐気分を味わえる。明らかに殺されるが逃げられないあの恐怖を味わえる。味わいたくない。 時代も時代だしそこそこ有りそうな感じで今まで読んだ久作の中でいちばん怖いかも。寝れない。 〇金槌 心の悪魔の成長の話。本物の悪魔は自覚がない、この一文がポイント。 他人事が悪魔なんだと思う。 父はまともで、叔父と子が悪魔で気があった。超雑だけど大体こんな動き。子の物ともしない所か見物として叔父を見ている感じが見どころ。 〇一足お先に ドグラ・マグラの... ファントムペイン。実際のものと幻想と認知の脳髄の....この感じ...構造か設定か、は大体ドグラと一緒だった。 何がどうでどっちがなんなのか狂わせてくる。嘘かホントか、真かウソかといったような感じ。 これを解き明かせたら、昔のバイトの店長の謎も解き明かせる気がする。暗示とは恐ろしい物だし、潜在意識にあたえる影響は自分の意思ではどうにもならない。 現実と幻想の境界線なんて無いんだよと教えてくれるような話だった。脳が溶けるというか、体が溶けて形を保てないような感覚になった。さすが日本三大奇書のジョブと言ったところ。夢の夢返し! 紅梅焼 〇冗談に殺す オレダヨーーーオーーー 人はやっぱり犯した罪を隠し通すのが無理だと分かる

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2021/07/13

「ああ。お父様。お母様。すみません。すみません。...」南海の島からの便りに戦慄が走る。何不自由のない楽園の一部始終。十年という幸福な歳月が心身共に健康な兄妹を翻弄する。明朗な陰鬱、不潔漂う清潔感。数々の作品が心の深淵に瓶詰めにされ打ち寄せた。

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2021/01/27

極楽鳥が舞い、ヤシやパイナップルが生い繁る、南国の離れ小島。だが、海難事故により流れ着いた可愛らしい二人の兄妹が、この楽園で、世にも戦慄すべき地獄に出会ったとは誰が想像したであろう。それは、今となっては、彼らが海に流した三つの瓶に納められていたこの紙片からしかうかがい知ることは出...

極楽鳥が舞い、ヤシやパイナップルが生い繁る、南国の離れ小島。だが、海難事故により流れ着いた可愛らしい二人の兄妹が、この楽園で、世にも戦慄すべき地獄に出会ったとは誰が想像したであろう。それは、今となっては、彼らが海に流した三つの瓶に納められていたこの紙片からしかうかがい知ることは出来ない…(『瓶詰の地獄』)。読者を幻魔境へと誘う夢野久作の世界。「死後の恋」など表題作他6編を収録。

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2020/10/22

思ってたより全然読みやすくて面白かった。 読む前は気味悪さ、グロさだったり狂気的な内容と思っていたが文体も読み易いし内容も神秘的で官能的。 ついつい引き込まれる。 評価が高いのもうなずけるし他の作品にも興味が沸く。 こういう世界観はいいなと思わされた一作。

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2020/11/02

初めて読んだ夢野久作の著書でした。 死後の恋の一周まわって気持ちいいくらいの惨憺たる残酷描写が好きです。 三大奇書にも選ばれている「ドグラ・マグラ」の作者ともあって、私が期待していた通りの文章の奇怪さ、陰惨さ、陰鬱さでした。 特に印象に残ったのは瓶詰めの地獄、死後の恋、支那...

初めて読んだ夢野久作の著書でした。 死後の恋の一周まわって気持ちいいくらいの惨憺たる残酷描写が好きです。 三大奇書にも選ばれている「ドグラ・マグラ」の作者ともあって、私が期待していた通りの文章の奇怪さ、陰惨さ、陰鬱さでした。 特に印象に残ったのは瓶詰めの地獄、死後の恋、支那米の袋。 この短編集はどの話も、「救いようのない」終わり方をします。それでは何の解決にもなっていない、という終わり方です。 特に瓶詰めの地獄は手紙方式ですが、順番になっている割になんだか話が前後しているような感覚でした。 夢野久作という人物は、人は救われない、「救われない」という意味で人生には終わりがないと考えている人なのかもしれない。 私は狂気に満ちたような描写やストーリーが好きです。とても肌に会う作品でした。 残酷描写が苦手な人は気をつけてください。

Posted byブクログ