アイの物語 の商品レビュー
AIに自立型アンドロイドが普及する未来は、映画「ターミネータ」のように人間に反旗をひるがえすのか?語り部に7つの物語を伝えるアンドロイドのアイビスの真意とは。ひとつひとつのストーリーもさることながら、ラストへの展開は圧巻。 最近AI技術やロボット工学のレベルがあがっているからこそ...
AIに自立型アンドロイドが普及する未来は、映画「ターミネータ」のように人間に反旗をひるがえすのか?語り部に7つの物語を伝えるアンドロイドのアイビスの真意とは。ひとつひとつのストーリーもさることながら、ラストへの展開は圧巻。 最近AI技術やロボット工学のレベルがあがっているからこそ読んでおきたい一冊。
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読み終えた時、人間はなんて不完全で不安定な生き物なのだろうと感じた。だからこそ深みや面白みもあるのだろうな、とも。人間は基本的にエラーを起こす生き物である事を意識するってかなり衝撃でしたし、新しい価値観を得られました。 この物語には、心穏やかに生きる為の「ヒトのあり方」が書かれ...
読み終えた時、人間はなんて不完全で不安定な生き物なのだろうと感じた。だからこそ深みや面白みもあるのだろうな、とも。人間は基本的にエラーを起こす生き物である事を意識するってかなり衝撃でしたし、新しい価値観を得られました。 この物語には、心穏やかに生きる為の「ヒトのあり方」が書かれているような気がします。 SFものではあるがとても読みやすいのも素敵です。 AIが普及している現代社会、それぞれが身近に本当に起こり得そうな話が多く没入できました。
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みなさんの高評価はうなずける。同著者、『神は沈黙せず』を手にして読み進めると、遠藤周作『沈黙』のパロディではなかった(笑…かなり意欲的な内容で好感をもった。そこで、著者2冊目の本書を手にする。こちら、人類の未来像をわたしのまだ知らぬ角度から、提示してくれた。はっと驚かされるSF...
みなさんの高評価はうなずける。同著者、『神は沈黙せず』を手にして読み進めると、遠藤周作『沈黙』のパロディではなかった(笑…かなり意欲的な内容で好感をもった。そこで、著者2冊目の本書を手にする。こちら、人類の未来像をわたしのまだ知らぬ角度から、提示してくれた。はっと驚かされるSFの良書である。SF好きには定番なのだろうか、SFにあまり関心のない人も十分楽しめる。本書の手引きとなるヒントを少し「人工知能を持つに至るロボットは、人類が目指した至高の愛を手に入れるのだった・・・」なんと素敵な未来だろう・・・
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※このレビューにはネタバレを含みます
とても興味深い内容で、とても面白くとても良かった。 SFは例え日本人作家でも想像しにくい、とっつきずらい印象があったが平易でわかりやすい文章かつ想像しやすい描写のおかげでスムーズに読めてテーマに集中できた。 楽しいひとときを与えてくれたことに感謝したい。 前半短編5本は初出が雑誌、描き下ろし中編2本の7本と、その間を「僕」とアイビスの邂逅のエピソードのプロローグ、インターミッション1~8、エピローグで繋げられている。 本書の構成やあらすじは他の方の詳しい記述にまかせるとして。 詩音が出した「すべてのヒトは認知症」という結論はとても面白かった。 ヒトとAIは身体も精神も別の生物なのだから相互理解ができない、けれど共存はただ許容することで可能というのはとてもリアリティある話で、これは別にフィクション内のヒトとTAIの間だけの話じゃない、現実のヒトの同種族同士だってできてないので(TAIに言わせれば認知症だからだけど)そこを乗り越えることが人間種族の進化できるか否かにかかっているのじゃなかろうかとぼんやり考えた。 TAI同士は虚数を交えた感情表現を伴う独自言語で話すなど、興味深いアイデアが満載で楽しく読めました。
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そういや最近囲碁ソフトが人間を凌駕したっけなー。 そういうことを思い出すと、案外この話は 遠くない話なのかも知れない。 ラストは意外にほっこりして好き。
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ロボットは人間の命令に従わねばならない、ロボットは人間を傷つけてはならない、以上に抵触しない範囲でロボットは自分を守らねばならない、という、アイザック・アジモフのロボット工学の三原則は、ロボット物語のひとつの参照点となるとともに、論理性を重んずるアジモフのSFミステリの大きな駆...
ロボットは人間の命令に従わねばならない、ロボットは人間を傷つけてはならない、以上に抵触しない範囲でロボットは自分を守らねばならない、という、アイザック・アジモフのロボット工学の三原則は、ロボット物語のひとつの参照点となるとともに、論理性を重んずるアジモフのSFミステリの大きな駆動剤になったといえる。が、少々、言語学を齧るとこれが不可能な設定であることに気づく。三原則は言語で記述されている。これをどうやってマシンの言語に翻訳可能なのか。言語につきまとう曖昧性をどのように回避できるのか。 地球がマシンによって支配され、ヒトは細々とあちこちのコロニーで暮らしている未来。コロニーを巡り歩いて、昔、ヒトが地球の支配者だった頃に書かれた物語を語る「語り部」の「僕」は、女性型アンドロイド、アイビスに捕獲されてしまう。アイビスはただ話がしたいだけという。マシンによってヒトが迫害されていると信じる「僕」は、マシンのプロパガンダを聞かされると警戒する。しかしアイビスは、20世紀の終わりから21世紀の初め頃にヒトによって書かれた物語を聞かせたいというのだ。 という枠組みのもと7つの短編が束ねられている。最後の「アイの物語」はアイビス自身の物語なので、枠組みの一部と言える。「ロボットや人工知能を題材とした6つの物語」とカバーには書いてあるが、ちょっと違う。この短編群は、直接的な関連はないので連作短編ではないし、6編すべてに統一したテーマがあるというわけでもない。ヴィトゲンシュタインいうところの家族的類似性を持って束ねられているのだ。現実のフィクションに対する優位性、リアル世界のヴァーチャル世界に対する優位性を相対化するという流れがひとつ。前者は語ることの力という問題圏となり、それと重畳するかのように、ヴァーチャルとしての人工知能(AI)のありかたがテーマとなる。 作者は純粋な論理性が倫理性に至ると考えている。条項として盛り込まなくとも、自律的に機能するAIにまで到達すれば、自ずと三原則類似の状態は達成される。それに対して、常に論理的に考えるとは限らないヒトは倫理的に振る舞うことができず、しばしば残虐な行為を生み出す。この非論理性は「トンデモ本」でいやというほど取り上げられてきたものだ。「トンデモ本」を楽しんでいた山本はここでは、ヒトの非論理性に諦念を示しているかのようだ。AIこそがヒトの生み出した次なる進化形ではないか、すなわち山本版『幼年期の終わり』。 「僕」は6つの物語を聞き終えて、最後にアイビス自身の物語、すなわち、長老たちから聞かされていたのではない、ヒトとマシンの本当の歴史を聞く。エピローグは「老いたる霊長類の星への讃歌」として感動を誘う。 作者はこの作品でAI賛歌を謳っているようにみえるが、AI的知性の陥穽を描いた『去年はいい年になるだろう』はこの姉妹編といえる。まだ読んでいないが、論理性=倫理性というテーマは『詩羽のいる街』で展開されているらしい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
SFは苦手意識があったけど、この本のお話はどれも読みやすいし、いい感じでまとまってた。 仮想現実の世界の話や宇宙の果ての話など、いろんな世界観の話があって飽きずに読める。 「詩音が来た日」は長いけど、最後は感動できた。こんな世の中になったらいいなって思える。
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アンドロイドが人間の理想なら、人間にとって代わってアンドロイド中心の世界になったとしても、仕方ないのかな、と思う。そんなにすんなり受け入れられるわけではないけれど。
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とても良かった。頻繁にジョークに笑い、新語、比喩を考案するTAI(真のAI)。わからない単語や言い回しは多いし i(虚数)を使うのもちんぷんかんぷんだ。どんな言語なのだろう。 「詩音が来た日」でAIがどのように学習、成長するか描かれ、人の命令に従わないことがどのような理由により決...
とても良かった。頻繁にジョークに笑い、新語、比喩を考案するTAI(真のAI)。わからない単語や言い回しは多いし i(虚数)を使うのもちんぷんかんぷんだ。どんな言語なのだろう。 「詩音が来た日」でAIがどのように学習、成長するか描かれ、人の命令に従わないことがどのような理由により決断されるのか分かった。そして次の話で……
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この本の舞台は人類が衰退し、マシンたちが世界に君臨する未来の地球。ロボットを憎む1人の青年は、美しいアンドロイド・アイビスと出会う。足を負傷した青年に対し、アイビスは彼に何編かの“フィクション”を聞いてほしいと頼み、語り始める。 高性能ロボットが人間界を脅かし…という流れはSF...
この本の舞台は人類が衰退し、マシンたちが世界に君臨する未来の地球。ロボットを憎む1人の青年は、美しいアンドロイド・アイビスと出会う。足を負傷した青年に対し、アイビスは彼に何編かの“フィクション”を聞いてほしいと頼み、語り始める。 高性能ロボットが人間界を脅かし…という流れはSFでよく見かけるパターンですが、この本はラストまで読むと一辺倒にはいかない結末で新感覚でした。アイビスが語るロボットと人間との交流を描いたフィクションは、個別の短編として興味深く読めるものばかり。個人的には、学習する介護ロボット“詩音”が老人やスタッフとの交流のなかで学び成長する物語「詩音が来た日」が一番印象的でした。 人間には出来ないことをロボットが達成する。そんな未来を悲観するのではなく肯定するラストは、SF好き著者の願いのようにも思います。
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