アンデスの奇蹟 の商品レビュー
1972年に起こったアンデス山脈に墜落した飛行機事故の生存者の一人である、ナンド・パラードの視点から描かれた事故の発生から生還までを記した物語。 事故から生還までの経過が時系列で語られるとともに、その時その時のナンドの心情が余すことなく語られていて、大変な臨場感を感じることができ...
1972年に起こったアンデス山脈に墜落した飛行機事故の生存者の一人である、ナンド・パラードの視点から描かれた事故の発生から生還までを記した物語。 事故から生還までの経過が時系列で語られるとともに、その時その時のナンドの心情が余すことなく語られていて、大変な臨場感を感じることができる。 友を喪い、母を喪い、妹を喪い、捜索が打ち切られたというニュースを聞いてしまい、それでも自分を失わないその強さには敬服しかない。 生還のためのアンデス越えも装備品の状態や当人の健康状態を考えると奇跡。飛行機が墜落して生き残る、そこから2ヶ月生き延びるなど、奇跡が多過ぎて、どれも一場面で終わらせるようなものではなく、その場その場のことを思うと胸が詰まってくる。 「自分の存在を慈しみ、一瞬一瞬を生きる、ひと息も、無駄にすることなく。」 訳書なので訳者の紡いだ言葉ではあるが、とても印象的な一文。 この事故のことは薄っすらと聞いたことがある程度だったが、この事故のことを取り扱った他の本も読んでみたい。
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読んでいる最中は辛くて辛くて、ほぼ速読。赤裸々に語られていて、「こんなに語って大丈夫か?」と思わされけれど、終章・エピローグを読んで、納得。 生存者のひとりであるナンド・パラードが語り手で、他の生存者とのその後の交流まで記されてあるので、事故の手記でなく、自身が救われるまでの過程...
読んでいる最中は辛くて辛くて、ほぼ速読。赤裸々に語られていて、「こんなに語って大丈夫か?」と思わされけれど、終章・エピローグを読んで、納得。 生存者のひとりであるナンド・パラードが語り手で、他の生存者とのその後の交流まで記されてあるので、事故の手記でなく、自身が救われるまでの過程もあることで、読者自身も救われる。
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1972年にアンデス山中に墜落した飛行機の乗客が救助されるまでの72日間を、生還者みずから語るノンフィクション。この事件は、「死体を食べる」ことがクローズアップされて話題になりましたが、本著は、墜落機のある雪山から人の住む放牧地まで救助を求めて脱出した本人が生還までのディテールを...
1972年にアンデス山中に墜落した飛行機の乗客が救助されるまでの72日間を、生還者みずから語るノンフィクション。この事件は、「死体を食べる」ことがクローズアップされて話題になりましたが、本著は、墜落機のある雪山から人の住む放牧地まで救助を求めて脱出した本人が生還までのディテールを記し、そのときの心情も交えて叙述した作品です。興味本位のカニバリズムだけではなく、生存者本人が語る生への意志と宗教観が描かれたノンフィクションとして、アメリカだけでなく世界二十数カ国でベストセラーの邦訳。(アマゾン紹介文)
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チャーターしたウルグアイ空軍機はアルゼンチンの空港で天候の 回復を待っていた。乗客はチリで行われる親善試合に出場予定の ウルグアイのラグビー・チームとその関係者。 空港を飛び立った飛行機はアンデス山脈を越えようとして乱気流 に捉えられた。激しく上下する機体。パイロットはどうにか...
チャーターしたウルグアイ空軍機はアルゼンチンの空港で天候の 回復を待っていた。乗客はチリで行われる親善試合に出場予定の ウルグアイのラグビー・チームとその関係者。 空港を飛び立った飛行機はアンデス山脈を越えようとして乱気流 に捉えられた。激しく上下する機体。パイロットはどうにか機体 を立て直そうとしたが、雲が切れた先には山の稜線があった。 1972年10月13日。チャーター機はアンデス山脈に墜落した。 この事故に関しては映画「生きてこそ」があり、16人の生存者へ のインタビューを元に書かれた『生存者』がある。本書は16人の 生存者のひとりであり、捜索活動打ち切り後に救助を求めて アンデスの山々を越えるという超人的な挑戦を成し遂げた ナンド・パラードが、35年振りに事故を振り返って書かれている。 きっと救助隊が見つけてくれる。心の支えだった希望は、ある日、 偶然受信したラジオのニュースで打ち砕かれる。捜索打ち切り。 ならばどうする。自分たちで救助を求める為に、山を越えようで はないか。 見渡す限りの雪山。吹雪や雪崩に襲われ、衣服も装備もろくに 揃わないなか、「生きて父の元に帰る」という一念だけが ナンドを支えていた。そして、墜落事故で命を失わなかった 仲間の命を繋ぐ為に。 救助を待っての山中での日々も相当に辛いが、救助を求めての 山越えの過酷さと言ったらない。 既に体力は衰え、常に飢えと渇きに苛まれ、雪山登山の道具なんて 皆無。これ以上ない思える悪条件のなか、時に死の誘惑に負けそう になりながらも10日をかけてチリの山小屋へ辿り着く。 もし、自分が同じ状況に置かれたらどうする?ナンドのような 「生」への執念が持てるだろうか。無理だ。絶対に雪に埋もれて 死ぬ方を選んでるよ。 仲間の遺体を食したとのカニバリズムばかりがクローズアップ される事故だが、同乗していた母と妹を失いながらも生き残り、 故郷へ還ることにあらんかぎりの力を発揮し、極限状態から 脱した生存者たちの執念に脱帽だ。 尚、生存者たちの「その後」も綴られている。
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72年のアンデスでの飛行機事故というと、真っ先に思い浮かぶのが人肉を食べて生き延びた、というショッキングな事実だろう。 殊更その部分だけが大きく取り上げられ、おぞましいだの倫理問題だのと論われたことも多かったはずだ。現に私も、この件ではその事実だけを見知っていた。 しかし、この...
72年のアンデスでの飛行機事故というと、真っ先に思い浮かぶのが人肉を食べて生き延びた、というショッキングな事実だろう。 殊更その部分だけが大きく取り上げられ、おぞましいだの倫理問題だのと論われたことも多かったはずだ。現に私も、この件ではその事実だけを見知っていた。 しかし、この生存者ナンド・パラードの本書を読むと、墜落事故の想像を絶する絶望と恐怖の中、その事実は単に、多くの困難の中のひとつであっただけなんだと実感させられざるを得ない。その騒がれた事実よりむしろ、極限状態の中にあってもかすかな希望を見つけ出し、今その一瞬を生きるために必要なことを、生存者全員が命の限りにできうる努力をし続けた、そのことに深い感銘を受けた。 毎日の全てが、寒さと飢えと苦しみ、葛藤、絶望、恐怖との闘い。著者は、救助を求めるために、地元の人間に「そこを歩いて降りてきたなんて、絶対あり得ない」と何度もいわしめた程のとんでもない難所を、あり合わせの装備で、全くの登山初心者でありながら強行下山した、その一人だ。 彼は、自分が英雄視されることが、たまらなく厭だったという。自分はそんなに強い人間でも立派な人間でもない。ただあの絶望の状況から抜け出したくてたまらなかっただけなんだ、と。そして、その勇気をくれたのが、家族を思う愛だったのだ、と彼は言う。 極限の中、著者が行き着いたのは「死は現実であり、死はすぐそこにある。だからこそ生きていること、その一つ一つが奇跡である」という、宗教や人種を超えた全ての人々の心に深く響く、紛うことなき真実だった。 生還した人々はみな、それが宗教的であれ哲学的であれ、人生の指標のようなものをしっかりと核に持ち、その後のそれこそ第二の人生を、後悔しないように力強く生きている、それが素晴らしかった。 事故の翌年に上梓された「生存者」は、生還した各人へのインタビューをもとに書かれているという。読んでみようかな。
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