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東京大学のアルバート・アイラー の商品レビュー

4.4

16件のお客様レビュー

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2011/08/27

本書はミュージシャンであり文筆家である菊池成孔(きくち・なるよし)と 評論家であり音楽家でもある大谷能生(おおたに・よしお)が組んでおこなった東京大学教養学部でのゼミの講義録である。 菊池氏が言うように全ての歴史というのは誰かによって編纂された偽史である。 そして、この講義自体...

本書はミュージシャンであり文筆家である菊池成孔(きくち・なるよし)と 評論家であり音楽家でもある大谷能生(おおたに・よしお)が組んでおこなった東京大学教養学部でのゼミの講義録である。 菊池氏が言うように全ての歴史というのは誰かによって編纂された偽史である。 そして、この講義自体は「一般的なジャズ史」の持つ綻びを修復する試みであるという。 スタンスは堅苦しくも聞こえなくはないが、そこは菊池氏、面白おかしく講義を展開しながらも随所に重要な点を盛り込んでくるので気が抜けない。 氏のユーモアで油断させつつ、時折、確信をサラリとど真ん中に打ち込んでくるあたりには、みうらじゅんさんと共通するものを感じる。 都度レコードやCDをかけながらの講義はラジオの収録のようであったそうだ。 そんな魅力的な内容の講義は、当然のように半数以上が学外からの「モグリ」だったらしい。 現代を生きる自分たちのような世代にとって 全盛期のJazzという音楽自体、既に一つの時代である。 そして、現代人はその中に無数に存在する名盤や名曲を部分的に聞き直したり、 サンプリングしたりするのが常であり、 そこに時代背景や時間的観念が付加されることは稀である。 つまり、ジャズ史という大きく太い「線」の中で「点」を抽出するように鑑賞しているわけである。 そしてその「点」でさえ、時代背景が全く異なる。(これは悪い事ではない。) 黎明期のクラブミュージックとしてのジャズ。 ベトナム戦争時に戦意抑揚のためのビックバンド。 バークリーメソッドと譜面。 モダンジャズへの流れ。 白人と黒人、そして商業化への流れ。 マイルス・デイビスがいかに重要であったか。 MIDI音楽の誕生。 ジャズ史の中で大きなうねりを時代背景や重要な出来事などをふまえながら 断片的となっているジャズ史のダイナミズムを見事に再構築している。 もちろん菊池氏も時間的制限からかなりの要素を省いているのを認めてはいる。 しかし、本書を読んでいる最中から、持っているCDを聞き直したり 新たに購入したり、その意味付けが変わったりと大きな興奮を与えてれた。 少し時間をおいて、また読み直したい良書である。

Posted byブクログ

2011/06/24

面白い! センスとか感性とかって言うけど、それってやっぱり分析可能なもので、単に分析を怠っている(或は力が及ばない)だけなんだな、ということがよくわかります。 マイルスがやたらと聞きたくなりました。

Posted byブクログ

2010/12/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

東大で行われたジャズ講義。これまた二人の語り口が面白い。 『ここで演奏しているようなバップ第一世代までのミュージシャンの多くは、酒と女とクスリをガンガンやってガンガン死ぬっていう、最高の、いや最悪の(笑)人生を送るわけですが、そういった見事に破滅型のミュージシャンは、チャーリー・パーカーを最後にだんだん少なくなっていく。黒人が、白人の作曲した音楽を演奏の現場でどんどん作り変えていく、といったヒエラルキーのかく乱にバップの魅力の一つがあったわけですが、一九五九年を境にモダン・ジャズは、アメリカ白人的な音楽を母体にすることをやめて、全く独自のサウンドを響かせることができるようになっていくんです。これは抑圧の解消であり、また同時に、一つの創造的な緊張関係の融解でもありました』(p.174)

Posted byブクログ

2010/02/24

ジャズとはなんぞや? 全10回の講義でジャズ史を駆け抜ける。 とくに50~70年代に重点を置きつつ、その周辺のスウィング・ジャズやファンクにも触れていく。 バークリーメソッドが開発され、コードで音を奏でるようになってから圧倒的に演奏者のFeelingが曲に活かされるよ...

ジャズとはなんぞや? 全10回の講義でジャズ史を駆け抜ける。 とくに50~70年代に重点を置きつつ、その周辺のスウィング・ジャズやファンクにも触れていく。 バークリーメソッドが開発され、コードで音を奏でるようになってから圧倒的に演奏者のFeelingが曲に活かされるようになり、ジャズのジャンルも幅を広げていく。このコード進行がジャズをゲーム化することでバトルを作り出し、やがてはストリートダンスへと繋がっていくのである。 規律に縛られない即興の妙味、これこそジャズのおもしろさだと僕は思う。譜面になにもかも記載せず、最低限のルールを書き込む。あとは自分の好きなように音を奏でる。遊び心いっぱいの音楽がそこにはある。 Jazz史の立役者といっても過言ではないパーカー、コルトレーン、マイルス。あらためて彼らの偉大さを知らされた。 いうまでもないが読んでいるとジャズを聴きたくなってくる。 CDもかなり紹介されているので、参考にしてみたら自分のJazzの世界がまた広がるのではないだろうか? 書を捨て、ジャズ喫茶に行こう

Posted byブクログ

2010/03/31

ジャズの歴史を読み換えるというエンターテイメント性溢れる講義。その辺りに疎い私でもドキドキしたのだから玄人の方なんてウィットに富んだエレガントな彼らの話など面白くて仕方ないだろう。

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2012/03/11

本書「歴史編」の帯文に、“ジャズ100年の歴史をまったく新たに書き換える。”試みと謳われてはいるものの、ジャズの通史に通暁せず、電化マイルスだのクラブジャズだのを趣味として口空けてぽかーんと聴くにとどまっていた自分としては、本書のように学として改めて把持されたジャズの、その豊穣さ...

本書「歴史編」の帯文に、“ジャズ100年の歴史をまったく新たに書き換える。”試みと謳われてはいるものの、ジャズの通史に通暁せず、電化マイルスだのクラブジャズだのを趣味として口空けてぽかーんと聴くにとどまっていた自分としては、本書のように学として改めて把持されたジャズの、その豊穣さに眩暈にも似た感覚を味わった。 ジャズという音楽の様々なスタイルの変遷を、音楽の記号化・複雑化・抽象化・遊戯化という視座から捕らえ返す試みは、楽理へのなじみのなさ等から半分も理解できてはいなかったものの、YouTubeたれ流しつつ読み進めていく時間は、非常におもしろかった。確かに“ジャズの聴き方はまったく新しいものになる。”(「キーワード編」帯文)

Posted byブクログ