ホテル・ルワンダの男 の商品レビュー
「どうせ殺すなら、その銃で射殺してくれ」 凄惨な虐殺である。ある日突然、隣人が、同僚が、鉈を手にして 殺人者となる。歴史的な民族の対立から派生したと思われがちな ルワンダ大虐殺だが、それは周到に準備された民族浄化であり、 ジェノサイドであった。 著者は高級ホテルの支配人として...
「どうせ殺すなら、その銃で射殺してくれ」 凄惨な虐殺である。ある日突然、隣人が、同僚が、鉈を手にして 殺人者となる。歴史的な民族の対立から派生したと思われがちな ルワンダ大虐殺だが、それは周到に準備された民族浄化であり、 ジェノサイドであった。 著者は高級ホテルの支配人として、ホテルに逃げ込んで来た人々を 民族で差別することなく虐殺の犠牲にならぬよう最大限の努力を払った。 彼の武器は、銃でも鉈でもない。ホテル従業員として培った接客の ノウハウであり、政府関係者や海外要人との間に築いた人間関係。 そして、1冊のノートだった。 国連軍さえも当てにならぬ虐殺の現場で、人々の命を救おうとしたのは 「普通の男」だ。 静謐な筆運びだからこそ、大虐殺の悲惨さが伝わって来る。
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彼は、そのとき考えられる最良のことをしようとした。 己の良心に従って。 大虐殺の中で同じように「あたりまえの良心」に従って行動したひともたくさんいた。 だが、そうしなかった人もたくさんいた。 そして80万人の人が虐殺された。 軍隊によってでもなく、毒ガスや原子爆弾によってでもな...
彼は、そのとき考えられる最良のことをしようとした。 己の良心に従って。 大虐殺の中で同じように「あたりまえの良心」に従って行動したひともたくさんいた。 だが、そうしなかった人もたくさんいた。 そして80万人の人が虐殺された。 軍隊によってでもなく、毒ガスや原子爆弾によってでもなく、あたりまえの市民たちの手で、鉈で。 重い内容です。 彼らを駆り立てた憎悪は、いったいどうしてふくれ上がって制御できないモンスターになってしまったのか。 そして、自分は「その時」に、巨大な渦の中で、果たして良心に従って行動できるのだろうか。 体験談だけではなく、そんな重い問いかけを、投げかけていく名著です。最終章が素晴らしい。
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映画「ホテル・ルワンダ」の主人公のモデルになった人物が、1994年のルワンダ大虐殺で彼が経験したことを記した作品。 彼は自分でも言っているように、ごく普通の男だ。 普通の男が、自分の思いのままに行動しただけで、なぜ1200人もの人の命を救うことができたのか、なぜ虐殺者たちは、あ...
映画「ホテル・ルワンダ」の主人公のモデルになった人物が、1994年のルワンダ大虐殺で彼が経験したことを記した作品。 彼は自分でも言っているように、ごく普通の男だ。 普通の男が、自分の思いのままに行動しただけで、なぜ1200人もの人の命を救うことができたのか、なぜ虐殺者たちは、あの状況の中、こんな簡単なことで殺人の手を止めたのか、読みながら不思議で仕方無かった。 しかし、最終章で語られる彼の言葉に、思わずうならされ、彼の成し得た事実が、彼の信念をもってすれば必然だったのだということを思い知らされた。 彼は普通の男だが、人間の本質を見事に見抜き、惑わされずに信念を貫くことのできる勇気と行動力にあふれた男だったのだ。 そして彼の言葉をもってすれば、人はみな、ルワンダの虐殺の中であっても、いついかなる時の非道な事態であっても、彼のように考え行動できる「普通の人」は必ず存在し、平穏な日常のために戦うことができる。
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