科学の世界と心の哲学 の商品レビュー
デカルトの研究者である著者が、現代の心の哲学における問題に対して、批判的な観点に立って考察を展開している本です。 本書ではまず、デカルトによって自然科学の基礎となる哲学的な立場がどのように築かれたのかということが解説されています。著者によれば、デカルトは日常的な経験の世界に寄り...
デカルトの研究者である著者が、現代の心の哲学における問題に対して、批判的な観点に立って考察を展開している本です。 本書ではまず、デカルトによって自然科学の基礎となる哲学的な立場がどのように築かれたのかということが解説されています。著者によれば、デカルトは日常的な経験の世界に寄り添うアリストテレスの自然学を否定し、数学的に記述可能な自然科学的世界像を基礎づける仕事を果たしました。著者はこのような哲学上の立場を敷衍して、科学理論の客観性を擁護します。 つづいて著者はふたたびデカルトの思想に立ち返り、一方では精神と延長を明確に区別する心身分離の立場から二元論的世界観を語っていたデカルトが、他方で心身合一の立場から議論をおこなっていたことを紹介し、後者の立場を前者の立場へと還元することはできないと主張します。そして、物的一元論の立場に立つ現代の心の哲学が、一人称の観点から見られた心のありかたを説明することはできないと批判しています。 自然科学についての哲学的考察など、興味深い論点をいくつも含んでいる本だったように思います。かつて著者は大森荘蔵に、デカルトの思想では心身分離と心身合一の両方の立場を認めていたと述べたところ、「両方認めるとはきたねえ」といわれたと、どこかで述べていた記憶があるのですが、本書の物的一元論に対する批判はあくまで批判にすぎず、これによって問題が解決されたとはいいがたいのではないかと感じてしまいました。
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面白かった! 特に前半の科学哲学の部分。 科学哲学をまともに勉強したことが無かったので、アリストテレスの自然学に始まりガリレオやデカルトの創始した近代科学の革新性など、勉強になることが非常に多かった。 後半の心の哲学については、形而上的な存在である「心」に対して科学がどこまで...
面白かった! 特に前半の科学哲学の部分。 科学哲学をまともに勉強したことが無かったので、アリストテレスの自然学に始まりガリレオやデカルトの創始した近代科学の革新性など、勉強になることが非常に多かった。 後半の心の哲学については、形而上的な存在である「心」に対して科学がどこまでリーチするかを論証していて、なかなか面白かった。 デカルトの心身二元論から発した哲学のアポリアを中心に、その周辺を掘りまくる形式。 小林道夫はデカルトの研究者なのかな? 何にせよ、科学哲学について勉強するために取った本としては、かなり満足でした。
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デカルトに取り憑かれて二元論から抜け出せなくなった 悲惨な哲学者の本。 「私は疑う。だから心は存在する。」って、 「疑う」事だって思考のバリエーションの1つに過ぎないんじゃないの。 デカルトが自然科学の祖であることを頼みの綱にして、 彼の二元論を否定するなんて自然科学も否定す...
デカルトに取り憑かれて二元論から抜け出せなくなった 悲惨な哲学者の本。 「私は疑う。だから心は存在する。」って、 「疑う」事だって思考のバリエーションの1つに過ぎないんじゃないの。 デカルトが自然科学の祖であることを頼みの綱にして、 彼の二元論を否定するなんて自然科学も否定する気か?なんていう くだらないレトリックに頼りながら、 手っ取り早く反論しやすい理屈を否定することで、自分の正しさを証明しようとする。 そんなただの言葉遊びに終始した本。 こういうことしてるから哲学が暇人の趣味だなんて 思われてしまうんだってのに。まったく。
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近代科学(及びそれを引継いだようなものとしての現在の我々の考え方)が前提としている世界観(人間観、心身を考える枠組、とか)の哲学的基礎付けが、デカルトとかによってどの頃どうやってなされたか、またどういう内容のものか、について。
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※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] 科学や技術の圧倒的な進歩によって、私たちを取り巻く多くの現象が解明されてきた。 そうした中、「認識論の自然化」、「心の哲学の自然化」と呼ばれる考え方が登場し、心も科学で解明されると主張する。 本書では、近代科学が産声を上げた一七世紀に遡って、科学の目的と規範を明らかにし、心が科学によっては解明し尽くせないことを示していく。 消去的唯物論や認知的アプローチなど科学主義路線の限界を示し、デカルトが提出した「心身合一」概念の豊かな射程を再評価する。 [ 目次 ] 第1部 科学の目的と規範(近代科学の原点―一七世紀における科学革命と近代科学の形成;科学的知識の三つの基本的規範;理論的対象の実在性と科学的知識の客観性) 第2部 心の存在と哲学―心の哲学は自然化(科学化)しうるか(近代の心の哲学の原点―デカルトの心の哲学と心身問題;心の哲学の自然化の問題;心の存在の実在性と因果性;自由意志と他者の心) [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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『科学の世界と心の哲学』(小林道夫、2009年、中公新書) 哲学の観点から「科学」をとらえたもの。歴史的に「科学」がどのように扱われてきたのかということから、心は科学で解明できるかということを論じている。 自然科学の観点から書かれたものではないので、デカルトなどの哲学を知って...
『科学の世界と心の哲学』(小林道夫、2009年、中公新書) 哲学の観点から「科学」をとらえたもの。歴史的に「科学」がどのように扱われてきたのかということから、心は科学で解明できるかということを論じている。 自然科学の観点から書かれたものではないので、デカルトなどの哲学を知ってないと難しいかもしれません。 (2009年12月4日)
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