パララバ の商品レビュー
高校二年生の綾は、一哉と電話で話す事が日課だった。電話を通して一哉に惹かれていく綾。実は一哉は他校の生徒で、2人はまだ顔を合わせた事がない。 しかし直接顔を合わせる前に一哉は事故で死んでしまう。衝撃をうける綾のもとにかかってくる一本の電話。それは死んだはずの一哉からだった。...
高校二年生の綾は、一哉と電話で話す事が日課だった。電話を通して一哉に惹かれていく綾。実は一哉は他校の生徒で、2人はまだ顔を合わせた事がない。 しかし直接顔を合わせる前に一哉は事故で死んでしまう。衝撃をうける綾のもとにかかってくる一本の電話。それは死んだはずの一哉からだった。その一哉は不思議な事を口にする。死んだのは綾の方で、しかも殺されたと言うのだ…。 謎めいた出だしから始まるSF風ミステリ。電話を通じて連絡を取り合ううちに、どうやら一哉も何者かに殺されたらしいという事、そして2人の住む世界がある時点を境に分岐してしまったらしい事が判明する。 そう、これは「彼の殺された世界」と「私の殺された世界」を舞台としたパラレル・ワールドSFなのである。 世界が分岐してしまった理由、分かれた世界にいる2人が連絡を取り合える理由などは主題ではなく、作者も突き詰めて書いてはいない(突き詰めていたらたぶんそれだけで一冊ぶん書けてしまう)。これは自分でも理解できない運命に巻き込まれ翻弄されながらも自分を(彼を)殺した犯人を探していく少女の物語だ。 ほんのわずかな手がかりから犯人の正体を暴きだしていく様はミステリとしても非常にスリリング。だが、SFとしてとても面白い点は、お互いの世界の相違点をすり合わせながら真相に迫っていくところ。「彼の世界」では殺されたのは私なわけで、「私の世界」で彼を殺した犯人を捜し出す事は同時に私を殺した犯人を捕らえる事でもある訳だ。この秀逸な設定をフルに活かしながら作者は物語を進行させていく。 主人公が高校生の女子なもので行動力に限界があり、こちらから見るととても簡単そうな事にグズグズしている様子は読んでいてイライラさせれるが、それが余計に緊張感を増している。 結局一度も顔を合わせる事のできなかった一哉のために、無理に勇気を振り絞って調査していく綾。そう、2人は気づかないふりをしているのだが、分岐した世界で2人が会う事は絶望的に不可能である。電話でのみ声を聞く事ができるが、実際に会う事はできないという状況は、単に相手が死んでしまっただけより実は過酷な状況なのかも知れない。 そんな世界の中、諦めたくても諦められない、やりきれない想いを抱えながら犯人を追い詰めていく綾。そして一哉。 少しずつ「ズレ」が大きくなっていく2つの世界をつなぎながら、物語は意外な真相へとたどりつく。 いくらもがいても自分の力ではどうしようもない絶望の中で、少しでも良かれと思う事に全力を尽くす主人公たち。それはもはや会えない相手のためにできる事。 前述したとおりSF的シチュエーションの中で繰り広げられるミステリだが、もがき続ける少女と少年を描いた恋愛小説でもある。 高畑京一郎の第1回電撃小説大賞受賞作『タイム・リープ』に影響されて書かれたというだけあって、緻密に設計された物語の構成力に目をみはる。 高畑京一郎と同じく電撃小説大賞(第15回)を受賞している。
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ジャケ買い品です。 最初はさわやかな高校生たちの恋愛でよかったのに、ラストがいまいち。 このままさわやかにおわりたかったなぁ……。
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パラレルラバーズという題名にふさわしい作品。 同じ時同じ場所なのに、 そこに一緒にいられないという描写が切ない。 ミステリーとしてもそこそこ面白いと思う。 電撃文庫の「タイムリープ」に影響された部分もあるとあとがきで語っていたので、 この手の話が好きな人は読んでみるといい。
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“「綾……俺はさ、もう綾に死んでほしくないんだよ。せっかく生きてる綾と話ができた、それだけで嬉しいんだ。綾にはさ、俺のことなんて忘れて幸せになってほしいんだ」 「なんでそんなこと言うのよバカバカバカバカ!!一哉がいないのに!一哉がいないのに一哉がいないのに一哉がいないのにどうやっ...
“「綾……俺はさ、もう綾に死んでほしくないんだよ。せっかく生きてる綾と話ができた、それだけで嬉しいんだ。綾にはさ、俺のことなんて忘れて幸せになってほしいんだ」 「なんでそんなこと言うのよバカバカバカバカ!!一哉がいないのに!一哉がいないのに一哉がいないのに一哉がいないのにどうやって幸せになれるって言うのよ!私は一人でも犯人を捜す、一哉の力なんか借りなくても絶対捜す!」 「無駄だってのがどうしてわからないんだよ!」 「無駄って何、一哉に私の何がわかるの!?私に何が必要で何が無駄かあなたにわかるって言うの!?」 「もういい、勝手にしろ!」 「言われなくたって勝手にするわよ!」 思い切り乱暴に通話を切ると、とたんに辺りが静かになった。 私は涙を拭こうとして、片手にお菓子を握りしめたままだったことに気がついた。強く握りすぎて、月はほとんどバラバラになってしまっていた。 ティッシュの上に粉が落ちて、そのたびに胸が痛くて。 床に叩きつけようと振り上げた携帯を、そっとクッションの上に置いて、そして私は思い切り泣いた。” 綾の世界で一哉が事故死した。 だけど、通夜の晩を境に、彼女は所謂パラレルワールドの一哉と接点を持つことに。 一哉の世界では綾が誰かに殺されていた。 唯一の繋がりである携帯電話の通話を頼りにこっちの彼と向こうの彼女を殺した犯人を探す二人が見つけた真実とは。 「あ」と思わず呟いてしまうようなあっけない終わり。 後悔するにはあまりに遅すぎて、今まで続いてきた魔法が、一本の細い糸がぷっつりと切れてしまう感覚。 虚のような衝撃と、遅れて追いつく思考が終わりを告げてくる。 うー。 これは泣ける。各章の題名にも。 全ての章が綾視点だったため、「綾が自分で自分に描いていた夢のような現実逃避の作り話」と笑われてしまいそうな。 だけど、その考えには「綾がラメルと知り合えた理由」が穴を開ける。 それが、少し救われる。 向こうの一哉は一哉であって一哉ではない。 綾が向こうと途切れたときにこっちの一哉と向き合う展開は良かった。 ピヨホワイト。風邪薬。パラサイト。 複数のキーワードが繋がってひとつの答えを導き出す瞬間が良かった。 あと、二人が逃げる時の臨場感とか。 イラストも素敵。 “その笑顔を見て、涙がこぼれそうになった。ああ、なんでだろう、すっかり忘れていた。 「そう、ですよね」 <こっち>の一哉には、お通夜の日以来会いに行っていなかった。 <こっち>の一哉、私と同じ世界の一哉。私はどこかで彼の死を認めていなかったのかもしれない。仇をとると、彼のためだと言いながら、ずっと目をそらしていた。 「ラメルさん」 「ん?」 「今日だけ、泣いてもいいですか。明日からは元気になりますから」 彼女は長い髪を横に払うと、不思議そうな顔をした。 「別に今日に限定せねばならん理由もないだろう。泣きたければいつでも泣けばよい」 信号が点滅する。そうですねと言う代わりに、携帯電話を握りしめた。 そうだ、明日も泣いて、明後日も泣いて。 そしていつかまたこの電話が鳴ったときに、笑って話すことができればそれでいい。 今はまだ、その決意を口に出すこともできなかったけれど。”
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パラレルワールドにいる2人が電話をしながらお互いの死んだ理由を探すというストーリー 恋愛でありミステリーでSFでもあるような感じ 読後感はなかなかよかったです パラパラと読んでしまったが、じっくり読みたい話
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主人公の独り言のようなツッコミが面白かった! 物語やその背景も魅力的。ただ主人公の友達がよく出てくるわりに影が薄い。 中山さんはいいんだけど、理緒ちゃんってどんなキャラかすぐ忘れて何回か読み直しました。 あとオチもちょい弱い。なぜ携帯電話がつながったか、向こうの世界はそのあと...
主人公の独り言のようなツッコミが面白かった! 物語やその背景も魅力的。ただ主人公の友達がよく出てくるわりに影が薄い。 中山さんはいいんだけど、理緒ちゃんってどんなキャラかすぐ忘れて何回か読み直しました。 あとオチもちょい弱い。なぜ携帯電話がつながったか、向こうの世界はそのあとどうなったかが謎のままです。 まあその謎を読み終わったあとに想像するのも楽しみ方のひとつだけど。 ただSF的な恋愛小説が読みたい人には間違いなくオススメです。
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パラレルワールド。 実はホラーなんじゃないかとビクビクしながら読んだが(笑)、普通のほんわか話だった。 しかし、ほんわかならハッピーエンドにしてほしかったなぁ。 バッドじゃないけど。
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先が読めちゃう展開。でも、最後まで飽きさせない構成が魅力的。 謎が解けていく様は本当に面白かった。
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ラノベというより少女小説。昔読んだピンク色の背表紙の少女向け小説を読んでいたときの感覚を思い出させる。心が洗われるような清涼感。内容は帯に書いてある「もういない彼氏と電話だけで繋がっているせつなさ」よりも、「彼、私の死因をつきとめる」ことのほうがメインになっていて、恋愛小説という...
ラノベというより少女小説。昔読んだピンク色の背表紙の少女向け小説を読んでいたときの感覚を思い出させる。心が洗われるような清涼感。内容は帯に書いてある「もういない彼氏と電話だけで繋がっているせつなさ」よりも、「彼、私の死因をつきとめる」ことのほうがメインになっていて、恋愛小説というよりはミステリーな感じ。著者が女性だからか、女の子の文化や気持ちの変化をよく理解している。この人の本がまた出たら買いたいな、と思わせる
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電撃文庫の冊子を見て、面白そうだなと思って購入。 好きでもなく嫌いでもなく、普通といったところ。 文章はあまり好みじゃなかったかも。 最後も、ずっと2つの世界は平行してお互い生きてるのかなー
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