ハサウェイ・ジョウンズの恋 の商品レビュー

カティアベーレンス【著】,鈴木仁子【訳】

2010/05/29

淡々とした、少し離れた位置から語られる、少年の初恋と人間たちの物語。人間関係によって人が殺されても、物語は進んでいく。そして、嫉妬したりしながらゆっくりと成長していくハサウェイと事件の絡み方が、いい。

2010/02/24

簡潔にして力強く、素朴さから生まれる瑞々しさを感じさせてくれる作品。

ゴールドラッシュにわくアメリカオレゴン州、ロバに荷を引かせローグ河のほとりを行き来する少年ハサウェイ・ジョウンズは寡黙な父との二人暮らし。彼の旅の道連れは、自らのうちに沸きあがってくる様々な物語と、ザアザア、コポコポ、ゴウゴウと、季節によって変化する河の調べだ。

情報過多の今時の子どもたちと違って、ハサウェイは、フロラに対する自分の気持ちを定義づけることができないでいる。
フロラの前では気おくれし、話すこともままならない。顔を合わせなくてすむように、いっそ留守にしてくれたらと思うのに、いざそうなってみれば“いままでドクドクと打っていた心臓が、いっぺんにくしゃっとなっ”てしまう。
そんなハサウェイの気持ちの揺れが、初々しくて微笑ましい。

無口だけれど揺るぎなさを感じさせるハサウェイの父、いつもは飲んだくれているけれど、ここぞという時の男気が格好よかったフロラの父。ともに印象深い人物像だった。

　　Hathaway Jones by Katja Behrens