沼地のある森を抜けて の商品レビュー
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沼地のある森を抜けて 先祖がぬか床を持って駆け落ちして以来、ずっと守られてきたぬか床。叔母の死をきっかけに、叔母のマンションと共にそのぬか床を継いだ主人公の物語と、ぬか床の中の酵母やら細菌やらから見た物語とが交錯しながら話が進んでいきます。 自分のアイデンティティ、命のはじまり、何故有性生殖か?、そして命は何を目指してどこにいくのか? こういった問いが詰まった(結局結論は出ませんが)難しい話を、ある程度の難しさを残してはいますが、エンターテイメントにしてしまう著者の力量はたいしたものだなあと思います。 ぬか床が呻いたり、ぬか床の卵から人が出てきたりと幻想小説っぽいところもありますが、「家守奇譚」のようにそちらが主ではないので、さらりと現実的に描かれていて、その点も面白いなと思いました。 ちょっと残念だったのが、「おおーこの構造は、”世界の終わりとハードボイルドワンダーランド”(村上春樹)だー」とものすごく期待したのですが、2つの物語の絡み方や収斂の仕方が今ひとつだったのが、期待が大きかっただけに残念です。 もうすぐお盆なので、自らの自出やご先祖さんのことを、無い頭で考えてみている竹蔵でした。 竹蔵
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親族から相続したのはぬか床。そのぬか床から現れるものは。久美と風野さんはぬか床の秘密を求めて「島」へと旅する。 ずっと以前に読んでいたのだけど、何か消化不良で心にひっかかっていた本。再読です。 梨木さんは、今のモノ・コトについて、その記録のページを一枚一枚めくるように思索を掘り...
親族から相続したのはぬか床。そのぬか床から現れるものは。久美と風野さんはぬか床の秘密を求めて「島」へと旅する。 ずっと以前に読んでいたのだけど、何か消化不良で心にひっかかっていた本。再読です。 梨木さんは、今のモノ・コトについて、その記録のページを一枚一枚めくるように思索を掘り下げていくのが得意な作家さんで、けっこうなナチュラリストでもあると思います。この本ではその科学的知識と命の進化から、生命とは何か、生命はどこから来るのか、という根源的な問いを深める作品でした。 確か前に読んだ時は「結局そこに落ち着くのか」みたいな、ちょっとしたガッカリ感を感じたのではなかったかと思いますが、まあ今回も、そこまで広げておきながら結論はそこかあ。という感想にはなりました。ただ、最後の誕生を言祝ぐ詩にはすごくグッときたのですが、これは多分このストーリー(落とし所)だったからこその効果だったんだろうなあ、と感じました。 しかし改めて読み返して感じたこととしては、梨木さんがすごく真剣に命はどこから来るのか、どこへいくのかについて向き合いながら書いたんだな、ということでした。共生説や受精になぞらえたサブストーリーなんかをみても、その思索のあしあとは迫力がありました。 同じく生命のゆくえについては「ピスタチオ」でもテーマにしていたと思うので、こちらも再読してみようと思いました。
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沼地のある森を抜けて 梨木香歩 ぬか床から人がってのでファンタジー?と思ってたら人が死んでるってのでホラー?そこからトラウマとかルーツ探し?と読み進めると、最後壮大な生命と再生の物語 この最後を読む為に今までの鬱々としたのがあったのね、と 言葉にできないほどにカタルシス凄い "解き放たれてあれ 母の繰り返しでも、父の繰り返しでもない。先祖の誰でもない、まったく世界でただ一つの、存在なのだから、と" もういないのに傷つけられた記憶と対人恐怖症だけ残ってる私には この本はとてもよかった この壮大な再生を言葉で表現して本で主人公と一緒に体験できるのがすごい ひっそりととても良い本ですと 万人向けではないかもしれないけど、こじらせてる大人にはオススメです
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そうかこの人裏庭書いた人だった 最近怪談よく聞いてるから結構怪談っぽい話で嬉しい 梨木香歩さんは最初はとっつきやすくて引き込まれるけど最後何の話?!ってなるんだよな全般的に… 分かる人すごいわ…大学院とか行ってんだろな…
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梨木香歩「沼地のある森を抜けて」、2005.8刊行、2008.12文庫。全510頁。ぬか床を毎朝かき混ぜていると、卵ができ、やがて人間が誕生する。誕生し、そして消えていく。酵母、微生物・・・。種の起源といいますか、生き物とはを問うた作品でしょうか。4日間かけて何とか読了、ふぅ!鴻巣友季子さんの解説を読むと、自己とは何かを探す物語とか? 梨木ワールド全開でしょうか・・・? 私には理解不能な作品でした。でも、ぬか床の記憶は残りそうですし、糠漬けを食べるたびに思い出しそうです。毎朝食べています(^-^)
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『西の魔女が死んだ』『家守奇譚』などからしっとり系ファンタジーを予想していた。しかし、これははっきり言ってハード系SFだと思った。 植物に詳しい作者が、その嗜好全開で書いた作品と聞いていた。植物うんちくなどというものではなく、生物のありようを哲学する壮大な、思想というべきかという...
『西の魔女が死んだ』『家守奇譚』などからしっとり系ファンタジーを予想していた。しかし、これははっきり言ってハード系SFだと思った。 植物に詳しい作者が、その嗜好全開で書いた作品と聞いていた。植物うんちくなどというものではなく、生物のありようを哲学する壮大な、思想というべきかというテーマを描いている。 時代も場所も現実幻想の境界をまたぐ目まぐるしい展開で、主義主張も随所に散りばめられている。面白いけれども、なかなか理解・共感ともに難しく、ハードな読み物であった。
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これまたなんとも不思議な…ぬか床から出てくる人(?)たちとの交流を書いた作品。ミツヒコが出てるところまでは微笑ましかったけど、その後はちょっとダラダラしていた気がする。家に昔あったぬか床、あれにも何かあったのだろうか…
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何書いても余計になる気がするけど、書いてみたいから書く。 読み進めていくと、綺麗な情景や人間との関わり(個人的にそう感じた)と相対するように生物の底なしの存続への渇望が醜く表現されすごく絶妙な話だと思った。 最後、風野さんと久美ちゃんはどういう結末を迎えたんだろうか。 きっとしば...
何書いても余計になる気がするけど、書いてみたいから書く。 読み進めていくと、綺麗な情景や人間との関わり(個人的にそう感じた)と相対するように生物の底なしの存続への渇望が醜く表現されすごく絶妙な話だと思った。 最後、風野さんと久美ちゃんはどういう結末を迎えたんだろうか。 きっとしばらく経ってから読み返すべき話だ。 私には少し早すぎたのかもしれない。
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生生しく体をかき回されるような描写に取り込まれて、官能小説のようだなと思った。 ぬか床をかき回したくなる。
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ぬか床から始まる日常物かと思いきや、どんどん話が膨らんでいき、最終的には生命の深淵をのぞき、そして読者にも問いかけるような内容となっている。 後半から挿入される「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」はかなり抽象的だが細胞壁=ウォールを持つ生き物とそこに入り込んできた似て非なる生命のお話で(だと思っている)同じテーマをあつかっている。 もとはひとつの生命が生まれ、壁を作り、それを壊し、そしてまたひとつになることの不可思議さと奇跡、または呪いや祈り。 自分が何者かの定義の曖昧さもあれば、確固たる 自分の意思もあるような気がするその線引きの危うさと自由さ。 そういったものを深く考えさせられた。 誰もが良いと思う作品ではないと思うが、個人的に 忘れられない作品となった。
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