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心の脳科学 の商品レビュー

3.8

15件のお客様レビュー

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2021/04/18

外側にある忠実な世界の情報を、脳内に再現する際に、「自分」というバイアスがかかる。 蓄えられた情報、作り上げられた回路たちによって構築されてきた、その相互のネットワークが一定以上の強度をもって同期するようになる。そのとき、世界は自分だけが描く姿で映しだされるようになる。 「わ...

外側にある忠実な世界の情報を、脳内に再現する際に、「自分」というバイアスがかかる。 蓄えられた情報、作り上げられた回路たちによって構築されてきた、その相互のネットワークが一定以上の強度をもって同期するようになる。そのとき、世界は自分だけが描く姿で映しだされるようになる。 「わたし」を成立させている、「意識」というものに気付かせるのは、例えば、過去から現在まで、連続しているという自分の存在を認めさせる記憶という機能だったり、他者の行為、意図、感情を自動的に自分の脳内に表現してしまうことと、自分の行為、意図、感情を区別するための機能だったりするのかもしれないということ。 圧倒的な無意識の上に浮かびあがる、自分とそれ以外を区別しようとする、この意識。まるで、絶対的で、主体的で、あたかも主役のような、そんな風に錯覚させるのに、実際は、脳が活動した結果として、私たちが思考したと主観的に実感するたったそれだけのことだと、そんなバイアスをかけてこの世界を覗くことだって出来るんだ。

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2019/04/29

網膜地図 ものの認識とは別に、顔の認識だけに関係した当別の顔領域がある 序盤、脳が見たものをどう認識しているかという話。脳は、顔、建物なのど何を見ているかによって活発に活動する部分が変わる。 私たちは目からの視覚情報、体性感覚、位置感覚、平衡感覚情報を統合することによって、自...

網膜地図 ものの認識とは別に、顔の認識だけに関係した当別の顔領域がある 序盤、脳が見たものをどう認識しているかという話。脳は、顔、建物なのど何を見ているかによって活発に活動する部分が変わる。 私たちは目からの視覚情報、体性感覚、位置感覚、平衡感覚情報を統合することによって、自我の存在する位置を決めている。 「見える」ということは外界の中から一部の情報を選択してこれを意識という表舞台に上げることである。 海馬は、情報を結びつけて記憶し、結びつけた状態で再生させる役割。海馬が働かないとストーリー性を持たせられない。 指を動かそうとする8秒も前から前頭葉は活動する!右手を動かそうと思うよりもはやく脳内に情報が表現される 心の理論 相手の気持ちや意図を察して自身の行動を決定する働き。 自閉症は、心の理論がうまく働かず、相手の意図や感情を推察できない。ミラーニューロンがある脳の部位の活動が低下している。 遺伝子によって特定の脳領域の形態や働きに差がある 盲目の人が点字をなぞっているときは視覚野が活動する。目の見える人が点字をなぞっても視覚野は活動しない。(ただし生まれてすぐに視覚を失った人のみ) 好みのタイプの顔を見ることだけでも、脳にとっては報酬になる

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2018/10/23

本書は、脳や脳研究の解説書。まずは、視覚がどのように脳で処理されるか、またその処理をどのようにして観察するのかという、分かり易いところから入り、次に記憶のメカニズムへと進む。その後、「わたし=自我」とはなにか? 脳は「わたし」の所有物か? それとも脳が「わたしを所有するのか? と...

本書は、脳や脳研究の解説書。まずは、視覚がどのように脳で処理されるか、またその処理をどのようにして観察するのかという、分かり易いところから入り、次に記憶のメカニズムへと進む。その後、「わたし=自我」とはなにか? 脳は「わたし」の所有物か? それとも脳が「わたしを所有するのか? というようなある種の哲学的テーゼに踏み込む。このあたりのことは、実証が難しくほとんどのことは仮説に過ぎないそうであるが、それでも面白い。いったい、いつになったら脳は脳を理解できるのだろうか?

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2018/10/20

こころはどこから生まれるか。こころは脳から生まれる。ではどのように生まれるか。心の成立についてはまだまだわからないことだらけであるが、脳の働きについてはだんだんとわかることが増えてきた。脳内に世界を投影するような部位があったり、目から入った情報と頭に記憶している情報でものを見たり...

こころはどこから生まれるか。こころは脳から生まれる。ではどのように生まれるか。心の成立についてはまだまだわからないことだらけであるが、脳の働きについてはだんだんとわかることが増えてきた。脳内に世界を投影するような部位があったり、目から入った情報と頭に記憶している情報でものを見たりするとか、興味深い話題が多い。

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2017/06/18

(『心の脳科学』と『暴走する脳科学』を併読した感想です)  『暴走する脳科学』が2008年11月20日発行、『心の脳科学』は同年同月25日発行と、ほぼ同時に出版された両書を読み比べてみた。  似たようなタイトルだが『心の~』の著者は脳画像を使った脳研究の専門家であるのに対し、...

(『心の脳科学』と『暴走する脳科学』を併読した感想です)  『暴走する脳科学』が2008年11月20日発行、『心の脳科学』は同年同月25日発行と、ほぼ同時に出版された両書を読み比べてみた。  似たようなタイトルだが『心の~』の著者は脳画像を使った脳研究の専門家であるのに対し、『暴走する~』の著者は哲学者である。そのため同じようなテーマの本であるが論点はかなり異なっている。  『心の~』は最先端の脳研究がどのような手法で行われ、どのような結果が得られているかを一般向けに解説したものだ。人間の脳を対象にした実験や観察はもちろん多くの制約があるが、それをいかに乗り越えてきたか、いわば現場からの報告である。  『暴走する~』はそういった脳科学研究のあり方やその成果の使われ方に対して倫理的な見地から問題提起をしている。タイトルにもあるように、基本的には“批判的”な検討だ。  両書を読み比べて感じたのは、哲学者はもう無用の存在ではないかということだ。なぜなら、科学者の多くは倫理の必要性を意識しながら科学を扱っているのに対し、哲学者は科学のなんたるかを理解せずに科学を批評しているからだ。さらに、現代の科学は哲学者の想定をはるかに越えてしまっている。  科学は仮説と検証の積み重ねで進歩する。検証とは実験や観察によって仮説の妥当性を測る行為だ。『心の~』で解説されている研究はまさにそのための実験・観察方法の開発が中心となっている。得られた結果をどう解釈するかという点でも、拙速を避けた慎重な検討を進める様子が伝わってくる。  ところが『暴走する~』で論じられている哲学者の言説は、仮説ばかりで検証がまったく無い。仮説が正しいかどうかは、日常的な感覚や経験に基づいて「なんとなくもっともらしく聞こえる」という程度の考察しかされず、とても検証と言えるものではない。それなのに、仮説として提示された主張がいつの間にか正しいとみなされ、その上にまた別の仮説を重ねていく。  こういうのを「机上の空論」と呼ぶのだ。  科学と哲学が一体だった時代と違い、科学の方法論がほぼ確立した現代において、昔ながらの哲学に何の価値があるのだろうか? 社会学や経済学など人文系の学問分野についてはまだ出番があるかもしれないが、医学や工学に関する彼らの言説は、なんら説得力を持たなくなっていると思う。  もちろん、技術者や科学者にも倫理は求められる。だがそれは、哲学者の空理空論とは無縁だ。

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2017/01/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2008年刊行。認知・自我・記憶・社会性・自他の峻別等に関して、脳の生理的・構造的観点から機能解析するもの。著者は東大大学院医学系研究科准教授。心の理論、相貌失認、幽体離脱、ミラーニューロン、海馬の役割、意思決定論等、この種の本で話題になる項目も多いが、「情報変換が、電気的インパルスの流れを抑制・増幅することで生じ、前頭葉がその役割を果たす」「神経細胞の可塑性の程度は遺伝子に規定される」「記憶チャンピオンは海馬だけでなく頭頂葉内側が活発に活動」等、目新しい情報も多い。読みやすく一読の価値は高いと思う。

Posted byブクログ

2012/11/14

脳科学の最新知見を、実際の研究結果に基づいてわかりやすく解説されている。 内容と分厚さのわりには、読んでいて重さを感じさせないのですごいと思った。 ・意図的な注意(あれが気になる)が生じるときというのは、その場所に対応した神経細胞活動が増加している ・「もの」をみるときは、それ...

脳科学の最新知見を、実際の研究結果に基づいてわかりやすく解説されている。 内容と分厚さのわりには、読んでいて重さを感じさせないのですごいと思った。 ・意図的な注意(あれが気になる)が生じるときというのは、その場所に対応した神経細胞活動が増加している ・「もの」をみるときは、それをどのように認識するかという過程が大事 (一度顔に見えてしまったらそれにしか見えない、とかそういうの) ・他人の気持ちを思いやる行為には、ミラー・ニューロンが関わっている 著者は、現時点でわかっていることとその限界、すべてが明らかになればいいというわけでもないこと、を最後の章で書いている。 研究者として、得られた知見とその限界、知見がどのように応用されるかという見通しを書く姿勢にとても好感が持てた。 ちなみに、東大文学部で行った講義を書籍化したものらしい。

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2012/04/15

脳科学の今を平易な言葉で解説。脳の形が人によって違って遺伝子の永久が大きいとか、脳が物を見るときどうなっててそれぞれ領域があるとか、記憶の仕組みとか、知能とかミラーニューロンの話とか、植物状態の人に意識があるケースがあるとか。どうもわたしって意識は主体なんじゃなくて脳の付随物のよ...

脳科学の今を平易な言葉で解説。脳の形が人によって違って遺伝子の永久が大きいとか、脳が物を見るときどうなっててそれぞれ領域があるとか、記憶の仕組みとか、知能とかミラーニューロンの話とか、植物状態の人に意識があるケースがあるとか。どうもわたしって意識は主体なんじゃなくて脳の付随物のようね。

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2011/06/28

2000年代の研究を中心にまとめられた入門書。真面目に書かれているのは分かりますが,脳科学においては何ができたらメカニズムが分かったと言えるのだろうか。例えば,まえがきに次のように書かれている。  ですが,私たちがこのようなことを感じ,考え,行動しているときに脳の土の部分が働...

2000年代の研究を中心にまとめられた入門書。真面目に書かれているのは分かりますが,脳科学においては何ができたらメカニズムが分かったと言えるのだろうか。例えば,まえがきに次のように書かれている。  ですが,私たちがこのようなことを感じ,考え,行動しているときに脳の土の部分が働いている,という実験結果は単なる豆知識に過ぎません。脳研究が本当に目指しているのは,脳がこのような仕組みになっているから私たちはこのように感じ,考え,行動するのだ,というメカニズムを明らかにすることです。このためには私たちの心の動きの結果として脳活動があるのではなく,脳活動の結果として心が生まれてくるのだということを明確に意識する必要があります。(p.ii) この観点には同意するが,最新データで構成されているとは言え,神経相関をなかなか抜け出せないでいるという印象です。相変わらずの疑問はこの本でも解けない。志はしっかりした著者であることは間違いないが,検証に偏った科学論がちらほらと見受けられるので,“そこから脱却する道を考える”という道も必要だと思います。ところで,僕的に面白かったのは,  PETと比べて,[fMRIは]放射性物質を使わないでも脳活動を測定できることから,被験者も集めやすく,医師以外の基礎研究者も脳活動測定実験に参加するようになりました。特に,心の働きの仕組みを行動からしか評価できずに欲求不満に陥っていた心理学の研究者が,この研究を進展させる強力な原動力となりました。(pp.19-20) というところです。神経相関で心理学者の欲求不満が解消されたのであれば,本当の欲求不満ではなかったのではなかろうか,と思いました。

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2011/04/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] ふと何かを思いつき、考えた末に決断する。 結果、喜んだり後悔したり…。 これらはすべて、脳の働きのおかげである。 そうだとすると、脳活動を読み解くことができれば、その脳の持ち主の思考や感情を読み取れるのでは? そして、思考や感情の主体である「わたし」とは何かについても明らかにできるかもしれない。 本書は、脳画像研究の方法から最新の成果までを紹介。 脳科学によって、未来はどう変わりうるのだろうか。 [ 目次 ] 第1章 外の世界、内の世界(未来の脳社会 脳の中の世界地図 脳のアナリスト 見ることと、見えること) 第2章 「わたし」と「あなた」(時間を越えて存在する「わたし」 知性を制御する仕組み 社会的な脳) 第3章 物質としての脳と心(遺伝子によって左右される脳 脳はここまで変わる 二一世紀の読心術) 終章 物質現象の結果として「わたし」が生まれる [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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