スマイリーと仲間たち の商品レビュー
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決着がついた、ということに驚いた。「スクールボーイ閣下」の終わり方を思えばむべなるかな、とも思うが、終わりのない──既にグレートではないにしろ──ゲームなのだと思っていた。 第一部の敗北は最後までスマイリーを打ちのめしており、読者もその苦い響きを忘れることができない。それでも、カーラの敗北はスマイリーの敗北であり、だから来るな!撃て!と思わずにはいられない。 全編を通して、最早世界の主役ではない英国、という感覚が見えるところがあり、その傲慢な自意識も面白かった。 シリーズが進むほど読みやすくなる作品。
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スマイリー三部作完結。 これが一番文章が読みやすかった気がする。 スマイリーがひとりで動く場面が多く、視点が安定してたのも読みやすかった要因かもしれないけど。 ちゃんとカーラとの決着はついたものの、手放しで喜べるような終わり方ではく、哀愁が漂う終わり方なのが作者らしくて良い。 ティンカー〜…から結構かかったけどやっと読み終わった。 達成感というか…なんというかこみあげてくるものがある。
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スマイリー三部作完結編で、旧ソ連の宿敵〝カーラ〟との最終的決着までを描く。重厚な筆致は更に磨きが掛けられており、ル・カレ独自の世界がゆっくりと始動する。前作の漠然とした分かりにくさは消え、より引き締まった構成ではあるが、集中力を欠くと挫折しかねない。タイトル通り、物語はスマイリー...
スマイリー三部作完結編で、旧ソ連の宿敵〝カーラ〟との最終的決着までを描く。重厚な筆致は更に磨きが掛けられており、ル・カレ独自の世界がゆっくりと始動する。前作の漠然とした分かりにくさは消え、より引き締まった構成ではあるが、集中力を欠くと挫折しかねない。タイトル通り、物語はスマイリーに主軸を置いている。かつての仲間が犠牲となっていく非情な諜報戦のただ中で、老体に鞭打ちながら真相を求めて歩む孤独な後ろ姿は、影の存在でありつつも、自国他国問わず真っ先に国家の使い捨ての駒となるスパイの悲哀を物語っている。 冷たい怒りを抑えつつも、或る瞬間には滲み出てしまう吐露に、終わりなき闘いの不毛ぶりが表れている。実体がほとんど明らかにされていなかった〝カーラ〟が、ようやく姿を現す終盤のシーンは、本作のみならず三部作全体を通してのクライマックスであろう。「勝つ」ためには、自らも薄汚い手段を取らざるを得なかったスマイリーに去来する思いは、苦く空しい。
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スマイリー三部作の終わり! やっと大物カーラの秘密を見つけて直接対決。 今回ばかりはスマイリーが重い腰を上げて動き回ります。 読んでるこっちは「やっとカーラをギャフンと言わせるぞ!」と思っても、そうはいかないのがこのシリーズの素敵なところ。 はっきり勝敗がついたはずなのに、ラストは何とも言えない。 スマイリーは自分の人生を狂わせた男を捕まえたけど、それは幸せに結びつかない。 カーラの描写も良かった。 くたびれた普通の中年男なんだよね。得体の知れない、恐ろしいほど策略家なロシアの超大物が。
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再読。数年のことだけど間をおいたことで感想が 変わるのは、作品の深みのおかげでしょうね。 今回は、奥さんのアンに何だか同情。スマイリーのような 徹底した思索とそれを誠実に作業として実現する能力は、 尊敬に値するけれど、一緒に暮らすのは大変そう! (以下、三部作を順に読まない人にはネタバレかな) だからと言って、まんまと仕組まれた不倫に応じるのも おばかさん。
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過去に一度会ったきりの仇敵カーラとの決着ついに!英国とソ連の情報部を背負い、暗躍し、追い詰めあった二人が互いの目に見るものは… ここから先は激しくネタバレですね。でもきっと、わかったようでわかっていないんです。もうちょっと年を重ねたら、また読もうと思います。 後半からじわじわ情...
過去に一度会ったきりの仇敵カーラとの決着ついに!英国とソ連の情報部を背負い、暗躍し、追い詰めあった二人が互いの目に見るものは… ここから先は激しくネタバレですね。でもきっと、わかったようでわかっていないんです。もうちょっと年を重ねたら、また読もうと思います。 後半からじわじわ情報を固めカーラに迫っていく辺りがゾクゾクです。 常に冷静な描写で淡々と書かれるため表面上はどこか調書を読むよう。でも行間から現場工作員の息遣いや緊張感、スマイリーの震えるくらいの慎重な気遣いがにじみ出てるようでした。 ラストシーンはスマイリーの内と外の描写が印象的。雪降る夜の痛いほどの緊張と静寂、内面で吹き荒れる衝動、祈り、矛盾する期待、絶望、回想とイメージ… ライトに照らし出される人物を見つめるスマイリーのすぐ横で、この場面を眺めているようでした。 タイトルの通り、コニーやギラム、トビーなど、昔の仕事仲間が出てきます。配置配役もティンカー~のときと似ていて、でもだからこそ老い・年月が際立つ。それでも、もう一度第一線に戻り大仕掛けを成し遂げようとするスマイリーに協力する様子から、内向的でとろくさくずんぐりむっくりなスマイリーが実は本当に有能な工作指揮官なんだなぁとしみじみ再確認させられました。 特にトビーのハリキリが、かなり意外。そんなに仲良かったんだっけ… あと、結局アンとはどうなったのか…1~3タイトル通してかなり破局な感じでしたが、映画から入ったものとしてはあのラストが忘れがたく。
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老いの風景が描かれている。 私が一番に感じたのはそれだった。 聡明な”酒飲みおばあさん”の描写はせつない。 一対の裏表と評された彼らの国家を背負った戦いも一区切り。 まぁ、国家間の戦いが消滅したわけではなくて、個人の争いがってことで。
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老練スパイ、スマイリー最後の事件?なのかしら。 この作品はもっと早く出会いたかった。決して派手ではないけど、じっくり効いてくる。 スマイリーくらいの歳になったらまた読み返したい。きっと印象が違うと思う。その前にギラムの歳で読み返すのもいいかも知れない。
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ああ読み終わってしもた。 あまりに時間をかけすぎて読むものだから 肝心のストーリーを誤認してしまう始末。 あっぶなーい 後半数十ページが本当に濃ゆい。 登場人物達の息づかいまで 聞こえてくるような臨場感。 スパイ小説というより スマイリー・サーガ。 堅苦しいだけでなく 時に『ここで?』てな タイミングで飛び出すウイットに大笑いしたり。 ・・・スマイリーの短編があるらしいが 絶版てのがツライ。
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20数年ぶりの再読! ある意味“苦行”と言われたスマイリー三部作のフィナーレにして、スマイリーシリーズの最高傑作! とにかく、メリハリ、サプライズ、そしてカタルシスがないのに、物語を読み進める内にじわじわと滋味が溢れてくる。それは淡々ではなく粛々という印象。 読書の魅力は、年を経て再読するとそれまでの印象がガラッと変わるところ。だが、この作品は意外なほど変わらない印象。それは、私が未熟なだけか……。 カタルシスはないと書いたが、ラストの雪のベルリンのシーンは、過去に読んだ全てのスパイ小説の中で最も美しく胸を打つ場面だった。暫く目を閉じずにはいられなかった。
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