フジコ・ヘミング 魂のピアニスト の商品レビュー
CDや演奏会で彼女の演奏に触れていると、表現することの切実さ、そうとしか表現し得ないもの、そういうものに出会う。 音程を外さないように弾くこと、間違えずに弾くこと、正しいリズムで弾くこと、確かにこういったものは見やすくてわかりやすい。素晴らしいことかもしれないし、誰かに教える上で...
CDや演奏会で彼女の演奏に触れていると、表現することの切実さ、そうとしか表現し得ないもの、そういうものに出会う。 音程を外さないように弾くこと、間違えずに弾くこと、正しいリズムで弾くこと、確かにこういったものは見やすくてわかりやすい。素晴らしいことかもしれないし、誰かに教える上で手っ取り早く伝達する術なのかもしれない。 けれど存在というものは必ずしもそんな風にはなっていない。音程なんて時代や場所で異なるし、どんな理屈で調律しているかベースにしている文化でもまちまち。楽譜通り間違えずに弾くことは表現者の考える力を奪う。記譜上そうとしか書けなかっただけで本当は何かもっと別なものが含まれているかもしれない。リズムだって決まり通り正しくやっていたら面白みに欠けるし、飽きが来る。正しい演奏というものは果たして何を表しているだろうか。正しく演奏するということで一体何が表現されるというのだろうか。 必要な技やルールを知ることという意味で正しく演奏することは大事だ。しかしそれ以上にそうした必要な技やルールは一体なぜ存在せざるを得なかったのだろうか。人間は身体のつくりは確かに同じだが、個性がある。必要な技やルールではなくてもできることやそうしなくてももっといい方法がある場合もある。表現するとはその瀬戸際で、そう演奏せざるを得なかったというひとりの人間の歩いてきた道のりだと思う。 ほんとうにここまで長い道のりを、歩いてきて舞台に立たれている。その姿を見るだけで、ピアノ音がショパンがリストがドビュッシーがエスコートしてくれているのではないか、そんな風に思えて仕方がない。
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フジコさん、天使みたいな人。 きれいな世界しか知らない天使ではなくて、哀しみや醜さを知ってもなお、飛ぶことをあきらめなかった人だ。
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苦労の連続の人生だけれど、この本ではそれほど重く感じさせず、むしろほほえましく感じた。フジコさんの心にしみる演奏が思い起こされる。また聴きたくなった。
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すごく素直で、ストレートな人なんだなと思った。才能がある人は感性がちがう。辛かったこと、様々な経験が演奏に表れているんだと思う。だからすごく深い音になるんだなぁ。
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日本ではNHKの番組により、その名を知られることになつたフジコ・へミングさん。本書はいはばそこに至るまでの彼女の半生を綴つた自伝と申せませうか。 この人の文章を読みますと、まことに強靭な精神力の持ち主であらうことが推察されます。 同時に、自らの才能を信じる信念があるといひますか...
日本ではNHKの番組により、その名を知られることになつたフジコ・へミングさん。本書はいはばそこに至るまでの彼女の半生を綴つた自伝と申せませうか。 この人の文章を読みますと、まことに強靭な精神力の持ち主であらうことが推察されます。 同時に、自らの才能を信じる信念があるといひますか、客観的に自己評価を下せる人物なのでせう。 謙譲を美徳とする日本人にとしては、受け入れ難いとする反応も多いと存じます。何せ「私は大いなる才能がある。それを理解しないのは教養のない聴衆のせいなのだ」と語つてゐるに等しいですからな。 高い評価を受けてゐる人ならば喝采を浴び、さうでない人は同じ事をしてもそつぽを向かれます。関係ないが、野田くんと小泉くんは似てゐる。それぞれ増税・郵政でまつしぐら。党内に反対意見多数。違ふところは、小泉くんは圧倒的な支持率を保持してゐたといふとことですな。 ゆゑに敵対する人々を「抵抗勢力」と名付け、更に支持を得たものであります。野田くんはそれができず、野党にすりよる毎日。 フジコさんを取巻く環境を見て、さういふことを考へました。余計な事です。 http://ameblo.jp/genjigawa/entry-11265828131.html
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フジコ・ヘミングが生まれてからこれまでの人生のエッセイ的なかんじかな? 家族のこと。カラヤン、バーンスタインとの出会いとかどきどきしちゃった笑
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良くも悪くも、感覚で生きている人。 こういう生き方も素敵だなぁ、と思った。 私には無理だけど。
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初めてフジコヘミングを知ったのは、彼女の絵をみたときで、その絵が綺麗で繊細で可愛らしい絵だったのですごく印象に残ってた。 聴力も国籍も失って、自分のピアノの才能を信じて歩んできた強い人だけど、この本を読んで彼女はそれ以上にとても繊細で、世界に対してやさし過ぎる(と一言で片付けてし...
初めてフジコヘミングを知ったのは、彼女の絵をみたときで、その絵が綺麗で繊細で可愛らしい絵だったのですごく印象に残ってた。 聴力も国籍も失って、自分のピアノの才能を信じて歩んできた強い人だけど、この本を読んで彼女はそれ以上にとても繊細で、世界に対してやさし過ぎる(と一言で片付けてしまうのは言葉が足りない気がするけど)人なんだと感じました。 こういう人の自叙伝を読むと色々考えさせられるな。 ――でも、わたしは人間なのだ。 だから前を見る。 もたついて、ジタバタして、それでも顔を上げて前を見る。 わたしは人間なのだから。
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