鏡の国のアリス 改訂新版 の商品レビュー
ルイス・キャロル「鏡の国のアリス」を題にとって、ルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」という童話について──というか、そこからルイス・キャロル自身についての考察を──あくまでフィクションの中で試みている。この"フィクションの中で"というのが大事で、つまりこの小...
ルイス・キャロル「鏡の国のアリス」を題にとって、ルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」という童話について──というか、そこからルイス・キャロル自身についての考察を──あくまでフィクションの中で試みている。この"フィクションの中で"というのが大事で、つまりこの小説自体は「鏡の国のアリス」およびルイス・キャロルへの論文ではなくて、かつ、フィクションという形態を遵守することでメタ・フィクションにもならないように厳格に書かれている。 というか、ルイス・キャロルおよび「鏡の国のアリス」は実在する人物であり実在する童話であるから、それらについてをフィクションの中で偽史的に扱うことはメタ・フィクションではない。むしろ、実在した人物の背景を想像し捏造していく偽史という手法は逆メタというか、フィクションの力が現実を転覆せんとする痛快さがある。 「鏡の国のアリス」はifモノとしてミラーワールドを扱うことで、こちらの世界とあちらの世界のパワーバランスの転覆を図る。 それは、実在したルイス・キャロルとその童話について広瀬正が小説自体によって試みている挑戦と相似関係にあるように見える。
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良書。 70年代のまさにSF。この頃は、夢があった。出来るか出来ないか判らないことを想像でSFにしていた。今は、出来るか出来ないか予想がつく時代になって、夢が物語が書きにくい時代なのではないだろうか。 今読むと、子供っぽいと感じるところもある。でも、恋愛なんてこれくらいが読んでて...
良書。 70年代のまさにSF。この頃は、夢があった。出来るか出来ないか判らないことを想像でSFにしていた。今は、出来るか出来ないか予想がつく時代になって、夢が物語が書きにくい時代なのではないだろうか。 今読むと、子供っぽいと感じるところもある。でも、恋愛なんてこれくらいが読んでてドキドキする。 鏡関係は難しい。だいぶ飛ばし読みした。作者の賢さ、こだわりが伝わる。
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小さな鏡の中を覗き込むと、そこに広い世界が広がっているのが見えるけれど、鏡の中に世界なんかあるわけがないのだ。いったいいつ頃から「鏡の中の世界」についてのお話があったのか知らないが、当然、キャロルの『鏡の国のアリス』を挙げねばなるまい。しかしこれは広瀬正の『鏡の国のアリス』であ...
小さな鏡の中を覗き込むと、そこに広い世界が広がっているのが見えるけれど、鏡の中に世界なんかあるわけがないのだ。いったいいつ頃から「鏡の中の世界」についてのお話があったのか知らないが、当然、キャロルの『鏡の国のアリス』を挙げねばなるまい。しかしこれは広瀬正の『鏡の国のアリス』である。 『ミラーマン』は鏡の国からやってきたのだが、あまり不自由なくこっちの暮らしをしていたようだし、『仮面ライダー龍騎』では、鏡の世界にはいって戦うのだけど、鏡の世界にはいったからといって、左右が違って苦労するということはないようだった。 本書『鏡の国のアリス』の主人公は本来左利きなのにむりやり右利きに直して苦労していた青年である。今は無理に直したりしないだろうが、昔は直されたのだよ。それが銭湯に浸かっていたら左右が逆になって、男湯にいたはずが女湯にはいっていたというのが、話の始まり。細かいこと言うと、鏡の世界で左右が逆転したからといって、男湯から女湯に入れ違うというのは、何かちょっとおかしいのだけど、それはご愛敬。 鏡の世界では左利きが右利きとなって、苦労していたこの青年にとってはよいことずくめに思えたが、という小説である。 『マイナスゼロ』『ツィス』『エロス』と続けざまに直木賞候補となった矢先、あえなく夭折してしまった広瀬正の机には2作の長編が残されていた。『鏡の国のアリス』と『T型フォード殺人事件』である。そのほかにも幾多の長編の計画があったと聞くと、何とも惜しい気がするが、それはさておき。 『鏡の国のアリス』は長編とはいえ短めで、短編3作とで一冊本になっている。 テーマは鏡、というか左右対称の問題、量子論でいうパリティの問題である。途中、長々とパリティ論が解説されたり、初期のアイディア小説の流れを汲む面が強く、作品の完成度という点ではいささか落ちることは否めない。もっとも、左右反対の世界に迷い込んでしまった青年のお話を読みながら、楽しく物理学の対称性が学べる小説である。意外なオチも用意されている。 さて、なぜ鏡に映った自分は左右反対なのでしょうか。答えは本書を読まれたし。
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表題作は、途中のビデオで見せてる部分が私には難しい・・・なんかもう、そんな細かいことにこだわらなくてもいいじゃん!と叫びたくなってしまう感じ。短編の方はその点気楽に読めて良かったな。
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相変わらず細かいねぇw。”鏡の国”という設定にこだわり抜いた緻密すぎるほど緻密な思考実験には脱帽させられる。ただオチにはもう一捻り欲しかったかな……。
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こんなところで反物質について学ぶとは。 光学異性体で出来た物を食べたら爆発するの??消化出来ないのかと思ってたけど。 それにしても結局誰の夢だったのだろう。 表題作の他も良かった。遊覧バスは何を見たが特に。
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サウスポーや鏡の色々な話が聞けて良かった。 なんて書くと、小学生の読書感想文が思い起こされますが、何とも感想しづらい小説ではありました。 話としてはあまり面白味は無く、元祖「鏡の国のアリス」の発想を引用した『現代版鏡の国のアリス』というポジションになるでしょう。 短編はなか...
サウスポーや鏡の色々な話が聞けて良かった。 なんて書くと、小学生の読書感想文が思い起こされますが、何とも感想しづらい小説ではありました。 話としてはあまり面白味は無く、元祖「鏡の国のアリス」の発想を引用した『現代版鏡の国のアリス』というポジションになるでしょう。 短編はなかなか、誰でも書けるような話の集まりみたいで、確かにこんなに書けるのはすごいですが、 逆にその程度か、という感じでした。
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銭湯の湯舟でくつろいでいた青年は、ふと我に返って驚愕する。いつの間にか、そこは「女湯」に変わっていたのだ。何とか脱出した彼が目にした見慣れぬ町。左右が入れ替わったあべこべの世界に迷い込んでしまったらしい。青年は困惑しながら、新しい人生に踏み出そうとするが―。「鏡の国」を舞台に奇想...
銭湯の湯舟でくつろいでいた青年は、ふと我に返って驚愕する。いつの間にか、そこは「女湯」に変わっていたのだ。何とか脱出した彼が目にした見慣れぬ町。左右が入れ替わったあべこべの世界に迷い込んでしまったらしい。青年は困惑しながら、新しい人生に踏み出そうとするが―。「鏡の国」を舞台に奇想天外な物語が展開される表題作ほか、短編三編を収録。伝説の天才が遺した名作品集。
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これまた広瀬さんのこだわりの詰まった小説全集・・とは言っても広瀬さんが亡くなられてから、この全集は作られたわけですが・・。そう思って読むと、ますます惜しい方を亡くしたと思うのですが、広瀬さんのどこがそんなに凄いのかと言うと、パラドックスにありがちな、『ちょっとした辻褄』も合わない...
これまた広瀬さんのこだわりの詰まった小説全集・・とは言っても広瀬さんが亡くなられてから、この全集は作られたわけですが・・。そう思って読むと、ますます惜しい方を亡くしたと思うのですが、広瀬さんのどこがそんなに凄いのかと言うと、パラドックスにありがちな、『ちょっとした辻褄』も合わないと気がすまない、という事なんです。 そのために、ある時は読むのが難しい、難解どころもあるのは事実です。今回も、鏡の国のアリスについて、広瀬さんならではの、『突っ込んでみたいところ』というのが書かれてあったのですが、いかんせ、私のような凡人な頭には到底理解できない事でした。 それでも何とか理解しようと、ビデオの実験の場面は3回読みなおして、ようやく、概要が分かった、気がしました。それでもはっきりと『納得』したわけではないのですが、まあ、3回読んで理解できないものは4回読んでも理解できないだろう・・という事で、概要が分かっただけで満足して読み進みました。 最後は、なんだかまあ、結局、男ってぇ、もんは、と思ったのと、ハン子ちゃんがそれで幸せなら、まあ、良いか、と思いました。 他の作品はちょっと怖いSFっぽいのが2つと、遊覧バスは何をみた、は、昭和の匂いがする、マイナス・ゼロと、作者は違うのですが、北村薫さんのリセットを思い出させる、心温まる作品でした。
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少し長めの中編(表題作)に短編がいくつか。かなりボリュームがある一冊。作者は、知る人ぞ知るSFのパイオニア的存在である(故人)。 表題作はさすがに読み応えがある。左右あべこべの世界の迷い込んだ男の冒険記である。冒険記といっても、肉体的な意味での冒険がさほどあるわけではない。...
少し長めの中編(表題作)に短編がいくつか。かなりボリュームがある一冊。作者は、知る人ぞ知るSFのパイオニア的存在である(故人)。 表題作はさすがに読み応えがある。左右あべこべの世界の迷い込んだ男の冒険記である。冒険記といっても、肉体的な意味での冒険がさほどあるわけではない。本人にとっては大変なことだろうけれど、まあ生きる死ぬという話ではないのである。「左右あべこべの世界」ってのは、たとえばまわり中の文字が全て鏡文字になっていて、自分が普通に書く文字が全部まわりの人から見れば鏡文字であって驚かれる、とかそういうことだ。コミュニケーションという意味ではかなり辛いし、異邦人としての孤独は味わいそうだけど、まあそれだけである。 それでもこの作品を冒険記と呼ぶのは、まさに知的な冒険がそこにあるからだ。途中、登場人物が解説する形で、鏡についての長い話がある。鏡像の解説だ。つまり、「鏡に映ると左右が逆になるのはなぜか」「左右が逆になるのに上下が逆にならないのはなぜか」といった話である。なんとなく説明できそうなのだけど、なかなかうまく説明できない話が、自分なりには納得できたのが嬉しいし、そういうロジックが、ひとつの物語にきっちりと組み立てられていることに驚く。 この作品以外のいくつかの短編にもあてはまることなのだけど、僕らの持っている「当然そうだ」という感覚がいかにあいまいで相対的なものであるかを、きっちりと切り取ってくれている感じがする。この作品で言えば、最後の3文字に、あたまがぐらぐらするような衝撃を感じる。どっちがどっちかわからなくなると言うか、今まで当然そうだと考えていた前提が、くるっとひっくり返るのである。 短編の中では、その点で最後にある話がおもしろかった。童話めいた、それほど大きなストーリィがある話ではないのだけど、むしろ読み手の頭の中でいくつかのドラマが起きているような錯覚を感じる。おもしろい。 ちょっと読者を選ぶのかな、というか、おもしろくない人には全然おもしろくないだろうなと思うのだけど、僕個人は、とても楽しんで読んだ。 2009/5/14
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