日本の国宝、最初はこんな色だった の商品レビュー
本来の色を再現したその先にある、作者の意図や考え、またその時代の空気や世相を洞察し、「参加する視線」というコミュニケーションの概念に置き換えた著者小林泰三さんのすばらしいお仕事に感銘を受けた。 「おわりに」の中にこんな一文がある。 『この視線を身につけるためには「寛容」の心が必要...
本来の色を再現したその先にある、作者の意図や考え、またその時代の空気や世相を洞察し、「参加する視線」というコミュニケーションの概念に置き換えた著者小林泰三さんのすばらしいお仕事に感銘を受けた。 「おわりに」の中にこんな一文がある。 『この視線を身につけるためには「寛容」の心が必要だからである。「歩み寄り競い合う」ためには、相手を理解し尊敬し、真剣に対峙しなければならない。』 この後に「謙虚」であることも必要と言っておられる。私はむしろ参加する視線によって、作者の思いやその時代背景、あるいはその時代に生きた人々の空気などを感じることで得られる想像力に付随して、寛容さや謙虚さも同時に得られるのではないかと思った。 芸術を見ることをで養われる想像力から得られる価値の大きさを認識させてもらうことができた。
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昔の仏像・建築物・絵画その他はキッチュだった! とは知ってはおりましたが・・・ CGで再現されたのを観ると、またスゴイものです。 いやはや再現するのは大変だ。
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文化財のデジタル復元に関する専門家、小林泰三さんがその復元の過程や発見をまとめた本。経年劣化した文化財ではわからないことが、デジタル復元して初めてわかることがこんなにあるのかと感動しました。特に日本人の美術に対する参加する姿勢というキーワードは、青空がひらけたような感銘を受けまし...
文化財のデジタル復元に関する専門家、小林泰三さんがその復元の過程や発見をまとめた本。経年劣化した文化財ではわからないことが、デジタル復元して初めてわかることがこんなにあるのかと感動しました。特に日本人の美術に対する参加する姿勢というキーワードは、青空がひらけたような感銘を受けました。
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日本美術をデジタル復元する。 その復元術の本、ではない。 復元したら何が見えてくるのか、に着目した本だ。 「美術刑事」の異名をつけられた著者は、デジタル復元を ・現場検証(復元前の作品をよく観察する) ・聞き込み(専門家の意見を聞く) ・推察(復元の方向性を定める...
日本美術をデジタル復元する。 その復元術の本、ではない。 復元したら何が見えてくるのか、に着目した本だ。 「美術刑事」の異名をつけられた著者は、デジタル復元を ・現場検証(復元前の作品をよく観察する) ・聞き込み(専門家の意見を聞く) ・推察(復元の方向性を定める) ・立証(デジタル復元をする) そして、「逮捕」(復元した美術を味わい尽くす) と段階を分けている。実際にデジタルなのは立証だけだ。そして本書も、立証以外の部分も扱っている。特に「逮捕」にこだわっている。 実際にどんな色が使われていたかはわからないことも多いが、例えば仏像は、よく見ると褶や隙間に色が残っていたりする。かつては色使いに組み合わせのルールがあり、そのルールも用いながら復元を行っていく。 「逮捕」に至るまでにわかるのは、日本美術は美術として、美術館に飾って愛でるためのものではなかった、ということだ。デジタル復元のいいところは、安いコストで復元出来る故に、手にとって見る、という当時の使い方の再現を試みることが出来ることだ。昔のことが描いてある美術品、ではなくて、そのとき描かれるべくして描かれた作品の前後、その興奮に、少しでも近づいてみよう、参加してみよう、という試みだ。かなり、素敵な取り組みと本。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「日本人は日本美術を美術とは思っていなかった」 みんな同じ色の日本の大仏やお寺。これらは作られた当初は朱色や緑といった唐をイメージするような鮮やかな色彩だったという。確かに仏像などを良く見てみると、時折微かな色がみられることがある。しかし微かな色を頼りに自分の中でかつての色を妄想するのは至難の業だ。絵師が手で再現するのも大変な時間とお金がかかる。21世紀になり、それをCGで行なったのが本書。これにより国宝が鮮やかに動き出した。再現して初めて「この絵の分割された部分には襖の柱があったのではないか」など新たな視点が生まれてくる。技術的な話が多いのかと思っていたのだが、歴史の雑学が豊富で最後まで興奮して読み切った。
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ミラクルをビジュアル化し信じ込ませるには、ヒーローを登場させるのがわかりやすい。日照りが続く村で、農民が祈るより、祈祷師が突然現れて呪文を唱えた途端雨が降ったほうが印象的。p22 奈良時代のヒーローは、仏像。p23 「さらに人情あらば、一枝の草、一把の土を持ちて像を助け造らん...
ミラクルをビジュアル化し信じ込ませるには、ヒーローを登場させるのがわかりやすい。日照りが続く村で、農民が祈るより、祈祷師が突然現れて呪文を唱えた途端雨が降ったほうが印象的。p22 奈良時代のヒーローは、仏像。p23 「さらに人情あらば、一枝の草、一把の土を持ちて像を助け造らん」 新薬師寺の伐折羅像は、原色の色彩。p34 東大寺の盧遮那仏や四天王、仏閣の天井や梁、柱なども色彩豊か。p46 大仏建立に参加することは、民衆にとって、地上の極楽を体感するイベント。娯楽も刺激もない毎日の中で、国家が提供するイベント。かつ、あらゆる階層の民が、天皇と同じ仏の宇宙を体感。p50 奈良時代では、「参加する視点」をあらゆる階層の民が獲得する。 権力者は、憶病者。「贅を尽くし」、平等院鳳凰堂などをつくろことで、極楽に行けるように願った。p56 寺院=バーチャルな極楽。 平安時代になると、鑑賞者は、少数かつ能動的。しかも、金をかけまくる。 禅林寺の山越阿弥陀図では、「参加する視点」が重視され、宗教的教えを再現するより、「救ってくれる臨場感」を追求。p58 知恩院の早来迎は、阿弥陀仏を早く来させ、いち早く救うように書いた。 平安貴族の救われたいという叫びが、美術品に強く反映される。 地獄草子より。p61 鶏地獄は、鶏は朝一番(夜と朝の間)に鳴くことから、生と死を司る役割。 また、火は、焼き討ちや火事を恐れる当時の人にとって、非常に恐怖。 鉄鎧処は、罪人の肉と骨を分けている。肉は贅沢をして太ったものの象徴。 地獄草子は、ホラー映画のように、怖がりながら一方でストレス解消するような感覚。p81 マンガのルーツは絵巻物。臨場感記号の累積物。行動の勢いが伝わってくる。p82 貴族自身が「参加」できるようにした。 絵巻について。 平安時代は、貴族のみが楽しむエンタメ。 平安時代後期や鎌倉時代は、自分たちが支配階級に上がっていく伝説、武勇伝、戦いの教科書。p88 武将が着飾ったのは、死装束ではなく、いかに戦場で目立てるか考えたため。p101 「絵の中で遊ぶ」という、見る側の視点を浮き彫りにする「参加する視点」p149 奈良時代に、庶民の「参加する視点」がいまれるきっかけができ、その後、平安時代には貴族に引き継がれ、鎌倉時代には武士に引き継がれ、室町時代には武将や文化人に引き継がれ、江戸時代には爆発的に庶民にまで浸透していった。p156 日本人は日本美術を美術とは思っていなかった。p193 当時は、美術館もないし、美術品は手をいじって楽しむ一種のツール。 「参加する視点」は、日本美術のための鑑賞法ではない。なぜなら、世界中で日本のアニメが流行っているから。p194 「参加する視点」というのは、作る側(情報を発信する側)からすると、完璧に出来上がった情報を与えるのではなく、見る側(情報を与える側) に解釈してもらい、大きく展開していく余地を残し、あえて未完なシンボリックな表現をしている。それを、お互い何も言わずに理解し、与えられた情報以上の効果を生み出すことにより、最高のコミュニケーションを成立させる。つまり、お互いが芸術家。p196 「参加する視点」は、いままでの情報のスタイル、つまり事実を正確に伝え、正確に受け止め理解し評価するだけのスタイルとは違い、「双方が歩み寄ることによって情報の質をさらにグレードアップする」可能性がある。 ウィキペディアは、「歩み寄って情報の質を高めるスタイル」という点で似ている。p197 参加する視点を身につけるには、寛容の心が必要。「歩み寄って競い合う」には、相手を理解し尊敬し、対峙しなければならない。
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日本美術のデジタル復元美術の話。とはいっても技術的な話ではなく、作品を見る視線や視点が復元によってどのように変化し、どこに焦点が定まっていくかが述べられている。 時代順に章立てされており、視線/視点の移り変わりを時代を追って解説しており、著者が『参加する視線』とよぶ、作品と見る...
日本美術のデジタル復元美術の話。とはいっても技術的な話ではなく、作品を見る視線や視点が復元によってどのように変化し、どこに焦点が定まっていくかが述べられている。 時代順に章立てされており、視線/視点の移り変わりを時代を追って解説しており、著者が『参加する視線』とよぶ、作品と見るものの距離感の時代変化が浮かび上がってくる。 さらに、鑑賞者には作品を「読み取る」寛容性と謙虚さが不可欠であり、作品と鑑賞者の歩み寄りのうえに成り立つコミュニケーションが不可欠であると作者は語る。 日本美術は日本文化の多様性と寛容性の上に成り立っているのだと再認識。
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美術品のデジタル修復を書いた本。 とても読みやすく、図解も多く好感が持てた。 自分が絵を描く人間だからかもしれないが。 人々にとって身近な存在であった日本の国宝は、 マンガの原点である、という考察は納得する。 本来の日本の国宝はもっと自由に鑑賞されていたものなのだと。
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古く傷んでしまった国宝をデジタル復元する過程を、丁寧に解説した本。日本美術の見方、デジタル復元に対する気持ちが変わった。 大変興味深い本であった。
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個人的にはちょっと読みにくかったです。デジタル復元はすばらしいです。ただ、どういう彩色だったかは、今あるものを個人それぞれが見て、思うところが違って来るのではないでしょうか。本書で色のイメージが先入観として定着していきそうな気がしました。
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