誇り高き王妃 ジョコンダ夫人の肖像 の商品レビュー
前半の『誇り高き王妃』は、なんと天国でヘンリー2世を待つ、アリエノール・ダキテーヌと義母の皇后マティルダとウィリアム・マーシャルの回想という設定。 後半の『ジョコンダ夫人の肖像』は、レオナルド・ダ・ヴィンチと徒弟のサライの話。ミラノ公イル・モーロがパトロンだった時期、フェラーラ公...
前半の『誇り高き王妃』は、なんと天国でヘンリー2世を待つ、アリエノール・ダキテーヌと義母の皇后マティルダとウィリアム・マーシャルの回想という設定。 後半の『ジョコンダ夫人の肖像』は、レオナルド・ダ・ヴィンチと徒弟のサライの話。ミラノ公イル・モーロがパトロンだった時期、フェラーラ公の次女・ベアトリーチェとの交流がメインかな。最後にちょろっとフィレンツェに帰郷、ミケランジェロと対面し、モナリザのモデルが訪ねてくる場面で終わる。
Posted by
レディーファーストの始まりやアーサー王伝説の書き換えなど興味深い出来事もあったが、英仏史の通史しか学んでいないわたしにとって、その多面性の紹介は混乱するばかりだった。
Posted by
去年(2019年)がダ・ヴィンチ没後500年だったせいで、記念企画ラッシュだったらしく、ここ半年、再放送も含めてやたらダ・ヴィンチ関連の番組を見ている。 あまりにたくさん見過ぎたせいで、どの番組だったかもはや特定が困難なんだけど、当時の有力者の一人、イザベラ・デステという女性が、...
去年(2019年)がダ・ヴィンチ没後500年だったせいで、記念企画ラッシュだったらしく、ここ半年、再放送も含めてやたらダ・ヴィンチ関連の番組を見ている。 あまりにたくさん見過ぎたせいで、どの番組だったかもはや特定が困難なんだけど、当時の有力者の一人、イザベラ・デステという女性が、ダ・ヴィンチに肖像画を描いてほしくてたまらず、何度も手紙で頼んで、下手に出て、なんとか下描きだけは描いてもらったけど、結局願いが叶うことがなかった、という話を聞いて、この女性に興味を持った。 私はダ・ヴィンチの絵の中では「白貂を抱く貴婦人」が一番好きなんだけれど、イザベラ・デステはその絵をわざわざ所有者に頼んで借り出し(今みたいに宅急便も保険もない時代によ~!とんでもない大騒ぎです)、こういうの描いてほしいのよー!と言ってたと聞いて、なんだか笑ってしまった。 いいねえ。お金持ちな人って。自分の欲望に極めて忠実で。 で、歴史に疎い私も、「イザベラ・デステって、なんか聞き覚えあるなぁ・・・・」といろいろ記憶を遡り、某有名スピリチュアル・ブログ(「なにが見えてる?」)を経て、この本にたどり着いた。 すごくおもしろかった。 この本を児童書に分類するのは、大いなる過ちなんじゃないかと言いたい。本来楽しめるべき年齢の人の手に届くのを阻んでしまうんじゃないか?と余計なお世話なことを考えてしまった。 実は、小学生のころ、一度読んだことがあったのだけれど、その時は「同じ作者の『クローディアの秘密』はおもしろいけど、これはつまんないー!」と思ってました。アホな子供です。この本の真価が当時は全然わからなかった。 久しぶりに歴史ものを読んだけれど、このカニグズバーグさんには「アメリカの司馬遼太郎」との称号を贈りたい。おもしろすぎて途中でやめられなかったよ。曲者たちを実に魅力的に描いている。 「ジョコンダ婦人の肖像」はより文学的な味付けで、まぎれもない傑作だけど、同時収録の「誇り高き王妃」も実におもしろい。 語り手を次々と変えていく物語、私は元々大好きなんだけど、歴史上の人物でその手法を使ったのは初めて読んだ。なかなか興味深い。この王妃、確か「英語の冒険」でも印象的に登場してたなぁ、と思う。 「ジョコンダ婦人~」は導入部でハートをわし掴みにされてしまった。コソ泥としてダ・ヴィンチの手記に登場した少年が、最後の遺書では、感謝の言葉とともに特別に遺産相続人の一人となっている。何があったのか?どういう関係だったのか?って、気になるに決まっている。 クライマックスで、「最後の晩餐」の前でサライとベアトリチェがダ・ヴィンチについて話すシーンは息をのんだ。孤独な二つの魂の別れの場面。不真面目なサライと、心に鎧をまとったベアトリチェの二人がともに素顔を見せる瞬間で、静かな緊張感が圧巻だった。 最後の方のページにイザベラ・デステの肖像画の下描きがあったが、この絵はこの絵でいいなぁ、と思う。私は好きだなぁ。 目と二重顎がなんか良い。 本には載せられていないけど、別の絵「ミラノの貴婦人の肖像」は、ミラノ公のもう一人の若い愛人ともベアトリチェだともいわれている絵だけれど、これも好きです。なんともいえない表情。ダ・ヴィンチはやっぱり肖像画がいいな、と私は思う。
Posted by
「誇り高き王妃」は、「ヨーロッパの祖母」とも呼ばれる12世紀の女性「アキテーヌのエレアノール」の生涯を描いた物語。今は天国にいる彼女と彼女を取り巻く人々が、かつての日々を回想するという形式で語られる、ファンタジックでコミカルな要素を取り入れた、一風変わった伝記。 フランスの王妃で...
「誇り高き王妃」は、「ヨーロッパの祖母」とも呼ばれる12世紀の女性「アキテーヌのエレアノール」の生涯を描いた物語。今は天国にいる彼女と彼女を取り巻く人々が、かつての日々を回想するという形式で語られる、ファンタジックでコミカルな要素を取り入れた、一風変わった伝記。 フランスの王妃で、後にはイギリスの王妃となった彼女は、中世ヨーロッパの歴史を知る上で重要な人物ですが、その複雑な生涯を、楽しく、読みやすく紹介してくれている一冊。 「ジョコンダ夫人の肖像」は、ダ・ヴィンチの「モナリザ」製作秘話とでも言うべき作品。 ダ・ヴィンチとその若き弟子サライ、ミラノ公ルドヴィゴ・スフォルツァの妻ベアトリチェの三人の交流を軸に描かれている。 静かな筆致で、鋭く心を抉ってくるような作品。胸を打たれた。
Posted by
「誇り高き王妃」を読んだことなかったので借りたけど、再読の「ジョコンダ」のほうが断然面白かったです。 年取ってから読むとまた全然違った感想を持ちました。若いサライの一途さに対比して描かれる初老のレオナルドの人間臭さがとても切なかった。
Posted by
カニグズバーグは、頭が良くて辛辣な女性たちをとっても魅力的に描く作家だと思う。どちらも歴史上の妃たちを題材にとりながら、規範にしたがわず、満たされない思いをかかえながらも自らの才気によって道を切りひらこうとした女性たちの姿を描き出している。 特に「ジョコンダ夫人の肖像」は傑作。天...
カニグズバーグは、頭が良くて辛辣な女性たちをとっても魅力的に描く作家だと思う。どちらも歴史上の妃たちを題材にとりながら、規範にしたがわず、満たされない思いをかかえながらも自らの才気によって道を切りひらこうとした女性たちの姿を描き出している。 特に「ジョコンダ夫人の肖像」は傑作。天才レオナルドを裏切りながら同時に献身的に支えつづけたサライとの間の関係、そして彼らが愛した、孤独で賢い公妃。互いへの深い理解にもとづきながらも、けっして直接的に交わることのなかった愛情が、時間を超えてひとつの作品に結実する瞬間を示す鮮やかな幕切れが、深い余韻を残す。 「誇り高き王妃」は日本の読者にはなじみの薄い人物を主人公にしているだけに、もうすこしちゃんとした解説をつけてほしかったよ、今江さん!
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「誇り高き王妃」は図書館で立ち読みしていてあまりにも面白いので借りてしまった。 作者は、子供の頃に読んだ「クローディアの秘密」や「魔女ジェニファーと私」の作者だった。正直、子供の頃読んだこの2冊はちっとも面白いと思わなかった。 でも、この「誇り高き王妃」は違う。アキテーヌのエレアノール女公爵の物語なのだ。生まれたときから富と権力を約束され、知性があり、冒険心もあった女性の物語だ。実際のエレアノールがどのような女性だったかは知らないが、現代の私から見てとても魅力的な女性がこの本にはいる。 15歳で地味なフランス王子と結婚するのだが、王子がアキテーヌに会いに来たとき、彼女は城門まで迎えに出る。そして「どの人が王子ですか?」と尋ねるのだ。 このシーンは彼女と王子のすべてを表していて好きなシーンだ。王子かどうかわからないような存在感のない王子と、誰が見ても光り輝く女公爵のエレアノール。つりあうはずもない。 昔読んだクレオパトラの物語の中で、シーザーやアントニウスを篭絡した彼女が次女と一緒に、オクタビアヌスにあったときに、オクタビアヌスは「だれがクレオパトラだ?」と聞くシーンがある。戦いに敗れた彼女を貶める言葉としての誰何だ。 エレアノールには王子をバカにするつもりはないのだろうが、作者は言外に無邪気なエレアノールの無意識な王子への低い評価をあらわしているのだと思う。 後に彼女はフランス王とわかれ、イギリス王と結婚し、多くの子供を生み、多くの子孫を残した。政争に敗れることもあったが、長寿をまっとうしている。 後で調べてみたが日本にはエレアノールが主人公だったりエレアノールのことを取り上げた本は少なそうだ。彼女が生きた欧州ではどうなのだろう。今ならヒロインとしてドラマや小説の主人公に多く登場していてもよさそうだ。
Posted by
1作目の『誇り高き王妃』は王妃エレアノールの2番目の夫ヘンリーの天国への入国審査の判決を待つ間に語られるという独特なつくりになっている。 世界史に詳しくないので、エレアノールに対しての知識はないが、歴史上ではどうやら悪女の部類に入る様子。 そんな女性を愛らしく凛々しく書いた作品だ...
1作目の『誇り高き王妃』は王妃エレアノールの2番目の夫ヘンリーの天国への入国審査の判決を待つ間に語られるという独特なつくりになっている。 世界史に詳しくないので、エレアノールに対しての知識はないが、歴史上ではどうやら悪女の部類に入る様子。 そんな女性を愛らしく凛々しく書いた作品だと思う。 2作目の『ジョコンダ夫人の肖像』はレオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザを題材にした話。 浮浪児からレオナルドの徒弟となったサライの目線で描かれており、堅苦しさがない。 また、レオナルドとサライが愛した公妃ベアトリチェがとても魅力的に描かれており、姉イザベラとの対比が見事。
Posted by
「クローディアの秘密」が好きだったんだが、時間をおいていろいろ読むと、この人のはどれも佳作ぞろいだなぁと思う 誇り高き…は勝手にアントワネットかと思っていたが、エレアノール(wikiだとアリエノール・ダキテーヌ)のことだった(ヘンリー二世の妻、リチャード獅子心王・ジョン王の母)彼...
「クローディアの秘密」が好きだったんだが、時間をおいていろいろ読むと、この人のはどれも佳作ぞろいだなぁと思う 誇り高き…は勝手にアントワネットかと思っていたが、エレアノール(wikiだとアリエノール・ダキテーヌ)のことだった(ヘンリー二世の妻、リチャード獅子心王・ジョン王の母)彼女の存在は今初めて知った… 二編とも女性の生き様の話のように思う。
Posted by
カニグズバーグは児童文学作家で、だいぶ前に「クローディアの秘密」を読んだことがあります。 これは珍しい?歴史物で〜 一作目「誇り高き王妃」は、フランスの大貴族の跡継ぎ娘で、フランス王と離婚成立した直後にイギリス王ヘンリーと結婚した女傑、エレアノール・ダキテーヌの話。 エレアノール...
カニグズバーグは児童文学作家で、だいぶ前に「クローディアの秘密」を読んだことがあります。 これは珍しい?歴史物で〜 一作目「誇り高き王妃」は、フランスの大貴族の跡継ぎ娘で、フランス王と離婚成立した直後にイギリス王ヘンリーと結婚した女傑、エレアノール・ダキテーヌの話。 エレアノールは美貌で気が強く華やかなことが好きで、信心深いフランス王とは合わなかったんですね。 ヘンリーとの間には何人も子供がいて、当初はうまくいっていたようですが、ヘンリーの浮気や跡継ぎ問題から険悪になり、ヨーロッパを揺るがす事態を巻き起こします。 長男が獅子心王リチャードとして有名で、ロビン・フッドの時代の王様です。リチャードはフランスで育ったためかお母さん寄りで、末っ子のジョンは父親の秘蔵っ子だったのでした。そのいきさつもなるほどと納得。 天国で何百年も暮らした後に、数人で回想するという形になっていますが、わかりやすくユーモラスで、とても面白く読めました。 「ジョコンダ夫人の肖像」は弟子のサライの視点から、モナリザ製作に至るまでの意外ないきさつを描いています。 サライは美貌ではあったけれど育ちが悪くて手癖も悪く、まったく画才はなかったにもかかわらず、明るく呑気な性格がダ・ヴィンチと対照的であったためか、お気に入りの弟子でした。 孤高の天才ダ・ヴィンチとの独特なバランスを実感あふれる筆致で捉えていて、デステ家の姉妹とのやり取りなども、本当にこうだったのかもという気がしてきます。
Posted by
- 1