クヌルプ の商品レビュー
気ままに生きる人間でちょっと理解しがたい所もあった。 周りを見下している節もあったが、最後に自分の生き方を肯定してもらって死んでいく。普通の生き方を嫌がってたが、それでも迷いはあったのだろう。 やっぱり理解が難しい人間だった…。感想が難しい。何を読んだかよく分からなかった。
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学生時代に読んだ『車輪の下』以来のヘッセ。初恋で傷つきエリート街道から逸れて漂泊の人生を歩むようになったクヌルプについて描かれた3編からなる作品。自由に漂うことを楽しみ羨ましがられることもありつつ、無責任な孤独さをたしなめられたり自分自身でもどこか自分の人生を歩んでいないのではな...
学生時代に読んだ『車輪の下』以来のヘッセ。初恋で傷つきエリート街道から逸れて漂泊の人生を歩むようになったクヌルプについて描かれた3編からなる作品。自由に漂うことを楽しみ羨ましがられることもありつつ、無責任な孤独さをたしなめられたり自分自身でもどこか自分の人生を歩んでいないのではないかという他人事的な感覚もある歩み。そしてそんなクヌルプがその人生の歩みの最後の自身の人生をどのように総括するのか。時代背景や社会状況は異なってもクヌルプの傷つきやすさや感覚に共感する人は現代でも多いのでは。名作。
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※このレビューにはネタバレを含みます
自由奔放に生きてきたけれど自分は何者にもなれなかった、と嘆くクヌルプに、人々に愛され、ときに嫉妬心を呼び起こさせる、それこそがお前の存在意義だったじゃないかと言い放つ神様。 この本を人生の本としてあげていた某私の推しさん、アイドルとしての存在意義をクヌルプと重ねたのかしら?…と思ったらなんか切なくなっちゃった。 他の方の感想を見ていたら、クヌルプを「我が家にやってきた猫」に例えていた方がいて、みんなを魅了してきたクヌルプの人となりがストンと理解できた!人間がこういう性格だと「ただのワガママじゃん」て思ってしまうところが面白いね。 猫はそうやって生きても「なんのために生きているんだ」とは悩まないだろうけれど(笑)
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「早春」「クヌルプの思い出」「最期」の3編から成る。 年上の初恋の娘に裏切られた時から、クヌルプの漂泊の人生が始まる。旅人となり放浪する彼は、自然と人生の美しさを見いだす生活の芸術家となり、行く先々で人々の生活に灯りをともす。肺を病んで雪の中で倒れ、人生を後悔する彼に、神は彼...
「早春」「クヌルプの思い出」「最期」の3編から成る。 年上の初恋の娘に裏切られた時から、クヌルプの漂泊の人生が始まる。旅人となり放浪する彼は、自然と人生の美しさを見いだす生活の芸術家となり、行く先々で人々の生活に灯りをともす。肺を病んで雪の中で倒れ、人生を後悔する彼に、神は彼らしく生きたと語りかける。 「早春」「クヌルプの思い出」と読み進めていて、この話の何が名作なんだろうかと、正直疑問に思った。クヌルプは、私には、わがままで厚かましく、自己中心的が過ぎるような気がした。誰もが彼を好いて、きれいな子供が屈託なく生き進んでいるかのように評し、放浪している彼に喜んで手を差し伸べている。それがなぜだか理解できなかった。 そのもやもやは最後までやはり残るが、「最期」の編を読むと、彼がいかにして絶対的な孤独を好むようになったのか、自然に包まれながらさすらうことを望むようになったのかが描かれていて、私にとってやや愛すべき人に変貌していき、独り死んでいく彼を憐れむ気持ち、慈しむ気持ちが不思議と湧いてきた。 クヌルプの死の場面は、この上なく美しい。子供の頃、フランダースの犬のネロとパトラッシュが天に召される場面を知った時の、深刻で強烈だった感覚と似ていた。 ☆神さまとクヌルプは、互いに話し合った。彼の生涯の無意味だったことについて。また、どうしたら彼の生涯が作り変えられ得ただろうか、ということについて。なぜあれやこれやがああなるよりほかなく、なぜ別なようにならなかったかということについて。 あるがままでいいんだ、何も嘆くことはない…何もかもあるべきとおりなんだ。 あの時こうしていれば、など、時々立ち止まって深い後悔に打ちひしがれたりは年を重ねれば誰しもあることだけれど、何もかもあるべきとおりなんだ、と大きいものに肯定されたようだった。
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孤独を愛することは誰かに依存してはいけないんやと、思う。クヌルプはけっこう自分勝手で自分大好き人間やから、孤独とはちょっと違うのかもしれない。人の好意をどう思ってるのかなとはめっちゃ感じたし、そばにいたくないタイプかなーと思ってしまったですよ。
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何があっても、決断したのは自分で、それが自分らしさということと受け止めた。 うーん、今の自分には響かないなあ。
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雪降る中での神との対話は、これまでの人生の中でも有数の「あまりに美しい」文章だった。この美しさを求めて何度でもページを捲りたくなる、そんな一冊。
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見た目がすっかり変わっていても、話をするとすぐにそれが誰だか思い出せるという主人公の在り方に心惹かれた。そういう風になりたいというわけでは決してないけれども。
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構成がトリッキーだと思います。作品が全部で3章ありますが、語り手が、それぞれの章で違うと思います。「3章」で出てきた町の医者が、「2章」のクヌルプの友人である語り手だと思います。時間軸で表すと2章→1章→3章の順に時間が進んでいると思います。 作品を読んで、クヌルプは神話の人...
構成がトリッキーだと思います。作品が全部で3章ありますが、語り手が、それぞれの章で違うと思います。「3章」で出てきた町の医者が、「2章」のクヌルプの友人である語り手だと思います。時間軸で表すと2章→1章→3章の順に時間が進んでいると思います。 作品を読んで、クヌルプは神話の人物の様だと思いました。語り手がそれぞれの章で違う理由は、一つはクヌルプの定住や束縛を嫌う人間性を表現するため、もう一つは例えばプロメテウスの様な神話の人物としてクヌルプを表現するためなのではないでしょうか。語り手が違うことによって、クヌルプという人物がいつの時代にも存在する事を、象徴的に表せていると思います。 文学は個人と社会の間の摩擦や軋轢を取り除くことは出来ませんが、個人と社会の間にクッションの様に入り込んで、摩擦や軋轢を緩和する働きはあると思います。この作品中では、クヌルプが周りの人々に対してクッションの役目を果たしていると思います。この作品も、この作品を読んだ現実の人々にクッションの役割を果たすと思います。
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※このレビューにはネタバレを含みます
解説に小説としてのストーリーはないが、散文詩としてのまとまりがある、と記されている。その通りで筋らしいものはない。1部はクヌルプの気障なところが見える。2部は友との哲学的対話。3部がメインだろう。この最期に感じたクヌルプの人生の決着が、この小説の最も重要なシーンだと思われる。普通の人のように、人生に対して建設的に臨めなかったが、周囲に子供っぽい笑顔を振りまくクヌルプらしい人生だった、というわけだ。 「彼は才能があったのに、何故落ちぶれてしまったんだろうか」という問いに対する答えがこの小説にある。 落ちぶれた人クヌルプ…しかし彼は落ちぶれてなどいない。 自由気ままな旅人だ。解説にはエリートより共感しやすいとあるが、共感の対象になるにはあまりにクヌルプは人好きのする性格だ。太宰治の人間失格を読んだ時のような気分だ。持つものが、道を踏み外して落ちぶれていくのに、共感は来さない。持たざるものが道を踏み外した悲しみより、幾分救いがあるからだ。
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