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輿論と世論 の商品レビュー

4.4

12件のお客様レビュー

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2022/12/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

p.295 紋切型の危機予言は、誰でも容易に口にできる。社会が悪くなると予想する者は、つねに倫理的に「正しい」立場に立っており、悪いことが起こらなかった場合でも、自分の警告が流れを変えたのだと強弁できる。つまり、危機予言は外れても歓迎こそすれ責任を問われない絶対安全な予言である。

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2017/08/21

友人のおすすめで読了しましたが、「普段あまり意識しないで使っている言葉や概念を問いなおす」というコメントはまさにそのとおりで、興味深く読むことができました。 よろん、せろん、世論。 あれ、全部同じ意味なんじゃないっけ?せろんなんて読み方あったっけ?と、あやふやな気持ちになってし...

友人のおすすめで読了しましたが、「普段あまり意識しないで使っている言葉や概念を問いなおす」というコメントはまさにそのとおりで、興味深く読むことができました。 よろん、せろん、世論。 あれ、全部同じ意味なんじゃないっけ?せろんなんて読み方あったっけ?と、あやふやな気持ちになってしまいましたが、本著を読み進めるとなるほどそんな経緯があったのか、と思うほどなんとも面倒な(しょーもない?)事情があったのです。 ちゃんとした定義は以下の通りなのですが、漢字の「輿」の字が常用漢字から外れてしまって、「世」で代用されることになったのだとか。。ただ、輿論と世論では全然意味が違うもの。  輿論(よろん):公的意見、public opinion  世論(せろん):大衆感情、雰囲気、popular sentiments 今までテレビで良く聞き流していた「『よろん』の声にしっかりと耳を傾けて…」なんてフレーズも、これからは「ん、それってどっちのこと?」となることうけあいです。 本著では、日本で民意がどのように形成されてきたのか が扱われていて、メディアによる「誘導」の歴史なども触れられています。 最終章では、労力をかけてでも、自らの責任で「輿論」を考え抜いて作り上げ、発信していくことの重要性が述べられています。 インターネットの普及で誰でも発信できるようになった時代だからこそ、「肉うまい」系のツイートも大好きではあるのですが、テーマに真摯に向き合って述べる「輿論」を考え、時には発信していくクセをつけていきたいなぁと感じた次第です。

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2016/11/24

 政軍関係と言われる領域を少し深耕りする為に読む。ナチスの抬頭にせよ、日中戦争にせよ、軍部が企図したものであっても、それを世に知らしめ、”世論”の形成を輔けたのは当時の新聞・ラジオなどのマスメディアである。  しかし、日本においては明治以来("1946年"ま...

 政軍関係と言われる領域を少し深耕りする為に読む。ナチスの抬頭にせよ、日中戦争にせよ、軍部が企図したものであっても、それを世に知らしめ、”世論”の形成を輔けたのは当時の新聞・ラジオなどのマスメディアである。  しかし、日本においては明治以来("1946年"まで)のそれは”輿論(public opinion)”という共通認識のものに彼我(発信元と報道する側)は了解しており、かつそれは”世論(popular sentiment)”とは別のものとして認知されていた、と本書は解題する。  手元にあるウォルター・リップマンの「世論 上・下(岩波文庫版・掛川訳)」は、かつて(改訳前まで)は「輿論」として訳されていた。  それは"1946年"の「当用漢字表」による漢字の制限によって「輿」が当用漢字から外れ、「輿論」が「世論」と”混用”されたことに、今の日本における”世論の定義”の混乱が始まったと本書は説き、その影響を「東京オリンピック」、「全共闘運動」、「戦後政治」等の実例を交えて丁寧に解題していく、非常に興味深く、かつ普遍性を帯びた一冊である。  悲しいかな、この”混用”による影響は大きく、様々な場面において"opinion(多数意見)"と"sentiment(全体の気分)"の相違を峻別することなく意思決定を行ったことによる弊害の反省を、我々は戦後数多く繰り返してきた。個人的には民主党への政権交代(2009.7)と、その崩壊(2012.12)が、その最も大きなイヴェントであったように思う。  今の”自民党一強”の要因の一つには、(民進党のだらしなさもあるが)こういう”輿論”と”世論”の”都合の良い混用”による”曖昧な意思決定”にも一因があるように思える。  それは、政権の安定にも寄与するが、(政権が)流動化した際には、その安定化を阻害する要因にしか働かないことに留意すべきだと個人的には思うところである。

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2014/09/20

輿論とは、Public Opinion であり、世論とは、Popular Opinionである。 著者の提言、「民主主義とポピュリズムの境界に目を凝らすためには、輿論=公論と、世論=私情を意識的に使い分けよ」。また、「1. ある発言を前に、それが輿論か世論かを見分けるリテラシー...

輿論とは、Public Opinion であり、世論とは、Popular Opinionである。 著者の提言、「民主主義とポピュリズムの境界に目を凝らすためには、輿論=公論と、世論=私情を意識的に使い分けよ」。また、「1. ある発言を前に、それが輿論か世論かを見分けるリテラシーを磨く。 2. 世論に流されず、自分も担おうと思える輿論を起こすリテラシーを磨く(公共的意見を担う覚悟をもち、発信する)」に共感。

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2013/12/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

敗戦以降今日までを安保闘争やオリンピック、日中国交回復といった折々の世論調査と識者のコメントで振り返り、国民感情や空気としての世論と、責任ある公論である輿論のあり方を探る。 それにしても最期まで著者の言う「輿論」のイメージがつかめないままであった。輿論が空気のような多数派の感情を理性により善導するものであるならば、世論調査の数字と、実際になされた議論や決定とが食い違っている状況は特に批判されるべきではないという気がするが、本書の論旨は必ずしもそうではない。(たとえば終戦記念日を8月15日としたことは国民世論と一致しておらず、お盆と重ねただけのご都合主義だと批判している) 結局「世論」と「輿論」が違うものだということ、あるいは現代史として定着している「史実」と当時の「世論」との間に意外な相違が見られるということ以外に著者が何を言いたかったのか、よくわからないままであった。

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2013/05/25

「世論」は「せろん」と読んでも「よろん」と読んでもよいとされている。今日では「よろん」と読むことが多いだろう。そういうものかと思っていたが、その裏には何とも皮肉な歴史があった。 戦前は「輿論」と「世論」という語があり、前者は人の理性的な声public opinion、後者は人々の...

「世論」は「せろん」と読んでも「よろん」と読んでもよいとされている。今日では「よろん」と読むことが多いだろう。そういうものかと思っていたが、その裏には何とも皮肉な歴史があった。 戦前は「輿論」と「世論」という語があり、前者は人の理性的な声public opinion、後者は人々の感情的な声popular sentimentsといった区別がなされていた。それが戦後、「文化の民主化」の名のもとに常用漢字が設定された際、「輿」は含まれず「世」をもって置き換えられることになった。そこから輿論と世論の混乱が始まり、今に至っているというわけだ。 本書は、そうした経緯を踏まえつつ、60年安保、東京オリンピック、全共闘、田中角栄政権、中曽根政権など時々の「世論調査」から時代の空気を読みつつ、輿論と世論が一体にされてしまった弊害を説いている。落ち着いた筆致のもと、様々な手で論証されていくので、非常に読みやすく説得力がある良書。 今日では「国民感情を考慮して……」などとしたり顔で言われるが、感情とは「世論」だろう。それによって政治的な決断や、将来を左右するような決定がなされているのだと考えると恐ろしい。

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2012/09/15

P39 図 「はげしいデモをやってくれ、そのほうがわれわれは今後アメリカに対して強腰に出られるから」 戦後民主主義の中で、おまえは何をやったかといわれたら、大衆民主主義時代にふさわしい政治手法を、一生懸命努力して開発した。 行革 世論の喚起 臨調が最後まで結束していくこと、 最小...

P39 図 「はげしいデモをやってくれ、そのほうがわれわれは今後アメリカに対して強腰に出られるから」 戦後民主主義の中で、おまえは何をやったかといわれたら、大衆民主主義時代にふさわしい政治手法を、一生懸命努力して開発した。 行革 世論の喚起 臨調が最後まで結束していくこと、 最小限実行すべきもの、ベターなものを出す。 p321322参考文献

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2012/05/09

戦前の近代日本では輿論は公的意見、世論は大衆感情としっかりわけられていた。しかし今現在、輿論(よろん)と世論(せろん)が一体化してしまっている。 本書はそれを指摘し、そうなってしまった経緯を時代的背景から論じる。 「輿論をもって民主主義の政治を。」民主主義とは国や地域を構成する一...

戦前の近代日本では輿論は公的意見、世論は大衆感情としっかりわけられていた。しかし今現在、輿論(よろん)と世論(せろん)が一体化してしまっている。 本書はそれを指摘し、そうなってしまった経緯を時代的背景から論じる。 「輿論をもって民主主義の政治を。」民主主義とは国や地域を構成する一人一人が考え、意見を持つことでなりたつ。このことを再認識いたした。

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2019/01/16

「輿論」と書いて「よろん」と読む。この言葉の消失が理性的な思考の枠組みを消し去ってしまった。どうして「世論」を「よろん」と読むことが当たり前になってしまったのか、そしてそのことが現在にどのような問題として影を落としているのか。著者は史実と文献・データからその経緯を丹念に描き出して...

「輿論」と書いて「よろん」と読む。この言葉の消失が理性的な思考の枠組みを消し去ってしまった。どうして「世論」を「よろん」と読むことが当たり前になってしまったのか、そしてそのことが現在にどのような問題として影を落としているのか。著者は史実と文献・データからその経緯を丹念に描き出していきます。そして著者は一貫して「輿論の復興」を訴えます。そのメッセージは読み手に力強く伝わってきます。最終章の最終節「一人からはじまる輿論」だけでも一読の価値ありです。 明治以降、「輿論(よろん)」=公的な意見(public opinion)は「世論(せろん)」=世間の雰囲気・空気(popular sentiments)とは区別して使われてきた。それが終戦後の当用漢字表から「輿」の字が削除され、代わりに「世」の字が当てられたことから「輿論」は「世論化」していき、理性的で公の意見が論じられる足場が失われ、世間の空気のみがとりだたされるようになったという流れが、史実とデータから丹念に検証され、描かれている。 そして著者は「輿論」の復興を論じる。 「民主主義とポピュリズムの境界に目を凝らすためには、「輿論=公論」と「世論=私情」を意識的に使い分け、「輿論の世論化」に抗することがまず必要なのではないか。P314」、に私は全面的に同意したい。 まずは「世論」を「よろん」と読まないこと、そして著者の言う「感情の言語化」を意識して自分の中で「輿論」を積み上げてみたいと思う。世の中に氾濫する感情的「世論」に棹を挿して考え続けたい。 良書です。

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2010/06/05

[ 内容 ] 「世論の従って政治をすると間違う場合もある」(小泉純一郎)…この“世論”はセロンか、ヨロンか? “公的意見=輿論”と“世間の空間=世論”、両者を改めて弁別し、戦後を検証したい。 終戦記念日、安保闘争、東京オリンピック、全共闘、角栄と日中関係、天皇制、小泉劇場などエポ...

[ 内容 ] 「世論の従って政治をすると間違う場合もある」(小泉純一郎)…この“世論”はセロンか、ヨロンか? “公的意見=輿論”と“世間の空間=世論”、両者を改めて弁別し、戦後を検証したい。 終戦記念日、安保闘争、東京オリンピック、全共闘、角栄と日中関係、天皇制、小泉劇場などエポックとなる出来事の報道を分析し、メディアの世論操作を喝破する。 甦れ、輿論。 [ 目次 ] 輿論は世論にあらず 戦後世論の一九四〇年体制 輿論指導消えて、世論調査栄える 終戦記念日をめぐる世論調査 憲法世論調査とポリズム批判 「声なき声」の街頭公共性 東京オリンピック―世論の第二次聖戦 全共闘的世論のゆくえ 戦後政治のホンネとタテマエ テレビ世論のテンポとリズム 世論天皇制と「私の心」 空気の読み書き能力 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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