貧民の帝都 の商品レビュー
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2008年刊。著者はフリーライター(元河出書房新社編集)。 ◆経済的困窮者や無住者の実像は、同時代史的な書はあるが、それを纏め、新書サイズで展開した著作は寡聞にして知らない。 本書は、情報が割りと集積している維新期以降の東京の経済的困窮者・無住者・養育者不在子弟対策(といっても、奇特な分限者や富豪の篤志に依存するのが大半)の実情を開陳する。 もとより貧困といっても、その淵源が例えば被差別部落といった由なし出自によるもの、ハンセン病などの病因によるもの、養育者不在や失業その他の経済的要因によるものなど多様である。それを余り整理せずに、雑多に放り込んであるので、概括的な時代変化(変化なしとも)くらいは読み解けるが、制度などの変遷を理解することは困難である。
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前に読了した「東京の下層社会」と同時期に購入したが、それとは別の視点で描かれている。前者が貧民窟などで自活する人々を題材にしているのに対し、本著は養育院などの『公』的施設を中心とした記述となっている。明治維新当時、『民』が積み立てた七分積金を『公』が搾取する様子。それに関わる歴史...
前に読了した「東京の下層社会」と同時期に購入したが、それとは別の視点で描かれている。前者が貧民窟などで自活する人々を題材にしているのに対し、本著は養育院などの『公』的施設を中心とした記述となっている。明治維新当時、『民』が積み立てた七分積金を『公』が搾取する様子。それに関わる歴史的人物を見ていると、何ともやるせない。貧民窟も公的施設も、貧者にとっては五十歩百歩なのか?現在の生活保護制度やホームレス対策の遅れは、やはり行政の怠慢なのかも。そうは言っても、救いを求める側にも問題がないとは言えないことは現実……
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貧民シリーズの第1作目であり、他の作品に比べて非常に力が入っていると感じた。内容も大変興味深い。特に、維新政府の失政がリアルに記されている点が注目に値すると思う。 更に、本作で筆者は、争いの都度、多くの貧困層があらたに生まれていると主張しているが、私は、加えて貧困がまた争いを生む...
貧民シリーズの第1作目であり、他の作品に比べて非常に力が入っていると感じた。内容も大変興味深い。特に、維新政府の失政がリアルに記されている点が注目に値すると思う。 更に、本作で筆者は、争いの都度、多くの貧困層があらたに生まれていると主張しているが、私は、加えて貧困がまた争いを生むと考えている、
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明治以降の貧困者対策は、政府当局による泥縄的なご都合主義に翻弄されながらも事業者・慈善家・文化人らが緩やかに連携する、「私」のネットワークによりどうにか維持されてきた。それらを担う養育院や感化院などの各種施設が転々と移配させられてきた歴史を追いながら、筆者はかつて農村に受け継がれ...
明治以降の貧困者対策は、政府当局による泥縄的なご都合主義に翻弄されながらも事業者・慈善家・文化人らが緩やかに連携する、「私」のネットワークによりどうにか維持されてきた。それらを担う養育院や感化院などの各種施設が転々と移配させられてきた歴史を追いながら、筆者はかつて農村に受け継がれてきた「施し」の文化の喪失と、こうした施設に代表される「公」なるものへの人々の嫌悪を憂う。 関東大震災と大空襲、そしてその後の発展による人とカネの大流入のために、ここで紹介されている東京の貧民街はその面影を殆ど残していないようだ。しかし、当時の街の姿と、日本人が忘れてしまったものに思いを巡らせながら、こうした地域をゆっくり歩いてみたいと思った。
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古本で購入。 慶応4年(1867)、官軍が迫る中で支配層・富裕層の離れた江戸はがらんどうになり、この大都市の機能は壊滅した。 そこに満ち満ちたのが乞食や浮浪者であり、江戸が東京と名を変え、「帝都」として新たな一歩を踏み出して後も改善されなかった。 と言うより、むしろ悪化したと...
古本で購入。 慶応4年(1867)、官軍が迫る中で支配層・富裕層の離れた江戸はがらんどうになり、この大都市の機能は壊滅した。 そこに満ち満ちたのが乞食や浮浪者であり、江戸が東京と名を変え、「帝都」として新たな一歩を踏み出して後も改善されなかった。 と言うより、むしろ悪化したと言える。 自殺に心中、行き倒れ。餓死に捨て子に廃疾者。帝都に現出した貧民たちの地獄絵図に対処するため、そうしたひとりで生きてゆけぬ人々の救済施設として設立されたのが東京養育院である。 本書はこの東京養育院の創設と変遷を軸に、東京にできたスラムや貧民救済策をめぐる人々などを点描し、現在にまで続く“暗黒”行政を見ていく。 震災・戦災で様変わりしたせいもあってよくわからないが、かつての被差別民居住区やスラムといったものは、23区を中心に、割と東京のそこらへんにあった。 4大スラムのひとつに挙げられる新宿南町など、今はその影を見るべくもない大都会。新宿駅南口・新南口に挟まれた甲州街道、その街道の右側がスラムだったわけだ。今、誰がそんなことを知って歩いているだろう。 一方、新宿駅から都庁方面へ向かう通路の両側には、 「竹を斜めに切断したかたちの『椅子もどき』のものがならんで」 「すわれない椅子を置くことで、そこへ横にもなれないようにし」 てある。 著者はこれを行政によるいじめと発案者の心のいやらしさの表れと見ているが、正直なところ、僕はこうした措置を歓迎したい。 ホームレスたち浮浪者は、日常における異物だ。関わりたくないし、救う気なんぞない。 それが「市民」の偽らざる本音なのではないか(こういうことを言ったとき“とりあえず”「そんなことないよ!」などと宣う奴がいちばん嫌いなのだが)。 人々の日常から「異物」を排除して安心させるのは行政の務めだろう。しかし、それと同じく困窮者を救うのもまた行政の責務のはず。その二枚舌の両立ができていないからこそ、著者の批判する歪みが生まれるのじゃないか。 浮浪者と我ら「市民」の間に横たわる断絶の深さを再認識する本。 東京(ひいては日本)の抱えるひとつの闇の、地続きの歴史を知るのにいい。
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日本、東京、維新の暗部。 毎日、電車からぼんやり見ていたあの場所が、あの保育園が、よく歩いたあの場所が、そういう処とはつい知らず。 最後の一行に震撼した。
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本書は、幕末・明治以降から現在に至る「貧民救済」の歴史を取り上げたものである。 いつの時代にも貧しい人々はおり、「困窮民」が悲惨な環境下にあったことは想像はできるが、「スラム」や「困窮民」の研究書は少ない。 本書では明治2年(1869年)の「三田救育所」から取り上げているが...
本書は、幕末・明治以降から現在に至る「貧民救済」の歴史を取り上げたものである。 いつの時代にも貧しい人々はおり、「困窮民」が悲惨な環境下にあったことは想像はできるが、「スラム」や「困窮民」の研究書は少ない。 本書では明治2年(1869年)の「三田救育所」から取り上げているが、いつの時代にも社会的混乱の被害者は庶民であると思った。 明治期における「貧民救済」の事業を見るときに欠かせないのは「渋沢栄一」による「東京市養育院」の設立と運営であるが、本書ではさすがに詳しく紹介している。「渋沢栄一」は「日本資本主義の父」とも称された人物であるが、いやいやその「社会活動」の足跡は大したものだと賞賛したい。 明治以降の日本資本主義の勃興のなかで、光と影のごとく、帝都に多くのスラムが発生した。本書では「四大スラム」として「鮫ヶ橋、万年町、新網橋、新宿南町」を取り上げている。地図までついた詳細なものなので、現在と比較すると面白い。 「四谷鮫ヶ橋」は現在も低い土地にうねうねと道路が走っており、面影は残る。「上野万年町」は昭和通りと高速1号線に飲み込まれたのだろうか、まったく現在ではわからない。「浜松町新網橋」も「新宿南町」も現在では跡形もないように思える。高度成長の建設の中で、都市の膨張に飲み込まれたのだろう。 本書によると、時の施政者は「貧民救済」にそれなりに取り組んでいたことは間違いがないが、平成11年(1999年)に東京都議会は「養育員廃止条例」を可決したという。 東京に貧民がいなくなったわけではない。現在でも隅田川周辺や大きな公園のいたるところにブルーシートのハウスが立ち並んでいることは誰もが知っている。現在の施政者は、江戸・明治期の指導者以下なのだろうか。 本書は、過去から現在にかけての歴史の暗部を否応なく見つめさせてくれる良書ではあるが、いかんせん「暗い」。読後感は「ため息」である。 現代にもかつての「渋沢栄一」のように、献身的な行動をおこなっている個人・団体はあると思うのだから、せめて最後にもう少し「希望」をも取り上げて欲しかったとも思った。
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【出会い】 たしかBookoff 【概要】 維新以降の東京での貧民の状況と施策。主に養育院やそれに関わった人物が軸。 【感想】 著者は作家であることもあるのか、貧民生活の描写に生々しさが加わっている。 あまり意識していなかったところにかつてはスラムがあったというのは驚き。 「...
【出会い】 たしかBookoff 【概要】 維新以降の東京での貧民の状況と施策。主に養育院やそれに関わった人物が軸。 【感想】 著者は作家であることもあるのか、貧民生活の描写に生々しさが加わっている。 あまり意識していなかったところにかつてはスラムがあったというのは驚き。 「貧民」とはどういう者かという社会的な考え方の時代的な変化が見える。
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”貧民”を収容する施設である養育院から見た東京の近現代史。 タイトルから期待するほど包括的な内容ではないし、著者の安直なヒューマニズムにはすこしいらっとするけど、都市を考えるにおいて貧民は避けては通れない。 都市に貧民が存在すること貧民窟が存在することよりも、存在の事実が人々の見...
”貧民”を収容する施設である養育院から見た東京の近現代史。 タイトルから期待するほど包括的な内容ではないし、著者の安直なヒューマニズムにはすこしいらっとするけど、都市を考えるにおいて貧民は避けては通れない。 都市に貧民が存在すること貧民窟が存在することよりも、存在の事実が人々の見えないところに押しやられ覆い隠されること、そのほうがずっと根が深い。
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※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] 明治期、東京に四大スラムが誕生。 維新=革命の負の産物として出現した乞食、孤児、売春婦。 かれらをどう救うか。 渋沢栄一、賀川豊彦らの苦闘をたどる。 近代裏面史の秀作。 [ 目次 ] 序章 山手線の男 1章 混乱と衰微の首都 2章 困窮民を救え 3章 さまよう養育院 4章 帝都の最低辺 5章 近現代の暗黒行政 終章 小雨にふるえる路上生活者 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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