自動車絶望工場 の商品レビュー
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昭和58年発行の古い本だが、日本の代表企業トヨタがその地位を労働者の多大な犠牲の上で築いたことがわかる。 この本の最後に「豊田市は政治的経済的にトヨタ資本に支配され、街は荒野のように荒涼とし閑散としており、ただ車だけが狂ったように走り回る。トヨタはその創立から発展までの全過程において多額の税金をエネルギーとして…。工場の中では労働者に負担だけを強いる合理化と、非人間的な労務管理が支配している。」とある。また、会社の御用組合と声を上げる組合員つぶしの方法は日航の沈まぬ太陽と酷似しており、それらがフィクションでないことを示している。 日本一の企業がこれなのだから、他はもっと酷いと見るか、これだから日本一に君臨してると見るか、どちらであろうか。
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なんでこんなに何回も読むのか自分でも解らない でも 読んでしまう 昔も今もライン作業ってそんなに変わってない気がする ちなみに私の手元の本は第一刷¥380のもの
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トヨタの職工として働いた著者の体験ルポ。ここまでやるか、、っていうえげつないやり方で労働者の自由を奪い、いやならやめればいいじゃないかと言わんばかりに弱い立場の労働者たちを振り回す。弱肉強食というか、実際働いてる人は大変だなと思いました。今もこんな自体が続いているかはわかりません...
トヨタの職工として働いた著者の体験ルポ。ここまでやるか、、っていうえげつないやり方で労働者の自由を奪い、いやならやめればいいじゃないかと言わんばかりに弱い立場の労働者たちを振り回す。弱肉強食というか、実際働いてる人は大変だなと思いました。今もこんな自体が続いているかはわかりませんが。大きくなりすぎた恐竜企業の軋みが垣間見える1冊だと思います。
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季節工(この企業では期間工というのだそう)として自ら半年間、工場のコンベア作業を体験した筆者が記したルポルタージュ。 声高に何かを訴えるような調子ではなく、日記形式で綴られており、それ故に尚更、リアルで凄味がある。強烈な一冊だった。 体がボロボロになるほどの重労働を、ろくな休憩...
季節工(この企業では期間工というのだそう)として自ら半年間、工場のコンベア作業を体験した筆者が記したルポルタージュ。 声高に何かを訴えるような調子ではなく、日記形式で綴られており、それ故に尚更、リアルで凄味がある。強烈な一冊だった。 体がボロボロになるほどの重労働を、ろくな休憩もないまま10時間以上も強いる。劣悪な環境と過労の結果、指や腕を失うような事故が起きても「皆に迷惑がかかるから気をつけるように」と「注意」される。 筆者が働いていた半年の間にも、指を折って数えねばならないほどの死亡事故が起きているのに、労災は認められない。社内の病院へ行っても、現場の人間は入院させてもらえず、翌日には出勤するよう促される。。。 目に見える鎖で足を繋がれてこそいなかったかもしれないが、金という名の鎖で辞められないように仕向ける仕組みと、労働者を人とも思わないような扱い方は、かつての奴隷や囚人もかくや、という状態である。 これが、1972年、「世界のトヨタ」になろうとするこの大企業を支えていた、土台部分の実態。全国各地からの出稼ぎ労働者が耐えなければならない現実だったのだ。 初版は1973年で、10年経って文庫になった。そのあとがきには、オイルショック以降のロボット導入と、出稼ぎ労働者一掃のことにも触れてある。今度は疲れを知らないロボットに合わせて酷使されることになった本雇いの工員たちの過酷な状況が、改善されたわけではない、ということも。 それから、さらに30年。 事態は変わったと思いたい。 こんなに理不尽な労働がないと経済が成長しない、というのなら、 それは、世の中の方が、どこか間違っているに違いない。 この本を読んでいる最中、新聞にこんな記事を見つけた。 自動車メーカーが国内生産をけん引している、という内容である。かのトヨタも、 「期間従業員を約200人増やし、2交代制でフル生産」 しているそうだ。 下請けの社長のコメントは 「生産計画が毎月上方修正され、対応に追われている」。 「フル生産」や生産計画への「対応」が、この本の当時とは 異なっていると信じたいが、真実はなんとなく予想がつく。 私も、この本に出会っていなければ、上の新聞記事を見ても何も感じなかっただろう。 素通りしてしまうような記事。 声を上げる余裕さえない労働者たち。 「世の中の間違い」はこんなところに潜んでいるのかもしれない。
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いくら過去に書かれた作品であるといえ、今に通じるものが必ずある。コンベア型の労働はいまでこそ、非人道的であると認識されど、日本が今まで結果を追い求めてきたことは紛れもなく、きっとそうすることは正であると思う人も少なくないだろう。 作内でのキカンコーのように使い捨てられる労働力はいまでいう非正規労働者にあてはまる部分があるのだろうか。
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40年も前の書なので、全体を通して、資本家対労働者という旧態の対立の構図の中でしか事象を見ていないんじゃないかとしか思えないような書きぶりには、現在では辟易ものの感。40年前のことを思えば、仕方のないことだったかもしれませんが・・・・ 自分も、この書の時代から数年後に関連会社の...
40年も前の書なので、全体を通して、資本家対労働者という旧態の対立の構図の中でしか事象を見ていないんじゃないかとしか思えないような書きぶりには、現在では辟易ものの感。40年前のことを思えば、仕方のないことだったかもしれませんが・・・・ 自分も、この書の時代から数年後に関連会社の工場で2ヶ月間ほど実習したことがある。最初の1週間はそれこそヘトヘトに疲れ果て、実習生に課せられた工場実習ノートを書く気力・体力が残らないほどであった。それでも次第に身体も慣れてきたなどあって、作業のキツさのレベルは、著者の経験には及んでいなかったと思う。そういうキツイ現場にあって、それでも筆者がこういう日記を残せていたというのは、ライター根性だった・・・ということにしておきましょう。 また随所にコンベア労働の馬鹿らしさを訴える箇所が目についたんだが、結局、労働者そのものまで馬鹿にしてんじゃないかという、上から目線を感じざるを得なかった。 あの当時は、アカと呼ばれる存在がいて、今はそうは呼ばれないで数も少なくなっても、いまだ健在。いつまで経っても消滅しない。社会的弱者が存在しない社会などは夢物語に過ぎないので、こういう存在がなくなって欲しいとは思わないが、会社や権力が一方的に悪いと責め立てる姿勢は改めて欲しいものです。 (2011/12/8)
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明日の見えない労働とはまさにこのことでありませうか。例へば「今、この時期を乗り越えれば楽になる」とか、「将来楽に仕事ができるために、現在一時的に仕事がキツイ」といふのは未来があります。さういふ仕事なら希望が持てるでせう。 しかし、鎌田慧さんが季節工として潜入したトヨタ自動車におけ...
明日の見えない労働とはまさにこのことでありませうか。例へば「今、この時期を乗り越えれば楽になる」とか、「将来楽に仕事ができるために、現在一時的に仕事がキツイ」といふのは未来があります。さういふ仕事なら希望が持てるでせう。 しかし、鎌田慧さんが季節工として潜入したトヨタ自動車におけるベルトコンベアの作業は、全く人間性を無視したものでありました。(現在、トヨタでは「季節工」はゐない。) 生産第一の思想から、現場の実態は見て見ぬふりをされ、ただでさへ人員不足なのに増産を迫られます。ベルトのスピードは上がる一方であります。当然危険度は増し、事実重大な事故も続発しました。死者さへ出てゐます。鎌田さんによると、さういふ事故は何故か公表されない(記事にならない)のださうです。 ここでは人間が機械の一部になり、思考よりも身体が無条件に機械に合せて動くやうになることが要求されます。私はトヨタ本体の工場見学は、小学生時代のイベントを除いて経験がありませんが、下請け孫請けの工場でいくつかベルトコンベアを見ました。たまに日本語を教へたりする中国人女性たちに、就職の手伝ひをすることがあります。言葉がまだ不十分なので、不利な条件で契約しないやうについて行くのですが、その時工場見学をさせてくれます。手馴れた工員たちの見事な動き。鮮やかな手つきを見て、彼女たちは「これなら出来さう」と思ふのですが、いざ試しに自分がやつてみると、あまりのハードさに、無理です、と悲鳴をあげるのです。まさに見てゐるのと、実際に自分がやるのとでは大違ひ。工場の班長や課長は「大丈夫大丈夫、すぐに慣れるよ」と甘いことを言ふのですが。 中には、お金のために頑張つてみます、と入社する女性もゐます。慣れるまでは大変だし、残業も2-3時間は当り前(リーマンショックの前の話)で、へとへとになつて帰つて来るのです。 ここから先は、私の複雑な内面のつぶやき。『自動車絶望工場』は、日本経済を世界有数の地位に押し上げる原動力となつた労働者たちの実態の貴重な記録であり、記念碑的作品であることは間違ひないでせう。しかし豊田市民の私としては、企業はともかく、豊田といふ土地の悪口まで言はなくても良いぢやないかと少し不貞腐れるのであります。例へば「街は荒野のように荒涼として、人影もまばらで、ただ車だけが狂ったように走り回っている」(補章より)なんて表現は、明らかに悪意を含んでゐます。ま、豊田市は何かと嫌はれるから慣れてゐるけれど。 なほ、文中で「トヨタ自動車工業」「トヨタ自動車販売」といふ会社名が出てきますが、当時のトヨタは2社体制だつたのであります。現在は両者がひとつになつてゐます。地元では、いまだに年配者は親しみを込めて「自工さん」と呼ぶのであります。 ルポルタージュの古典ともいふべき本作品、豊田市民以外にはお勧めです。 http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-146.html
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1972-73にトヨタの工場で働いたルポ。 リアルなモダンタイムズだぜ! ト、2010.4.20-4.22
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大学からの課題で読んだ本。 現在でもこんな苛酷労働が続いてるなんて知らなかった。 読書中はかなり苦しくて沈みそうになるけど、日本の現実を見ることができました。 日記で書いてあるところが、また心に響きます。
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自動車業界の人は読むといい。 会社の管理職の人も読むといい。 人を馬車馬のように使って得られるものが、現在の先進国日本を支えている。 努力するのが大好きな日本人を労働力として搾取する仕組みは、今日もあちらこちらに垣間見える。
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