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ダルフールの通訳 の商品レビュー

4.8

9件のお客様レビュー

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2017/08/16

アフリカ、スーダンのダルフール地方で長年続いていたアラブ系民族と 非アラブ系民族との衝突が、2003年になって大規模な民族浄化に発展 した。 その紛争のさなか、自分が育ち家族が住む村を襲撃された若者は隣国・ チャドの難民キャンプに逃れる。 故郷で起こっている虐殺を、世界の人に...

アフリカ、スーダンのダルフール地方で長年続いていたアラブ系民族と 非アラブ系民族との衝突が、2003年になって大規模な民族浄化に発展 した。 その紛争のさなか、自分が育ち家族が住む村を襲撃された若者は隣国・ チャドの難民キャンプに逃れる。 故郷で起こっている虐殺を、世界の人に知って欲しい。その思いから、 身につけた英語を武器にジャーナリストを紛争地帯に案内する通訳と なった著者が、凄惨を極める内紛を綴る。 残酷さを漂わせる報道写真は何枚も見て来た。戦場のあらゆる風景を 集めた写真集も何冊か所持している。本書には目を背けたくなる写真は 1枚も掲載されていない。 しかし、文章が内紛の悲惨さを余すところなく伝えている。 民兵に暴行を受ける父の元へ走り寄った少女は、無残にも父の目の 前で民兵の銃剣で刺し貫かれる。 少年や若者を主体にした反政府組織の81人は、一列に並べられ次々に 鉈で斬殺されていく。 幼い子供たちを連れて逃げる母親は、衰弱していく子供たちを見守り、 木の枝で首を括る。 戦場は目まぐるしく変化する。政府軍に抵抗していた反政府組織も、 和平に合意したあとは同じ民族に銃口を向ける。 ダルフールというアフリカの一地域の紛争が題材ではあるが、アフリカを 覆う哀しみが、この1冊に凝縮されている。◎な良書である。

Posted byブクログ

2012/07/06

 スーダン南部のダルフールで何が起こったか?  あまりにもショッキングな内容に、フィクション映画を観ているよう。でも、それが現実に、今でも、起こっていることだと思った時、この世には本当に悪魔がいるんだと思ったほど。  何の罪もない人々が爆撃を受けるシーンで、「あまりの轟音にショッ...

 スーダン南部のダルフールで何が起こったか?  あまりにもショッキングな内容に、フィクション映画を観ているよう。でも、それが現実に、今でも、起こっていることだと思った時、この世には本当に悪魔がいるんだと思ったほど。  何の罪もない人々が爆撃を受けるシーンで、「あまりの轟音にショック死した小鳥たちが空から降って来た」というのは、想像を絶する地獄絵図 in リアルワールド。これに目を背ける人間があってはならないと思うと同時に、権力を敵に回し、命を狙われてまで、この本を書いた著者を尊敬する。

Posted byブクログ

2011/03/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

自分らしく、正しいことし続けるという信念を貫き通していることに心うばわれました。 後半に書かれている、ポールと、アリとダウト・ハリさんの3人がうけた暴力の数々は像もできません。 そんな非人道的なことがおきているにもかかわらず、 憎しみを暴力にかえることなく、自分ができることを、 英語という武器をつかって、ジャーナリストをサポートをし続けるダウトさんはすごい。。。 貧困地域でおこるレイプ問題。 難民キャンプで、薪を探しにいくときにレイプは当たり前なのだと。難民キャンプでおきているということにも衝撃でした。 それでも、生活のためにはやらなければならない現実。 ダウトさんのように教育をうけることの重要性、慈愛にみちた心を育てることが必要なのかもしれない。 問題は簡単なものではないことはわかっているけど、、、少しでも多くの命が助かることを願う。 ダウトさんのように現地で通訳として活躍できる人もいる。 でも、それぞれにできることは違う。 現地で医療に携わる人、現状を世界に発信するジャーナリスト、 ジャーナリストを現地まで運ぶ人、通訳する人。 その場で士にかけた人をなぜ助けないのか?と 今までのわたしなら思っているかもしれない。 だけど、人それぞれにできること、やるべきことは違うのだ。 悲しい血が流れない、虐殺が行われない世界をつくるために、 自分ができる、自分らしい、正しいことを考えなければならないと思う。 出会う人で人は成長するのだろう。 なくなった兄との関係もすごく感動する。 家族とは、愛とは、正しいこととは何なのか?考えさせられた。

Posted byブクログ

2010/08/04

このダウド・ハリという人は、この平和な日本では考えられないくらい苛酷で凄惨で壮絶な体験をしてきたとはとても信じられないほど、温かく慈愛に満ちた人だ。そして同時にとてつもなく強い。 前半、翻訳であることを差し引いても、もともと物書きではないだけに語り口が滑らかとは言い難く、話の流...

このダウド・ハリという人は、この平和な日本では考えられないくらい苛酷で凄惨で壮絶な体験をしてきたとはとても信じられないほど、温かく慈愛に満ちた人だ。そして同時にとてつもなく強い。 前半、翻訳であることを差し引いても、もともと物書きではないだけに語り口が滑らかとは言い難く、話の流れもつかみにくかった。 しかし、その中で語られていくあまりに凄惨な殺戮、彼とその周りの人々が受けた壮絶な仕打ちには、ページを捲る手が震えるほどだった。そんな想像すらできないようなあまりにひどい経験を、彼はこともなげに淡々と語っていく。 彼らの強い心と、彼らを支える人々の手によって、地獄から生還した彼が、そんな中から導き出した「誰も彼もが仲間なのだ」という言葉が、本当に胸を打った。 最後の最後に彼がアメリカへ亡命できたくだりをもっと詳しく知りたかったとも思うが、書き物としての出来はともかく、素晴らしく、そして今この瞬間にも、謂われない理由で苦しめられ虐げられている多くの人々がいるのだという事実に、改めて強い衝撃を受けた作品だった。

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2009/12/26

日本ではあまり紹介されないスーダンのダルフール地方のジェノサイドについて、現地での経験を元に書かれた本です。著者は、故郷の村と、特に慕う兄を含む多くの仲間を失った後、その実情を世界に伝えるためにジャーナリスト向けの通訳となった人物です。そのために過酷な拷問や死の危険に遭うことにな...

日本ではあまり紹介されないスーダンのダルフール地方のジェノサイドについて、現地での経験を元に書かれた本です。著者は、故郷の村と、特に慕う兄を含む多くの仲間を失った後、その実情を世界に伝えるためにジャーナリスト向けの通訳となった人物です。そのために過酷な拷問や死の危険に遭うことになるのですが、その過程も詳しく書かれています。 それにしても、なぜこんなことが起きてしまうのか、それはこの本を読んでも諒解はできません。 ちょうど今年の取材中に死亡したジャーナリストが41名であったというニュースが出ていました。この本でも戦場ジャーナリストの魂と矜持を垣間見ることができます。彼らが命を賭してまで伝えようとするものについて、こちらも受け取る準備が必要なのかもしれません。

Posted byブクログ

2009/10/04

近年話題となったダルフール紛争において、 原住民という内側かつ、伝達者という外側からもそれを見た筆者が 世界へ向けて事の重大さを伝えた一冊。 実体験がせきららに書かれていることから最後まで緊張感があふれるが、 物書きではない人物が書いた文であることから、ややまとまりに...

近年話題となったダルフール紛争において、 原住民という内側かつ、伝達者という外側からもそれを見た筆者が 世界へ向けて事の重大さを伝えた一冊。 実体験がせきららに書かれていることから最後まで緊張感があふれるが、 物書きではない人物が書いた文であることから、ややまとまりには欠ける。 しかし生の声が聞けることは財産であり、また一経験者の意見として非常に有意義な一冊。

Posted byブクログ

2011/04/22

彼の武器は、銃ではなく英語だった。 外部から「問題」を見つめるのではなく、内部から、かつての同胞として収奪者を見つめるまなざし。相手もまた悲痛な歴史の中に息する者だと理解しているから、敵は収奪者ではなく、この構造自体だと見た。 この問題を、一人でも多くの人に知ってほしい。知っても...

彼の武器は、銃ではなく英語だった。 外部から「問題」を見つめるのではなく、内部から、かつての同胞として収奪者を見つめるまなざし。相手もまた悲痛な歴史の中に息する者だと理解しているから、敵は収奪者ではなく、この構造自体だと見た。 この問題を、一人でも多くの人に知ってほしい。知ってもらうことが何よりも必要だ。 「何かの役にたとうとするなら、やるべきことは常にやらなければいけないのだ」。 その言葉は、時には命をかけて、各国のジャーナリストにダルフールの現状を伝え続けた彼だからこそ説得力をもつんでしょう。 大きな世界を見て、国境も国旗も見えない地球にさまざまな人種の友達をもつ・・そういう体験が、平和主義者に人をする、と彼はいう。 まわりとは違い英語教育をうけたことで、自分自身の運命は常に友人たちのそれとは違っていた、とも。 そういったもの以上に、孤独な戦いに挑んだ彼個人の思いに、胸打たれた。 アフリカ全土に共通する収奪の歴史と、国際化する経済の中で新たに定着する収奪の構造の説明も交えて、問題の哀しさと根深さも知らせてくれます。 ペンは剣よりも強しというけれども、そのペンの強さを活かすためにも、より多くの人に読んでもらいたいと思います。監視の目の力は、大きいと思うんです。

Posted byブクログ

2009/10/04

・私たちが日本で普通に生活していたときに、スーダンでこのような悲劇的なことが起こっていたことを知らなかった自分を恥ずかしいと思った。 ・ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟の中に出てきた人間の残酷さについての記述と同じようなことが現実に起こっていたことにも驚いた。

Posted byブクログ

2009/10/04

これが通訳の仕事だって!?スーダン・ダルフール地方出身の著者はジャーナリストをダルフールへの案内し通訳する仕事に従事している。なのに、武装ゲリラと命がけの交渉をしたかと思えば、拘束され拷問され裁判にかけられ処刑されそうになる。判断一つ間違えれば死に直結する死と隣り合わせの世界。国...

これが通訳の仕事だって!?スーダン・ダルフール地方出身の著者はジャーナリストをダルフールへの案内し通訳する仕事に従事している。なのに、武装ゲリラと命がけの交渉をしたかと思えば、拘束され拷問され裁判にかけられ処刑されそうになる。判断一つ間違えれば死に直結する死と隣り合わせの世界。国中で略奪と殺戮が繰り返されているのはどうにか止めなきゃいけないんだけど、政府軍も反政府軍も残虐性にはあまり変わらないようで、国際社会はどう停戦に向けて動いてゆけばいいんだろう。

Posted byブクログ