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推理作家の出来るまで(下巻) の商品レビュー

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2013/03/11

都筑道夫という人の書くものを読み出したのはもうずいぶん以前のことになる。大学時代に毎日一冊文庫本を読む友人がいた。友人の読むのは所謂純文学だったが、その真似をして本格推理小説を毎日一冊読み続けたことがある。その頃、謎解き本格推理小説についての評論集『黄色い部屋はいかに改装されたか...

都筑道夫という人の書くものを読み出したのはもうずいぶん以前のことになる。大学時代に毎日一冊文庫本を読む友人がいた。友人の読むのは所謂純文学だったが、その真似をして本格推理小説を毎日一冊読み続けたことがある。その頃、謎解き本格推理小説についての評論集『黄色い部屋はいかに改装されたか』を読んだのが初めてだった。表題の二巻は、自伝という形で、著者が推理小説作家になるまでを綴った雑誌連載をまとめたものである。それだけに重複する部分も多々あり、もう少し整理してもよかったのではないかという憾みが残る。久生十蘭を愛する著者にしては、スタイルをどこかに置き忘れてきてしまったのではないか、という素っ気ない文体も気になるところだ。しかし、書かれている事柄については、期待は裏切られなかったと言っておこう。師の正岡容の家を永井荷風が訪ねた日に立ち会った話や、もう一人の師である大坪砂男がスタイルに懲りすぎて書けなくなった逸話など、どれをとってもこの著者でなくては書けなかった話である。著者がエラリー・クィーンの代表作の一つとして挙げている『オランダ靴の秘密』は、大学時代のノートに、真犯人を見破ったことと、その証拠について、わざわざ記録している。犯人を見つけられたのがよほどうれしかったのだろうが、それだけ論理がしっかりしている作品だとも言える。今では、すっかりご無沙汰してしまった推理小説だが、この本を読んで、何度も読める推理小説もあるのだとあらためて気づかされた。インターネット全盛の今では「青空文庫」で『半七捕物帳』も読むことができる。久しぶりに読んでみたくなった。

Posted byブクログ