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日本三文オペラ の商品レビュー

4.5

31件のお客様レビュー

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泥棒集団「アパッチ族…

泥棒集団「アパッチ族」の息遣いが感じられる生々しい迫力に圧倒されます。本書に漂う人間臭さが私は大好きです。

文庫OFF

2023/03/25

開高健の本の中で一番読んでみたかったもの。 色々な説明書きをチラ読みしたり、人からのおすすめコメントを聞くに、エンタメの傑作!みたいに紹介されてることが多かったので、起承転結のハッキリした骨太な物語なのかと想像していたら、そうではなかった。 この人は物語ではなくて、人間というもの...

開高健の本の中で一番読んでみたかったもの。 色々な説明書きをチラ読みしたり、人からのおすすめコメントを聞くに、エンタメの傑作!みたいに紹介されてることが多かったので、起承転結のハッキリした骨太な物語なのかと想像していたら、そうではなかった。 この人は物語ではなくて、人間というものを描こうとしているのかもしれない、と思った。 フクスケの目を借りて、アパッチ族たちひとりひとりを生き生きと描き出している。自分もその中で暮らし、時に彼らに味方したくなるような気持ちになった。 ひとりひとりを描きながら、全体でこの時代と社会に生きてる人間の切ないものが朧な輪郭で迫ってくる。 ああ、いいラストシーンだった。映像として頭に残る。小説には言葉で書かれていなかったことまで、こびりついている。

Posted byブクログ

2021/03/10

30年ぶりに小説を書こうと思い、構想を女房に話すと、 「ええんちゃう、書いたら」と言われた。 その参考資料として、まず、開高健の「日本三文オペラ」を読むことに。 図書館で借りて読み始めると、圧倒的なおもしろさ。 これは参考資料としてというより、じっくり鑑賞したいと思い、 1週間近...

30年ぶりに小説を書こうと思い、構想を女房に話すと、 「ええんちゃう、書いたら」と言われた。 その参考資料として、まず、開高健の「日本三文オペラ」を読むことに。 図書館で借りて読み始めると、圧倒的なおもしろさ。 これは参考資料としてというより、じっくり鑑賞したいと思い、 1週間近くかけ、行きつ戻りつしながら読んだ。 あきません。 どうしてこんな凄い文章が書けるんだろ。 こりゃ、わしには小説なんて無理や、と文豪の力を見せつけられました。 それにしても、おもしろかった。 お読みになっている方も多いことでしょうが、 これは今のOBPのところにあった兵器工場(砲兵工廠)の、 爆撃跡地から鉄などの金属を盗み出して生計を立てていた人々の物語。 アパッチ部落と呼ばれいて、開高健だけでなく、小松左京もSFで登場させている。 開高健は、アパッチ部落に入り込んで取材を重ねたそうだけど、 戦後間もないころにここでなにが行われていたか、 人々の暮らしぶりややりとり、 得体の知れない者同士が敬意を払いながら生きていく様、など、 いろんなことを鮮烈に描いている。 去年、上半期の芥川賞を取った西村賢太(記者会見の時「そろそろ風俗行こうかなと思ったと発言した“中卒作家”)の「苦役列車」も素晴らしい作品だと思ったけど、西村賢太もこれには足許にも及ばない、と感じているのが日本三文オペラかも。 ああ、すばらしかった、そして、自信なくした。 *おおさか本音っとで、エコケーンさんという方が、一昨日、ガード下をテーマに書かれた日記に、今ではほとんど面影が残っていないアパッチ部落の入り口のところの写真をはり付けておられました。これも何かの偶然、いや、縁を感じました。

Posted byブクログ

2020/10/16

自分の生まれる前に書かれた、大阪の部落のお話。描写が生々しいが、軽い口調で面白おかしく書かれている部分もあるので、悲惨な気持ちにならずに読むことができた。6〜70年の間に日本も表面上はすっかり変わったし、こんな苦労しなければならない人たちが減ったと思いたいけど、実際はどうなんだろ...

自分の生まれる前に書かれた、大阪の部落のお話。描写が生々しいが、軽い口調で面白おかしく書かれている部分もあるので、悲惨な気持ちにならずに読むことができた。6〜70年の間に日本も表面上はすっかり変わったし、こんな苦労しなければならない人たちが減ったと思いたいけど、実際はどうなんだろう?とにかく、進んだ文明の恩恵を皆平等に受ける事のできる社会になって欲しいと、こういう話を読むたびに思います。

Posted byブクログ

2020/08/02

開高健の初期の作品。 鉄を食らう『アパッチ族』に変貌する主人公のフクスケ。 終戦後の空腹な時代に出会った、謎の集団『アパッチ族』。 そこで、フクスケは自分の役割を知り、仲間になる。 頼りなかった、フクスケが逞しいアパッチに変身する 痛快で泥臭い作品に元気をもらった。

Posted byブクログ

2019/08/26

『日本三文オペラ』は開高健氏の作品のなかで最も好きだ。日本が焼野原から秩序と自信を取り戻していくなかで、爪弾きにされ無気力化した半端者たちが活躍の場を与えられ圧制されたエネルギーを一気に解放し縦横無尽に旧陸軍工廠の野原を走り回る描写は圧巻だ。アパッチ族たちの熱と臭気が文章から溢れ...

『日本三文オペラ』は開高健氏の作品のなかで最も好きだ。日本が焼野原から秩序と自信を取り戻していくなかで、爪弾きにされ無気力化した半端者たちが活躍の場を与えられ圧制されたエネルギーを一気に解放し縦横無尽に旧陸軍工廠の野原を走り回る描写は圧巻だ。アパッチ族たちの熱と臭気が文章から溢れ出てくるようだ。フクスケに代表されるように、無気力のように見えながら本能として生に対する執着を剥き出し、欲望に従順で互いに狡猾に出し抜きながら規律めいたものは守る様が奇妙で面白い。 朝鮮戦争から1964年東京オリンピックまでの混沌も混沌のなかの出来事であり、いまも在る海外のスラムのような絶望ではなく、希望と成長の澱のようなもので、その特殊な時代を切り取り昇華した良作である。

Posted byブクログ

2019/05/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

土のにおい、風のにおいを鋭く描写し、生命力あふれる人物像。生きるために必死で、助け合う底辺の人々。開高健恐るべし。引き続き、いくつか追ってみる。

Posted byブクログ

2018/07/22

「輝ける闇」の開高健。その初期のヒット作。 現在の大阪城公園の辺りには、太平洋戦争中は広大な陸軍工廠が広がっていて、戦後は残骸が放置されたままに。付近の集落でそれに目をつけた「アパッチ族」が鉄材等を盗みにかかる、彼らの生き様を描いた作品です。 開高健の筆致は作品によって結構違う...

「輝ける闇」の開高健。その初期のヒット作。 現在の大阪城公園の辺りには、太平洋戦争中は広大な陸軍工廠が広がっていて、戦後は残骸が放置されたままに。付近の集落でそれに目をつけた「アパッチ族」が鉄材等を盗みにかかる、彼らの生き様を描いた作品です。 開高健の筆致は作品によって結構違うと思っていて、中盤以降の作品では、重々しい空気感で「うわっ、読みづらい…」という作品もあるのですが、本著は割合軽快に読み進められました。 とは言え完成度は高く、単にアパッチ部落の姿を描くだけではなく、実在するのか?と思うような生き生きとしたキャラと、終わりを見据えたストーリー構成は流石としか思えないもの。 「輝ける闇」のような、1文だけでハッとされられるような衝撃や重さまではなかったのですが、快適に読め、面白かったなぁと思う作品でした。 解説に、開高健は「全力投球の創作を終えると、一種の虚脱感に見舞われてノイローゼ状態になる」と書かれていましたが、凄い人だけど、何ともままならなくて、楽に生きていくことができない人なんだなぁと、本著を読み終わって改めて感じた次第です。

Posted byブクログ

2018/06/24

開高健らしい力感溢れる物語だった。当時の大阪の様子が手に取るようにわかると共に最下層に属する人達の逞しさを感じると共にこうした人達の中でも搾取する側とされる側がいるのは当然ながら搾取する側が搾取される側を同じ人間としての視点を失うことなく接している事に現代との違いを感じる。

Posted byブクログ

2018/04/20

それこそ「モツ煮込み」みたいな本だった。 「モツ」=好きな人はとことんハマるが割と敬遠する人も多い戦後のチョンブラという食材 「煮込み」=鮮やかな場面展開と豊かな描写で万人が引き込まれやすいような味付けがなされた調理法 食べだしたらとまらない私の好物でした。 「まるでちょ...

それこそ「モツ煮込み」みたいな本だった。 「モツ」=好きな人はとことんハマるが割と敬遠する人も多い戦後のチョンブラという食材 「煮込み」=鮮やかな場面展開と豊かな描写で万人が引き込まれやすいような味付けがなされた調理法 食べだしたらとまらない私の好物でした。 「まるでちょっとした塵芥山」 「悪臭を発する都会のひき肉」 「白内障でつぶれた目のような水たまり」 と冒頭6項のたった1ページでここまで無様に形容された主人公が、徐々に組織の主要メンバーになっていく成長過程は、生々しく野卑なスラム描写で溢れた文中においてはそれこそ一種の箸休めになっている気がしないでもない。 あと「フクスケ」という名前が贅沢すぎる。主人公がなんだかんだ本質を掴んでいたり多少有利なポジションを獲得する設定は、開高健の作品に共通していると思う。 なんていうか別に社会批判の内容でもないだけに読み終わって考えさせられるものもなくあぁ面白かったで終わるあたりスッキリしてていいな。こってりしてるのに実はあっさりというか。 あと割と驚いたのが文中に「ブレイン・ストーミング」という言葉が出てくること。昭和34年だから1959年か。当時すでにその言葉があり、かつ渋谷あたりに生息する若手ビジネスマンがドヤ顔で使う「ブレストからやろうよ」と正に同じ用法で使われているのに驚いた。新進気鋭の若者たちよ、現代文学を読もう。そして謙虚さを知ろう。とか言いだしたらうるせー先輩扱いされるんだろうな。

Posted byブクログ