三島由紀夫とアンドレ・マルロー の商品レビュー
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石原莞爾と宮沢賢治を対比して描いた著者の期待の作品。三島とマルローは神話の時代に生きた人物だ。三島の死の直前のエッセイには「このまま行ったら『日本』はなくなってしまうのではないか、その代わりに無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東...
石原莞爾と宮沢賢治を対比して描いた著者の期待の作品。三島とマルローは神話の時代に生きた人物だ。三島の死の直前のエッセイには「このまま行ったら『日本』はなくなってしまうのではないか、その代わりに無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るだろう」と書いている。まさしくそれは現在の日本の姿だ。1968年のパリ五月革命から始った学生を中心とする安保闘争・・、そのなかで三島は自衛隊決起しかないと思いつめていった。三島がなぜあのような行動をとったのかは誰にとっても謎であり、どれも仮説でしかない。 しかし1968年の時代の分水嶺と著者がいうところの時間を生きていた我々にとって、この著書は「いったいあなたたちは何を選びどのようにしてきたのか」の問題を叩きつけるに十分だ。マルローは日本に4回の来日をしている。最後の1974年の来日のとき、私は取材に歩きまわっているマルローの姿を群集のなかで見た。三島とマルローのような信じるもののかる時代を生き抜いた人物を失った。今はどのような時代なのか?、それでも歴史は動いている。
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