野獣死すべし の商品レビュー
なかったのだが、新潮文庫版。面白かった。 当時としたら、画期的なハードボイルドだったのだろう。 『彼はすでに、不吉な観念に生きる一個の悪霊と化していた。』 目的を定め達成する為に必要な、ありとあらゆる努力、根回し、鍛錬を怠らない邦彦。 これを別の方向へ向けられなかったのだろう...
なかったのだが、新潮文庫版。面白かった。 当時としたら、画期的なハードボイルドだったのだろう。 『彼はすでに、不吉な観念に生きる一個の悪霊と化していた。』 目的を定め達成する為に必要な、ありとあらゆる努力、根回し、鍛錬を怠らない邦彦。 これを別の方向へ向けられなかったのだろうか? 『彼の中にあった一切の人間的なものを、無慈悲に奪いさった巨大な機構に対して、飽く事なき執拗な反逆を企てる』 そして、『現世の快楽を極めつくし、もうこの世に生き甲斐が見出せなくなった「時」が来たら後ただ冷ややかに人生の杯を唇から離し、心臓に一発射込んで、生まれて来た虚無の中に帰っていくだけだ。』 決してカッコいいと思ってはいけない。憧れてはいけない。悪は悪であり、正しい道ではない。 完全なる破壊神。 デートの時、一緒に映画を観ていて、『甘ったるいラブシーンにうんざりして、ステージに駆けよって客席に自動小銃でもブッぱなしたら胸がすっとするだろう』とは邦彦らしくてくすりとさせられる。 『自分には明るく健やかな青春時代はあっただろうか。心の中にポッカリと空白な部分が出来て、そこは死んでいた。これは戦争の子だけのもつ悲しみか。ただ誇れるのは、ギリギリの青春を血みどろに生きぬいてきたことだけだ。』 最後はやはり自分のした事と同じ事で、幕を閉じるのだ。 「野獣」は「死すべし」なのである。 『復讐』を成した後に残るのは何なのか?爽快感でない事は確かだと思うが…ちょっと興味はある。
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発表当時では衝撃的な名作だったろう。しかし、いま読むと驚きは少ない。それだけ、現代がやばい時代になっている証拠なのかもしれない。
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懐かしい。そしてなんとも古くさい。金額の単位が2桁足りないんじゃないかというくらい。こういうのが流行った時代もあったんだねぇ。
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沢山人が死んで、都合の良く実現不可能な強盗や殺人が繰り返され、成功する話。 つまりハードボイルドが流行った時代の作品。今の時代には馬鹿馬鹿しく写ってしまう部類。多分、独特の乾いた文体、過激なアクション、銃や車の精密描写などが人気だったのだろう。
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肉食系犯罪小説。 犯罪小説は、あたりまえだが主人公が犯罪者なので、リアリティを追求すると感情移入しにくくなる。それを救うのが「復讐」というキーワード。 ガン(銃器)とカー(車)をとったら何も残らない、という大藪春彦のすさましい小説群は徹底的に復讐のトーンで貫かれており、外部からの...
肉食系犯罪小説。 犯罪小説は、あたりまえだが主人公が犯罪者なので、リアリティを追求すると感情移入しにくくなる。それを救うのが「復讐」というキーワード。 ガン(銃器)とカー(車)をとったら何も残らない、という大藪春彦のすさましい小説群は徹底的に復讐のトーンで貫かれており、外部からのすべての評価を拒否する。 要するに読むか読まないかだ。 この処女作に関して言えば、思春期の人格形成の過程がリアルに描かれており、迫力を削がない程度に「文学」っぽいところもある。
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小学校の高学年か中学生の頃によく読みました。当時の大藪先生の作品はほぼ全て読んだくらいだったと思います。映画化された作品もあり、友達と見に行きました。大藪先生の作品に登場するタフなヒーローは、ひ弱だった少年(私です)の心を掴んだのでした。
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「野獣死すべし」の不協和音が頭の中をリフレインして止まなかった。強烈なストイシズムが生み出した非情美を描き出している。 大藪春彦23歳のデビュー作であり、ローンウルフ・伊達邦彦の記念すべき誕生作である。大藪春彦の情念が過剰なばかりに撃ち込まれた、悪のヒーロー物語だ。 作品の完成度や正義感にこだわる読者には向かない、破壊欲剥き出しの問題作とも言える。 学生時代、クラスメートに薦められ読んだ。それが読書に目覚めるきっかけとなり、思い入れが深い。何度も読み返したが、いつまでも色褪せないことに驚く。アメリカン・ハードボイルドが甘ったるく感じてしまうほどのインパクトがある。 大藪ハードボイルドの原点に酔う。 主人公・伊達邦彦はハルピン生まれ。敗戦時に難民として、命からがら引き揚げてくる。他国者(よそもの)の邦彦が当たり前の中学校生活を送るには、戦いとらなければならなかった。出入りや闇商売の一方、ロシア文学を読む。名門高校に難なく入学。新聞部でコミュニズム論を書きなぐり、天皇批判で停学を喰らう。演劇部に入り、芝居の方法論を学ぶ。大学。サッカーに熱中し、さらに一人で美術部を作り、絵具をキャンバスに叩きつける日々。授業に何の興味もなく、下宿でアメリカン・ハードボイルドの探偵小説を貪り読む。ボクシング、射撃、そして自動車運転テクニックを磨く。卒論は「ハメット=チャンドラー=マクドナルド派に於けるストイシズムの研究」。大学院に残り、アメリカ文学を専攻する。そして、計画していた完全犯罪を決行する……。 ここまでに、邦彦の心情が刺激的な言葉で語られている。 殺人という美学への憧憬、己の能力の最後の一雫まで傾けて目的を成し遂げなければならないという執着。その強烈な決意との心の葛藤にニヒリズムが窺える。 「完全犯罪の夢が彼の頭中にくすぶり始め……」 「女に精神を求める様な間抜けには死んでもなりたくない」 「犯罪、特に殺人には生命の昇華がある」 「自分以外に頼りになるのは、金と武器だけだ。金で買えない物に、ろくな物はない」 漆黒の髪はおのずから渦を巻き、彫った様に浅黒く端正な顔は若々しい。甘い唇には孤独の影があるが、憂いを含んで深々と光る瞳には夢見る趣がある。そんな伊達邦彦が躍動する本書は、今後も最高の1冊であり続けることだろう。 なお、この文庫本には「渡米篇」が収録されている。有名なアメリカン・ハードボイルド・ヒーローたちが、伊達邦彦に叩きのめされるパロディである。
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大藪春彦作品にハマってついに、本家本元にたどり着いた。本編は23歳のデビュー作、大藪作品の原点だ。満州からの帰国など伊達邦彦のバックグラウンドは、作者自身の精神性の一面とダブルのかもしれない。取り込み詐欺は、先日読んだ白昼の視角となにやら接点があるようにも感じられた。ここから果て...
大藪春彦作品にハマってついに、本家本元にたどり着いた。本編は23歳のデビュー作、大藪作品の原点だ。満州からの帰国など伊達邦彦のバックグラウンドは、作者自身の精神性の一面とダブルのかもしれない。取り込み詐欺は、先日読んだ白昼の視角となにやら接点があるようにも感じられた。ここから果てしなく、伊達邦彦のアクションが始まるかと思うと、楽しみである。
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昭和33年に発表された大薮春彦の処女作。そして、あの伊達邦彦が初登場する作品でもある。 彼は、登場してすぐに警官の眉間に一発の銃弾を打ち込む。それが伊達邦彦!それが大薮春彦!
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