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ドリナの橋 の商品レビュー

4.7

6件のお客様レビュー

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2024/08/29

直近でレビューをされている方々と同じく東浩紀が薦めていたので読みました。 タイトルの「ドリナの橋」は、ボスニアのヴィシェグラードにかかるソコルル・メフメト・パシャ橋を指す。人名である。まず、橋を作ったこの人物の話から300年以上にわたる小説が始まる。 物語は出版されたのが19...

直近でレビューをされている方々と同じく東浩紀が薦めていたので読みました。 タイトルの「ドリナの橋」は、ボスニアのヴィシェグラードにかかるソコルル・メフメト・パシャ橋を指す。人名である。まず、橋を作ったこの人物の話から300年以上にわたる小説が始まる。 物語は出版されたのが1945年、第二次世界大戦が終わった年である。小説のラストは第一次世界大戦の始まりであるサラエボ事件で終わるので、1914年。 著者のイヴォ・アンドリッチは1892年生まれのため、サラエボ事件時で22歳、出版時は53歳である。成人してからのほとんどを世界大戦とともに過ごしたことになる。いまとなっては小説の終わりの時点でも歴史小説のようにも読めてしまうが、著者からすれば実際の体験があるわけで、生々しい筆致が感じられる。 物語はドリナの橋の建設から始まり、そのまわりで起こる物語の集積からなる。主人公といえる登場人物はいないが、個人的な物語から歴史に翻弄される物語まで、いろいろなエピソードが語られる。ユーゴはヨーロッパの火薬庫といわれるだけあって、全体的には暗い話も多いが、著者の文体のせいか、そこまで陰鬱さは感じられなかった。 この小説に欠点があるとすれば絶版であり、手に入れにくいことだろう。私は図書館で取り寄せてもらったが、古文書のようなぼろぼろの装丁だった。

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2024/06/10

東浩紀氏( @hazuma )が配信で良い本だと言っていたので探したら、たまたま市の図書館にあったので、読んだ。確かにとても良い小説で、このようなイスラムや正教徒やユダヤの人々を共存させながら数百年間このバルカンの地を支配していたオスマン帝国にも興味が沸いて、また色々本を物色して...

東浩紀氏( @hazuma )が配信で良い本だと言っていたので探したら、たまたま市の図書館にあったので、読んだ。確かにとても良い小説で、このようなイスラムや正教徒やユダヤの人々を共存させながら数百年間このバルカンの地を支配していたオスマン帝国にも興味が沸いて、また色々本を物色している。

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2024/05/09

ゲンロン創始者の東浩紀さんが面白いと仰っていたので読んでみた。 頁を開いた時に二段組で字も小さく、一瞬躊躇したが、読み始めると、なるほど解説にもあるように、叙情歴史小説で、とても面白く読めた。 橋を建設した宰相の出自からして、いきなり驚かされる。16世紀から20世紀にかけての壮...

ゲンロン創始者の東浩紀さんが面白いと仰っていたので読んでみた。 頁を開いた時に二段組で字も小さく、一瞬躊躇したが、読み始めると、なるほど解説にもあるように、叙情歴史小説で、とても面白く読めた。 橋を建設した宰相の出自からして、いきなり驚かされる。16世紀から20世紀にかけての壮大な物語であり、この地域の複雑な民族、宗教に関わる問題が、市井の人々の生活を通して描かれている。正直、日本に住んでいると馴染みがない地域であるが、ニュースや教科書からではない、小説だからこその描き方で、土地の在り方、複雑さを、淡々と美しく哀しく伝えてくれる。 「ともかく、すべてが楽になった。板についてきたのだ。」 この一節に、ハッとさせられた。 絶版のため図書館で借りた。 ノーベル賞受賞のきっかけでもあり、是非とも復刊して頂きたい。

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2022/02/12

バルカン半島の激動の歴史と、その渦の中で生きる人々。人から生み出されたものでありながら、人よりもはるかに賢明な存在としてただ黙々と時を刻み続ける「橋」との対比。一人一人の営みの明暗賢愚、全てを飲み込むような、突き放すでもなく、寄り添うでもなく、裁くわけでも赦すわけでもない、それで...

バルカン半島の激動の歴史と、その渦の中で生きる人々。人から生み出されたものでありながら、人よりもはるかに賢明な存在としてただ黙々と時を刻み続ける「橋」との対比。一人一人の営みの明暗賢愚、全てを飲み込むような、突き放すでもなく、寄り添うでもなく、裁くわけでも赦すわけでもない、それでいて確かな実体の感じられる描写力がとても良かった。

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2020/09/14

イヴォ・アンドリッチ作品はこれで二冊目。『宰相の象の物語』で感じたことは間違いではなかった。「橋」を実質的な主役に据え、語り口調でつづられる物語は実に面白く、自分もこう書いてみたいと思わせる(そして多分できっこない)文体だった。さすがノーベル文学賞受賞作品。三冊目が楽しみ。

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2013/03/03

ドリナ川(セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナを流れる川)にかかる橋、ソコルル・メフメト・パシャ橋が舞台のユーゴスラビアの歴史を背景とした作品。橋のあるヴィシェグラードの町(ボスニア・ヘルツェゴビナ)は国境に近く、歴史の変遷の影響(「いつも発火しやすい国境は、今回は火を吹かなかった...

ドリナ川(セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナを流れる川)にかかる橋、ソコルル・メフメト・パシャ橋が舞台のユーゴスラビアの歴史を背景とした作品。橋のあるヴィシェグラードの町(ボスニア・ヘルツェゴビナ)は国境に近く、歴史の変遷の影響(「いつも発火しやすい国境は、今回は火を吹かなかった」[p251])を直に受けてきた。その様子、感覚を町に立って肌で感じながら(これが物語の幹だ、たとえば最後のオーストリア・ハンガリー帝国軍による橋の破壊はアリホジャの視点「橋だ!」[p345])、橋にまつわるさまざまなエピソードの枝葉。枝葉は一見とりとめなく挿入されていて、「短編小説にしたほうが良いのでは」とおもうかもしれない。しかし、ロッティカ(後半ではロッテ)やアリホジャのように最後まで残る線がある(最初に出てきて全体の背景になる橋をつくったオスマン帝国の宰相メフメド・パシャのエピソード(暗殺)は、後のオーストリア・ハンガリー帝国の皇后暗殺にリンクいている[p249-250])。その挿入がとても自然でいやらしくない。多くを挿入しながら、回収される線とされない線の絶妙なバランスで構築された、模範的な作品ではないだろうか(作者イヴォ・アンドリッチはノーベル文学賞を授賞)。 東欧の複雑で混沌とした歴史の、救いがなく(挿入されている背景を含めたエピソード、人物のどれにも救いがない。ロッテは狂ってしまう[p336]し、アリホジャは橋に張りつけにされたり[p131-143]、最後は店を壊されて自分も死ぬ[p349]し)陰気でじめじめとした魅力(傍からみれば)は地図をのぞきこむ老人たちが「生物学的に感じとって」[p257]いたような、現地人からにじみ出てくるものであろう。 それにしても、イエニチェリとして徴集される(親、母親にとっては誘拐だ)様子[p40-41]や、おそらく冤罪だが見せしめのために杭を体に(肛門から)打ち込まれる様子[p66]や、フェドゥンの自殺の様子[p191]などがみてきたかのようにリアル(ちなみに作者はこの町で育ったが)。この橋は、たとえその上の中央のカピヤが人びとが楽しくすごせる場所だったり、川の増水では、異なった信仰どうしにかかる橋であったり[p95]しても、死や不幸を招く橋のよう。

Posted byブクログ