氷 の商品レビュー
1985年2月出版。山田和子さん訳。氷が迫り来る戦争のさなか、私は少女を探すのだけど、探したと思えば離れ、現実か妄想なのか、悪夢の繰り返しのようでよくわからない。私とか男とか名前がなく、誰が誰なのか、もしかして同一人物なのか。何を伝えたいのか私には何も響いてこず、ただただこの少女...
1985年2月出版。山田和子さん訳。氷が迫り来る戦争のさなか、私は少女を探すのだけど、探したと思えば離れ、現実か妄想なのか、悪夢の繰り返しのようでよくわからない。私とか男とか名前がなく、誰が誰なのか、もしかして同一人物なのか。何を伝えたいのか私には何も響いてこず、ただただこの少女はそんなに魅力があるのだろうかという疑問だけだった。
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気象変動で氷に覆われていた地球が舞台。交通・情報が寸断され、核兵器が使われたという憶測があるが、定かではない。凍らない赤道の土地をめぐる戦争のさなか、名も明かされぬ主人公の男は、かつて恋した女性の行方を追い、氷の世界に足を踏み入れる。並みのSFであれば、地球のアイスボール化をさけるためにヒーローが現れるところだろうが、本作の人類は、氷の前に無力。そこがいい。ラストページの憂鬱な一行が印象的。
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広がる氷からは逃れられず、終末にむかう世界で少女に執着する長官と「私」。読み始め、アンナ・カヴァンでしかもSFチックな小説を面白いなと思った事にもびっくりだけど、ジュリア&バズーカにも通じる世界はやはりと言うか、全体に濃い死の匂いが立ち込める。かといって受け取る印象が昏い...
広がる氷からは逃れられず、終末にむかう世界で少女に執着する長官と「私」。読み始め、アンナ・カヴァンでしかもSFチックな小説を面白いなと思った事にもびっくりだけど、ジュリア&バズーカにも通じる世界はやはりと言うか、全体に濃い死の匂いが立ち込める。かといって受け取る印象が昏いだけということもなく、言葉にし難い魅力があって、また読み返そうとおもう何かしらがアンナ・カヴァンの小説にはあるように思う。それは「孤独」や「死に近いところにいる人の肉声」という言葉では片付けたくない何かしらで、まだよく判らないけど。
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私と少女が行ったり来たりを繰り返すだけの不安定な物語なのに、世界が閉じるという終末感だけはやけに強固でリアル。ヤク中でぶっ壊れているカヴァンがその少女というわけでもなく、希望もない生まれたことを後悔するような厳寒な世界(社会)そのものが心の地図。
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現実の先触れのようにして立ち現われてくる幻想(妄想?)・・・・・・・ 何事もなかったかのように現実に戻る、その境目のなさ。 主人公にとって、その現実も“本物”であるのかどうか。 まるで脳内スパイごっこをしているかのような、尽きない資金といつの間にか身に着けている武器・・・・・ ...
現実の先触れのようにして立ち現われてくる幻想(妄想?)・・・・・・・ 何事もなかったかのように現実に戻る、その境目のなさ。 主人公にとって、その現実も“本物”であるのかどうか。 まるで脳内スパイごっこをしているかのような、尽きない資金といつの間にか身に着けている武器・・・・・ 銀白色の長い髪をもつ永遠なる少女と、世界を覆いつくしていく流動体のような氷のイメージに圧倒される。 Ice by Anna Kavan
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読んでると幻覚と現実の区別がつかなくなって、言いようもない不安のようなものが残る。エスプレッソの底にざりざりしてる砂糖みたいな。
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