ジャガイモのきた道 の商品レビュー
2022/06/24 じゃがいもの観点から世界の人々の生活を見てみた一冊。 じゃがいもがアンデス地方発祥というのは起源や歴史に残る事実として広く知られているが、どうしてアンデス地方だったのか、じゃがいもの普及が世界の人々の生活をどのように変えたのかと言うシンプルに思えて実はとても...
2022/06/24 じゃがいもの観点から世界の人々の生活を見てみた一冊。 じゃがいもがアンデス地方発祥というのは起源や歴史に残る事実として広く知られているが、どうしてアンデス地方だったのか、じゃがいもの普及が世界の人々の生活をどのように変えたのかと言うシンプルに思えて実はとても複雑な歴史や国のことなどがこの本を一冊読むだけでとてもよくわかります。 また、じゃがいもと人の農耕の歴史を紐解いていくと、じゃがいもを栽培しても危機的状況の飢饉になったアイルランドがある一方で、なぜアンデス地方では500年以上にわたってじゃがいもの高地栽培が続いているのか、ペルーのじゃがいも栽培には現在(当時)で何か課題はないのかなど、深く考えていけばいくほどいろいろな視点から人とじゃがいものつながりや関わりを検証することができるのだなあということも知れました。
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アンデスの高地の文明はトウモロコシではなく、ジャガイモで支えられていた。毒消しのための加工が水分を減らしジャガイモの長期貯蔵を可能にしたからである。
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フライドポテト、ポテトチップス、ポテトサラダ。様々な形で私達の胃袋を満たしてくれるジャガイモ。 その栄養価の高さのわりに「主食」扱いされていないことは、もしかしたら不当な評価なのではないか。本書を読むと、そのような気持ちさえこみ上げてくる。 様々な国でジャガイモが受け入れられる...
フライドポテト、ポテトチップス、ポテトサラダ。様々な形で私達の胃袋を満たしてくれるジャガイモ。 その栄養価の高さのわりに「主食」扱いされていないことは、もしかしたら不当な評価なのではないか。本書を読むと、そのような気持ちさえこみ上げてくる。 様々な国でジャガイモが受け入れられるきっかけになっているのが「飢饉」のような危機である、というのはなんとも示唆に富んだ出来事だ。 窮地に追い込まれてからでないと、なかなか変化を受け入れたくないという人間の有様が凝縮されたようなエピソードだ。
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大抵の野菜の原種は食べにくい(えぐみが強かったり、有毒だったり)ものであったというのは、ゲッチョ先生ほかいろいろな本で読んで知っていたし、アイルランドのジャガイモ飢饉も、小説に描かれたりしているので知っていたのだが、そういう断片的な知識がこの本で繋がった。 古代アンデスの人々がい...
大抵の野菜の原種は食べにくい(えぐみが強かったり、有毒だったり)ものであったというのは、ゲッチョ先生ほかいろいろな本で読んで知っていたし、アイルランドのジャガイモ飢饉も、小説に描かれたりしているので知っていたのだが、そういう断片的な知識がこの本で繋がった。 古代アンデスの人々がいかに苦労して(他に食べ物がなかったためではあるが)有毒で、小さくて、水分の多い(つまり保存に向かない)ジャガイモを食べられるようにしたかというところは、胸打たれる。原種のジャガイモの写真が載っているが、本当に小さくて(大きめのビー玉程度)、これを食べざるを得なかった苦労を思う。 アンデス高地は寒冷で乾季もあるため、いわゆるイモ(地下茎や根に養分を貯蔵する塊茎や塊根をつくるもの)類が他にもいろいろ あること。ジャガイモの液胞にソラニン(100g中100mgもあり。栽培種は20mg以下。)があることを経験的に理解し、毒抜きの方法を学ぶ。具体的には凍らせて水を抜き、乾かすフリーズドライ製法。これで長期保存が可能となる。毒が抜けて保存出来れば他のイモ類より良い、ということになる。同時にイモが大きくなり、毒が弱いものを選んで種をとり、栽培し、というドメスティケーションを数百年から数千年続ける。気が遠くなる。 今私たちが気軽にジャガイモを食べられるのは、古代アンデスの人々の苦労があったからなのだ。ありがたや。 ちなみにフリーズドライで保存できるジャガイモはチューニョと呼ばれ、今も作られている。食感はジャガイモと全く違うらしい。 他にもジャガイモ飢饉を含め、ジャガイモが世界に伝播していく過程、世界での栽培の様子など、興味深い内容だった。 著者は1984年から3年間ペルーに住み、インカ帝国の末裔、ケチュア族の村でフィールドワークを行ったが、当時でも30種類を超える品種のジャガイモが作られていたという。ジャガイモ飢饉を持ち出すまでもなく、あらゆる病害虫に耐えられるように、飢えないように、という工夫ではあるが、実際には収量は極めて低い。先進国企業が作った収量の高い改良品種や、それを栽培するために必要な農薬を買うお金がないため、仕方なく在来種を栽培していたのだ。 その後治安が悪くなり、著者は現地での研究を断念したが、10年後、政情が安定してから再び訪れると、貨幣経済が浸透し、ケチュア族も改良品種を栽培するようになっていた、とある。ケチュア族の人々の生活は良くなったのだろうが、多数の在来種が消えたのではないか。それは人類にとっては損失ではないのかと『タネの未来』を読んだので危機感を抱いた。 それにしても、油で揚げたりマヨネーズやバターをつけたりしなければ、ジャガイモは米や小麦よりビタミン、ミネラル、タンパク質が多く、食物繊維豊富で、低カロリーと著者は絶賛するのだが、そういう調理法が美味しいんだよね、ジャガイモは。アンデス高地の農民は一回に1kgのジャガイモを食べ、頑健だとあるけど、何もつけないジャガイモをそんなに食べられません。米や麦にアレルギーのある人はジャガイモを主食にすると聞いたことがあるから、慣れの問題だろうけど。
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ジャガイモはただの救荒作物なのか? 確かに冷酷な環境で、土が良くなくとも一定量は必ず収穫できるような、強い作物だ。大きな飢饉を幾度となく救った実績もある。しかしただの救荒作物というには優秀すぎると思う。それほどの作物を、主食にする文明がないと言い切れるのか。あくまで主観である。 ...
ジャガイモはただの救荒作物なのか? 確かに冷酷な環境で、土が良くなくとも一定量は必ず収穫できるような、強い作物だ。大きな飢饉を幾度となく救った実績もある。しかしただの救荒作物というには優秀すぎると思う。それほどの作物を、主食にする文明がないと言い切れるのか。あくまで主観である。 ジャガイモはアンデスの山の中から、世界中へどのように広がっていったのか。広まる時の印象は、当時の偏見は何故起きたのか。広まったあと、その土地の食料事情はどう変化したのか。そういった内容が綴られ、ジャガイモの歩いてきた道を知ることができる。何より愛にあふれている。 ところで、ソラヌム・トゥベローサムってかっこよすぎません?
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2008年刊行。著者は国立民族学博物館職員。 ジャガイモを民俗学・文化人類学的に解読しようとする書である。 テーマは ①栽培食物としての誕生、 ②インカ等南米山岳文明にジャガイモが寄与した意味、 ③欧州への伝播とその意味、 ④ヒマラヤ等現代も続くジャガイモの移出とその社会的・民俗学的影響、 ⑤日本のジャガイモ、 ⑥将来像 である。 キャッサバ文化やタロイモ・ヤマイモの主食地域について多少なりとも知っていれば、ジャガイモの主食(ないし重要な補助食品)、救荒作物、飢饉に強い作物としての意味を見出すことはさほど難しくはない。 そういう意味では割に当たり前のことを、色々な実例・実地調査・文献(欧州と日本)から解説しているとも言える。 個人的には、ジャガイモがなぜ高い比率で澱粉を作る植物なのか、それはどういう条件下か、その生物学的メカニズムはどういうものか、なぜ他の穀類と違いが生まれるのかが知りたかったが、主フィールドが民俗学・文化人類学では、農業博士とはいえ難しいかなという印象はある。 とはいえ、イモの史的な意味とその果たした役割を知らない人にとっては、意味のある書とも感じるのも確か。
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山本紀夫『ジャガイモのきた道』読了。 考古学的にじゃがいもがどう扱われてきたのかが分かる1冊。 考古学の世界では、イモは文明を形成できない(穀物が文明を形成する)というのが定説らしく、それを打開するのが本書の狙い。 これを読んだからではないけれども、来年はジャガイモの栽培面積増...
山本紀夫『ジャガイモのきた道』読了。 考古学的にじゃがいもがどう扱われてきたのかが分かる1冊。 考古学の世界では、イモは文明を形成できない(穀物が文明を形成する)というのが定説らしく、それを打開するのが本書の狙い。 これを読んだからではないけれども、来年はジャガイモの栽培面積増やしますよ♪
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南米アンデス原産(山岳地帯)のジャガイモが、ヨーロッパ人によって「発見」され、その後、ヨーロッパ大陸、ヒマラヤ、日本の食と文化をどう変えたかについて、筆者のフィールドワークによる研究結果を交えた一冊。 最後に年米アンデスの原住民と生活におけるジャガイモの関係で終わるのも、円を描い...
南米アンデス原産(山岳地帯)のジャガイモが、ヨーロッパ人によって「発見」され、その後、ヨーロッパ大陸、ヒマラヤ、日本の食と文化をどう変えたかについて、筆者のフィールドワークによる研究結果を交えた一冊。 最後に年米アンデスの原住民と生活におけるジャガイモの関係で終わるのも、円を描いているようで、おもしろい。 アンデスに驚くほどの種類のジャガイモがあること、それが高低差を利用して非常に効率的に栽培されていることや、世界を通じて、ジャガイモが人類社会に及ぼす影響が大きいことを知ることができる1冊だった。 良書。
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アンデスの山岳文明 ・ジャガイモの故郷はティティカカ湖を中心とする中央アンデス。長い乾季があるため、地下茎や根に養分を貯蔵する植物が適応した。 ・ジャガイモの栽培化はBC5000年頃。 ・イモは毒抜きをし、乾燥させたチューニョの状態で貯蔵される。 ・古代から主食はジャガイモで、ト...
アンデスの山岳文明 ・ジャガイモの故郷はティティカカ湖を中心とする中央アンデス。長い乾季があるため、地下茎や根に養分を貯蔵する植物が適応した。 ・ジャガイモの栽培化はBC5000年頃。 ・イモは毒抜きをし、乾燥させたチューニョの状態で貯蔵される。 ・古代から主食はジャガイモで、トウモロコシは酒チチャを造るための材料だった。 ・アルパカは高山草地の牧草しか食べないため、放牧は高地で行われる。 ヨーロッパへの伝来 ・ジャガイモは1570年頃にスペインにもたらされ、ヨーロッパ北部に広がった。 ・1680年代のルイ14世によるベルギー占領の頃から、戦争が繰り返されるたびにジャガイモが普及していった。 日本への伝来 ・日本の文献にジャガイモが登場するのは1800年頃。蝦夷で栽培された。 ・高野長英は、飢饉の対策としてソバとジャガイモの栽培を奨励した。 ・明治時代には、紡績用の糊の需要が増加したためジャガイモデンプンが生産され、第二次世界大戦後には製飴原料としての需要が増加した。
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「欧州」は南米からのジャガイモでできた。 寒いユーラシアの端っこを元気にさせ、戦争、飢餓、近代化の火口となった様を瑞々しく教えてくれる。
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