睡蓮の池 の商品レビュー
1年前、ナチスの迫害から逃れるために妹と二人きりでウィーンからスウェーデンの島にある養親の元にやってきた13歳のステフィは、夏のバカンスで島に来た医者夫妻の厚意と奨学金を得て、イェーテボリの中学校へ通うことになった。ウィーンの両親のことが気がかりではあったが、久しぶりの都会と下宿...
1年前、ナチスの迫害から逃れるために妹と二人きりでウィーンからスウェーデンの島にある養親の元にやってきた13歳のステフィは、夏のバカンスで島に来た医者夫妻の厚意と奨学金を得て、イェーテボリの中学校へ通うことになった。ウィーンの両親のことが気がかりではあったが、久しぶりの都会と下宿先の5つ年上の息子スヴェンとの生活が楽しみだった。 ところが、医者の「奥さま」は、彼女を家族と同等に扱おうとはせず、初めて帰省するはずだった週末にはパーティのための給仕をさせ、客に「貧しい漁師の養女」と紹介する。 同じ奨学生のマイと友だちになり誠実を誓ったが、クラスの女王さま二人組には、スヴェンと付き合っていると虚勢を張ってしまう。 スヴェンはスヴェンで、彼女には優しいが何か秘密を抱えているようで……。 だんだんと困窮していく両親への心配、友人関係、恋愛、自分への不当な扱い等々に悩みながら、周囲の人たちの助けを得て進んでいく少女の物語。 『海の島―ステフィとネッリの物語』の続編。 *******ここからはネタバレ******* 戦争の影が忍び寄りつつも、あまり現実感がない中で生活しているスウェーデンの人たちと、戦争と迫害の中に両親を置いてきたステフィとの温度差が胸に痛い。 老い始めてきたメルタが厳しさの中に愛をより濃く滲ませ始めた様子に心和む。 ウィーンの家を出て、島の家も出て、イェーテボリで生活する彼女の、ゆらぐ「家」感にも納得する。 ただ、物語の運びには目新しさがなく、少々退屈であった。 また、ストーリーが多岐にわたるせいか、少々疑問点も残る。 5階建てでリフト付きのマンションに住む裕福なご一家が、なぜ夏に「貧しい漁師」の家にバカンスに来たのか?なぜ長女の素晴らしい部屋(ステフィの下宿している部屋)の窓から見えるものが物置小屋とゴミバケツの置かれた裏庭だったのか? なぜスヴェンは、ステフィを部屋に招き入れ、二人きりでベッドに腰掛け肩に手をやり彼女の涙を拭いてやり……しておいて、「妹」と思っているって言えるのか!!!?(←女の敵だ) 13歳にしては大人な少女の気持ちの揺れがとてもよくわかるが、今作はちょっとアダルト向け(笑)なので、小学生以下には薦めません。
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島からイェーテボリのお医者様の家に寄宿させてもらい、中学校に通いはじめるステフィ。となりの部屋にはお医者様の息子であるあこがれのスヴェンもいて、新しい生活は希望に満ちていた。でもお医者様夫妻は、スティフィを住まわせているのはあくまでも「慈善」だと考えていて、人に紹介するときにも、...
島からイェーテボリのお医者様の家に寄宿させてもらい、中学校に通いはじめるステフィ。となりの部屋にはお医者様の息子であるあこがれのスヴェンもいて、新しい生活は希望に満ちていた。でもお医者様夫妻は、スティフィを住まわせているのはあくまでも「慈善」だと考えていて、人に紹介するときにも、自分たちの寛大さ、鷹揚さを誇示するための手立てとしてしか考えていない。 少しずつ厳しくなる戦時中の状況。「中立」のスウェーデンも、じつにあやういバランスの上に立っていることがよく伝わってくる。故郷に残してきた両親の状況も刻々と悪化。そしてお医者様一家との深まる溝、自分を小さな女の子としてしか見てくれないスヴェンへの募る思いといらだち。 もどかしい第2巻だけど、ぎりぎりのところでステフィが見せる芯の強さがすばらしい。この強さを愛せるかどうかでこの物語に寄せる気持ちは変わってくるだろう。わたしは、とても好きだ。
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このシリーズで断トツに好きなのは、メルタとエヴェルトだな〜。 ステフィとネッリも少しずつそれぞれの生活に慣れてきて、距離が出てきたのが悲しい。そしてパパとママからの手紙が毎回切ないです。
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奨学金をもらい、スヴェンの家に下宿してイェーテボリの中学に通うことになったステフィを中心にした物語。 スヴェンへのあこがれが募ってつい嘘をついてしまうステフィ。ディナーパーティでの屈辱。学校でも教師から目の敵にされたり、辛いこともあるが、マイとの友情を育み、青春にさしかかったステ...
奨学金をもらい、スヴェンの家に下宿してイェーテボリの中学に通うことになったステフィを中心にした物語。 スヴェンへのあこがれが募ってつい嘘をついてしまうステフィ。ディナーパーティでの屈辱。学校でも教師から目の敵にされたり、辛いこともあるが、マイとの友情を育み、青春にさしかかったステフィの生き生きした姿は魅力的。 引き取られてからキリスト教徒として育てられた幼いネッリは、ユダヤ人としてのアイデンティティがゆらいでいる。 戦争、宗教、恋愛、友情、家族などを描きながら、変に哲学的になったり説教くさくなったりせず、物語をコントロールする作者の手腕に驚く。 映画の製作を学んだ人だからか、映像として魅力的であること、読み手を飽きさせないことを重要と考えているのだろう、とこの人の作品を読むと必ず思う。
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「海の島」続編。シリーズ第二作目。ステフィは念願かなって中学校へ進学。話の中心になるのは、下宿先のスヴェンへの淡い恋心。爽やかな青年スヴェン。読んでいて素敵だなぁと思うのですが、スヴェンには何か隠し事がありそうです。中学校ではステフィを目の敵にする先生や生徒がちらほら。新しい生活...
「海の島」続編。シリーズ第二作目。ステフィは念願かなって中学校へ進学。話の中心になるのは、下宿先のスヴェンへの淡い恋心。爽やかな青年スヴェン。読んでいて素敵だなぁと思うのですが、スヴェンには何か隠し事がありそうです。中学校ではステフィを目の敵にする先生や生徒がちらほら。新しい生活も両親の様子も雲行きが怪しくなっていきます…。前作より爽やかな感じがします。ステフィが静かに強く成長して行く様子に引き込まれていきます。「パパの手紙を読んで、パパは必ずしも正しくないと知ってしまい、何とも寂しい気持ちになった。」というシーンにはこういう気持ちまで書いてくれるんだ!と胸打たれました。時代に翻弄されながらも強く生きていくステフィ。幸せになって欲しいと願いながら、一気に読み、またラストに胸が熱くなりました。どんなに辛いときも、理解してくれる人がいるってなんて幸せなんだろう。
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シリーズ二作目。 前作よりすこし明るい?内容。 ぶじにお医者さんちに下宿して、中学校にいけるようになったステフィ。 ウィーンよりは田舎だけど、島とは比べようもない都会に住むことに。 冒頭の地図をみながら、自分も一緒に新しい町を散歩できて楽しかった。 思春期の少女らしい、心の動きが...
シリーズ二作目。 前作よりすこし明るい?内容。 ぶじにお医者さんちに下宿して、中学校にいけるようになったステフィ。 ウィーンよりは田舎だけど、島とは比べようもない都会に住むことに。 冒頭の地図をみながら、自分も一緒に新しい町を散歩できて楽しかった。 思春期の少女らしい、心の動きが巧み。 両親の状況は心配だけど、新しい環境で、新しい友人にめぐまれ、なにより島という、帰る場所をもてたことがステフィに自信を与えたようにみえる。 キリスト教とのいさかい、島に残る妹との齟齬など、気になることはたくさんあるけど、ステフィの成長をこれからも追っていけるのが嬉しい。 残り二冊が楽しみ!
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読んで良かった。場所は違うけど、オードリー・ペップバーンと 同じ世代なのですよね。全然関係ないとは思うのだけど。
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思春期の心の揺れの描写がお見事 この物語にある背景(第二次世界大戦)が さりげなく、登場人物たちの 会話と行動の中に 挿入されているところが 物語の厚みになっていますね
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読み終わってみると『睡蓮の池』というタイトルがしっくりきます。ステフィのうれしいことがあったのも、辛いことがあったのも、この睡蓮の池のほとりでした。
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中学への進学を果たせたステフィは島を離れ下宿生活を始めます。下宿先の青年に恋をしたり、新しい友達や先生に恵まれ充実した学校生活を送ります。一方でウィーンの母が病気になり、両親の掴みかけたアメリカ行きが遠のいてしまいます。離れて暮らす妹を心配したり、下宿先でメイドの手伝いをさせられ...
中学への進学を果たせたステフィは島を離れ下宿生活を始めます。下宿先の青年に恋をしたり、新しい友達や先生に恵まれ充実した学校生活を送ります。一方でウィーンの母が病気になり、両親の掴みかけたアメリカ行きが遠のいてしまいます。離れて暮らす妹を心配したり、下宿先でメイドの手伝いをさせられ傷つき、失恋し、挙げ句の果てにカンニングの罪を被せられてしまい、とうとうステフィは島へ逃げるようにして帰りますが…。 他のスウェーデン人の子たちのように楽しいことをしていても屈託なく楽しめないステフィの複雑な思いが伝わります。そんな中、親友マイや先生、そして養家のメルタとエヴェルトの支えが心を打ちます。四部作の二作目。
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