心に太陽を持て の商品レビュー
あらすじ 1920年,イギリス北部のコーンウォール・ポイントというところの沖あいを,小さな汽船が走っていた。その日は大変霧が深く,運悪く大きな定期船と衝突し汽船は沈没してしまう。大海に投げ出された乗客のひとりであるマッケンナは,墓場のように静かなその海にひとり凍え漂っていた。途...
あらすじ 1920年,イギリス北部のコーンウォール・ポイントというところの沖あいを,小さな汽船が走っていた。その日は大変霧が深く,運悪く大きな定期船と衝突し汽船は沈没してしまう。大海に投げ出された乗客のひとりであるマッケンナは,墓場のように静かなその海にひとり凍え漂っていた。途方にくれ神に祈りをささげた時,その静けさのなかに聞こえるはずのないきれいな歌声を聞く。マッケンナはその歌声のする方へ力をふりしぼって泳ぎだす。 「くちびるに歌を持て」。この本のタイトルを見たときに,率直に「いい言葉だ」と思った。この話を読んだ後に意味もなく歌を歌ってしまいたくなるくらいに全くその通りだと感じた。この話は元々青少年向けに書かれたもののため,話が割と短くて文章が分かりやすくとても読みやすいものであった。それ故に文章1文1文がそのまま頭の中に入ってくるようでとても臨場感を感じた。主人公のマッケンナが海にひとり放り出されてしまった時,どこを向いても海が見えるだけで助けも来ない状況では泳ぐにも泳げない。もし自分がそんな状況に陥ったらどうしようもなく途方にくれてしまうだろう。そしてマッケンナのように「おうい。助けてくれえ。」と自分が出せる限りの大声で叫ぶだろう。このような状況の中できれいな歌が聞こえてきたら,誰もが間違いなくそこへ行って声の主を知りたいと思うはずである。私はこの部分を読んだとき,大声で助けを求めるという意見を全くなかった事にしてこの女性のようになりたいと思った。その場の状況にただ流されるだけでなく,何事も前向きに考え周りの人を元気づけられるのはすごいことである。虚しい気持ちを励ますためにうたった歌が誰かに届いたのと,ただ助けを呼ぶために叫んでいたのとではどちらが良いかなんて考えるに及ばないだろう。女性は別に救助ボートを呼ぶために歌を歌った訳ではない。自分を元気づけ,この場をなんとか乗り切るために歌を歌ったのだ。自分が何の気なしに,損得勘定などを一切考えないでやったことが,誰かの救いになり,糧になり,楽しみのひとつになったとしたらそれは本当に素晴らしいことだと思う。 マッケンナがみんなで歌を歌わないかと提案したように,周りと協調性をもち,助け合って生きていくことは今現代にもっとも必要なことではないかと考える。この話を読んでから日々の生活はできるだけ楽しんで過ごそうと努力している。学校の講義で「健康は日々の満足感と充実感でも成り立つものである」ということを学んでからは,私は毎日を健康に過ごしていると自身を持っていえるようになった。もしわたしがどこかで船に乗って,その船が沈没して海に投げ出されたとしても,流れてくる1本の材木にしがみついて,誰も聞いて無いであろう海の真ん中で歌を歌い,それを聞きつけた人と出会い,一緒に歌って楽しんで,救助のボートに見つけられ,「ありがとう」という一言をもらい,「今日も1日健康に過ごせた」と思えるような生活を送りたいと思う。
Posted by
朝ドラの「おひさま」でタイトルを聞いてから何だか気になっていた本です。正直、現代の大人が読むには少々浅すぎる感じは否めませんが、逆にいつに間にかなくしてしまった、純粋でまっすぐな気持ちを思い出させてくれたような気もします^^
Posted by
同じような時期で青年世代を対象にした著作としては、吉野源三郎氏の「君たちはどう生きるか」が有名ですね。私もかなり以前に読みましたが、確かにとてもいい本だと思いました。今回手に取った本書もそれと同根の流れです。 作者は、「真実一路」や「路傍の石」等を著した劇作家・小説家の山本有...
同じような時期で青年世代を対象にした著作としては、吉野源三郎氏の「君たちはどう生きるか」が有名ですね。私もかなり以前に読みましたが、確かにとてもいい本だと思いました。今回手に取った本書もそれと同根の流れです。 作者は、「真実一路」や「路傍の石」等を著した劇作家・小説家の山本有三氏。 本書の内容ですが、終戦後、昭和31年に発刊された「新編・日本少国民文庫」に収録されていた作品をベースに、22の小編を精選、山本氏の加筆を経て再録したものです。暗い戦時期が終わり、これから将来あるこどもたちに対して人道主義にもとづく優しい心とまっとうな生き方を伝えたいという山本氏の一途な気持ちが溢れ出ている小話集だと思います。
Posted by
この本を読まなかったら一生知ることのなかった、知っておいて損のない話を知識として蓄えることができたので満足。
Posted by
朝ドラの「おひさま」でこの本の冒頭の詩「心に太陽を持て」が印象深く使われていた。本屋で文庫本を見つけたので買ってみた。 開いてみると、いくつか「そうだったのか」ということが。一つは、私の大好きな本である吉野源三郎「君たちはどう生きるか」は戦前の「国民少年文庫」に入った一冊だった...
朝ドラの「おひさま」でこの本の冒頭の詩「心に太陽を持て」が印象深く使われていた。本屋で文庫本を見つけたので買ってみた。 開いてみると、いくつか「そうだったのか」ということが。一つは、私の大好きな本である吉野源三郎「君たちはどう生きるか」は戦前の「国民少年文庫」に入った一冊だったのであるが、あれは山本有三責任編集、吉野編集長で作ったものだった。この本は、その第一回配本で山本有三がまとめたものであった。戦後になって改訂版を出して、10編新しい話を入れたみたいなので、どれがオリジナルの話なのかちょっと分からないが、吉野のあの本にも負けない実に良質の少年本だった。 戦前のそれも昭和10年になると、軍記モノが幅を利かす時代でこのような本を出すのはとても勇気が要ったことだろうと思う。ほとんどはアメリカやドイツ、イギリスの話です。イギリスの船が沈没した時に、漂流者をずっと歌で励ました女性の話「くちびるに歌を持て」あるいは何度も何度も困難を克服した「パナマ運河物語」社会事業である海底電線のために、何度も破産をこうむりながら事業を成し遂げた男の話「海底電線と借金」、読んだことのあるようなないような話が次々と出てきます。 例えばこの話は明確に読んだことのある話でした(もしかしたら教科書に載っていたのか)。短いので紹介します。 「一日本人」 「なんだ。なんだ。」 「どうしたんだ。どうしたんだ。」 口々にさけびながら、バスティーユのひろ場のほうへ、人々が飛んでいきました。じりじりと日の照りつける広い往来には、たちまち黒山の人だかりができました。 人がきのなかには、荷物を山のように積んだ荷馬車が、動かず突っ立っていました。しかし、みんなが駆けつけたのは、もちろん荷馬車が珍しいからではありません。荷馬車をひいててきた馬がおなかを見せたまま、道端に倒れてしまったからです。おなかにはあぶら汗がいっぱいにじんで、黄色く光っていました。 馬は暑さでつかれているところへ、舗道に水がまいてあったために、ひずめをすべらしてころんだのです。 御者はいうまでもなく、そこへ集まった人たちもなんとかして馬を立たせてやろうといろいろと骨をおりました。馬も立ち上がろうと、もがきました。しかし、鉄のひずめが、舗道の表面をななめにこするばかりで、どうしても立ち上がることができませんでした。そのうちに、馬のおなかは次第にはげしく波をうち始めました。こまりきった御者は、手のつけようがないという顔で、馬の腹をみおろしながら、ため息をついていました。 その時、顔の黄いろい、あまり背の高くない、ひとりの紳士が人がきの中からつかつかと出てきました。かれは、いきなり自分のうわぎをぬいで、それを馬の足へひきました。それから、みぎ手でたてがみをつかみ、ひだり手で馬のタヅナをにぎりました。 「それっ!」 かれはからだに似あわない、大きな、かけ声をかけました。それははっきりした日本語でした。 馬はぶるっと胴ぶるいして、ひと息に立ち上がりました。うわぎですべりがとめてあったために、まえ足にぎゅっと力がはいったからです。 見物のなかには、思わず「あっ。」と声をもらす人もいました。 御者は非常に喜んで、いくたびか、その黄いろい顔の紳士にお礼を言いました。だが、紳士は、「ノン、ノン。」(いいえ、いいえ。)と軽く答えながら、てばやくうわぎを拾いあげました。そして、どろをはらってそれを着ると、どこともなく、すがたを消してしまいました。 このことはすぐパリの新聞に出ました。いや、それはフランスだけではありません。イギリスの新聞、イブニング・スタンダードにまで掲載されました。(1921年6月30日のぶん。)そればかりではありません。イギリスで出版された逸話の本のなかにも、「日本人と馬」という題でのせられています。 この人の名まえは、おしいことに、今では、もうわかりません。 文章を読むと、小学生にも分かるように優しい言葉で書かれているにも拘らず、ありありと情景が浮かぶように、厳選された表現を使っているのが良く分かります。例えば「おなかにはあぶら汗がいっぱいにじんで、黄色く光っていました。」「ぶるっと胴ぶるいして」というような描写です。編集者が選んできた話のひとつひとつを山本有三が厳密に吟味した結果なのだろうと私は推理します。 私もそうなのですが、この文章で日本人に対する誇らしさを培ったと思います。もうそれはたぶんなん億もの日本の少年少女が同じ思いをしたのではないか。 名も無く、貧しく、無学の、けれども感動的な女性を綴った「キティの一生」という文もあります。今年文庫本としては異例の32刷を数えていました。
Posted by
Posted by
子どものために書かれた本なので、非常に読みやすい。 文章のあらゆるところから、山本先生の未来への希望と責任感が伝わってくる。この仕事を達成するために、涙ぐましい努力をされたのではないかと推察する。世界の偉人は読書によってつくられたと言われるように、私も彼らに負けずと精進したい。そ...
子どものために書かれた本なので、非常に読みやすい。 文章のあらゆるところから、山本先生の未来への希望と責任感が伝わってくる。この仕事を達成するために、涙ぐましい努力をされたのではないかと推察する。世界の偉人は読書によってつくられたと言われるように、私も彼らに負けずと精進したい。そう素直に思える読後感だった。
Posted by
大学④年で読みましたが、もっと早くに読めば人格形成に影響与えられかねない、短編集。とても良い本です。 人間はどう生きるかを語りかける本、というアオリですが、吉野さんの『君たちはどう生きるか』に負けず劣らずの内容です。個人的には後者の方が好きですが。 初版帯付きだったので買った...
大学④年で読みましたが、もっと早くに読めば人格形成に影響与えられかねない、短編集。とても良い本です。 人間はどう生きるかを語りかける本、というアオリですが、吉野さんの『君たちはどう生きるか』に負けず劣らずの内容です。個人的には後者の方が好きですが。 初版帯付きだったので買ったら名作だったという。 こういう時、本蒐集の幸せを感じますね。
Posted by
父の蔵書。短編集で、小さな文庫本サイズ。 私が小さく、何度も入退院を繰り返していた時期から親に読み聞かせされたり、自分で読んだりしていて、今の私の性格・精神の大部分を作ったかもしれない古い一冊。 中には、スエズ運河建設や、難破船からの救助をはじめ、実際の出来事が手短に書かれてい...
父の蔵書。短編集で、小さな文庫本サイズ。 私が小さく、何度も入退院を繰り返していた時期から親に読み聞かせされたり、自分で読んだりしていて、今の私の性格・精神の大部分を作ったかもしれない古い一冊。 中には、スエズ運河建設や、難破船からの救助をはじめ、実際の出来事が手短に書かれていて、主旨は書名のごとく、 「心に太陽を持て、くちびるに歌をもて」 ということ。 つらい時とか、これの中から適当に一話読んで、「よし、明日も頑張ろう」という気持ちになれる。
Posted by
心に太陽を持て。あらしがふこうと、ふぶきがこようと、天には黒くも、地には争いが絶えなかろうと、いつも、心に太陽を持て。 くちびるに歌を持て、軽く、ほがらかに。自分のつとめ、自分のくらしに、よしや苦労が絶えなかろうと、いつも、くちびるに歌を持て。 苦しんでる人、なやんでいる人には、...
心に太陽を持て。あらしがふこうと、ふぶきがこようと、天には黒くも、地には争いが絶えなかろうと、いつも、心に太陽を持て。 くちびるに歌を持て、軽く、ほがらかに。自分のつとめ、自分のくらしに、よしや苦労が絶えなかろうと、いつも、くちびるに歌を持て。 苦しんでる人、なやんでいる人には、こう、はげましてやろう。「勇気を失うな。くちびるに歌を持て。心に太陽を持て。」
Posted by