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生態と民俗 の商品レビュー

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4件のお客様レビュー

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2018/10/31

文化や民俗は、その土地にあった生活様式、環境とのかかわり方を教えてくれる。特に、伝説や物語にもそうしたメッセージが隠れているという最後の部がおもしろかった。伝説・民話は、言わば先人達が長い時間をかけて獲得してきた教訓や知識。侮るなかれという読後感だった。 焼畑の輪作を終えて休閑...

文化や民俗は、その土地にあった生活様式、環境とのかかわり方を教えてくれる。特に、伝説や物語にもそうしたメッセージが隠れているという最後の部がおもしろかった。伝説・民話は、言わば先人達が長い時間をかけて獲得してきた教訓や知識。侮るなかれという読後感だった。 焼畑の輪作を終えて休閑させるとき、根粒菌が共生する榛の木(ハンノキ)の苗を植えて土地の肥沃化を図った。榛の木を山の神の足として伐採を禁じた地もあった。墓に植えられた木に、枇杷の木、センダン、カツラがある。コナラの台木の先端に伸びるヒコバエを刈り取った刈敷を水田の緑肥として利用することが昭和30年代まで行われてきた。 遠野市や岩泉のシシ踊りは、害獣としてのシカとそれを防ごうとする人間との対立を演じるもの。日本の古典に登場するワニはサメを意味している。 伝説の中には、その地に生きた先人たちの環境とのかかわり方に関するメッセージが込められている。サケの大助伝説には、サケの大助の遡上を語ることによって、種の保存・資源の保全を図ろうとした共同体の意図を読み取ることができる。ウミガメの産卵位置をその年の台風の大きさの指標として、その位置より上に船を移動する風習があったため、漁師たちはウミガメを助けたことが浦島太郎の物語を生んだ。灰を撒く花咲爺は、灰の再生促進力を語っている。野焼き・山焼きは、屋根材(カヤ)、肥料、飼料など農民の暮らしと深く結びついていた。野焼きの後に焼けた小動物を狙ってやってくるイノシシも狙われた。

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2014/10/04

[ 内容 ] 食料や燃料を恵み、道行く際の標となり、また神の依り代となる樹。 肉として薬として、あるいは害をなし、時に神の使者ともなる動物。 人は自らをとりまく自然から何を享受し何を守ってきたのか。 植物の活用と生命力への崇拝、動物との敵対とその霊性への畏怖。 自然と相渉る人々の...

[ 内容 ] 食料や燃料を恵み、道行く際の標となり、また神の依り代となる樹。 肉として薬として、あるいは害をなし、時に神の使者ともなる動物。 人は自らをとりまく自然から何を享受し何を守ってきたのか。 植物の活用と生命力への崇拝、動物との敵対とその霊性への畏怖。 自然と相渉る人々の民俗事例と伝承を集め、培われてきた相利相生の思想の有効性を検証。 [ 目次 ] 神の山と人の山 1 共生の民俗(人と燕の相渉;巨樹と神の森;クロマツの民俗;アマカツの民俗) 2 共存の葛藤―ディレンマの動物誌(ハブの両義性;鹿;猿;鼠;蛙;狼;鮫) 3 資源保全と再生の民俗(曲物師と木地屋;山椒魚の谷;「旬」の思想;再生と民俗) 4 伝説・昔話の環境論(伝説と環境思想;鮭の大助―資源保全と種の保存;浦島太郎;桃太郎;花咲爺;猿蟹合戦) [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2013/06/01

民俗学 我々の生活にはあらゆるところで、脈々と受け継がれる風習がしみ込んでいる。それは各地域ごとに違うこともあれば、不思議と遠く離れた地域で同じような文化が受け継がれていることもある。 本書は動植物と我々とのつながり、自然から何を享受し、我々の生活にどう結びついているかを、市井...

民俗学 我々の生活にはあらゆるところで、脈々と受け継がれる風習がしみ込んでいる。それは各地域ごとに違うこともあれば、不思議と遠く離れた地域で同じような文化が受け継がれていることもある。 本書は動植物と我々とのつながり、自然から何を享受し、我々の生活にどう結びついているかを、市井の人々から聞いた話をまとめ、考察している。実に地道な、丁寧な本である。 受け継がれている民間の伝承が消えていっている今、このような本が多く残されるのを希望したい。 タイトルとなっている「相渉」という言葉は造語であるそうだが、実にぴったりと当てはまっている。

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2009/10/04

事例が豊富であり、なおかつ非常に読みやすいので、描かれている世界にグングン引き込まれる。しかし、野本作品にありがちな、全国各地の事例を無秩序に紹介しているので読みながら頭の中を整理するのが大変であるし、「観念」的な研究をする同業者に謁を入れている割には、民俗例を古代の世界に半ば無...

事例が豊富であり、なおかつ非常に読みやすいので、描かれている世界にグングン引き込まれる。しかし、野本作品にありがちな、全国各地の事例を無秩序に紹介しているので読みながら頭の中を整理するのが大変であるし、「観念」的な研究をする同業者に謁を入れている割には、民俗例を古代の世界に半ば無理矢理結び付けるなど(それはお前の不勉強、と言われそうだが)、読みながら不満に感じた。

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