この世の全部を敵に回して の商品レビュー
私は苦手でした。 入り口は面白そうだったけど、敷居が高すぎた。 敷居が高いなら高いなりの入り口であってください。 ゆるい頭ではついていけなくて、嫌悪感さえもってしまった。 …哲学なんだ~。
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71点。仕事がうまくいき、日々のご飯にありつけ、友達や家族とうまくできれば幸せと言うタイプの人だけではなく、世界とは何かといった存在論的問題を問わずにはいられない実存形式の人が回りにはいる。前者は自分が幸せになることにフォーカスするが後者の興味は世界の謎に向けられる。 白石一文も...
71点。仕事がうまくいき、日々のご飯にありつけ、友達や家族とうまくできれば幸せと言うタイプの人だけではなく、世界とは何かといった存在論的問題を問わずにはいられない実存形式の人が回りにはいる。前者は自分が幸せになることにフォーカスするが後者の興味は世界の謎に向けられる。 白石一文も作品から推察するに存在論的な問いを設定せずにはいられないタイプだ。この小説は論旨こそニーチェの焼き直しだが、主観にやや傾ぎすぎじゃね?な価値観に素直に同意しかねるのと、これはこの人の小説全般の感想だけど言ってることはわかるけど押しの強さになんかイラっとするんです。 さらに今回の小説は自分自身のためだけに書いたのではないかと思うほどに、問うというよりは確認するといった趣向が強く間違いなく処女作だったらまず出版には至らないだろうなといった内容。でも十冊以上もの書籍を上梓している作家だからといって自己満足的な心情吐露だけで終わっていいはずはない。 しかしこれらイライラはきっとすべて著者の狙い通りだ。だってさ、タイトルが『この世の全部を敵に回して』だもん。 外したときの言い訳にも使えそうなこのタイトルは反則だろ。
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哲学、なのかな。 面白くもないしつまらなくもない。 逆説的に人の良心を信じようと試みてるのはわかる。
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読み終えてかなりの日数が経ってしまった。なかなか感想を書く気にならなかったし、書けなかった。死についてここまで理屈を突き詰め考えて書くことができるんだと驚いた。しかも、宗教も霊も何も否定している訳じゃない。人間の生と死についての哲学書でもあると思う。色々な見方や考え方を認めつつ、...
読み終えてかなりの日数が経ってしまった。なかなか感想を書く気にならなかったし、書けなかった。死についてここまで理屈を突き詰め考えて書くことができるんだと驚いた。しかも、宗教も霊も何も否定している訳じゃない。人間の生と死についての哲学書でもあると思う。色々な見方や考え方を認めつつ、死、人間の生の不条理について納得せざるを得ない。自分自身はただ単に死が怖いと恐れおののいているだけで悩み足りないというか、怖い〜ということからそれ以上考えないで目を背けていたんだと思う。しばらく時間をおいてもう一度読んでみたいと思う。
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人の命とは何たるか。 人の命がどれだけ無駄か、 人として生きるのがどれだけ苦痛か そんなことを1冊、長々と書き連ねていると言う。 人を築き上げないタイプの本^^ 嫌いじゃないw
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P136 私たち家族は、他に何もできないゆえにハチを心から愛したのだった。 ・・・私たちはハチの一生に一体どんな意味があるのか最後まで 分からなかったが、分からないからこそ彼をただただ可愛がったのである。 私は思う。愛とは本来そうしたものでなくてはならないのだと。 この人生の意味...
P136 私たち家族は、他に何もできないゆえにハチを心から愛したのだった。 ・・・私たちはハチの一生に一体どんな意味があるのか最後まで 分からなかったが、分からないからこそ彼をただただ可愛がったのである。 私は思う。愛とは本来そうしたものでなくてはならないのだと。 この人生の意味も目的も知らず生きていく自分、同様に生きている他の 人々や動物たち。存在する意味も目的も持たない相手(自分自身も含む)に 大して私たちができることは二つしかない。一つは黙殺すること。そして もう一つはただ愛することだ。 P138 愛とは、他に何もできることのない私たちが、ハチに向かってそうしたように 行うささやかなものでしかない。密やかで力なく、日常的なものである。 ほんとうの愛とは、死すべき運命を背負わされた全部の生き物への憐憫である。 それがすべての愛の源流である。愛は死すべき私たちへの小さな励ましなのだ。 だからこそ愛は、どんな人間や生物にも平等に注がれる。 ●人間はこんな愛情を持ちうるのだろうか。ハチを愛したのは、それが身近な 存在だったからではないのか。遠くの死ぬゆく人を哀れんだところで、 それがいったい何だというのだろうか。 ●この世の醜悪さに目を向けている人がどれほどいるだろうか。 そして私という存在は醜悪な本性によって形成されているのだ。 このことを認めて生きていくのは苦痛でしかない。 だから、心の中では薄々感じていながらも目を背けて生きているのだろう。 ●この世のシステムがそもそも悪意に満ちているという視点は斬新だった。 恐らく総ての人に『善く生きたい』という考えはあるはずなのに、一向に善いものにならない。 他人を殺し、自ら死に、騙し、脅し、快楽に溺れ、自己愛を追求する。 そもそも世界のシステムに問題があるのは間違いない。 読了日:2010/05/19
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現代版「人間失格」と呼ばれているこの作品。 その題名と、表紙の険しい顔からなんだか鬱々としたものを感じる。 一度気になる作家さんが出てくると 私はその人の作品を手当たり次第に読んでみたくなるのだけれども 今は白石一文さんがその一人。 これは小説というか、なんというのだろう、 ...
現代版「人間失格」と呼ばれているこの作品。 その題名と、表紙の険しい顔からなんだか鬱々としたものを感じる。 一度気になる作家さんが出てくると 私はその人の作品を手当たり次第に読んでみたくなるのだけれども 今は白石一文さんがその一人。 これは小説というか、なんというのだろう、 ある意味、架空の人物を通して作られたエッセイとでもいうのかな。 でも、エッセイというかもっと哲学書みたいな感じ。 とにかく何度も語りかけられる 「私たちは何のために生きているのか」という問い掛け。 最後まで読んだところで、それに対する答えは出てこない。 悶々と語りかけられる疑問に考えを沈ませる。 小説として読むと期待を裏切られるし、 正直面白くないので、小説という概念を捨ててから読んだ方がいいと思う。
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死ってなんだろう、って考え続けた日々もあったから。 だからこのひとの見ている世界には共感するところも多い。 でも疲れるのは、彼の書くキャラクターが毎度のように他を排除するから。 「生きる意味とは何か」「死とは何か」 重々しく突きつけてくる、頑固なおじさま。という、印象。
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興味深かった部分>> 人間と癌細胞は、 生まれる意味も生きる意味も無く存在し、 生みの親である地球の生命存続のシステムから一人離脱して、 そのシステムをいいように破壊し、無秩序に繁殖しているという点で 似た者同士である。 人生とは、生と死の間に張られた一本の糸の振動のようなもの...
興味深かった部分>> 人間と癌細胞は、 生まれる意味も生きる意味も無く存在し、 生みの親である地球の生命存続のシステムから一人離脱して、 そのシステムをいいように破壊し、無秩序に繁殖しているという点で 似た者同士である。 人生とは、生と死の間に張られた一本の糸の振動のようなもの。 長い短い、振動の大きさは別として 等しく全ての人が、死に向かって突き進んでいる。 もし不死の世界がある日訪れたとすれば、 我々を日々拘束している物質的な欲望からは解放され、 恐らく犯罪も無くなり、精神世界も一変するだろう。 (繁殖する必要がなくなる時、恋愛感情や子供への愛情は起こりうるのだろうか?) だがそれと同時に、個人が個人であり続ける必要もなくなり、 変化も無く果てしなく続いて行く日々に耐えられなくなり、 ついには人々は終わり(=死)を再び願う事になるだろう。 古今東西、自然の中に美と静寂と調和を見いだし、 俗世を捨てて田園の人となる人は多いが、 生き物が生き物を殺すことでしか生きられないこの世界のどこに、 どんな調和や美しさ、真実の静寂があるといのだろか。 私たちの住む世界は、殺生を根本的に否定出来ない世界、 何らかの理由、目的によっては人を殺しても構わないという暗黙の了解の世界である。 責任能力という考え方は、その点を巧みに表現している。 責任能力とは、人を殺した時にその責任を担える力という意味。 本来は人を殺して取りうる責任など存在しないはずが、 この考え方は逆説的には、責任を負う覚悟を決めた人間(国家)は 人を殺しても構わないという構図を生み出している。 責任(法的制裁)を負う覚悟もなしに行われた殺人は「ちゃんとした殺人」と見なされず、 刑罰を与えられることがない。 極端にいえば偶発的に起こってしまった、天災のたぐいの1つのように扱われているのが現状。 愛とは、死すべき運命を背負わされた全部の生き物への憐憫、 死すべき私たちへの小さな励まし。 だからこそどんな人間や生物にも平等に注がれる。 私たちにできるのは自分を、そして他人を哀れみ同情することだけだ。 その哀れみの心を私たち全員が持ち続ける事ができるなら、 この世界の過剰な残酷さの何割かはたちどころに消滅するだろう。 人や自分を哀れむ心があれば、どうして私たちは互いに殺し合うことができるだろう。 因果応報や神の存在、天国と地獄のような、確認しようも無ければ 検証するにつれほころびの見える考え方にすがるのではなく、 不備だらけの法や政治に無関心に任せるのでもなく、 (これらは何からもあなたを守ってはくれない) 家族や自国などの限定された存在への愛情や理解や承認が、 私たちをいかに臆病にし、我が儘にし、それらがいかに無益なものかをもっと自覚しなければならない。 それらを削ぎ落とした先に、あなたがあなたの中にある真実の哀れみをよみがえらせるだけで この世界に仕組まれた憎むべきプログラムー 貧困、暴力、戦争、差別、迫害、狂信などが無力化できることを あなたはもっと強く自覚しなくてはならない。 ---------------------------------------------------------------------------------------- もう死んでしまった知人がこの世に密かに残した手記を発表する体をとった作品。 生きていく為に日常的に動物や植物を殺していることを意識すると 生かされている自分の生がくっきりと感じられる。 そして自分もまたいつか死んでいくものだと自覚を強める。 そういう意識は、都会での生活のなかでは希薄になる一方だ。 家族愛までも否定されることに違和感を覚えるけれど、 確かに限定的な愛というものが全ての争いの発端であることは間違いない。 (ある日知人のカメラマンが、 「自分の子供を守る為なら戦争にだって行く」と発言したことを思い出す) 話が飛んでしまうが、 この本とロイ・アンダーソンの「愛おしき隣人」が言っていることは 根本では同じだ、と思った。 ごく普通の人々がささやかな欲望、希望を描いて生きている。 若い人も、年老いた人も、幸せなカップルも、そうでない人も。 彼らを覆う空には死の象徴の戦闘機が向かっている。 どんな悩みや欲望を持って生きても、命は有る日突然奪われる。 だからこそ愛おしく感じられる。 …そんなことを考えるきっかけになった作品の1つ。
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非常に興味深い。じつに興味深い。とは思いつつもそこを上手く言語化できないでいる。てかメンドくさい。 5年に一回読むのも悪くない本だ。 アイロニック。
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