ともしびをかかげて(上) の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
上橋菜穂子先生が言及されており、まだ読んだことがなかったので読んでみた。 舞台は起源5世紀頃の、古代ローマ帝国支配下にあったブリテン。 日本人にはあまり馴染みがないだろう古代ブリテンの歴史は、読んでいて重く苦しい。 その流れに翻弄されていく主人公アクイラ。 対象は中学生以上となっているが、一般的な『児童文学』を想像して前知識無く読むと かなり衝撃を受けそうだ。 どう足掻いても流れには勝てず、自分の運命を打開するにはひとりぼっちで力も足りない。 その中でブリトン人としての誇りを守ろうとローマ軍を脱走するが サクソン人に襲われ自分はジュート人の奴隷となってしまう悲運。 三年後に再会した妹フラビアは彼女を攫った人間の妻となっており、子供までいる。 一緒に逃げることはできないというフラビアの助けを得て奴隷の身から脱し、 ニンニアス修道士と出会うところでようやく少しの安らぎを得られたように思う。 この先どういう道を選び生きていくのだろうか。
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「獣の奏者7」の巻末、著者とブックコメンテーター・松田哲夫の対談で、 読んで面白い本、「ローズマリ サトクリフ 」の作品の1つとして紹介されていた。 そこで、「第九軍団のワシ」と 本書を読んでみます。 内容が面白いだけでなく、 文章が散文詩のような独特の雰囲気を持っていて、 ...
「獣の奏者7」の巻末、著者とブックコメンテーター・松田哲夫の対談で、 読んで面白い本、「ローズマリ サトクリフ 」の作品の1つとして紹介されていた。 そこで、「第九軍団のワシ」と 本書を読んでみます。 内容が面白いだけでなく、 文章が散文詩のような独特の雰囲気を持っていて、 読み進むうちに その世界に浸っています。 人物や自然の描写の比喩が、格調高いというか典雅で、 それでいて臨場感も伝わってくるし、ストーリーに引き込まれていきます。 モノクロの版画・きり絵風なの挿絵もステキ! 2012/3/8 予約 3/16 借りる。3/17 読み始める。5/10 読み終わる 次は下巻 内容 : 衰退したローマ帝国は、450年にわたるブリテン島支配に終止符をうつ。 地方軍団の指揮官アクイラは、悩んだ末に軍を脱走し、故郷のブリテン島にとどまることを決意したが…。 著者 : 1920〜92年。イギリスの児童文学作家・小説家。 「ともしびをかかげて」で1959年カーネギー賞受賞。 他の著書に「第九軍団のワシ」「銀の枝」など。
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これまで全く通ってこなかった、ローマン・ブリテンの物語。もっと早く読んでおけば世界の見方や価値観が変わった、とは言わないが、衰退したローマ帝国が属州であったブリテンの支配をやめ、ブリテン自身に混乱が巻き起こる様子を、ローマ軍から脱走したブリテン人アクイラに降りかかる災難と重ね合わ...
これまで全く通ってこなかった、ローマン・ブリテンの物語。もっと早く読んでおけば世界の見方や価値観が変わった、とは言わないが、衰退したローマ帝国が属州であったブリテンの支配をやめ、ブリテン自身に混乱が巻き起こる様子を、ローマ軍から脱走したブリテン人アクイラに降りかかる災難と重ね合わされている。序盤、アクイラが蛮人に降って奴隷となるのだが、その間の展開が少し意外だった。思ったよりいい扱いだったのだが、それも歴史と社会性のなすものなのかな。
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家族を守るために、いや、家族と共に滅びる覚悟で、撤退するローマ軍から離脱する青年アクイラ。生き延びた彼に待っていたのは奴隷としての生活だった。 本当に面白い話というのはえてして、スタートの勢いは強くない。読み進めるうちにじわじわと面白さが増してくるものだ。(『指輪物語』なんて1...
家族を守るために、いや、家族と共に滅びる覚悟で、撤退するローマ軍から離脱する青年アクイラ。生き延びた彼に待っていたのは奴隷としての生活だった。 本当に面白い話というのはえてして、スタートの勢いは強くない。読み進めるうちにじわじわと面白さが増してくるものだ。(『指輪物語』なんて1巻を読むのにひと月かかった)この本もその残念な御多分に漏れず、最初がどーよって感じなのだな。けど、それを超えるとページを繰る手が止まらなくなる。 主人公アクイラはそれぞれ生きている時代が違う別人だけど、『第九軍団のワシ』でも『銀の枝』でも地味だったけど、今度は、さらにトラウマもちのひねくれもの、素直に愛情表現ができないときたもんで・・・まったく感情移入はできません^^;)))))。 ただしその分、風景や背景にある戦いも同じように客観的に読むことができる。物語を俯瞰できる。淡々と、淡々と。 激しい感情の動きは、抑制された表現の中に。 (まー、訳も古いからな~) 中学生ならちょっと上級者の読書かな。
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暗く、思い話だった。 大人になってから読んで良かったと思うタイプの物語。 寄稿の上橋菜穂子さんの指摘するとおり、このシリーズの主人公には必ず『諦めることを受け入れる』という転換期がある 『信じろ、諦めるな』というメッセージを送る児童書は多いけど『諦めることは他の選択を選ぶこと...
暗く、思い話だった。 大人になってから読んで良かったと思うタイプの物語。 寄稿の上橋菜穂子さんの指摘するとおり、このシリーズの主人公には必ず『諦めることを受け入れる』という転換期がある 『信じろ、諦めるな』というメッセージを送る児童書は多いけど『諦めることは他の選択を選ぶことである』と伝える児童書は少ない。 結婚についても考えさせられる。 読み応えがあった
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※このレビューにはネタバレを含みます
まだ上巻読み終わっただけなのですが、本作からは大河ドラマのような荘厳なインパクトを感じます。前作「銀の枝」はクライマックスこそ盛り上がりましたが、それまでがわりと平坦な印象がありました。しかし本作は序盤から波瀾万丈な展開で、主人公アクイラがこの先どうなるのかがとても気になります。 ローマ人として生きるか、ブリトン人として生きるかの選択に関しては、もう少し文字数を割いて葛藤させても良かったのではと思ったりもしました。が、その後の妹との再会やニンニアス修道士との邂逅などといったイベントがあり、上巻読了時点で主人公的には悩ましいことが盛りだくさんで、それだけで十二分な感があります。 特に妹との再会と彼女の境遇については、同じ征服された民族ですが、兄妹なのに考え方が180度異なっていて、非常に複雑な気分にさせられました。サクソン人に対して徹底して抵抗する兄、憎しみを抱きつつも受け入れた妹。なんでしょうね、この言いようのないもやもや感は。このようなエピソードを、アングロ・サクソン人の末裔であろうイギリス人が、ブリトン人の視点から描いているということが本当に興味深いです。 ニンニアス修道士から知らされるある事実から、主人公のモチベーションがだだ下がりになってしまうあたりで、私自身のモチベーションも少々低下してしまいました(どうも私は主人公のテンションにシンクロしてしまいがちのようで…)が、その後はアツいバトル展開があり、若干持ち直した感じ。この後、下巻でどのような展開が待っているのか。気になって仕方ない今現在です。
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衰退したローマ帝国は、450年にわたるブリテン島支配に終止符をうつ。地方軍団の指揮官アクイラは、悩んだ末に軍を脱走し、故郷のブリテン島にとどまることを決意したが…。意志を貫いて生きることの厳しさ、美しさを描く
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前作「銀の枝」ではちょっと消化不良気味の感想しか抱けなかった KiKi。 そういう意味ではこの第3作を読み始めるまでは正直ビクビクものでした。 でも、「カーネギー賞受賞作品」だし、上巻の表紙の写真は KiKi 好み(?)だし、おっかなびっくりの期待を込めて読み始めたのですが、...
前作「銀の枝」ではちょっと消化不良気味の感想しか抱けなかった KiKi。 そういう意味ではこの第3作を読み始めるまでは正直ビクビクものでした。 でも、「カーネギー賞受賞作品」だし、上巻の表紙の写真は KiKi 好み(?)だし、おっかなびっくりの期待を込めて読み始めたのですが、前作で感じた「中ダルミ感」は冒頭2章であっという間に吹っ飛び、この物語の世界観に吸い込まれていきました。 で、上下2巻を一気読み!(笑) それぐらい面白かったし、魅せられたし、多くのことを考えさせられました。 「第九軍団のワシ」も KiKi の中ではかなり評価が高い作品だったんですけど、こちらの方がさらにそれを上回っている・・・・かもしれません。 前作でもケチョンケチョンの扱いだったサクソン人は今作でも引き続きケチョンケチョン・・・・ではあるものの、そこに主人公アクイラ(「第九軍団のワシ」のアクイラの子孫)の愛してやまない妹フラビアの存在と、彼女が略奪され不本意ながらも嫁ぐことになったサクソン人との間の息子、マルの存在があることにより、善 vs. 悪の対立軸からはちょっと離れ、もっと深い1人の人間の精神性・生き様というものが浮き彫りにされた、人間性回復の物語になっていることに感銘を受けました。 そいういう意味ではこれは「児童書カテゴリー」に入っている作品ではあるものの、大人が読むとさらに味わい深い作品になっていると思いました。 物語冒頭であまりにも呆気なくすべてを失ってしまうアクイラだけど、同時に彼がその冒頭で灯した「ともしび」が、物語全編で時に弱く、時に強く燃えているのが、感覚的にも視覚的にも感じられるのもすごいなぁ・・・・。 (全文はブログにて)
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